バー・居酒屋の看板の作り方
夜に選ばれる5ステップ
これから夜の飲食店を開く方、看板を作り替える方へ。 夜の看板は、明るさではなく情報で選ばれます。 まわりも光っている場所では、光の強さだけでは差がつきません。
夜の通行人が、店の前で判断する時間の長さ/ 入りにくさの正体と、看板で消せる範囲/ 載せる要素を3つに絞る順番/ まわりが光る場所で差をつける方法/ 深夜の営業で確かめておく届出/ 15分で測れる入店率の数え方/ 入らないときに疑う順序
夜の看板は、明るさでは差がつきません
夜の店の相談で多いのが、目立つ看板にしたいというご要望です。 目立たせる手として、まず光らせることが思い浮かびます。 ただし、まわりの店も同じように光っています。
店の前に立って、視界に入る光る面を数えてみてください。 10枚あるなら、自分の看板は11枚目になります。 明るさを上げても、順位はほとんど動きません。
情報を決めずに進めると、こうなります。 店名だけが大きく、何の店か伝わらない。 足は止まるが、金額が読めずに離れる。 光る面が複数あり、どれを読むか分からない。 閉店後も点いていて、開いていると思われる。
通る人と時間を決め、不安を消す情報を選び、夜の見え方を決め、 届出と費用を確かめ、入店率を測る。この五つを順に埋めます。
通る人と、狙う時間帯を決める
同じ通りでも、時間で通る人が入れ替わります。
駅から歩くか、車で来るか。歩く人と車では、読める文字の大きさが違います。
仕事帰りの時間か、深夜か。時間帯で通る人の目的が変わります。
一人客は決めるのが早い。連れがいると、その場で相談が起きます。
初めての人だけが看板を読みます。常連は店名しか見ていません。
店の前に立ち、視界に入る光る面を数えます。差がつくかが分かります。
階段、地下、雑居ビル。看板で解決する範囲がここで決まります。
読む時間は、思っているより短くなります。 歩く速さは時速4kmほどで、4 ÷ 3.6 で秒1.1m。 3秒なら 1.1 × 3 で約3.3m進みます。
店の前を通り過ぎるまでの数秒で、入るかどうかが決まります。 その時間に読み切れる量が、載せられる上限です。
店の前に立って、視界に入る光る看板を数えます。 数が多いほど、明るさで差をつけるのは難しくなります。 色を変える、光る面を1つに絞る、形を変える。 差をつける手は、明るさ以外にもあります。 光らせ方は電飾看板・LED看板の選び方で扱っています。
入る前の不安を、順に消す
入りにくさの正体は、分からないことの多さです。
足を止めたのに入らなかった人は、何かが読めなかった人です。 読めなかったものは、だいたい決まっています。
| 分からないこと | 看板で示せること |
|---|---|
| いくらかかるか分からない | 目安の金額か、代表的な一品の値 |
| 席料や追加の費用が読めない | 席料の有無を、あるかないかで書く |
| どんな店か分からない | 業態を一語で。立ち飲み、和食、音楽など |
| 一人で入ってよいか分からない | カウンターの有無、一人客の可否 |
| 開いているか分からない | 営業時間と定休日。臨時休業は別の面で |
| 予約が要るか分からない | 当日入れるかどうかを一言で |
六つ全部は載りません。 3つまでに絞ってください。4つ目からは読まれません。
載せる順番を決める
- 1業態を一語で示す
何の店かが分からないと、値段の話まで進みません。まずここです。
- 2金額の手がかりを1つ置く
目安の額か、代表的な一品の値。1つで足ります。並べると読まれません。
- 3営業時間を書く
開いている時間が読めれば、次に通ったときに来られます。
- 4ここまでで止める
4つ目からは読まれません。残りは店頭のメニューや窓の面に回します。
金額の手がかりは、1つで足ります。 目安の額でも、代表的な一品の値でも構いません。 いくつも並べると、読む前に諦められます。
載せきれない情報は、店頭のメニューや窓の面に回します。 足を止めた人だけが読む場所なので、量を書けます。 言葉の削り方は看板の文言の決め方にまとめています。
夜の見え方と、点灯の運用を決める
光らせる面は、1つに絞ります。
まわりが光っていれば、明るくしても埋もれます。色と形で分けます。
複数が同じ強さで光ると、どれを読むか伝わりません。
看板が読めても、入口が暗いと足が止まります。足元の明るさを見ます。
閉店後も点いていると、開いていると思われます。逆の損が出ます。
複数の面が同じ強さで光ると、視線が定まりません。 読ませたい面を1つ決め、そこだけを強くしてください。 残りは、その面を読んだ人が次に見る位置に置きます。
看板が読めても、入口が暗ければ足は止まります。 階段や地下なら、その先が見えるかどうかが分かれ目です。 上り口の扱いは2階の店の看板で詳しく扱っています。
消灯の時刻を決めておく
閉店後も点いていると、開いていると思って来た人を帰すことになります。 次から避けられるので、点けっぱなしは損が二重です。
6 × 30 = 月180時間
点灯の時間が決まれば、電気の量も見積もれます。 計算は光る看板の電気ガイドにまとめました。
届出を確かめ、かけてよい額を出す
営業の形によって、必要な手続きが変わります。
0時を越えて酒類を出す営業は、事前の届出の対象になることがあります。
接待を伴う業態では、別の許可が必要になる場合があります。
看板の内容が、届け出た営業の形と食い違わないようにしてください。
光る看板の明るさや点滅は、地域の条例で制限されることもあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
※ 開店の前に、管轄の窓口へご確認ください。
| やろうとすること | 関わる手続き | 注意する点 |
|---|---|---|
| 深夜に酒類を出す | 事前の届出 | 0時を越える営業で対象になることがある |
| 接待を伴う | 営業の許可 | 業態によって扱いが分かれる |
| 光る看板を出す | 屋外広告物の条例 | 明るさや点滅が制限される地域がある |
| 道に置き看板を出す | 道路の占用 | 敷地の外に出す場合 |
| ビルに面を出す | 賃貸借の契約 | 共用部の扱いは契約で決まる |
月あたりの額を、必要な客数に直す
看板にかける額は、何人来れば釣り合うかに直すと判断できます。
月あたりのコストを15,000円、客単価を4,000円、粗利率を7割と置きます。 4,000 × 0.7 で2,800円。15,000 ÷ 2,800 で5.36。切り上げて6人です。
30 ÷ 6 で5。 5日に1人、看板を見て入ってくれれば釣り合う計算になります。
15,000円、4,000円、7割は、式の動きを見るための仮の置き方です。 金額の水準を示すものではありません。自分の店の数字に差し替えてください。
費用が動くところ
| 光らせるかどうか | 内部で光らせるか、外から照らすか。電気の工事が絡みます。 |
|---|---|
| 面の数 | 道からの面、入口の面、階段の面。数だけ増えます。 |
| 取り付ける高さ | 高いほど作業の手間が増え、足場が要ることもあります。 |
| 更新のしやすさ | 差し替えられる作りにすると、内容を変える費用が下がります。 |
| 共用部の扱い | ビルの規定で、出せる位置と大きさが決まることがあります。 |
四行目を先に決めると、あとの出費が変わります。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
入店率を測って、直す
15分あれば、数字になります。
前を通った人と、入った人を控えます。割れば入店率が出ます。
止まったのに入らなかった人。ここが一番情報の足りていない層です。
看板、地図、紹介。答えが割れるほど、看板の役割が絞れます。
消えているか。1回見るだけで、無駄な電気と誤解が両方分かります。
四つとも、道具を買わずに今夜から始められます。
入店率は、入った人数を通った人数で割るだけです。 15分で通行60人、入店3人なら 3 ÷ 60 で0.05。5%です。
3 ÷ 60 = 0.05 → 5%
翌週 5 ÷ 60 = 0.083 → 約8%
曜日と天気で動くので、同じ曜日・同じ時間帯で比べます。 1回の数字ではなく、前後の差を見てください。
判断のタイミング
| 掲出した当日 | 暗くなってから、通る側から見ます。写真を1枚残します。 |
|---|---|
| 1週間 | 同じ曜日、同じ時間帯で入店率を数えます。基準になります。 |
| 1か月 | 初めての客に聞いた答えを集めます。看板の役割が見えます。 |
| 3か月 | 入店率を前の月と比べます。季節の差も見えてきます。 |
| 1年 | 内容を変えるか、面を増やすかを決めます。 |
足を止めたのに入らなかった人の数も、あわせて控えてください。 止まる人が多く、入る人が少ないなら、原因は情報の側にあります。
入らないとき、この順で疑う
- 1点灯していたかを疑う
球切れや消し忘れは珍しくありません。見に行くだけで分かります。
- 2置き看板の位置を疑う
通る側から見えているか。数十センチ動かすだけで変わります。
- 3金額の手がかりを疑う
書いていないなら足します。紙を差し替えるだけで済みます。
- 4載せた量を疑う
3つを超えていれば減らします。減らすほうが読まれます。
- 5明るさの差を疑う
まわりの光る面を数えます。色を変えるほうが安く済むことがあります。
- 6面の位置と高さを疑う
取り付け直しの費用がかかります。上の五つが先です。
上から順に、かかる額が小さいものです。 1番から4番までは、看板を作り替えずに手を打てます。
よくある失敗5パターン
どれも、開店の前に気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 店名だけを大きく出した | 何の店か伝わらず、素通りされる | 業態を一語足す。紙の差し替えで済む |
| 金額の手がかりを書かなかった | 足は止まるが、入らずに離れる | 目安か一品の値を1つ置く |
| 光る面を複数そろえた | どれを読むか伝わらず、印象が散る | 光らせる面を1つに絞る |
| 閉店後も点灯したままにした | 開いていると思われ、次回から避けられる | 消灯の時刻を決めて運用する |
| 深夜営業の届出を後回しにした | 営業の形を変える必要が生じる | 開店前に管轄の窓口へ確認する |
セルフチェックリスト
図案が出た段階で使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 通る人が歩きか車かを決め、読める文字の大きさを確かめた
- 主に狙う時間帯を1つ決めた
- 店の前に立ち、視界に入る光る面の数を数えた
- 何の店かが、一語で読み取れる
- 金額の手がかりを1つ載せた
- 席料や追加の費用の有無を書いた
- 営業時間と定休日が読める
- 看板に載せた要素が3つ以内に収まっている
- 入口の足元が、夜に明るいことを確かめた
- 光らせる面を1つに絞った
- 消灯の時刻と、担当を決めた
- 深夜の営業について、管轄の窓口に確かめた
よくある質問
夜の飲食店の看板は、何から決めればいいですか?
載せる情報の数に目安はありますか?
届出や手続きが必要になることはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに出している看板の反応が薄いときは?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
夜の店の看板は、次の順序で決まります。
| 1 通る人を決める | 歩きか車か、時間帯はいつか。まわりの光る面を数える。 |
|---|---|
| 2 不安を消す | 業態、金額の手がかり、営業時間。3つまでに絞る。 |
| 3 夜の見え方を決める | 光らせる面は1つ。入口の足元を明るくし、消灯時刻を決める。 |
| 4 届出と費用を確かめる | 深夜営業と接待の扱いを窓口へ。必要な客数に直す。 |
| 5 入店率を測る | 15分の通行数と入店数を数え、同じ条件で比べる。 |
光を足す前に、書いてある情報を数えてください。 3つを超えているなら、削るほうが早く効きます。