看板の大きさの決め方
寸法を根拠から出す5ステップ
これから看板を作る方へ。大きさは、看板の話でいちばん後戻りしにくい決めごとです。 許可の要否も、費用も、支える強さも、読める距離も、寸法ひとつで同時に動きます。 壁面でも自立でも突出しでも、決め方の順番は同じです。
読ませる距離を現地で測る手順/ 通る速さから文字の高さを引く早見表/ 文字の高さと語の数から面の寸法を出す式/ 表示面積が寸法の2乗で増えること/ 大きさを止める5つの上限/ 面積を上げるときに要る客数の出し方/ 読まれないときに疑う順序
大きさは、面積で効いてきます
看板の相談で多いのが、どれくらいの大きさにすればよいか分からない、というものです。 小さすぎれば読まれず、大きすぎれば手続きと費用が跳ね上がります。 幅と高さをそれぞれ2倍にすると、面積は4倍になります。
面積が4倍になれば、材料の量も、風が押す力も、同じだけ増えます。
大きさを先に決めると、こうなります。壁の空きに合わせた寸法で、遠くから読めない。 文字を大きくした分、余白が消えて読み取りに時間がかかる。 図面が固まってから、表示面積で許可の区分が変わると分かる。 面だけ広げて、支える下地が足りない。
順番を逆にすれば、どれも避けられます。距離を決め、文字の高さを出し、面の寸法を計算する。 上限に当たっていないかを確かめ、費用を割り、掲げた後に測る。この五つを順に埋めます。
何センチにするかを業者に預けると、判断の材料が無いまま進みます。 読ませたい地点、通る速さ、載せる語の数。この三つは依頼する側にしか分かりません。 三つを数値で渡せば、寸法はそこから出せます。
読ませる距離と速さを決める
大きさの根拠は、看板の側ではなく、読む人の側にあります。
曲がる交差点、駐車場の入口、店の扉。そこを過ぎてから読まれても間に合いません。ここが区間の終点です。
終点から道を戻り、看板が視界に入る最初の場所を探します。街路樹や電柱で切れる場所も歩けば分かります。
歩く人、自転車、車。同じ道に混ざるなら、速いほうに合わせます。遅い相手は大きい文字でも読めます。
上りと下りで、見え始める場所は違います。両方から読ませるなら、遠いほうを採ってください。
通り過ぎながら読める時間は、一般的な目安で2〜4秒です。この記事は3秒を基準に置きます。
高い位置に付くほど面は台形につぶれ、読める大きさが下がります。
先に手を動かすのは上の二つです。 終点に立ち、道を戻りながら振り返る。看板の位置が視界から消える場所が始点です。 この始点から終点までの距離が、寸法のすべての出発点です。
速さから、読める区間を出す
歩く人なら、始点までの距離をそのまま測れば足ります。読む時間を長く取れるからです。 車の場合は、速さから逆算します。時速40kmは、40 ÷ 3.6 で秒速およそ11.1mです。 3秒読ませたいなら、11.1 × 3 でおよそ33m。その33m手前で、読み始められる必要があります。
| 通る速さ | 3秒で進む距離 | 必要な文字の高さ |
|---|---|---|
| 歩く(時速4km) | 約3.3m | 約1cm |
| 自転車(時速15km) | 約12.5m | 2.5〜5cm |
| 車(時速30km) | 25m | 5〜10cm |
| 車(時速40km) | 約33m | 約7〜13cm |
| 車(時速50km) | 約42m | 約8〜17cm |
| 車(時速60km) | 50m | 10〜20cm |
右の列が、次の手順で使う数値です。距離を250で割った値と、500で割った値の幅で示しています。 歩く人向けの1cmは計算上の下限で、実際には遠くの人にも届く大きさが要ります。
通り過ぎながら読める時間は、一般的な目安として2秒から4秒です。 信号で止まる場所では長くなり、交差点の手前では短くなります。 速さと秒数のどちらも、現地で数えれば自分の数値に置き換えられます。
文字の高さから面の寸法を出す
面の大きさを先に決めません。文字が決まれば、面は計算で出ます。
必要な文字の高さは、読ませたい距離の250分の1から500分の1です。 30m先から読ませるなら、30,000mm ÷ 500 で60mm、30,000mm ÷ 250 で120mm。6cmから12cmになります。 書体、背景との明暗差、照明の有無で変わるため、迷うときは大きいほうを採ってください。
面の高さ = 文字の高さ × 行数 + 行間 + 上下の余白
表示面積 = 面の幅 × 面の高さ
余白は文字の高さと同じだけ取ると収まります。行間は、文字の高さの半分が目安です。 文字を10cm、屋号を6文字1行と置きます。幅は 10 × 6 に左右の余白 10 × 2 を足して80cm。 高さは 10 に上下の余白 10 × 2 を足して30cm。面積は 0.8 × 0.3 で0.24㎡です。
面積は、寸法の2乗で増える
| 文字の高さ | 面の寸法(6文字1行) | 表示面積 |
|---|---|---|
| 5cm | 幅 40cm × 高さ 15cm | 0.06㎡ |
| 10cm | 幅 80cm × 高さ 30cm | 0.24㎡ |
| 15cm | 幅 120cm × 高さ 45cm | 0.54㎡ |
| 20cm | 幅 160cm × 高さ 60cm | 0.96㎡ |
文字を5cmから10cmへ倍にすると、面積は0.06㎡から0.24㎡へ。4倍です。 10cmから20cmでも、0.24㎡が0.96㎡になります。やはり4倍でした。 文字の高さを倍にする判断は、面積を4倍にする判断と同じです。
行を足したときも同じ見方をします。文字10cmのまま2行にすると、行間5cmが入って高さは45cm。 面積は 0.8 × 0.45 で0.36㎡です。0.24㎡の1.5倍になります。
面を広げずに文字を大きくする方法は一つだけです。載せる語を減らすことです。
遠くから読ませる段に置くのは、屋号と業種の2つまで。電話番号や品目は、近づいて読む段に回します。
※ 余白1倍・行間0.5倍・文字送り1倍は読みやすさのための置き方です。書体や字形で変わります。
出せる大きさの上限を確かめる
計算で出た寸法が、そのまま出せるとは限りません。止める側を先に見ます。
| 上限 | 何で決まるか | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 決まりの上限 | 表示面積と地上からの高さ | 図面の数値を持って窓口へ |
| 構造の上限 | 風を受ける面積と下地の強さ | 取付方法と下地を業者に確認 |
| 取付面の上限 | 壁の下地の範囲、庇の幅 | 実測した取付面の寸法 |
| 敷地の上限 | 敷地と建物の外へ出る部分 | 境界線と道路との位置関係 |
| 材料と搬入の上限 | 一枚で取れる板の寸法、通路の幅 | 継ぎ目の出る寸法と経路を確認 |
二行目が、寸法をいちばん強く縛ります。看板が風から受ける力は、受ける面積に比例します。 面積が2倍になれば、留め具と下地にかかる力も2倍です。 面を広げる相談は、取付方法の相談とセットにしてください。
五行目は、図面が通ってから出てくる問題です。 材料には一枚で取れる寸法の上限があり、超えると継ぎ目が入ります。 寸法を固める前に業者へ聞くと、手戻りが減ります。
面の数を数え、合計で見る
面が複数あるときは、1枚ずつとは別に、合計の面積も出します。 壁の面、袖の面、足元の面。それぞれは小さくても、足すと区分が動くことがあります。 面を1つに寄せれば、合計の数値は下がります。
屋外に掲げる広告には、地域ごとの決まりがかかります。
表示面積や地上からの高さによって、許可の要否や区分が変わる地域があります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
問い合わせるときは「大きめの看板」ではなく、幅と高さと面積の数値で聞くと話が早く進みます。
手続きの流れは屋外広告物の許可にまとめています。
※ 一般的な説明です。制度は変わることがあります。図面を確定する前に管轄窓口へご確認ください。
費用と回収する人数を計算する
面積を上げるかどうかは、増える金額を客数に直すと決まります。
| 表示面積 | 材料の量が面積で決まります。寸法を2倍にすれば面積は4倍です。 |
|---|---|
| 取り付ける高さ | 高い位置では作業車や足場が要ります。面積とは別に動く費目です。 |
| 下地の補強 | 面が大きいほど支える力が要ります。補強の有無で金額が動きます。 |
| 許可にかかる手間 | 区分が上がると、申請と更新の回数が増えることがあります。 |
二行目に注意します。取り付ける高さで動く費用は、面積を減らしても下がりません。 面を小さくしたのに金額が下がらない理由は、たいていここにあります。 費目ごとの内訳は看板の費用に種類別にまとめています。
大きさを一段上げるか決める
年のコスト ÷ 1人あたりの粗利 = 年に必要な人数
365 ÷ 年に必要な人数 = 何日に1人でトントンか
客単価を3,000円、粗利率を60%と置きます。3,000 × 0.6 で、1人あたりの粗利は1,800円です。
看板にかかる年のコストを90,000円とします。90,000 ÷ 1,800 で50。 年に50人の新しい方で釣り合う計算になります。 365 ÷ 50 は7.3。およそ7日に1人でトントン、という見え方です。
3,000円、60%、90,000円は、式の動きを見るための仮の置き方です。自分の数字に差し替えてください。
大きさを一段上げるかは、同じ式を差額だけで回して決めます。 増えた分の年のコストを、1人あたりの粗利で割る。出てきた人数が、その寸法で増やすべき客数です。
掲げた後に、大きさが合っていたかを測る
合っていたかは、決めた地点に立てば分かります。
区間の始点に立ち、声に出して読みます。読めない語があれば、その語の文字が足りていません。費用はかかりません。
歩く相手なら歩き、車なら同乗者に頼みます。止まって読める文字と、動いて読める文字は別です。
来店した方に、どのあたりで看板が目に入ったかを聞きます。地点が答えられれば、始点は足りています。
問い合わせや来店の数を、同じ曜日どうしで並べます。他を変えていない期間で比べます。
最初の測定は、掲げた当日に始点へ立つことです。
判断のタイミング
| 掲げた日 | 始点に立って読みます。読めなければ、手直しで済む段階です。 |
|---|---|
| 1週間 | 朝と夜の両方で確かめます。時間帯で読めなくなる面が見つかります。 |
| 1か月 | 気づいた場所の答えが集まり始めます。数はまだ少ない時期です。 |
| 3か月 | 来店や問い合わせの数を、前の期間と並べられます。 |
| 半年 | 季節と天気の偏りを除いて比べられます。枝の伸びも出ます。 |
1週間の欄を飛ばさないでください。昼に読めていた文字が、暗くなると消える面があります。 寸法が足りているのに読まれない状態は、ここで見分けられます。
読まれないとき、この順で疑う
- 1手前の遮りを疑う
枝、置き看板、のぼり、駐輪。始点に立てば、何が重なっているかは一目で分かります。
- 2背景との明暗差を疑う
文字と地の明るさが近いと、寸法が足りていても読めません。色を変えるだけなら寸法は動きません。
- 3載せた語の数を疑う
語を削ると、同じ面のまま一字を大きく取れます。面積を増やさずに文字を上げられる唯一の手です。
- 4向きと角度を疑う
進行方向に対して面が寝ていると、見える幅が縮みます。金物で振れる場合があります。
- 5夜の見え方を疑う
昼だけ読めているなら、寸法ではなく光の問題です。照らす方法は後から足せます。
- 6面を大きく作り替える
ここまでで動かないときに検討します。許可と下地の確認からやり直すため、最後に置いています。
上から順に、かかる額が小さいものが並びます。 1番から5番は、動かす、塗る、削る、振る、照らすで収まります。寸法を作り替える6番は最後です。
よくある失敗5パターン
どれも、図面に数値を書き込む段階で気づけば直せます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 壁の空きに合わせて寸法を決めた | 遠くからは文字がつぶれる | 読ませる距離から文字の高さを出し直し、語を削って収める |
| 文字を大きくして余白を詰めた | 面が窮屈になり読み取りが遅れる | 行を1本減らす。余白は文字の高さの半分以上を戻す |
| 表示面積を計算せずに発注した | 区分が変わり掲出の前で止まる | 図面の段階で幅×高さを出し、数値を持って窓口に確かめる |
| 面だけ広げて下地を見なかった | 風の日に揺れ、留め具が緩む | 面積を減らすか、下地の位置に合わせて面を分割する |
| 面ごとに別々で考えた | 合計の面積で区分に引っかかる | 面の数を減らして1面へ寄せる。合計の数値が下がる |
セルフチェックリスト
見積もりを頼む前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 看板を読ませ終わる地点を、現地で決めた
- 看板が見え始める地点まで戻って、距離を測った
- その区間を通る速さを、歩き・自転車・車から選んだ
- 読ませる語を数え、載せる上限を決めた
- 距離を250と500で割り、必要な文字の高さを出した
- 文字の高さと行数から、面の幅と高さを計算した
- 文字の周りに、文字の高さの半分以上の余白を取った
- 面の幅×高さで、表示面積を数値にした
- 面が複数あるとき、合計の面積も出した
- その面積で許可が要るかを、管轄の窓口に確かめた
- 取り付ける面の下地が持つかを、業者に確認した
- 掲げた後に始点から読めるか、確かめる予定を決めた
よくある質問
看板の大きさは、何から決めればいいですか?
文字の高さの目安を教えてください。
大きさで、許可の扱いは変わりますか?
大きくすると、費用はどれくらい増えますか?
すでにある看板が小さいと感じる場合は?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
看板の寸法は、次の順序で決めていきます。
| 1 距離を決める | 読ませ終わる地点から戻り、始点までを実際に測る。 |
|---|---|
| 2 寸法を出す | 距離を250と500で割り、文字から面の幅と高さを計算する。 |
| 3 上限を見る | 面積、下地、取付面、敷地、材料。止める側を先に当たる。 |
| 4 割り算する | 増える年のコストを粗利で割り、必要な客数に直す。 |
| 5 測る | 掲げた日に始点へ立ち、季節をまたいで並べて比べる。 |
大きくするか迷ったら、語を削るほうを先に試してください。 面積は寸法の2乗で増えますが、語を削るのに費用はかかりません。