給油所・充電スタンドの看板
走る車に選ばれる5ステップ
これから給油所や充電スタンドの看板を考える方へ。 この場の看板は、止まっている人ではなく、走っている人が読みます。 通り過ぎたら、その車はもう戻りません。 判断できる地点を先に決めることが、面の高さも文字の大きさも決めます。
前面道路の速度から、判断してもらう地点を逆算する手順/ 走行中に読める文字数と、文字の高さの出し方/ 変わる表示と変わらない表示を分ける理由/ 危険物を扱う敷地と、道路まわりで確かめること/ 掲出の年数で総額を割り、1日あたりの台数に直す式/ 通り過ぎた車から原因をたどり、安い順に直す方法
読まれないのではなく、読む時間が足りない
高い看板を立てたのに寄ってもらえない。 原因の多くは、面の大きさではなく気づく地点の遅さです。
起きやすいのは、次の四つです。 高い面に情報を並べ、走行中に一つも読み取れない。 入口の面が建物と平行で、走ってくる車から見えない。 価格や規格を板へ直接入れ、変わるたびに作り直している。 暗くなってからの見え方を確かめていない。
いずれも、発注の前に手を打てば起きません。 地点を決め、面を分け、決まりを確かめ、費用を割り、数えて直す。 この五つを順に埋めます。
速度から逆算して、判断してもらう地点を決める
面の高さも文字の大きさも、この地点が決まってから決まります。
制限速度ではなく、流れている速度を見ます。路肩に立ち、10台の通過を目で追えば、体感でつかめます。
気づいて決めるまでに3秒、合図を出して減速するのに3秒。合わせて6秒を確保する前提で組みます。
速度を秒速に直して6秒分を掛けます。その地点から高い面が見えるかを、実際に立って確かめます。
地図の上では見えても、街路樹や標識柱で隠れます。手前へずらすか、面の高さを上げるかを選びます。
寄るかどうかを決め、合図を出し、速度を落とす。 この一連に、6秒ほどが要ります。
判断3秒 + 合図と減速3秒 = 6秒
16.7 × 6 = 100.2 → 約100m手前
時速40kmなら 11.1 × 6 = 66.6 → 約67m手前
この地点に、実際に立ってみてください。 高い面が見えなければ、面の位置か高さを直す話になります。
| 走行の速度 | 秒速に直すと | 判断してもらう地点 |
|---|---|---|
| 時速60km | 秒速 約16.7m | 約100m手前 |
| 時速40km | 秒速 約11.1m | 約67m手前 |
| 時速10km(敷地内) | 秒速 約2.8m | 入ってから約11秒 |
敷地に入った後は、時間の性質が変わります。 徐行を時速10kmと置けば秒速約2.8mです。 計量機まで30mなら 30 ÷ 2.8 で約11秒。 操作や支払いの案内は、この区間で読ませます。
敷地内で車を導く考え方には、業種を問わない型があります。 並べ方は駐車場・入口の案内サインにまとめました。
走行中に読める数へ絞り、面を役割で分ける
一つの面が答える問いは、一つだけにします。
高い面は「ここで入れる」を伝えるためにあります。 それ以外は、敷地に入ってからの面へ移します。
| 面 | 答える問い | 載せない |
|---|---|---|
| 道路から見える高い面 | ここで入れるのか | 営業時間の細目 |
| 出入口の面 | どちらから入るか | 会社の沿革 |
| 車線を分ける面 | 自分はどの列か | キャンペーンの案内 |
| 計量機・充電器の面 | 何をどう操作するか | 料金の内訳表 |
| 支払いの面 | どこで払うか | 注意事項の全文 |
削る量は、読める時間から決まります。
1秒に読めるのを2〜3文字と置く(目安)
3 × 2 = 6 / 3 × 3 = 9 → 6〜9文字
屋号と、業種を表す一語。 高い面は、この二つでほぼ埋まります。
文字の高さを割り算で出す
読ませたい距離が決まれば、高さは計算で求まります。
100m先(高い面) → 100,000 ÷ 500 = 200mm / ÷ 250 = 400mm → 20〜40cm
20m先(車線を分ける面) → 20,000 ÷ 500 = 40mm / ÷ 250 = 80mm → 4〜8cm
3m先(操作と支払いの面) → 3,000 ÷ 500 = 6mm / ÷ 250 = 12mm → 0.6〜1.2cm
この幅は、明るい場所で正面から見た値です。 書体、地の色との明暗差、雨や逆光で変わります。 夜間も営業する面は、大きいほうへ寄せてください。 照らし方そのものは看板を照らす照明で扱っています。
変わる表示を、板から切り離す
価格や規格は動きます。板ごと作り直す構造にすると、変わるたびに費用と時間がかかります。
屋号と業種は動きません。差し替え枠に入れると、枠の数だけ費用が増えます。
誰が、どの高さまで、何を使って替えるか。高い位置なら、地上から操作できる方式にします。
価格、規格、対応する車種。 この種の表示は、営業している間に必ず動きます。 板へ焼き付ければ、そのたびに板ごと作り直すことになります。 差し替えできる枠にしておけば、中身だけを替えられます。 画面で切り替える方式もあります。仕組みはデジタルサイネージにまとめました。
危険物と道路まわりの決まりを確かめる
この敷地では、屋外広告物とは別の手続きが重なります。
燃料や電気の設備を置く敷地には、設備そのものの決まりがあります。 看板の話を進める前に、設備側の届出を確かめてください。
| 敷地の用途と設備の届出 | 扱う燃料や設備で、必要な手続きが分かれる。 |
|---|---|
| 火気と静電気に関する表示 | 掲示する内容と場所が定められている場合がある。 |
| 高い面の高さと面積 | 屋外広告物としての上限が地域で異なる。 |
| 道路にかかる部分 | 歩道や路肩へのはみ出し、看板の脚の位置。 |
| 光る表示の扱い | 点滅や動く表示が制限される地域がある。 |
| 出入口の見通し | 看板が、歩行者や自転車の視界を塞いでいないか。 |
屋外広告物としての扱いは、土地によって違います。 県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域に分かれます。 高さと面積の上限、光る表示の可否は、地域ごとに定めが変わります。 要否と様式は、管轄の窓口へお尋ねください。
高い面は、隣の土地からも見える
高くするほど、遠くから読めます。 同時に、寝ている人の窓にも届きます。
住宅が近い側は、面の向きを振るか、明るさを落とします。 消灯の時刻を決めておくと、話し合いの材料になります。 近隣との関係の作り方は看板と近隣への配慮で扱っています。 許可そのものの流れは屋外広告物の許可にまとめました。
脚の太い看板を出入口の脇に置くと、歩道を来る自転車が隠れます。
寄る車と、歩道を進む人の視線が交わる位置に、面や脚を置かないでください。
※ 設備の届出、掲示する内容、高さと面積の上限は地域や設備により異なります。着工前に管轄の窓口へお確かめください。
掲出の年数で割り、必要な台数を出す
1台あたりの粗利が小さい業態なので、台数まで落とします。
費用が動くところを見る
| 面の高さ | 高いほど支柱と基礎が重くなり、工事の規模が変わる。 |
|---|---|
| 差し替えの方式 | 手で入れ替えるか、離れた場所から書き替えるかで大きく動く。 |
| 面の数 | 出入口と車線を分ける面は、レーンの数だけ増える。 |
| 光らせ方 | 内側から光らせるか、外から照らすかで工事の内容が変わる。 |
| 更新の頻度 | 年に何度替えるかを、最初に見積りへ入れておく。 |
| 撤去と原状回復 | 基礎を抜くか残すか。設備の更新時期と重なると差が出る。 |
支柱と基礎の作りは、後から変えられません。 構造の考え方は自立看板・ポールサインの立て方にあります。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
月あたりに直し、1日の台数まで落とす
一式の総額1,800,000円 ÷ 120か月 = 月15,000円
この1,800,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
次に、1台あたりの粗利で割ります。
15,000 ÷ 400 = 37.5 → 月38台
38 ÷ 30 = 1.26 → 1日1.3台
検算:1.3 × 30 = 39台 / 39 × 400 = 15,600円 → 月15,000円を上回る
看板を見て寄った車が、1日に1〜2台増えれば釣り合う計算になります。 5,000円も粗利率0.08も、仮の置き方です。 自分の平均単価と、直近の粗利率に差し替えて計算し直してください。
粗利率は、扱う商品で大きく動きます。 燃料と、洗車や整備では別の数字になります。 混ぜずに、寄ってほしい客が買うものの数字で計算してください。
通り過ぎた車を数えて、入れなかった原因から直す
寄らなかった車のほうが、寄った車より多くを教えてくれます。
手前で減速したのに入らなかった車を、時間帯を決めて数えます。紙とペンだけで始められます。
会計の待ち時間に一言たずねます。「高い看板」か「入口の表示」かで、直す面が分かれます。
実際の速度で近づき、6秒の間に読めるかを試します。同乗者に読ませると、はっきり出ます。
計量機や充電器の前で操作に迷った回数を、その日のうちに書き留めます。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は紙とペンで始められます。
見る時期を決める
| 1週間 | 入口で迷う車がいるかを見ます。並び方の乱れで分かります。 |
|---|---|
| 1か月 | 聞き取りをまとめ、気づかれている面がどれかを調べます。 |
| 3か月 | 時間帯ごとの台数を、前の3か月と並べます。 |
| 1年 | 色あせと汚れを見ます。掲出の許可の期限を確かめる時期でもあります。 |
台数は、天候と曜日で大きく揺れます。 連休、雨、近隣の工事で動きます。 3か月でひとまとめにすると、揺れがならされます。
効かないときは、この順で疑う
- 1判断地点から、自分の車で走り直す
費用はかかりません。読めない面と、隠れている面がここで判明します。
- 2面の前の枝と幟をどける
伸びた街路樹や、自分で立てた幟が下半分を隠していることがあります。
- 3高い面の文字を6〜9文字まで削る
既存の面を貼り替えるだけで済む場合があります。走行中に読めるのはこの範囲です。
- 4入口の面を、進行方向へ向け直す
角度が数度ずれるだけで、走ってくる車から見えなくなります。
- 5夜の明るさをそろえる
面の一部だけ暗いと、暗い側が読まれません。球の切れと汚れを先に見ます。
- 6判断地点を手前へ移し、面を一つ足す
直すより、気づく地点を早めるほうが効きます。作り直しは、この後です。
上のほうほど、費用をかけずに手を打てます。 1番から3番は、その日のうちに終わります。 面を作り直すのは、六つを試した後です。
よくある失敗5パターン
どれも、向きを変えるか、載せた文字を削ることで手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 高い面に情報を並べた | 走行中に何も読まれない | 屋号と業種の二語に削る。残りは敷地内の面へ移す |
| 変わる数字を板に直接入れた | 変えるたびに板ごと作り直す | 差し替えられる枠に切り替える。板はそのまま使う |
| 入口の面を建物と平行に付けた | 走ってくる車から見えない | 面の向きを進行方向へ振る。取り付け金具の交換で済む |
| 昼にだけ確認した | 暗くなると入口が分からない | 日没後に外周を走り、暗い面を書き出す |
| 差し替えの担当を決めなかった | 古い表示が残り続ける | 替える人と道具、替える周期を発注時に決める |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 前面道路の実際の速度を、路肩に立って確かめた
- 判断に必要な秒数から、距離を計算して地点を出した
- その地点に立ち、高い面が見えることを確かめた
- 高い面に載せる文字を6〜9文字に収めた
- 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
- 変わる表示と変わらない表示を、別の作りに分けた
- 差し替える人と道具、替える周期を決めた
- 出入口の面が、走ってくる方向を向いていることを確かめた
- 敷地内で操作に迷う場所へ、面を当てた
- 掲出の許可と、光る表示の扱いを窓口に確かめた
- 日没後に外周を走り、暗い面がないか見た
- 掲出の年数で費用を割り、1日あたりの台数に直した
よくある質問
給油所や充電スタンドの看板は、何から決めればいいですか?
高い看板には、どのくらいの文字を載せられますか?
価格や規格の表示は、どう作ればいいですか?
危険物を扱う敷地では、手続きが変わりますか?
効いているかは、いつ判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
走る車に選ばれる看板は、次の順序で決まります。
| 1 判断地点を決める | 前面道路の速度を測り、6秒分の距離を逆算して地図に打つ。 |
|---|---|
| 2 面を分ける | 高い面は6〜9文字。操作と支払いは、敷地内の面へ移す。 |
| 3 決まりを確かめる | 設備の届出と、高さ・面積・光る表示の扱いを窓口で聞く。 |
| 4 費用を割る | 掲出の年数で総額を割り、1台あたりの粗利で台数へ直す。 |
| 5 数えて直す | 通り過ぎた車を数え、向きと文字数から安い順に手を入れる。 |
看板を大きくする前に、気づく地点を手前へ移してください。 同じ面でも、100m手前から見えれば読まれます。