メニュー看板の作り方
外で読ませる5ステップ
これから店の外へ品目と価格を出す方へ。 外のメニューは、立ち止まった人ではなく、歩いている人が読みます。 通り過ぎるまでの数秒で、何を、いくらで出しているかを渡す。 要るのは足す作業ではなく、削る作業です。
歩く速さから、渡せる行数を割り算で出す方法/ 読ませたい距離ごとの文字の高さ/ 外へ出す数品を選ぶ手順と、並べる順/ 屋外の表示と、価格の示し方の確かめ方/ 書き替えの頻度から方式を選ぶ表/ 月あたりの費用を、必要な客数に直す式
外のメニューは、立ち止まらせる前に読ませる
店の外へ品目と価格を出す目的は、中の一覧を先に見せることではありません。 入るかどうかを、歩きながら決めてもらうためです。
起きやすいのは、次の四つです。 店内の一覧をそのまま縮小し、外へ貼る。 品目は並べたが、価格を入れない。 毎日変わる内容を、印刷した面で作ってしまう。 店の向きに合わせて正面を決め、人の流れから斜めに見える。
どれも、発注の前に決めておけば起きません。 距離を決め、品目を絞り、決まりを確かめ、方式を選び、測って直す。 この五つを順に埋めていきます。
店構え全体をこれから考えるなら、 飲食店の看板の作り方を先に読むと順序がつかめます。
歩く速さから、読ませる距離を決める
行数の上限は、感覚ではなく割り算で出ます。
朝と夕方で、歩く向きが逆になることがあります。10分ずつ数えれば足ります。多いほうの向きが、看板の正面です。
通る人は歩道の中ほどを歩きます。看板まで1.5mか、3mか。この距離が、文字の大きさをそのまま決めます。
車の通る道沿いなら、車用の面が別に要ります。歩く人と1面で兼ねると、どちらの距離にも合いません。
通りすがりに読む面と、立ち止まって読む面は役割が違います。前者で気を引き、後者で選んでもらいます。
読む相手が決まれば距離が決まり、渡せる行数と文字の大きさも決まります。
| 読む相手 | 看板までの距離 | 渡せる行数 |
|---|---|---|
| 歩く人(正面) | 1.5〜3m | 4〜5行 |
| 歩く人(通りの反対側) | 5〜6m | 2〜3行 |
| 自転車 | 3〜5m | 1〜2行 |
| 車(徐行する道) | 15〜20m | 1行 |
行数の根拠は、通り過ぎるまでの秒数です。
5m手前から目に入る → 5 ÷ 1.1 = 約4.5秒
1行を読むのに1秒と置く(目安)→ 4〜5行
自転車 時速15km = 15,000 ÷ 3,600 = 秒速 約4.2m
5 ÷ 4.2 = 約1.2秒 → 1〜2行
自転車の多い通りでは1行しか届きません。 品目を1つに絞り、価格だけを大きく出します。 この4.5秒は、看板から目を離さない前提です。 連れや荷物があれば、さらに短くなります。
文字の高さを割り算で出す
読ませたい距離が決まれば、高さは計算で出ます。
1.5m先(足を止めて読む面) → 1,500 ÷ 500 = 3mm / ÷ 250 = 6mm → 0.3〜0.6cm
3m先(歩きながら読む面) → 3,000 ÷ 500 = 6mm / ÷ 250 = 12mm → 0.6〜1.2cm
6m先(通りの反対側) → 6,000 ÷ 500 = 12mm / ÷ 250 = 24mm → 1.2〜2.4cm
20m先(徐行する車) → 20,000 ÷ 500 = 40mm / ÷ 250 = 80mm → 4〜8cm
この幅は、明るい場所で正面から見た場合です。 書体と明暗差と日射しの角度で変わるので、夕方に読ませる面は大きいほうへ寄せます。 書体そのものの選び方は看板の書体の決め方で扱っています。
載せる品目を絞り、並べる順を決める
選ばせる面であって、見せる面ではありません。
紙に全部書き出して並べ替えると、外へ出す候補が上から数品に絞れます。頭の中で選ぶと、思い入れの強い品が残ります。
2つの並びを見比べます。どちらの上位にも入る品目が、外に出す1行目です。片方だけに入る品は、店内の一覧へ回します。
麺類が3つ並ぶと、どれも選ばれません。系統ごとに1品だけ残します。選択肢を減らすほど、決める速さが上がります。
渡せるのは4〜5行です。上限を先に置いてから切ると、迷う時間が短くなります。切った品は消えず、店内の一覧に残ります。
全40品の店なら、外へ出すのは3品です。 3 ÷ 40 は0.075なので、1割にも届きません。
載せない品目が売れなくなるわけではありません。 外の面は店に入る理由を1つ渡す場所で、入った後の選択は店内の一覧に任せます。
| 順番 | 載せるもの | その位置に置く理由 |
|---|---|---|
| 1行目 | 看板の顔になる1品と価格 | 通る人が最初に目を置く位置 |
| 2行目 | 次に出る1品と価格 | 1行目で決まらない人が見る |
| 3行目 | 価格の帯(最も安い品と高い品) | 予算の見当が付く |
| 4行目 | 営業時間、または席の形 | 入れるかどうかを判断できる |
| 5行目 | 支払い方法 | 会計の不安が消える |
3行目の「価格の帯」が効きます。 最も安い品と高い品を並べると、いくら持っていけばよいかが伝わります。
価格の書き方を決める
価格は、品目名と同じ大きさで書きます。 小さく書くと、入ってから聞き直す不安が残ります。
桁の位置を縦にそろえると、比べる時間が短くなります。 「〜円から」と書くなら、その価格で頼める品を1つ用意しておきます。
写真は1枚で2〜3行ぶんの面積を取ります。 載せるなら、その分だけ文字の行を削ります。 撮った時期の盛り付けと、いま出す一皿がずれていないかも見てください。 小さな写真を並べるより、1枚を大きく出すほうが、遠くからでも何の店か伝わります。
載せる言葉そのものの削り方は、看板の文言の決め方にまとめています。
屋外の表示と、価格の示し方を確かめる
内容が良くても、出し方で止まることがあります。
確かめる先は二つです。 看板を置く決まりと、価格の書き方の決まりです。
置くほうは、場所で扱いが分かれます。 敷地の中でも、大きさや高さによっては屋外広告物としての届出に関わります。 歩道は道路なので、出せば占用に関わります。 枠組みは土地で違い、県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域に分かれます。
消費税には総額表示に関する定めがあり、店頭の掲示も対象になる場合があります。
税抜の数字だけを大きく出すと、会計の場で説明が要ります。
根拠のない「当店最安」や、比べる相手の不明な二重価格の表示は、法令上の問題になることがあります。
産地や素材も、そのとおりに出せる裏づけが要ります。
※ 自店の掲示が対象になるかは、所管の窓口でお確かめください。
歩道に置く面は、通行の妨げにならない位置と大きさが問われます。
営業時間の外に出したままだと、風で倒れることがあります。
出し入れの担当と、しまう場所を先に決めます。
運用そのものはのぼり・置き看板の使い分けで詳しく扱っています。
※ 置ける場所と大きさの要否は、管轄の窓口へご確認ください。
書き替えの頻度から、方式と費用を決める
先に決めるのはデザインではなく、替える回数です。
内容が動く面と、動かない面を分けます。 1面にまとめると、1文字直すために全部を作り直すことになります。
| 替える頻度 | 向く方式 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 毎日 | 手書きの面 | 雨で流れます。屋根の下へ置きます |
| 週に1回 | 手書き+差し替え | 書く人を決め、字の形をそろえます |
| 月に1回 | 印刷を差し替える | 用紙が日に焼けます。押さえが要ります |
| 年に1回 | 印刷面を貼り替える | 価格の帯だけ剥がせる作りにします |
| 数年に1回 | 面ごと作り直す | 改定のたびに費用が出ます |
頻度の違う内容を、1つの面に混ぜないでください。 価格は年に1回、日替わりは毎日。 分けておけば、片方を替えるときにもう片方が無事です。
費用が動くところを見る
| 面の数 | 通りへ向ける面と、足を止めて読む面。数が総額にいちばん効きます。 |
|---|---|
| 面の大きさ | 載せる行数で決まります。行を減らせば、面も小さくできます。 |
| 書き替えの作り | 手書きか、差し替えか、貼り替えか。本体の構造そのものが変わります。 |
| 差し替えの回数 | 年に何回替えるか。1回の費用に回数を掛けた額が、毎年出ていきます。 |
| 屋外に置く前提 | 雨と日射しに当たる面は、材料と表面の処理が変わります。 |
| 夜の見え方 | 夜も開けるなら、照らすか光らせるかを決めます。 |
掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
月あたりに直し、必要な客数を出す
本体 60,000円 ÷ 60か月 = 月1,000円
差し替え 1回3,000円 × 年12回 = 36,000円
36,000 ÷ 12か月 = 月3,000円
1,000 + 3,000 = 月4,000円
この60,000円と3,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
客単価1,000円 × 粗利率0.6 = 600
4,000 ÷ 600 = 6.66 → 切り上げて 月7人
30 ÷ 7 = 4.28 → 4〜5日に1人
4〜5日に1人、新しく入ってもらえば釣り合う計算になります。 客単価と粗利率を自店の数字に差し替えて、置き直してください。 書き替えを減らせば額も下がりますが、内容が古びます。
足を止めた数と注文の偏りで、直す
読まれたかどうかは、注文の中身に出ます。
昼の30分だけ数えます。看板の前で歩みが止まった人を、正の字で記録します。道具は要りません。
レジの記録から、その品目が全体の何割かを出します。書き替える前の割合と並べれば、動きが見えます。
「外の掲示はご覧になりましたか」と聞きます。答えを日付とともに残すと、後から数えられます。
歩道の中ほどに立ち、多いほうの向きから見ます。光の映り込みと、読めない行がその場で分かります。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は営業の合間にでき、今日から始められます。
外に出した品目の割合が上がっていれば、面は読まれています。 来店数が変わらなくても、注文の偏りは動きます。 読まれたかどうかは、人数より先に品目の比率へ表れます。
見る時期を決める
| 3日 | 書き替えた行の品目が、注文に出ているかを見ます。 |
|---|---|
| 2週間 | 曜日ごとの偏りをならし、出数の割合を並べます。 |
| 1か月 | 足を止めた人の数と、注文の割合を突き合わせます。 |
| 3か月 | 気温と季節の影響を外し、前の期と比べます。 |
天気と曜日で、人通りは大きく動きます。 1日の数字で判断せず、同じ曜日どうしを並べてください。
効かないときは、この順で疑う
- 1通る向きへ、面を回す
金具をゆるめて角度を変えるだけです。費用はかからず、読める位置に入ることがあります。
- 2面を拭き、映り込みを消す
空や照明が映ると文字が沈みます。汚れと、光の当たる角度をその場で確かめます。
- 3行を減らす
5行を3行に落とします。手書きなら書き直すだけ、差し替えなら紙を替えるだけです。
- 4価格の文字を、品目名と同じ大きさにする
価格が小さいと、入るかどうかを決められません。同じ大きさに揃えて出し直します。
- 5載せる品目を入れ替える
出数の2番手を1行目へ上げます。選ばれている品を前に出すほうが、早く動きます。
- 6面の作りを変える
差し替えのできる形へ替えます。作り直しは、ここまでの5つを試した後です。
上のほうほど、費用をかけずに直せます。 1番から3番までは、その日のうちに手を付けられます。 色の見え方まで疑う段階になったら、看板の色の決め方を先に見てください。
よくある失敗5パターン
どれも、行を削るか、面を回すことで手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 店内の一覧を縮小して貼った | 文字が小さく、通る人に読まれない | 4〜5行に削って書き直す。紙を替えるだけで済む |
| 価格を品目名より小さく書いた | 入るかどうかの決め手が届かない | 価格の文字を、品目名と同じ大きさに揃える |
| 税抜の数字だけを大きく出した | 会計で説明が要り、後味が悪くなる | 税込の数字を主にして書き替える |
| 日替わりの品を印刷で作った | 書き替えが追いつかず、古い内容が出たままになる | 日替わりの行だけ、手書きの面へ分ける |
| 店の向きに合わせて正面を決めた | 人の流れから斜めに見え、文字がつぶれる | 支柱の金具をゆるめ、多いほうの向きへ回す |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 店の前を通る向きを、時間帯を分けて数えた
- 歩く人に読ませる距離を、1.5mか3mかで決めた
- 車から読ませる面を、別に作るかどうかを決めた
- 通りへ向ける面の行数を、4〜5行までに収めた
- 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
- 全品目を書き出し、価格順と出数順の両方で並べ替えた
- 同じ系統の品目を、1つに減らした
- 価格の文字を、品目名と同じ大きさに揃えた
- 税込の数字を主にして書いた
- 屋外に出す表示の届出が要るかを、管轄の窓口で確かめた
- 書き替えの頻度を決めてから、方式を選んだ
- 月あたりの費用を、必要な客数に直した
よくある質問
メニュー看板は、何から決めればいいですか?
何品目まで載せられますか?
価格は税抜と税込のどちらで書きますか?
店の外に出すのに、許可は要りますか?
効いているかは、いつ判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
店頭のメニュー看板は、次の順序で決まります。
| 1 距離を決める | 通る向きを数え、1.5mか3mかを選ぶ。行数の上限が出る。 |
|---|---|
| 2 品目を絞る | 価格順と出数順で並べ替え、系統ごとに1品だけ残す。 |
| 3 決まりを確かめる | 税込の数字を主にし、置ける場所と届出を窓口で聞く。 |
| 4 方式を決める | 替える頻度から作りを選び、月あたりの額に直す。 |
| 5 測って直す | 注文の偏りを並べ、面を回し、行を削る。 |
外の一枚は、読ませる紙ではなく、選ばせる紙です。 品目を足すほど選ばれなくなる。この一点だけ覚えて帰ってください。