風・雪・塩害に耐える看板の決め方
条件を伝える5ステップ
これから看板を作る方、作り替えを考えている方へ。 天気に強い看板は、発注の紙の上で決まります。 風と雪、潮と凍結。条件を先に渡せば、仕様はそれに合わせて組めます。
その土地の風と雪の前提を、どこで教えてもらえるか/ 風の力が速さの2乗で増える計算/ 面を削ると、受ける力がどれだけ減るか/ 潮・凍結・積雪で、変える場所がどう違うか/ 荒天の前に外す段取り/ 止まる日数から、かけてよい額を出す式/ 荒天のあとに見る場所と、疑う順序
天気に合わせるのは、発注の段階でできます
看板の相談で多いのが、丈夫な作りにしたいというご要望です。 丈夫さは、材料の厚みだけで決まりません。 同じ看板でも、置く場所と向きで受ける力は変わります。
風は面を押し、雪は上に乗ります。 潮を含む空気は金具を痩せさせ、凍った水は継ぎ目を押し広げます。 効く場所が違うので、対策も別々になります。
条件を渡さずに発注すると、こうなります。 面の大きさを先に決め、支える側が太くなる。 海に近いのに、内陸と同じ金具が付く。 水の抜け道がなく、冬に継ぎ目が開く。 置き看板を出したまま荒天を迎える。
敷地の条件を調べ、力を見積もり、仕様を選び、決まりと費用を確かめ、 荒天のあとに見て直す。この五つを順に埋めます。
敷地の条件を調べて書き出す
多くは、聞けば答えのある項目です。
建物の設計に使う値が地域ごとにあります。設計者か窓口で聞けます。
見込む積雪にも地域ごとの定めがあります。屋外の面には上から乗ります。
潮を含む空気が届くかで金具が変わります。窓に白い跡が残るなら届いています。
残った水は凍って内側から押し広げます。氷点下の日があるかを見ます。
建物のすき間や角では風が速くなります。置く場所で力が変わります。
屋根の雪、樋からの水、枝。真上に何があるかを見上げます。
六つのうち、上の二つは自分で測らずに済みます。 その値は、設計者か管轄の窓口で確かめられます。
建物や工作物の設計では、見込む風の強さと積雪量を地域ごとの定めから拾います。 土地によって値が違うため、この記事では具体的な数値を載せていません。 「うちの土地の前提はいくつですか」と聞けば、話はそこから具体的になります。
敷地の中で、風が速くなる場所を見る
地域の前提が同じでも、敷地の中では差が出ます。 建物どうしのすき間、角、通り抜けの通路。風が絞られて速くなります。
風の強い日に敷地を歩いてください。 落ち葉や紙が舞い上がる地点が、速い場所です。外せるなら外します。
| 調べる項目 | 聞く先 | 手がかり |
|---|---|---|
| 風と雪の前提の値 | 設計者・施工者 | 確認申請で使った値 |
| 屋外広告物の制限 | 管轄の窓口 | 大きさと場所で分かれる |
| 敷地の風の通り道 | 自分の目 | 風の日に紙が舞う場所 |
| 潮が届くかどうか | 自分の目 | 手すりや金具の錆び方 |
| 冬の凍結 | 過去の記録 | 氷が張った日があるか |
この表を埋めた紙が、発注のときに渡す資料になります。
風と雪が加える力を見積もる
余裕を見る意味は、かけ算ひとつで分かります。
風が面を押す力は、速さの2乗に比例します。 速さが2倍なら、力は 2 × 2 で4倍。3倍なら 3 × 3 で9倍です。 速さが少し増えただけで、力は大きく跳ねます。
| 風の速さ | 計算 | 面が受ける力 |
|---|---|---|
| 1.2倍 | 1.2 × 1.2 = 1.44 | 約1.4倍 |
| 1.4倍 | 1.4 × 1.4 = 1.96 | 約2倍 |
| 2倍 | 2 × 2 = 4 | 4倍 |
| 3倍 | 3 × 3 = 9 | 9倍 |
見てほしいのは一番上の行です。 速さが2割増えるだけで、力は約1.4倍。 予報より少し強く吹いた、という程度の差でこうなります。
雪の重さは、積もった深さにほぼ比例します。深さが2倍なら重さも2倍。 風のような2乗では増えません。 ただし、同じ深さでも含む水の量で重さが変わります。
面を小さくすると、力はそのぶん減る
受ける力は、風を受ける面の広さに比例します。2乗ではなく、そのままの比です。 幅2.0m、高さ1.0mの面なら 2.0平方メートル。 高さを0.8mへ削れば 2.0 × 0.8 で1.6平方メートルです。
いっぽう風速が1.2倍なら 1.2 × 1.2 = 力は1.44倍
0.8 × 1.44 = 1.152 → 削っても、元より約15%増える
削るだけでは足りない、という結論になります。 削ることと、余裕を持たせること。両方を並べて頼みます。
実際の設計では、形や高さによる係数が加わります。 最終的な寸法は、条件を渡して業者に出してもらってください。
載せる要素を2つまでに絞れば、それ以上の広さは要りません。 すき間や格子で風を逃がす手もあります。
条件に合う仕様を選び分ける
潮、凍結、積雪。それぞれ別の指定が要ります。
傷める場所が、それぞれ違います。 ひとまとめに「丈夫に」と頼むと、必要な指定が抜けます。
| 敷地の条件 | 変える場所 | 起きること |
|---|---|---|
| 潮を含む空気が届く | 締結部の材質 | ボルトとワイヤーから傷む |
| 冬に氷点下を下回る | 水の抜け道 | 溜まった水が凍ってふくらむ |
| 雪が積もる | 置く位置と支え方 | 落ちる雪が上に乗る |
| 風が抜けにくい角にある | 面の広さと形 | 受ける力が場所で変わる |
| 前を人や車が通る | 外せる形かどうか | 当たった先の話になる |
面が残っても、支えるボルトが痩せれば動きます。
直径10mmの部材がまわりから1mmずつ減ると、直径は8mmです。
断面の面積は 8 × 8 ÷ (10 × 10) で0.64。約36%が失われます。
面の材質より先に、締結部の材質を指定してください。
※ 減り方は材質と環境で変わります。年数は書けません。
凍る土地で見るのは、材質ではなく水の行き先です。 水は凍ると体積がおよそ1割ふくらみ、逃げ場のない水は継ぎ目を押し広げます。 どこから水が抜けるかを、図面の上で指させるようにします。
雪が積もる土地では、位置の話が先に来ます。 屋根や庇から落ちる雪は、一度にまとまって来ます。 真上に経路がないかを見上げます。
荒天の前に外せる形にしておく
外してしまえば、その面は力を受けません。 持ち運べるものが対象です。しまう運用を決めるだけで済みます。
- 1外すものを決めておく
のぼり、置き看板、旗。しまう場所と担当を紙に書きます。
- 2外す合図を決めておく
注意報が出た時点、予報が出た前日など。迷わない線を引きます。
- 3外せる形で発注しておく
差し込むだけ、ボルト2本で外れる。あとから足すより安く済みます。
- 4戻すときに見る手順を決めておく
出すときに留め具の欠けを確かめます。点検を兼ねられます。
外した看板は誰にも当たりません。これが、外す運用のいちばんの理由です。 当たった場合は、誰が責任を負うかという話に移ります。 扱いは看板の落下に備えるガイドにまとめました。
決まりを確かめ、かけてよい額を出す
止まる日数に直すと、判断できる数字になります。
屋外に出す看板には、地域ごとの条例で制限がかかります。
一定の大きさや高さを超えると、届出が要ることがあります。
定期的な点検と、結果の報告を求められる場合もあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
※ 図面を確定する前に、管轄の窓口へご確認ください。
点検が求められるなら、その手間と費用も持ち続けるコストです。 自分で見る範囲と業者に頼む範囲は、 看板の点検ガイドにまとめています。
止まる日数を、年あたりの額に直す
補強にいくらまでかけてよいか。壊れて何日止まるかから逆算できます。
失う額 ÷ 年あたりにかける額 = 何年分に相当するか
1日あたりの粗利を30,000円、止まる日数を4日と置きます。 30,000 × 4 で120,000円。これが一度で失う額です。
補強と見回りに年20,000円かけるとします。 120,000 ÷ 20,000 で6。 6年に一度の停止を防げれば釣り合う、という見え方になります。
30,000円、20,000円、4日は、式の動きを見るための仮の置き方です。 金額の水準を示すものではありません。自分の店の数字に差し替えてください。
止まる日数には、部材が届くまでの待ちも入ります。
費用が動くところ
| 面の広さ | 広いほど力を受け、支える部材も太くなります。 |
|---|---|
| 取り付ける高さ | 高いほど風は速くなり、足場も金額に乗ります。 |
| 金具の材質 | 潮が届く場所では、締結部の材質を変えます。 |
| 水を逃がす作り | 抜き穴、水切り、継ぎ目の向き。加工の手間が増えます。 |
| 外せる仕組み | 脱着式は初期の額が上がり、荒天のたびの手間が減ります。 |
一行目は削れば下がります。以降は、条件で決まる部分です。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
荒天のあとに見て、直す
壊れたかどうかではなく、動いたかどうかを見ます。
同じ位置から撮れば、傾きの変化が分かります。数分で済みます。
ボルトと受け側に線を引きます。ずれていれば、ゆるみです。
溜まったままなら抜け道が詰まっています。割れの起点になります。
潮や結露の跡が集まる所は、傷みが先に出ます。次に見る目印です。
どれも、道具を買わずに今日から始められます。
大きな傷みは、いきなり現れません。 わずかな傾き、ゆるみ、水の残り。前触れが先に出ます。 比べる相手がないと気づけません。
判断のタイミング
| 発注の前 | 条件を紙に書いて渡します。一番安く直せる時点です。 |
|---|---|
| 取り付けた直後 | 留め具に印を引き、写真を1枚残します。比べる基準です。 |
| 荒天の翌日 | 見上げて撮り、前の写真と並べて傾きを探します。 |
| ひと冬・ひと台風期のあと | 水の残りと錆の出方を見ます。季節が一巡した時点です。 |
| 数年 | 締結部の減りを見て、部品を替えるかを決めます。 |
荒天のたびに業者を呼ぶ必要はありません。 写真と印に異変が出たときだけ連絡します。
持ちこたえないとき、この順で疑う
- 1外すものを外していたかを疑う
置き看板とのぼりが出たままなら、そこから直します。費用は不要です。
- 2留め具の締まりを疑う
印のずれを見て締め直します。部材を替えずに済みます。
- 3水の抜け道の詰まりを疑う
落ち葉や砂で塞がると水が残ります。掃除で戻ることが多い所です。
- 4面の広さを疑う
高さを2割落とすだけで、受ける力は2割減ります。
- 5金具の材質を疑う
傷んだ締結部だけを替えます。面はそのまま残せます。
- 6支える側の作りを疑う
柱や下地まで戻ると費用が跳ねます。上の五つが先です。
上から順に、かかる額が小さいものです。 1番から3番は、運用と手入れだけで終わります。 6番へ進むのは、説明がつかなかったときです。
よくある失敗5パターン
どれも、発注の前に気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 面の大きさから先に決めた | 支える側が太くなり金額が動く | 図面の前に、場所の条件を1枚渡す |
| 置き看板を出したまま荒天を迎えた | 飛んで、当たった先の話になる | 外す担当としまう場所を決める |
| 潮が届く場所に一般の金具を使った | 締結部が先に痩せて面が動く | 傷んだ金具だけを交換。面は残せる |
| 水が抜けない形で仕上げた | 溜まった水が凍り継ぎ目が開く | 抜き穴を足して逃がす。作り替えは不要 |
| 屋根から雪が落ちる真下に置いた | 上からの荷重で支えが曲がる | 横へずらす。動かせないなら受けを設ける |
セルフチェックリスト
見積もりが出た段階で使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 風と雪の前提の値を、設計者か管轄の窓口に聞いた
- 敷地のどこで風が速くなるかを、風の日に確かめた
- 看板の真上に何があるかを、見上げて確認した
- 窓や手すりに潮の跡が残るかどうかを見た
- 冬に氷点下を下回る日があるかを確かめた
- 面の広さを数字で出し、削れる部分を検討した
- 風速が2割強まると力が約1.4倍になると業者と確認した
- 溜まった水がどこから抜けるかを、図面で指させる
- 潮が届くなら、締結部の材質を指定した
- のぼりと置き看板を外す担当・場所・合図を決めた
- 届出や点検が要る大きさかを、管轄の窓口に確かめた
- 止まる日数と1日の粗利から、かけてよい額を出した
よくある質問
気象に強い看板は、何から決めればいいですか?
どれくらい余裕を見ればいいですか?
届出や点検の決まりはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに設置してある看板が心配なときは?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
土地の天気に合わせる作業は、次の順序で進みます。
| 1 敷地を調べる | 風と雪の前提、潮、凍結、真上のもの。6項目を紙に書く。 |
|---|---|
| 2 力を見積もる | 風は速さの2乗、雪は深さに比例。面の広さは比例で効く。 |
| 3 仕様を選ぶ | 締結部の材質、水の抜け道、置く位置、外せる形。 |
| 4 決まりと費用を確かめる | 届出と点検の扱いを窓口へ。止まる日数から額を出す。 |
| 5 荒天のあとに見る | 写真と印を比べ、動いていないかを確かめる。 |
渡す条件が具体的なほど、返ってくる仕様も具体的になります。 丈夫に、ではなく、この土地はこうです、と伝えてください。