弁当店・惣菜店の看板の作り方
今日の中身で選ばれる5ステップ
これから弁当店や惣菜店の看板を決める方へ。 買う人が選んでいるのは、店ではなく今日の中身です。 店の名前を覚えてから来る人は多くありません。 前を通ったときに、何があるかが読める面が要ります。
稼ぎ頭の時間帯を選び、載せる語の数を決める手順/ 毎日替える面と、5年動かさない面の分け方/ 1年に何回替えるかを数え、道具を選ぶ考え方/ 読ませたい距離から文字の高さを出す早見表/ 掲出と食品の表示で、確かめる窓口が分かれること/ 月に何人拾えば釣り合うかを出す式/ 店頭の反応を記録して、安く直せる順に手を入れる方法
店を選ぶのではなく、今日の中身を選んでいる
持ち帰りの店は、来る人の頭に献立があります。 探しているのは店ではなく、今夜の一品です。 だから看板が答えるのは、今日そこで何が買えるかになります。 店の名前は、二度目からの目印にしかなりません。
つまずきやすいのは、次の四つです。 店名だけが大きく、何を売る店か分からない。 品目を印刷して固定し、中身が変わっても直せない。 売り切れた品が、表示に残ったままになっている。 のぼりが店の正面にしかなく、歩いてくる人の視界に入らない。
どれも、面を増やしても解けません。 時間帯を選び、替える面と替えない面を分ける。 表示の確かめ先を押さえ、費用を人数に換算し、店頭の反応を数える。 この五つを順に埋めます。
なお、席で食べてもらう業態は、外に出す情報の順番が変わります。 席がある店の決め方は飲食店の看板の作り方にまとめました。 このページは、持ち帰りを前提にした店頭の面に絞ります。
売る時間帯と、出す面を決める
昼と夕方では、前を通る人も、読める字数も違います。
昼か、夕方か。買う人の急ぎ方が違います。急いでいる人ほど、読める字数が減ります。
働く人、帰り道の人、近所の人。歩く速さも、財布の開き方も違います。
品目か、できたてか、待ち時間か。三つ並べると、どれも読まれません。
無い物を出したままにすると、次に来なくなります。消せる作りが要ります。
三つ目の「決め手になる一語」で、面の性格が決まります。 品目を出すのか、できたてを出すのか、待ち時間を出すのか。 三つ並べた面は、どれも読まれません。 ひとつ選び、残りは店内の小さな面へ回します。
時間帯についても、ひとつ選びます。 昼に売る店は、歩く速さが上がります。 夕方に売る店は、その日の献立が決まっていない人が多くなります。 どちらを取るかで、書く語が変わります。
こだわりの産地も、調理の工程も、立ち止まらなければ読めません。 読ませたいなら、包みの上か、店内の面に移してください。 店頭の面が引き受けるのは、足を止めさせるところまでです。
毎日替える面と、替えない面を分ける
この業種でいちばん効くのは、替えやすさです。回数から先に数えます。
1日に何回、面を替えるかを数えます。 朝、昼、夕方の3回、年に300日開けると置きます。
年に900回さわる面を、看板屋を呼ぶ作りにはできません。 店の人が数分で替えられることが、先に決まります。 3回も300日も仮の置き方です。自分の店の回数に置き換えてください。
回数が出たら、項目を仕分けます。軸は1つ、日によって変わるかどうかです。
| 項目 | 替える頻度 | 理由 |
|---|---|---|
| 店の種別 | 替えない | 弁当か、惣菜か、両方か。1年を通して動かない。 |
| 営業する時間 | 替えない | 毎日同じなら、恒久の面に固定できる。 |
| 今日の品目 | 毎日替える | 朝と昼で中身が変わる。手で書き替える面に。 |
| 売り切れの表示 | 毎日替える | 出しっぱなしにすると、表示ぜんぶが信じられなくなる。 |
| 予約や取り置きの受け方 | 条件つき | 受けている店だけ。受けないなら書かない。 |
読ませたい距離から、文字の高さを出す
距離が決まると、文字の高さが出ます。目安は視認距離の1/250〜1/500です。
| 読ませたい距離 | 文字の高さの目安 | その距離で伝わること |
|---|---|---|
| 3m(店頭で品を選ぶ) | 0.6〜1.2cm | 品目と、いくらかが読める |
| 8m(歩道の先) | 1.6〜3.2cm | 今日の品目が読める |
| 15m(道の向かい) | 3〜6cm | 弁当・惣菜の店だと分かる |
| 30m(車の中から) | 6〜12cm | 店があること、開いていること |
手で書き替える面は、字が小さくなりがちです。 枠を作るときに、1行に入る文字数を決めておいてください。 寸法を根拠から出す手順は看板の大きさの決め方が扱っています。
置く位置も同時に決めます。 書き替える面は、立った人の目の高さに置きます。 庇から吊ると、近づくほど見上げる位置になります。
掲出と表示のきまりを確かめる
この業種は、確かめる窓口が二系統に分かれます。
看板を出すことと、食品の中身を表示することは、別のきまりです。 看板屋に頼めるのは、前者だけです。 品名や原材料の書き方は、商品側の表示として扱われます。
| 建物に付ける面 | 大きさと位置で、屋外広告物の手続きが要る場合がある。 |
|---|---|
| 歩道に出すのぼりや置き看板 | 道路に出る部分は、道路を管理する窓口の扱いになる。 |
| 品名と値段の書き方 | 食品の表示は所管が別。管轄の窓口で確かめる。 |
| 原材料やアレルギーの表示 | 看板の面ではなく、商品側の表示のきまりに入る。 |
| 借りている建物の壁面 | 貸主の承諾が要る。契約書に定めがある場合も。 |
のぼりや置き看板が道路に出ていると、扱いが変わります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
建物を借りている場合は、壁に付ける面について貸主の許可も要ります。
※ 必要な手続き、出せる大きさ、更新の時期は地域によって異なります。出す前に管轄の窓口へお確かめください。
調べる順番と、更新の管理の仕方は屋外広告物の許可ガイドに整理しました。 のぼりを毎日出し入れする店は、のぼり・置き看板の使い方もご覧ください。
費用と回収ラインを計算する
拾うのは、素通りしていた人です。人数に直して比べます。
費用が動くところを見る
| 出す面の数 | 壁、袖、のぼり、店頭の台。面の数だけ製作と取り付けが積み上がる。 |
|---|---|
| 書き替えの道具 | 黒板、差し込み式の枠、印刷したシート。1回の手間で選ぶ。 |
| 屋根や庇があるか | 雨に濡れる面は、素材と留め方が変わる。 |
| 夜まで売るか | 灯りを当てるか、光る面にするか。電気の引き込みが要る場合も。 |
| 替える回数 | 1日に何度替えるかで、道具の選び方が決まる。 |
2行目と5行目は対です。 替える回数が多いほど、道具の選び方が効いてきます。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
月あたりに直して、人数に換算する
動かさない面と、毎日替える面を分けて直します。
60,000 ÷ 60 = 1,000円/月
毎日替える面:仮に年24,000円かかる
24,000 ÷ 12 = 2,000円/月
合わせて 1,000 + 2,000 = 3,000円/月
60,000円も24,000円も、相場ではありません。 割り算の動きを見るための、仮の数字です。
次に、この面が拾う買い物の粗利で割ります。
750 × 0.4 = 300円
3,000 ÷ 300 = 10人/月
素通りしていた人を、月に10人拾えば釣り合います。 日数に直すと、30 ÷ 10 = 3。3日に1人です。
750円も0.4も、仮の置き方です。 自分の客単価と粗利率に差し替えて、計算し直してください。
店頭の反応を記録して直す
数えるのは売上ではありません。止まった人と、聞かれた回数です。
レジから見える範囲で足ります。止まったのに買わない人が、いちばん近い客です。
聞かれるのは、表示が読まれていない印です。減れば面が働いています。
レジの記録から拾えます。狙った時間帯だけを並べると、差が見えます。
早すぎるなら、看板ではなく仕込みの問題です。原因の切り分けに使えます。
上にあるものほど、手間がかかりません。 1番目と2番目は今日から始められます。紙とペンだけで足ります。
「今日は何がありますか」と聞かれる回数は、面の読まれ方をそのまま映します。 減っていれば、表示が働いています。 減らないなら、字の大きさか、置いた高さを疑います。
昼前に売り切れる日が続くなら、面を直しても売上は増えません。 売り切れた時刻を毎日1行書いておくと、看板の問題と仕込みの問題を切り分けられます。 記録が無いと、どちらに手を入れるか決められません。
見る時期を決める
| 1週間 | 聞かれた回数だけを見ます。出す前の1週間と並べます。 |
|---|---|
| 1か月 | 足を止めた人の数を見ます。増えないなら、面の位置を疑います。 |
| 3か月 | 狙った時間帯の売れた数を見ます。回収の計算と並べます。 |
| 半年 | 載せている語を並べ直します。足すより、減らすほうが先です。 |
持ち帰りの店は、天気と曜日で数字が大きく動きます。 同じ曜日どうしで並べてください。 1週間の数字で、面の良し悪しを決めないでください。
反応が薄いときは、この順で試す
- 1今日の品目を、店の名前より大きく書く
買う人は店を選ぶ前に、中身を選んでいます。字の大きさを入れ替えます。
- 2書き替える面を、目の高さへ下ろす
庇の下に吊ると、近づくほど見上げる位置になります。
- 3売り切れた品を、その場で消す
線を引くだけで足ります。残ったままの表示が、次の来店を減らします。
- 4のぼりを、人の流れが来る側へ移す
店の正面より、上流の角に近いほうが早く目に入ります。
- 5載せている語を、3つまで減らす
急いでいる人が読める量は限られます。減らせば残りを大きくできます。
- 6面そのものを作り直す
前の五つを終えてから、はじめて検討します。
1番から3番までは、その日のうちに試せます。 費用のかかる手当ては、後ろに寄せてあります。 営業する時間の見せ方をあわせて決めるなら、営業時間の表示の作り方が入口になります。
よくある失敗5パターン
どれも、書き替えと置き直しの範囲で手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 店名だけを大きく出した | 何を売る店か分からず、急いでいる人に飛ばされる | 「弁当」「惣菜」の語を足し、店名と同じ大きさにする |
| 品目を印刷して固定した | 中身が変わっても直せず、書いてあることが当てにならなくなる | 品目の面だけ黒板か差し込み式に替える |
| 売り切れの表示を出さなかった | 入って空の棚を見た人が、次から来なくなる | 棚に置ける小さな札を用意し、その場で載せる |
| のぼりを店の正面だけに立てた | 歩いてくる人の視界に入らず、通り過ぎてから気づく | 人の流れが来る側の端へ1本移す |
| 値段を書かずに品目だけ出した | 財布と相談できず、入るのをやめる人が出る | 代表の品を1つだけ選び、品目のとなりに値を添える |
セルフチェックリスト
発注の前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 稼ぎ頭の時間帯を、ひとつに絞った
- その時間に前を通る人を、書き出した
- 決め手になる一語を、ひとつ選んだ
- 毎日替える面と、替えない面を分けた
- 書き替えを、店の人が数分でできる道具にした
- 売り切れをその場で消せる作りにした
- 読ませたい距離から、文字の高さを出した
- 人の流れが来る側から、面が見えることを現地で確かめた
- 品名と値段の書き方について、所管の窓口へ確かめた
- 歩道に出す部分について、管轄の窓口へ問い合わせた
- 看板にかかる費用を月あたりに直し、必要な人数を出した
- 「今日は何がありますか」と聞かれた回数を、数え始めた
よくある質問
弁当店の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの高さにすればいいですか?
品名や値段の書き方に、きまりはありますか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでに出している看板を、作り直さずに直せますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
弁当店・惣菜店の看板は、次の順序で決まります。
| 1 時間帯を決める | 稼ぎ頭の時間を選び、決め手になる一語をひとつにする。 |
|---|---|
| 2 替える面を分ける | 年に何回さわるかを数え、数分で替えられる道具を選ぶ。 |
| 3 手続きを確かめる | 掲出と食品の表示は窓口が別。どちらも出す前に確かめる。 |
| 4 費用を計算する | 月あたりに直し、拾えば釣り合う人数まで落とす。 |
| 5 記録して直す | 聞かれた回数と止まった人を数え、書き替えから手を入れる。 |
この店の看板は、掲げるものではなく、毎日書き替えるものです。 作った日がいちばん良い状態、という作りにしないでください。 今日の中身が今日読めることが、次の来店をつくります。