飲食店の看板の作り方
入る前に伝える5ステップ
これから店を開く方、看板を入れ替えようとしている方へ。 飲食店の看板が引き受けるのは、宣伝ではなく不安の解消です。 何の店か、いくらか、今開いているか。この3つが外から分かるかどうかで、入る人の数が動きます。
前を歩く人が判断に使える時間と、その中に収まる情報の数/ 入る前に答えておく4つの問いと、どの面に割り振るか/ 読ませたい距離から、文字の高さを出す早見表/ 歩道に表示を出すときに確かめる先/ 1日あたり何人来ればトントンになるかの計算/ 入店した数の数え方と、入ってもらえないときに疑う順序
飲食店で、看板が働くのは扉の外だけです
料理の相談は席に着いてから始まります。看板が関われるのは、その手前までです。 扉を開けるかどうかを決めているのは、店の中の味ではなく、外から見えた情報です。
外の情報が足りないと、こうなります。何の店か分からず、視線が通り過ぎる。 価格帯が読めず、入口の前で引き返される。 灯りが弱く、閉まっていると思われる。扉が奥まっていて、入口を見つけてもらえない。
相手を分け、4つの問いに答え、外に出す決まりを確かめ、回収ラインを出し、入店数を測る。 この5つを順に埋めれば、扉の外で起きていることが数字で見えるようになります。
誰が、どの距離から決めるかを分ける
相手ごとに、使える時間も届く距離も違います。
店の前を通り過ぎるまで、3秒ほどしかありません。読ませるのではなく、目に入れる設計になります。
道幅のぶんだけ離れています。細かい文字は届かないので、業種が分かる大きな要素を1つ置きます。
店名を確かめに来ています。屋号が正しく、はっきり読めることだけが求められます。
読ませる相手ではありません。今日は無理でも、次に来るときの記憶に残ればじゅうぶんです。
最後の一歩を止めているのは、価格帯と雰囲気の分からなさです。ここに効くのは、入口のすぐ横の面です。
歩く速さは、およそ時速4kmです。4,000 ÷ 3,600 で秒速1.1mになります。 間口が3mの店なら、前を通り過ぎるまで 3 ÷ 1.1 でおよそ2.7秒。 判断に使えるのは、3秒前後だと思ってください。
1つの情報を読み取るのにおよそ1秒かかると置くと、3秒で3つです。 この1秒という置き方は仮のものですが、上限がある事実は変わりません。 載せたい要素を全部並べると、どれも読まれずに終わります。
正面の面に載せるのは、業種・屋号・価格帯の3つまで。 電話番号、住所、営業時間、こだわりの一文。 これらは入口横の小さい面か、店内に回せます。 正面の面は、3秒で読み切れる量に収めてください。
入る前の4つの問いに答える
どれか1つ欠けると、そこで足が止まります。
| 何を出す店か | 料理の種類が分からない店には入れません。最も大きい面で答えます。 |
|---|---|
| いくらくらいか | 価格帯が見えないことが、ためらいの最大の理由になります。 |
| 今、開いているか | 灯りと表示の2つで示します。閉まっていると思われるのが最も惜しい状態です。 |
| どこから入るか | 扉が奥まっている店、階段の上にある店では、入口そのものを示す必要があります。 |
2つ目が、最も抜けやすい問いです。 価格を外に出すのをためらう気持ちは分かります。 ただ、書かないことで避けられるのは値段を気にする人だけではありません。 入ってよいかどうかを判断できず、安全側に倒して通り過ぎる人がいます。
全品を並べる必要はありません。代表的な数点で足ります。 税込か税抜か、どちらの額かが分かる形にしてください。
読ませたい距離から、文字の高さを出す
必要な文字の高さは、読ませたい距離の1/250から1/500が目安です。 10m先から読ませたいなら、1,000cm ÷ 250 で4cm、1,000cm ÷ 500 で2cm。 つまり2〜4cmになります。
| 読ませたい距離 | 文字の高さの目安 |
|---|---|
| 5m先から読ませる | 1〜2cm |
| 10m先から読ませる | 2〜4cm |
| 20m先から読ませる | 4〜8cm |
幅があるのは、条件で変わるためです。 書体の細さ、地色と文字色の明るさの差、照明の有無。 表の値は出発点として使い、最後は読ませたい位置に立って確かめてください。
営業中かどうかは、文字より灯りのほうが早く伝わります。 暗くなってから外に出て、自分の店を向かいの歩道から見てください。 周りの店より沈んでいれば、閉まっていると受け取られます。 光らせ方は電飾看板・LED看板の選び方で扱っています。
4つ目の問いは、扉が奥まっている店で効きます。 通りから入口が見えないなら、足元や壁に進む向きを示す面を足してください。 導き方は駐車場・入口の案内サインの作り方にまとめています。
外に出すときの決まりを確かめる
敷地からはみ出す表示と、価格の書き方の2つを見ます。
| 歩道に置く表示 | 道路の使用や占用にあたる場合があります。 |
|---|---|
| 壁から突き出す面 | 出幅と高さに決まりが置かれていることがあります。 |
| 価格の書き方 | 税込か税抜か、どちらの額かが分かる形にします。 |
| 写真と実物の差 | 出てくる料理と大きく違う見せ方は避けます。 |
| サンプルや実物の展示 | ケースそのものが、広告物として扱われる場合があります。 |
飲食店で使う表示は、敷地の外に出やすいという特徴があります。 歩道に置く立て看板、壁から突き出す面、扉の前のメニュー台。 どこまでが自分の敷地かを、まず図面で確かめてください。
歩道に置く表示は、道路の使用や占用にあたる場合があります。
屋外に出す看板は、大きさや高さによって別の手続きが必要になることもあります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、扱いは一律ではありません。
必要かどうかを自分で判断せず、置きたい位置と大きさを伝えて尋ねてください。
※ 扱いは自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口へご確認ください。
制度の中身は屋外広告物の許可ガイドで扱っています。
価格と写真は、実際に出すものと合わせてください。 額の表示は、税込か税抜かが分かる形にします。 写真は、同じ盛り付けで撮ったものを使ってください。 外の表示と、席に着いてからの体験がずれると、次に来ていただけません。
置き看板の出し入れと管理はのぼり・置き看板の使い方にまとめています。
1日あたりの回収ラインを出す
看板の費用は、席の数ではなく新規のお客様の数で回収します。
月あたりのコストが3万円、客単価が1,200円、粗利率が7割としましょう。 1,200 × 0.7 で840円。30,000 ÷ 840 でおよそ36人になります。 36 ÷ 30 で、1日に1人ちょっと増えれば、看板の費用はまかなえる計算です。
月あたりのコストは、かかった総額を使う予定の月数で割って出します。 席が満席の日が続いている店では、この計算は意味を持ちません。 看板が効くのは、席が空いている時間帯がある店です。
金額が動くところ
| 面の数 | 正面、袖、入口横、足元。増えるほど作る量が増えます。 |
|---|---|
| 光らせるかどうか | 夜の営業がある店では、電気工事と部品が加わります。 |
| 貼り替えの頻度 | メニューや価格を変える面は、作り替えやすい仕様にするかで変わります。 |
| 取り付ける高さ | 手の届く高さか、脚立や車が要る高さかで作業が変わります。 |
| 入口までの奥行き | 奥まった店ほど、導く面が増えます。 |
掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。 価格やメニューを載せる面は、あとで貼り替える前提で仕様を決めておくと、作り直しを避けられます。
入店した数を測る
売上ではなく、扉の外で起きたことを数えます。
お会計のときに一言だけです。看板、地図、口コミ。答えが偏るなら、効いている面が特定できます。
10分間を1回として、時間帯を変えて3回。合計30分ぶんの記録が、変える前と後を比べる土台になります。
止まったのに入らなかった人は、最も惜しい層です。この数が多いなら、面の内容に足りないものがあります。
「開いてますか」と聞かれた回数です。灯りと表示のどちらかが弱い証拠になります。
向かいの歩道から、昼と夜に1枚ずつ。並べると、夜だけ沈んでいる面が見つかります。
売上には、料理も接客も天気も混ざっています。看板の働きだけを見たいなら、扉の外で数えてください。
見るタイミング
| 付けた週 | 通行と入店の数を、時間帯を変えて記録します。 |
|---|---|
| 1か月後 | 初来店の方の答えが偏っていないかを見ます。 |
| 3か月後 | 数え直し、変える前と比べます。季節で人通りが動く点に注意してください。 |
| 半年後 | 貼り替える面の内容を見直します。価格とメニューは変わっているはずです。 |
数え方は簡単です。10分間、店の前を通った人と、入った人を数えます。 これを昼、夕方、夜のように時間帯を変えて3回。合計30分ぶんの記録になります。 入った人数を通った人数で割れば、比較できる1つの数字が残ります。
入ってもらえないとき、この順で疑う
- 1営業中だと分かるかを疑う
夕方に外へ出て、自分の店を見てください。灯りが点いていない、幕が下りている。開いていないと思われていれば、内容以前の話です。ここを直すのに費用はかかりません。
- 2価格帯が見えるかを疑う
入口の前で足が止まって引き返す人がいるなら、ここです。代表的な品を数点、額とともに出すだけで動きます。
- 3入口が分かるかを疑う
扉が奥にある店、階段の上の店で起きます。足元や壁に、進む向きを示す面を足してください。
- 4文字の大きさを疑う
読ませたい位置に立ち、読めるかを試します。届いていないなら、面を作り直さず文字だけ大きくできる場合があります。
- 5面の位置と向きを疑う
人が歩いてくる方向に対して、面が平行になっていませんか。角度を変えるか、突き出す面を足すかの検討に入ります。
- 6店の見せ方そのものを考え直す
ここまで試して動かないときだけです。順番として、いちばん最後に置いてください。
上から順に、費用のかからないものが並んでいます。 1番は今夜のうちに確かめられます。2番と3番は、小さい面を1枚足すだけで動くことがあります。 4番から先が、業者に相談する領域です。
よくある失敗5パターン
どれも、面の内容を決める前に気づけば起きません。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 屋号だけを大きく出した | 何の店か分からず、素通りされる | 業種が分かる言葉を、屋号と同じ面に足す |
| メニューを全部並べた | 3秒では読めず、結局どれも伝わらない | 代表を3点に絞り、残りは店内で見せる |
| 価格をどこにも出さなかった | 入口の前まで来た人が引き返す | 数点だけ、額の分かる面を入口横に置く |
| 夜に面が沈んでいた | 営業していないと思われる | 灯りを足すか、面の地色を明るいものに替える |
| 写真が実物と大きく違った | 来店した方の期待とずれる | 同じ盛り付けで撮り直して差し替える |
セルフチェックリスト
開店の前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 前を歩く人が、何の店かを3秒で分かる面がある
- 向かいの歩道から、業種が判別できる要素を確かめた
- 代表的な品の額を、外から見える位置に出してある
- 税込か税抜か、どちらの額かが分かるように書いた
- 営業中かどうかが、外から見て分かる
- 暗くなってから、外に出て自分の店を見た
- 入口の位置が、通りから分かる
- 読ませたい位置に立ち、文字が読めるかを試した
- 載せた情報の数を、面ごとに数えた
- 歩道に置く表示について、置き方を管轄窓口に確かめた
- 写真と実際に出す料理が、大きく違っていない
- 入店した数を数える日を、月に一度決めてある
よくある質問
飲食店の看板は、何から決めればいいですか?
文字は、どのくらいの大きさが要りますか?
価格は外に出したほうがいいですか?
歩道に置き看板を出すのに、手続きは要りますか?
すでに看板はありますが、入ってもらえません。
予算が限られるとき、どこから手を付けますか?
まとめ
飲食店の看板を決めるときは、次の順序で進めます。
| 1 分ける | 歩く人、向かいの人、探している人で使える時間が違う。 |
|---|---|
| 2 答える | 業種、価格帯、営業中か、入口はどこか。 |
| 3 確かめる | 敷地からはみ出す表示と、額の書き方を尋ねる。 |
| 4 計算する | 月のコストを粗利で割り、1日あたりに直す。 |
| 5 数える | 通った人と入った人を、時間帯を変えて数える。 |
看板が売るのは料理ではなく、入ってよいという安心です。 載せる情報を増やすほど、その安心は薄まります。 まず今夜、暗くなってから外に出て、自分の店を向かいから見るところから始めてください。