農産物直売所の看板の作り方
車から見つけてもらう5ステップ
これから畑の脇や道路沿いで直売を始める方、いまの看板を作り替える方へ。 直売所の看板は、走っている車に読ませる看板です。 立ち止まって読む人を相手にした作りとは、決め方が変わります。
走る車が看板を読める時間の長さ/ 何メートル手前に面を出すかの出し方/ 読ませたい距離から文字の高さを出す式/ 走行中に読める内容の上限と、その順番/ 季節で中身を入れ替える差し替え式の組み方/ 敷地・道路・農地で変わる手続きの当たり/ 30分で測れる立ち寄り率と、直す順序
直売の看板は、中身が季節で入れ替わります
直売の看板には、店舗の看板にない事情がふたつあります。 読む相手が歩いていないこと。売るものが季節で入れ替わることです。
この二つは、看板の作り方そのものを変えます。 読める量は数秒ぶんに縮み、面を丸ごと作り直さない仕掛けが要ります。
そこを決めずに進めると、こうなります。 春の品目を秋まで掲げたままで、寄った車が空振りする。 入口の真横に立てたので、読んだときには通り過ぎている。 採れるものを全部書いて、走りながらでは一つも残らない。 立ててから、位置や大きさの直しが必要だと分かる。
手前の距離を決め、載せる内容を3つに絞り、差し替え式に組み、 場所と手続きと費用を確かめ、立ち寄り数を測る。この五つを順に埋めます。
通る車の速さと、手前の距離を決める
読ませる時間は、道の速さが決めます。
標識の制限速度を書き留めます。速いほど読める時間が短くなります。
読んだあとに止まって曲がれる道か。後続車が詰まるなら、手前を長く取ります。
上りと下りでは、見える面も曲がりやすさも違います。台数の多い側から作ります。
カーブ、街路樹、電柱。面を隠すものは現地でしか見えません。
時速を3.6で割れば、1秒に進む距離が出ます。
時速50km = 50 ÷ 3.6 = 秒13.9m → 3秒で 約42m
時速60km = 60 ÷ 3.6 = 秒16.7m → 3秒で 約50m
時速60kmなら、3秒で約50m流れていきます。 読み切れる量は、その3秒ぶんです。
手前の距離は、読む時間だけでは足りません。 読む2秒、曲がるかを決める2秒、減速する2秒。あわせて6秒を見込みます。
※ 6秒は「読む+決める+減速する」の置き方。道の形と交通量で前後します
100m手前の面と、入口の面。この2枚が最小の組み合わせです。 手前の面で気づかせ、入口の面で曲がる位置を確定させます。
文字の高さを、読ませたい距離から出す
文字の高さは、視認距離の1/250〜1/500が目安です。 単位をcmにそろえて割ります。
5,000 ÷ 250 = 20cm / 5,000 ÷ 500 = 10cm
100m = 10,000cm
10,000 ÷ 250 = 40cm / 10,000 ÷ 500 = 20cm
幅があるのは、書体と背景の色の差で見え方が動くためです。 面が土ぼこりで曇れば、下限では足りなくなります。 詰め方は看板の大きさの決め方にまとめています。
後続車が詰まる道、路肩の狭い道、対向車線側からしか入れない道。 気づいてもらっても、寄る場所がなければ通り過ぎます。 停める場所と出入りの向きは、面を増やすより先に整えます。
載せる内容を3つに絞る
何を売り、いつ開き、どこで曲がるか。それだけです。
運転席から読めるのは、短い語が3つまでです。 知りたいことは、たいてい次の6つに分かれます。
| 通る人が知りたいこと | 看板で示すこと |
|---|---|
| 何を売っているか | 今いちばん多い品を一語で |
| いつ開いているか | 曜日か時間帯。どちらか一方 |
| どこで曲がるか | 矢印と、あと何メートルか |
| 人がいるかどうか | 無人なら、その一言を添える |
| 値段の手がかり | 看板ではなく、店先の表示に回す |
| 支払いの方法 | 同じく店先。走行中には読めない |
下の3つは、走行中には読めません。 上の3つだけを面に載せ、残りは車を降りた人が読む場所へ回します。
載せる順番を決める
- 1売っているものを一語で置く
何が買えるか分からなければ、曲がる理由が生まれません。品目名を1つだけ置きます。
- 2開いている時間を1行で足す
曜日か時間帯のどちらか一方で足ります。両方書くと、行が2本になって読めません。
- 3曲がる場所を矢印と数字で示す
矢印だけでは、どこまで走るか分かりません。あと何メートルかを添えます。
- 44つ目は書かずに残す
走行中に読めるのはここまでです。残りは、車を降りた人が読む店先の面に回します。
品目は1つで足ります。 採れるものを並べると行が増え、どれも記憶に残りません。 量の多い品を選び、残りは店先の黒板に回します。
矢印には距離を添えてください。 矢印だけでは、どこまで走ればよいかが分かりません。 「この先50m」と数字を1つ置くだけで、通り過ぎが減ります。
季節で変わる部分を差し替え式にする
変わらない面と、替える面を分けておきます。
直売の看板が高くつくのは、季節ごとに作り直すからです。 分け方は単純で、1年を通して変わらないものを固定側に置きます。
| 分ける区分 | そこへ入れるもの |
|---|---|
| 固定する面 | 屋号、開いている曜日、矢印と距離 |
| 入れ替える面 | 今の品目、収穫の時期、休みの知らせ |
| 入れ替える区切り | 品目が切り替わる時期に合わせる |
| 入れ替える担当 | 誰が替えるかを、年の初めに決める |
作り直す範囲を、面の一部に閉じ込めるのが狙いです。 枠と支柱は据え置き、抜き差しする板だけを季節ぶん用意します。
枠と支柱を据え置き、板か布だけを抜き差しします。作り直す範囲が縮みます。
替える面が増えるほど、替え忘れが起きます。1枚なら確かめる場所も1か所です。
年や月を書き込まず品目だけ書いておくと、来年そのまま戻せます。
売り切れた品を掲げたままだと、寄った車が空振りします。次からは素通りです。
差し替える人と、区切りを決めておく
仕掛けを作っても、替える人が決まっていなければ止まります。 収穫と出荷が重なる時期ほど、看板は後回しになります。
品目が入れ替わる時期は、毎年ほぼ同じです。 年の初めにその区切りを書き出し、「面を替える」を1行足しておきます。
差し替えを軽くするために、布やターポリンを選ぶ場面があります。 田畑の脇はさえぎる物が少なく、はためく面は留め具の穴から傷みます。 留める点を増やすか、風を通す作りにすると持ちが変わります。 備え方は風・雪・塩害に耐える看板で扱っています。
出せる場所と手続き、費用の動き方を確かめる
立てる場所によって、当たる規定が変わります。
一般的に、屋外広告物の条例では大きさや位置が制限されることがあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
面が敷地の外へかかる場合は、道路の占用が関わることがあります。
農地へ恒久的な工作物を立てるときは、土地の用途の扱いも確かめる対象です。
借りた土地なら、期間と原状回復を書面で決めておきます。
※ 着工の前に、管轄の窓口へご確認ください。
| やろうとすること | 関わる規定 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 自分の敷地に立てる | 屋外広告物の条例 | 大きさや位置が制限される地域がある |
| 他人の土地を借りる | 土地の賃貸借 | 期間と原状回復を書面で決めておく |
| 敷地の外へはみ出す | 道路の占用 | 道路側にかかる部分が対象になる |
| 農地に立てる | 農地の用途の扱い | 恒久的な工作物かどうかで分かれる |
| のぼりを並べて出す | 本数や間隔の制限 | 地域によって扱いが変わる |
他人の土地を借りて出すなら、話の順序が変わります。 土地の交渉から始まる進め方は野立て看板の出し方、 申請の流れは屋外広告物の許可で扱っています。
月あたりの額を、必要な客数に直す
かけてよい額は、何人寄れば釣り合うかに直すと決めやすくなります。
月あたりのコストを9,000円、客単価を1,500円、粗利率を6割と置きます。 1,500 × 0.6 で900円。9,000 ÷ 900 で10人です。
30 ÷ 10 で3。 3日に1人、看板を見て寄ってくれれば釣り合う計算になります。
9,000円、1,500円、6割は、式の動きを見るための仮の置き方です。 金額の水準を示すものではありません。自分の数字に差し替えてお使いください。
費用が動くところを押さえる
| 面の大きさ | 読ませたい距離で決まります。遠くから読ませるほど大きくなります。 |
|---|---|
| 差し替えの仕組み | 抜き差しできる枠にすると、作るときの額は上がります。 |
| 地面の作り | 土か舗装かで、基礎の手間が変わります。 |
| 風への備え | 田畑の脇はさえぎる物が少なく、支柱や控えが増えます。 |
| 面の数 | 手前に出す面と、入口の面。数だけ積み上がります。 |
二行目を先に決めると、翌年から先の出方が変わります。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別に整理しました。
立ち寄り数を測って、直す
30分あれば、割合のかたちになります。
道の脇で、通った車と寄った車を数えます。天気と曜日も一緒に控えます。
無人で置くなら、減った品数と入った額を突き合わせます。差は運用に出ます。
手前の面か、入口の面か。答えが片寄るなら、効いていない側を直せます。
面を替えた日の前後で、立ち寄り台数を並べます。効果が数字で残ります。
四つとも、道具を買わずに今週から始められます。
立ち寄り率は、寄った台数を通った台数で割るだけです。 30分で通行120台、立ち寄り6台なら 6 ÷ 120 で0.05。5%です。
6 ÷ 120 = 0.05 → 5%
翌週 9 ÷ 120 = 0.075 → 約8%
曜日と天気で大きく動きます。 同じ曜日、同じ時間帯にそろえ、1回の数字ではなく前後の差を見ます。
無人で置くなら、もう1つ数字が取れます。 減った品数と、料金箱に入った額の突き合わせです。 合わない日が続くときは、無人店舗の看板で表示の書き方から見直してください。
いつ見直すかを決めておく
| 出した当日 | 運転席と同じ高さから見ます。写真を1枚残します。 |
|---|---|
| 1週間 | 同じ曜日・同じ時間帯で立ち寄り率を数えます。基準になります。 |
| 1か月 | 通る側から見直します。草や枝で隠れていないかを見ます。 |
| 季節の変わり目 | 面を差し替え、前の季節の数字と並べます。 |
| 1年 | 手前の距離と面の数を、このまま続けるか決めます。 |
速度を落としたのに寄らなかった車も、あわせて控えます。 減速が多く立ち寄りが少ないなら、原因は入口の側にあります。
立ち寄りが増えないとき、この順で疑う
- 1差し替え忘れを疑う
終わった品目が残っていないか。剥がすだけで直ります。
- 2面の汚れを疑う
土ぼこりと雨だれで、字は思ったより早く読めなくなります。拭けば戻ります。
- 3手前の草木を疑う
夏に伸びた枝や草が面を隠します。刈るだけで、見える距離が戻ります。
- 4文字の高さを疑う
読ませたい距離に対して小さくないか。割り算で確かめられます。
- 5手前の距離を疑う
曲がる場所に近すぎると、読んでも間に合いません。手前へ1枚足します。
- 6面の位置と大きさを疑う
立て直す費用がかかります。上の五つを試したあとで構いません。
上から順に、かかる額が小さいものです。 1番から3番までは、その日のうちに手を動かせます。
よくある失敗5パターン
どれも、立てる前に気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 旬の品目を1年中掲げた | 寄った人が空振りし、次から通り過ぎる | 終わった品目を外す。1枚抜くだけで済む |
| 入口の直前に立てた | 読んだときには、もう通り過ぎている | 手前に1枚足す。今ある面はそのまま使える |
| 売っている品を並べて書いた | 走行中に読み切れず、全部が残らない | 多い品を1つだけ残し、あとは店先へ回す |
| 面ごと作り替える形にした | 季節が変わるたびに作り直しが要る | 枠を残し、中身を抜き差しする形へ改める |
| 立てる前に窓口へ確かめなかった | 位置や大きさの直しが、後から必要になる | 着工の前に管轄の窓口へ相談する |
セルフチェックリスト
図案が出た段階で使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 通る車の速さを、標識の数字で確かめた
- 読んだあとに減速して曲がれる道かを、現地で見た
- 主に狙う進行方向を1つ決めた
- 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
- 看板に載せた要素が3つ以内に収まっている
- 何を売っているかが、一語で読み取れる
- 開いている曜日か時間帯の、どちらか一方を書いた
- 曲がる場所までの距離を、数字で示した
- 固定する面と、入れ替える面を分けてある
- 差し替える担当と、替える区切りを決めた
- 立てる場所の手続きを、管轄の窓口に確かめた
- 30分の通行台数と立ち寄り台数を、一度は数えた
よくある質問
直売所の看板は、何から決めればいいですか?
文字の高さに目安はありますか?
立てる前に確かめる手続きはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに出している看板の反応が薄いときは?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
畑の脇に出す看板は、次の順序で固まります。
| 1 手前の距離を決める | 時速を3.6で割り、6秒ぶん手前へ。文字は距離の1/250〜1/500。 |
|---|---|
| 2 内容を3つに絞る | 品目ひとつ、開く時間ひとつ、矢印と数字。4つ目は書かない。 |
| 3 差し替え式に組む | 枠と支柱は据え置き。季節で動く板だけを抜き差しする。 |
| 4 場所と費用を確かめる | 敷地の内外と土地の種類を窓口へ。額は必要な客数に直す。 |
| 5 立ち寄りを測る | 30分の通行と立ち寄りを数え、同じ条件でそろえて並べる。 |
面を増やす前に、いま掲げている品目が今日のものかを見てください。 季節に追いついていない面は、増やした1枚より早く数字を下げます。