葬儀社・斎場の看板の作り方
静かに導く5ステップ
事務所や式場の看板をこれから用意する方へ。 この看板を読む人は、三つに分かれます。 普段この道を通る地域の方。当日はじめて来る会葬の方。搬入と出棺の車両です。 求められるものが違うので、面を分けて考えます。
看板を読む三つの相手と、それぞれに割り当てる面/ 変わらない表示と、施行ごとに変わる表示の分け方/ 掛け替えの手間を、年あたりの時間に直す数え方/ 道から受付までの分岐に、表示を一枚ずつ置く考え方/ 読ませたい距離から、文字の高さと設置の高さを出す式/ 常設と掛け替えの費用を足し、必要な件数に直す式
平常時と施行時で、看板の役割が変わる
この業種の看板は、二つの時間を持ちます。 普段は名前を覚えてもらう面、施行の日は道を示す面になります。
一つの看板で両方を兼ねようとすると、どちらも中途半端になります。 起きやすいのは、次の四つです。 社名だけの面を建て、当日の式名を出す場所が残らない。 掛け替えの表示を毎回その場で作り、施行のたびに手間が増える。 敷地に入ってからの案内が足りず、会葬の方が駐車場と玄関の間で立ち止まる。 夜の光が強く、近隣から問い合わせが届く。
どれも、発注の前に手を打てば起きません。 面を割り当て、常設と掛け替えを分け、動線を文字にし、費用を直し、あとで数える。 この五つを順に埋めます。
三つの読み手を分けて、面を割り当てる
一枚で三人ぶんを兼ねません。読み手ごとに面を持たせます。
普段この道を通る人が見る面です。ここで覚えてもらえば、必要になったときに思い出してもらえます。社名と、業種を示す一語で足ります。
車も徒歩も、ここで曲がります。式の名前と進む方向を出す場所です。施行のたびに変わるので、掛け替えのできる作りにします。
玄関にたどり着いた方が次に探すのは受付です。矢印と短い語で足ります。屋内の表示も、同じ考え方で置きます。
霊柩車や搬入の車が、会葬の方と同じ道を通るとは限りません。入口を分けるなら、そこにも表示が要ります。停める位置まで示します。
読み手は三つです。見る場面も、探しているものも違います。
| 読み手 | いつ見るか | その面が伝えること |
|---|---|---|
| 地域の方 | 普段、通りがかりに | 社名と、何をする建物か |
| 会葬の方 | 当日、はじめて来る | 式の名前、入口、受付の方向 |
| 車両 | 搬入と出棺のとき | 進入口と、停める位置 |
三つを一枚に詰めると、当日いちばん探されている式の名前が小さくなります。 面を増やすのではなく、一枚あたりの内容を減らす方向で組みます。
車両の経路も、この段階で決めます。 徐行を時速20kmと置くと、秒速は 20 ÷ 3.6 で約5.6mです。 3秒読ませるなら、曲がる場所の 5.6 × 3 で約17m手前に表示が要ります。 敷地の中の組み立ては駐車場・入口の案内サインの作り方で扱っています。
常設と、掛け替えの表示を分ける
変わらないものと、施行ごとに変わるものを別の面にします。
載せる内容を、変わるかどうかで仕分けます。
| 表示する内容 | 変わるか | 置く面 |
|---|---|---|
| 社名 | 変わらない | 常設の面 |
| 何をする建物か | 変わらない | 常設の面 |
| 受付の方向 | 変わらない | 常設の小さな面 |
| 式の名前と会場名 | 施行ごとに変わる | 掛け替えの枠 |
仕分けができたら、掛け替えの作りを選びます。 差し替えの手間と、面の材質で決まります。
| 作り | 差し替えの動作 | 向く場合 |
|---|---|---|
| 掲示枠にはめる | 紙を入れ替える | 施行の件数が多いとき |
| マグネットで留める | 板を付け外す | 面が鉄でできているとき |
| レールに差し込む | 文字板を抜き差し | 表示が短い語のとき |
| 画面に映す | 手元で書き換える | 会場が複数あるとき |
掛け替えの手間を、年で数える
1回あたりの時間に、年の件数を掛けます。 年60件と置いて計算します。
1回3分の作り → 60 × 3 = 180分 / 180 ÷ 60 = 年3時間
15 − 3 = 年12時間の差
差し替えの作りを選ぶ段階で、年に12時間ぶんの差がつきます。 件数が増えるほど、この差は広がります。
外す手順も、同じときに決めます。 終わった掲示が残ると、次に来た方の目に前の式の名前が入ります。 片付けの手順に一行足せば防げます。
常設の面は、大きさ・高さ・出す位置によって届け出の対象になることがあります。
掛け替えの掲示も、内容と出し方によって扱いが変わります。
画面に映す形は、光の量や動きに条件が付く地域があります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域とがあります。
※ 要否と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。
当日はじめて来る人の動線を、文字にする
会葬の方は、時間に遅れられません。迷う時間をゼロに近づけます。
人が迷うのは分岐だけです。道から敷地へ、敷地から玄関へ、玄関から受付へ。この三か所に一枚ずつ置きます。
一枚で全部を説明しません。「駐車場はこちら」の先に、次の表示が見えていれば足ります。見えない区間には一枚足します。
会葬の方には高齢の方が多く含まれます。算出した文字の高さは、幅の大きいほうを採ります。細い書体は、離れると線が消えます。
一枚に入れるのは、方向を示す語と行き先の名前だけです。読点でつないだ文は、歩きながらでは読み切れません。
距離から、文字の高さを出す
面ごとに、読ませたい距離を測ります。 その距離を250と500で割ると、必要な高さの幅が出ます。
道路から常設の面を見る(20m)→ 20,000 ÷ 500 = 40mm / 20,000 ÷ 250 = 80mm → 4〜8cm
敷地の中で案内を見る(10m)→ 10,000 ÷ 500 = 20mm / 10,000 ÷ 250 = 40mm → 2〜4cm
進入路を車から見る(50m)→ 50,000 ÷ 500 = 100mm / 50,000 ÷ 250 = 200mm → 10〜20cm
高齢の方が読む前提なので、いずれも大きいほうの数字を採ります。 書体、地の色との明暗差、当日の天候によって、読める距離は変わります。
設置する高さを決める
歩く方が読む表示は、文字の中心を床から1.4m前後に置くのが目安です。 立ったときの目の高さに近い位置になります。
車いすの方や背の低い方も、同じ面を読みます。 文字が1.2mから1.6mの間に収まると、どちらの高さからも読めます。 作りの考え方はユニバーサルデザインの看板にまとめています。
明暗差は付け、彩度と光は抑える
読みやすさは、色の鮮やかさではなく明るさの差で決まります。 地を濃い色、文字を白か生成りにすると、彩度を上げずに読めます。
この業種では、派手さより静けさが求められます。 使う色は二色までに抑えます。 夜の光も同じで、必要な明るさだけを残します。
費用が動くところを押さえ、月あたりに直す
総額のままでは、他の支出と並べられません。
額が動くところは六つです。
| 常設の面の大きさと高さ | 道路から読ませる距離で決まります。高い位置に出すほど、支柱と基礎の工事が乗ります。 |
|---|---|
| 掛け替えの作り | 枠にはめるか、差し込むか、画面に映すか。差し替えを楽にするほど、初めの作りに費用が乗ります。 |
| 掛け替えの回数 | 外注するか、自分たちで差し替えるか。ここが年ごとの支出を決めます。 |
| 面の数 | 道路、敷地の入口、玄関、駐車場。分岐の数だけ表示が要ります。屋内の案内は別に数えます。 |
| 夜の見え方の作り方 | 内側から光らせるか、外から当てるか、光らせないか。電気の工事の有無で変わります。 |
三番目が、この業種に固有の項目です。 掛け替えは施行の数だけ発生し、年ごとの支出に直結します。 掲載社が公開している金額は看板の費用にまとめています。
常設と掛け替えを、同じ単位に直す
常設 総額600,000円 ÷ 120か月 = 月5,000円
掛け替え 1回3,000円 × 年60件 = 180,000円/年
180,000 ÷ 12 = 月15,000円
5,000 + 15,000 = 月20,000円
掛け替えのほうが、常設の3倍になりました。 600,000 ÷ 180,000 で約3.3、つまり3年半ほどで常設1基ぶんに並びます。
ここに置いた金額は相場ではありません。 割り算の動きを見るための、仮の置き方です。
何件で釣り合うかに直す
500,000 × 0.3 = 150,000
20,000 ÷ 150,000 = 約0.13件/月
0.13 × 12 = 年に約1.6件
1件あたり500,000円、粗利3割と置いた場合です。 年に2件が新しく届けば、看板にかけた費用と釣り合います。
1件が大きく件数が少ないので、年に直したほうが判断しやすくなります。 自分のところの額と粗利率に差し替えて、計算し直してください。
施行後に、迷った人の数で測る
数えるのは来場の人数ではありません。道に迷った方の数です。
「どこに停めますか」「受付はどちらですか」。同じ質問が繰り返されるなら、その手前の表示が足りていません。紙に正の字を書けば数えられます。
施行のたびに敷地へ人を立たせているなら、その時間が表示の不足ぶんです。時間が減れば、表示が代わりを務めています。
開式の直前に集中して着くなら、道のどこかで時間を使っています。門から式場までの表示を見直す合図です。
道を尋ねる問い合わせです。着信の記録から数えられます。件数が多いなら、外から見える面が足りていません。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は、受付に紙を一枚置くだけで始められます。
見る時期を決める
| 1週間 | 施行を1件終えた時点で、受付で聞かれたことを書き出します。 |
|---|---|
| 1か月 | 数件ぶんがそろいます。同じ質問が繰り返されているかを見ます。 |
| 3か月 | 誘導に出した時間を、表示を足す前と並べます。 |
| 1年 | 常設の面の色あせと、掛け替えの枠の傷みを見ます。 |
看板が働いていれば、会葬の方は誰にも尋ねずに受付へ着きます。 尋ねられた回数が減っていく形が、いちばん確かな手応えです。
足りないときは、この順で疑う
- 1当日の朝に、道から歩いてみる
費用はかかりません。会葬の方と同じ順に歩き、立ち止まった場所を書き出します。
- 2掲示の内容を減らす
一枚に語が多いほど、探す時間が延びます。方向と行き先だけに削ります。
- 3表示の位置を、分岐の手前へ動かす
曲がってから見えても間に合いません。曲がる前に見える位置へ移します。
- 4文字を大きくし、書体を太くする
読ませたい距離を測り、高さを出し直します。細い書体は遠くで線が消えます。
- 5明暗差を付け直す
地の色と文字の色が近いと沈みます。彩度は上げずに、明るさの差だけを広げます。
- 6面を足す
分岐が抜けているときだけです。工事が要るので、ここまで試してから考えます。
- 7作り直す
ここまでの六つで直らない場合に限ります。
上のほうほど、費用をかけずに直せます。 1番から3番までは、次の施行までに手を付けられます。 作り直しを最後に置くのは、その前の六つで直ることが多いからです。
施行の日は、短い時間に車が集まります。 進入路の表示が足りないと、路上で待つ列ができます。 列の出どころは、入口の分かりにくさであることが多いところです。 夜の光も、面の向きと明るさで抑えられます。 周囲との折り合いの付け方は、記事末の関連記事にまとめています。
よくある失敗5パターン
どれも、枠の後付けや紙の一枚で手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 常設の面に、式名を出す場所を作らなかった | 施行のたびに紙を貼ることになる | 常設の面の下に、掛け替えの枠を後から付ける |
| 掛け替えを毎回その場で作った | 施行のたびに手間と支出が積み上がる | 枠を用意し、中身だけを入れ替える形に変える |
| 敷地に入ってからの表示が無い | 駐車場と玄関の間で立ち止まる方が出る | 分岐に矢印を一枚ずつ足す。紙とスタンドから始められる |
| 文字を細く、小さくした | 高齢の方が近づかないと読めない | 距離から高さを出し直し、太い書体に替える |
| 終わった掲示を外し忘れた | 次に来た方の目に、前の式の名前が残る | 外す作業を、片付けの手順に一行足す |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 看板を読む人を、地域の方・会葬の方・車両の三つに分けて面を割り当てた
- 常設に載せる内容と、施行ごとに変わる内容を分けた
- 掛け替えの表示を、枠と中身に分ける作りにした
- 掛け替え1回にかかる時間を測り、年あたりに直した
- 終わった掲示を外す作業を、片付けの手順に入れた
- 道から敷地、敷地から玄関、玄関から受付の分岐に、表示を置いた
- 読ませたい距離を測り、そこから文字の高さを算出した
- 高齢の方を前提に、算出した幅の大きいほうを採った
- 屋外広告物としての扱いを、管轄の窓口に確かめた
- 常設と掛け替えの費用を、月あたりに直して足し合わせた
- 受付で聞かれた質問を、施行ごとに書き出す形を決めた
よくある質問
葬儀社の看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさは、どう決めますか?
施行ごとの表示は、どう作りますか?
許可や手続きは要りますか?
看板が働いているかは、どう判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
この業種の看板は、次の順序で決まります。
| 1 面を割り当てる | 地域の方、会葬の方、車両。三つに分けて置く面を決める。 |
|---|---|
| 2 常設と掛け替えを分ける | 変わらない内容と、施行ごとに変わる内容を別の面にする。 |
| 3 動線を文字にする | 分岐ごとに一枚。読ませたい距離から高さを出す。 |
| 4 費用を月あたりに直す | 常設は年数で割り、掛け替えは回数を掛けて足す。 |
| 5 迷った数で測る | 受付で尋ねられた回数と、誘導に出した時間を見る。 |
探している方に届き、来た方を迷わせない。この二つが揃えば足ります。 派手さを足す必要はありません。