寺院・神社の看板の作り方
参拝者を迷わせない5ステップ
これから境内の表示を整える方へ。 境内の表示は、読み手ごとに面を分けると決めやすくなります。 初めて訪れる人と、毎年お参りに来る方では、必要な情報が違います。
境内で分かれる読み手の種類と、それぞれが探しているもの/ 変えない面と、季節で変える面の分け方/ 入口・駐車場・分岐・掲示板に載せるもの/ 更新の手間を、年あたりの時間に直す計算/ 文化財の指定があるときに確かめること/ 掲示の前で立ち止まる人の数え方/ 伝わらないときに疑う順序
境内の表示は、読み手の数だけ役割があります
境内の表示で多いのが、一枚にまとめたいというご要望です。 面が増えると景観が乱れる、という心配は当然のものです。 ただし、読み手が違う情報を1枚に載せると、どの読み手にも届きません。
初めて訪れた人は、入ってよいのかを知りたい。 車で来た人は、停める場所を探しています。 近隣の方が見るのは行事の日時です。 探しているものが違えば、置く場所も文字の大きさも変わります。
分けずに進めると、こうなります。 行事が変わるたび、面の全体を作り直す。 終わった掲示が残り、掲示板そのものが読まれなくなる。 注意書きが増え続け、どれも守られない。 壁に穴を開けてから、手続きが要ると分かる。
読み手を分け、面ごとの中身を決め、決まりを確かめ、費用と手間を出し、 立ち止まる人を数える。この五つを順に埋めます。
境内に来る人を、読み手で分ける
同じ場所に来ていても、探しているものが違います。
入口はどこか、入ってよいのか。この2つが分からず引き返します。
停める場所を探しています。門前で迷うと、近隣の道に停まります。
行事の日時と、音や交通の予定を知りたい相手です。
年間の予定と、連絡先を確かめに来ます。細かい情報が要ります。
当日の受付場所と時間だけを探しています。常設の面には要りません。
拝観できる時間と、してよいことの範囲を知りたい相手です。
六つのうち、面の数を決めるのは上の二つです。 初めて訪れる人と、車で来る人。この二つに答える面が要ります。
参道は歩く場所です。歩く速さは時速4kmほどで、4 ÷ 3.6 で秒1.1m。 20mの参道なら 20 ÷ 1.1 でおよそ18秒かかります。 読む時間は取れるので、文字数より置く位置が効きます。
門前の道を車で通る人には、18秒はありません。 道に向けた面には、名称と入口の位置だけを載せます。 由緒や行事は、境内に入ってから読ませる情報です。 道からの面と、境内の面は、別々に考えてください。
面を役割で分け、載せるものを決める
更新の周期が違うものは、同じ面に載せません。
| 面の役割 | 載せるもの | 変える周期 |
|---|---|---|
| 変えない面 | 寺号・社号、由緒、拝観の時間 | 数年から数十年 |
| 季節で変える面 | 年間の行事、月ごとの言葉 | 月に1回程度 |
| 臨時の面 | 当日の受付、工事、休止の知らせ | 都度 |
| 道からの案内 | 入口の位置、駐車場の方向 | 変えない |
分ける理由は、更新の周期にあります。 年に一度も変えない情報と、毎月変える情報を同じ板に載せると、毎月作り直すことになります。
場所ごとに、載せるものを1行で決める
| 入口の面 | 名称、入ってよい時間、拝観の可否 |
|---|---|
| 駐車場の面 | 停める場所、台数の目安、出入りの向き |
| 境内の分岐 | 本堂・拝殿・社務所・手水の方向 |
| 掲示板 | 行事の予定、連絡先、近隣へのお知らせ |
| 注意の面 | してほしくないことを、数を絞って書く |
入口の面に由緒を長く書くと、読む人がその場に留まります。 後ろの人がつかえるので、奥の面へ移してください。
文字の高さは、読ませる距離から出ます。 20m先なら4〜8cmが目安です。 出し方は看板の大きさの決め方にまとめています。
足すより、削って読ませる
- 1注意書きを5つまでに絞る
多いほど読まれません。守ってほしい順に並べ、下から落とします。
- 2由緒は入口に置かない
入口で読ませると、後ろがつかえます。本堂や拝殿の前へ移します。
- 3変える面と変えない面を分ける
一枚にまとめると、行事が変わるたび全体を作り直すことになります。
- 4掲示物の判を1つ小さくする
A判は1つ小さくすると面積が半分です。刷る手間と費用が下がります。
四つ目は、そのまま費用に効きます。 A判は1つ小さくすると面積がほぼ半分です。 A2の249,480平方mmに対し、A3は124,740平方mm。124,740 ÷ 249,480 でちょうど0.5になります。
手続きが要るかどうかを確かめる
境内は私有地ですが、それだけでは決まりません。
道から見える表示は、境内であっても屋外広告物の条例の対象になることがあります。
また、建物や工作物が文化財の指定を受けている場合、
壁に穴を開ける行為が現状変更の手続きに当たることがあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
※ 図面を確定する前に、管轄の窓口へご確認ください。
| 対象になるもの | 関わる決まり | 注意する点 |
|---|---|---|
| 道から見える表示 | 屋外広告物の条例 | 境内でも対象になることがある |
| 指定を受けた建物 | 文化財に関する手続き | 壁への穴あけが現状変更に当たる場合 |
| 景観の基準がある区域 | 景観に関する計画 | 色や大きさに基準が置かれる |
| 道路に出る案内 | 道路の占用 | 敷地の外に出す場合 |
| 境内で行う催し | 催しごとの届出 | 掲示の内容にも関わる |
指定を受けた建物では、穴を開けない取り付け方が選ばれることがあります。 置き型、自立、既存の柱を挟む形。先に相談すれば、選べる方法は残ります。
行事に合わせて短期間だけ出す掲出は、扱いが分かれます。 期間の決め方はイベント・催事の看板ガイドで扱っています。
費用と、更新の手間を見積もる
かかるのはお金だけではありません。
掲示は、貼り替える人がいて成り立ちます。 更新の手間を、先に時間の数字にしてください。
1回15分なら 15 × 12 = 180分 = 年3時間
週1回にすると 15 × 52 = 780分 = 年13時間
週1回にするなら、年13時間を誰が持つかを決めます。 持てないなら、月1回で組み直したほうが続きます。
年あたりの費用を、分けて見る
寺社の掲示は、売上で回収する性質のものではありません。 年あたりの額を割って、判断できる単位に直します。
具体例: 30,000 ÷ 6 = 5,000円
年あたりの費用 ÷ 365 = 30,000 ÷ 365 = 1日あたり約82円
1日82円と見ると、案内の紙を刷って配る手間と並べて比べられます。 30,000円と6回は、式の動きを見るための仮の置き方です。 金額の水準を示すものではありません。
費用が動くところ
| 面の数 | 入口、駐車場、分岐、掲示板。数だけ加工と取り付けが増えます。 |
|---|---|
| 取り付け方 | 壁に穴を開けるか、置くか、既存の柱を使うか。 |
| 素材と仕上げ | 木、金属、樹脂。境内の見え方と、持ちの両方で選びます。 |
| 更新のしくみ | 差し替えられる作りにするか、面ごと作り替えるか。 |
| 手続きの有無 | 指定や区域によっては、図面と申請の手間が加わります。 |
四行目を先に決めると、以降の出費が変わります。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
立ち止まる人を数えて、直す
読まれているかどうかは、見ていれば分かります。
15分を3回。時間帯を変えて数えます。ゼロなら位置か大きさの問題です。
入口、駐車場、本堂の方向。詰まった場所が、足りない面の位置です。
同じ質問が続くなら、その答えは面に載っていません。
前年と比べます。掲示を変えた年だけ、変えた内容を書き添えます。
四つとも、道具を買わずに今日から始められます。
一つ目が基本になります。 15分を3回、時間帯を変えて数えます。 誰も止まらないなら、内容ではなく位置か大きさの問題です。
判断のタイミング
| 掲出した当日 | 入口から歩いて、読む順に無理がないかを確かめます。 |
|---|---|
| 1か月 | 立ち止まる人を数えます。位置が合っているかが分かります。 |
| 最初の行事のあと | 受付の場所を聞かれた回数を控えます。 |
| 半年 | 季節で変える面が、実際に更新できているかを見ます。 |
| 1年 | 年間の行事を一巡した時点で、面の分け方を見直します。 |
半年の欄が要になります。 更新できていない面があれば、周期の設計が重すぎたということです。
伝わらないとき、この順で疑う
- 1掲示が古いままかを疑う
終わった行事が貼られていれば、次から読まれません。剥がすだけで直ります。
- 2立つ位置を疑う
面の前に人が立てるか。参道の流れをふさぐ位置だと、素通りされます。
- 3書いた量を疑う
注意書きが多いほど読まれません。減らすのに費用はかかりません。
- 4文字の大きさを疑う
掲示物なら刷り直しで済みます。20m先なら4〜8cmが目安です。
- 5面の位置を疑う
取り付け直しの費用がかかります。置き型なら動かすだけです。
- 6面を作り替えるかを疑う
手続きが絡むこともあります。上の五つが先です。
上から順に、かかる額が小さいものです。 1番から3番は、費用をかけずに終わります。 休止や変更のお知らせはお知らせの掲示の作り方にまとめています。
よくある失敗5パターン
どれも、発注の前に気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 一枚の面に全部を載せた | 行事が変わるたび全体を作り直す | 変えない面と変える面を分けて作る |
| 終わった行事の掲示を残した | 掲示板そのものが読まれなくなる | 剥がす担当と日を決める。費用は不要 |
| 注意書きを増やし続けた | 数が多く、どれも守られない | 5つまでに絞る。刷り直しで済む |
| 入口に由緒を長く書いた | 読む人が止まり、後ろがつかえる | 本堂や拝殿の前へ移す |
| 壁に穴を開けてから手続きを知った | 原状回復や届け直しが必要になる | 着手前に窓口へ確認する |
セルフチェックリスト
図面が出た段階で使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 読み手を4種類以上に分けて書き出した
- 変えない面と、季節で変える面を分けた
- 入口の面に、名称と入ってよい時間を書いた
- 車で来る人に、停める場所を示す面がある
- 注意書きを5つまでに絞った
- 由緒を、入口ではなく奥の面に置いた
- 掲示物を差し替えられる作りにした
- 更新にかかる時間を、年あたりの数字で見込んだ
- 掲示を剥がす担当と、その日を決めた
- 道から見える表示について、管轄の窓口に確かめた
- 建物に指定があるかを確認し、取り付け方を相談した
- 掲示の前で立ち止まる人を、実際に数えた
よくある質問
寺院や神社の看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさや掲示の判の目安はありますか?
手続きが必要になることはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでにある掲示板が読まれていないときは?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
境内の表示を整える作業は、次の順序で進みます。
| 1 読み手を分ける | 初めて来る人、車の人、近隣、檀信徒や氏子。探すものが違う。 |
|---|---|
| 2 面を分ける | 変えない面、季節で変える面、臨時の面。周期で分ける。 |
| 3 決まりを確かめる | 道から見える表示と、指定を受けた建物。窓口へ相談する。 |
| 4 費用と手間を出す | 更新の時間を年あたりで見込み、費用は1日あたりに直す。 |
| 5 数えて直す | 掲示の前で立ち止まる人を15分ずつ数える。 |
面を増やす前に、周期で分けてください。 分けた面は、貼り替えるだけで新しくなります。