看板の移設ガイド
移転先で使えるか見極める5ステップ
移転や建て替えを控えている方へ。今の看板を持っていけるかどうかは、 外してみてから分かるものではありません。 外す前に測る項目が決まっていて、それで九割は判断できます。
外して運べる作りと、切らないと外れない作りの見分け方/ 移設先で測っておく5つの寸法/ 外す側と付ける側、それぞれで確かめる手続き/ 移設と新しく作る場合を、年あたりの負担で比べる計算/ 移したあとに見え方を測る方法と、見つけてもらえないときの段取り/ 枠と面を分けて考えると、費用が動く理由
移設は、外す前に決まります
移転が決まったとき、看板の相談で多いのが「これ、持っていけますか」というご質問です。 答えは看板の作りで変わります。 そして、その作りは外さなくても、地上から見て見当が付きます。
確かめないまま進めると、こうなります。外してから寸法が合わないと分かる。 前の場所の手続きが引き継げず、取り付け後にやり直す。 運んだ面が色あせていて、新しい店に古い顔が付く。 外す日と付ける日が離れ、預ける期間だけが伸びる。
運べるかを見極め、移設先を測り、両側の手続きを確かめ、新調と比べ、見え方を測る。 この5つを順に埋めれば、外す前に答えが出ます。
外して運べる作りかを見極める
枠と面が分かれるかどうかが、最初の分かれ道です。
面だけを外して運べる作りなら、移設は現実的です。枠を残し、面を新しい場所の枠に入れる手もあります。
切らないと外れない作りです。切った跡は元に戻らないため、移設というより作り直しに近づきます。
地面に立つ看板の柱は、コンクリートの中に入っています。柱ごと抜くと、その柱は次の場所で使えないことがあります。
配線の長さと引き込みの位置が、移設先で同じとはかぎりません。中の部品は流用でき、配線はやり直しになる場合が多いです。
運んでも、色は戻りません。外した面を並べて日に当ててみると、想像より落ちていることに気づきます。
移設は「外す・運ぶ・直す・付ける」の4つの工程でできています。 新しく作る場合は「作る・付ける」の2つです。 工程が2つ多いぶん、段取りも人手も増えます。 この差を頭に置いてから、費用の話に進んでください。
判断がつかない部分は、施工した会社に聞くのが早道です。 図面や施工の写真が残っていれば、金具の効かせ方まで分かります。 手元に無ければ、看板の写真を撮って別の会社に見せてください。 地上から撮った1枚でも、作りの見当は付きます。
全部を持っていく必要はありません。 枠と金具は前の場所に置き、面だけを外して新しい枠に入れる。 あるいは逆に、枠と金具を運び、面は新しく作る。 分けて考えるほど、選べる手が増えます。 運ぶものを減らせば、外す作業も運ぶ作業も軽くなります。
移設先の面を測る
外す前に測ります。外したあとでは、選び直しがききません。
| 取り付けられる面の幅と高さ | 今の看板が物理的に収まるか。数センチ足りずに入らないことがあります。 |
|---|---|
| 壁の材質と下地 | 重さを受けられる下地があるか。金具の効かない壁には付けられません。 |
| 床から取り付け位置までの高さ | 低くなれば近くから見られ、高くなれば遠くから見られます。 |
| 見てほしい人が立つ位置までの距離 | 文字の大きさが足りるかどうかは、この距離で決まります。 |
| 電源が取れる位置 | 光らせる看板は、ここが遠いと工事が増えます。 |
いちばん見落とされるのが、4つ目の距離です。 看板の文字の高さは、見る距離に比例します。 見てほしい位置までの距離が2倍になれば、必要な文字の高さも2倍になります。 面が同じでも、場所が変われば読めなくなることがあります。
測り方は簡単です。移設先で、人に立ってほしい位置まで下がってください。 そこから今の看板の写真を、実物と同じ見え方になるよう手元で調整して読みます。 読めないなら、面をそのまま持っていっても届きません。 距離から文字を決める考え方は壁面看板の作り方で扱っています。
金具が効くかどうかは、壁の中に何があるかで決まります。 同じように見える壁でも、下地の入り方は建物ごとに違います。 ここは推測せず、現地を見てもらってください。 下地が無い位置に無理に付けると、風の日に動きます。
外す側と付ける側、両方の手続きを確かめる
移設は、2か所で手続きが発生します。
| 外す側の建物の取り決め | 借りていた物件なら、どこまで戻すかが契約に書かれています。 |
|---|---|
| 外したあとの壁の跡 | 金具の穴と、日に焼けていない四角い跡が残ります。 |
| 付ける側の許可 | 大きさや高さによって、あらためて手続きが要る場合があります。 |
| 付ける側の建物の承諾 | 前の場所で了解を得ていても、新しい建物では取り直しです。 |
| 作業の日に道路を使うか | 外すときと付けるとき、二度発生する可能性があります。 |
看板そのものは同じでも、場所が変われば別のものとして扱われます。 前の場所で手続きを済ませているから今回は不要、とはなりません。 大きさと高さを伝えて、付ける側の窓口へ先に尋ねてください。
屋外に出す看板は、大きさや高さによって許可が必要になる場合があります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、判断の基準も様式も異なります。
前の場所で許可が不要だったからといって、新しい場所でも不要とはかぎりません。
※ 扱いは自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口へご確認ください。
制度の中身は屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
外す側では、壁に跡が残ります。金具の穴と、日に焼けていない四角い部分です。 どこまで戻すかは、借りていた物件なら契約に書かれています。 契約の側から見た確認事項は借りた店舗の看板で扱っています。
移設と新しく作る場合を比べる
総額ではなく、年あたりの負担で並べます。
新調の費用 ÷ 新しい看板を使う年数 = 作り直した場合の年あたり
総額だけを見ると、移設のほうが安く見えることがあります。 ところが移した看板は、すでに何年か使ったものです。 残りの年数で割ると、順位が入れ替わることがあります。
新調の費用を1として比で見てみましょう。 移設に6割かかり、移した看板があと5年もつとします。0.6 ÷ 5 で0.12です。 新しく作れば15年使えるとすると、1 ÷ 15 でおよそ0.067になります。 この条件では、作り直したほうが年あたりは軽い計算になります。
なお6割、5年、15年はいずれも仮の置き方です。 実際の数字は、看板の傷み具合と作りで動きます。 自分の看板について、この3つを埋めるところから始めてください。
移設の金額はここで動きます
| 外す面の高さ | 足場や高所作業車が要るかどうかで、作業の組み方が変わります。 |
|---|---|
| 運ぶ距離と看板の大きさ | 分解できない大きさのものは、運び方から決まります。 |
| 保管の期間 | 外してすぐ付けられないと、預ける期間が発生します。 |
| 直しの範囲 | 運ぶ前に傷んでいた部分は、付ける前に直すことになります。 |
| 取り付け方法の変更 | 前の壁と新しい壁で下地が違えば、金具から作り直します。 |
掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。 外す作業と付ける作業を同じ会社にまとめると、運びと保管の段取りも一本になります。 見積書の比べ方は看板の見積書の読み方で扱っています。
移したあと、見え方を測る
同じ看板でも、場所が変われば見え方は別物になります。
文字が読める位置まで下がり、歩数を数えます。自分の歩幅を一度測っておけば、メートルに直せます。前の場所と比べてください。
駅からの道、駐車場からの道。実際に歩き、どこで看板が視界に入るかを確かめます。入らないなら角度の問題です。
朝、昼、夕方。移設先は日の当たり方が変わっています。反射で読めない時間帯が生まれていないかを見ます。
光らせる看板は、周りの明るさで印象が変わります。前の場所より明るい通りなら、埋もれることがあります。
見慣れた自分の目は当てになりません。場所を知らない人に、外から探してもらうのが最も早い確認です。
外す前に一度測っておくと、比べる相手ができます。移設で難しいのは、良し悪しの基準を持つことです。
見るタイミング
| 外す前 | 今の場所での見え方を、写真と歩数で記録します。比べる相手になります。 |
|---|---|
| 付けた当日 | 同じやり方で測り直します。差が出た項目を書き留めます。 |
| 1か月後 | 来た人に、迷わなかったかを尋ねます。 |
| 3か月後 | 足りない部分を、置き型や案内の表示で補うかを判断します。 |
歩数で測るときは、自分の歩幅を一度だけ測っておいてください。 10歩の距離を巻尺で測り、10で割れば1歩ぶんが出ます。 以後は歩数を数えるだけで、おおよそのメートルに直せます。
見つけてもらえないとき、この順で疑う
- 1向きと角度を疑う
人が歩いてくる方向に、面が向いていますか。金具の角度を数度変えるだけで見え方が戻ることがあります。
- 2手前の障害物を疑う
街路樹の枝、電柱、置いてある物。前の場所には無かったものが、視線を切っていることがあります。
- 3光の当たり方を疑う
西日で白く飛ぶ、庇の影で沈む。時刻を変えて撮った写真を並べると、原因の時間帯が分かります。
- 4文字の大きさを疑う
見る距離が延びたなら、必要な高さも同じ比率で延びています。面はそのままで、文字だけを大きくできる場合があります。
- 5取り付け位置の高さを疑う
高すぎて視界の外にある、低すぎて人の陰になる。金具の位置を動かせるかを業者に尋ねてください。
- 6新しく作り直すかを考える
ここまで試して届かないときだけです。順番として、いちばん最後に置いてください。
上から順に、費用のかからないものが並んでいます。 1番と2番は、その日のうちに手を打てます。 3番から5番は、業者に相談すれば部分的な手直しで済むことがあります。
よくある失敗5パターン
どれも、外す前に確かめておけば起きません。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 外してから移設先の寸法を測った | 数センチ足りずに取り付けられない | 外す前に、両方の面を測って並べる |
| 前の場所の許可が引き継げると考えた | 取り付け後に手続きのやり直しが起きる | 付ける側の窓口へ、移設の旨を伝えて尋ねる |
| 色あせた面をそのまま運んだ | 新しい店に、古びた顔が付く | 面だけ作り直し、枠と金具を使い回す |
| 外す日と付ける日を離しすぎた | 預ける期間が延び、傷む機会も増える | 両方の日程を、同じ表の上で決める |
| 電源の位置を確かめずに運んだ | 取り付け当日に光らせられない | 移設先の電源から先に決める |
セルフチェックリスト
外す日を決める前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 今の看板が、枠と面に分かれる作りかどうかを確かめた
- 溶接や基礎で、切らないと外れない部分がないかを見た
- 外す前に、今の場所での見え方を写真で残した
- 移設先の面の幅と高さを、実際に測った
- 移設先の壁の材質と下地を確かめた
- 見てほしい人が立つ位置までの距離を測った
- 移設先で電源が取れる位置を確かめた
- 外す側の契約で、どこまで戻すかを読んだ
- 付ける側で、あらためて許可が要るかを窓口に尋ねた
- 外す日と付ける日を、1枚の表に並べた
- 移設と新しく作る場合を、年あたりの負担で比べた
- 付けたあとに見え方を測る日を決めてある
よくある質問
看板の移設は、何から決めればいいですか?
移設先で、文字の大きさは足りますか?
前の場所で取った許可は、移設先でも使えますか?
移設と新しく作るのは、どちらが得ですか?
すでに移設したのですが、見つけてもらえません。
費用を抑えたいときは、どうすればいいですか?
まとめ
看板を移すかどうか決めるときは、次の順序で進めます。
| 1 見極める | 枠と面が分かれるか、切らないと外れないかを見る。 |
|---|---|
| 2 測る | 移設先の寸法と、見てほしい位置までの距離を測る。 |
| 3 確かめる | 外す側の取り決めと、付ける側の許可を尋ねる。 |
| 4 比べる | 移設と新調を、年あたりの負担に直して並べる。 |
| 5 測り直す | 付けたあとに歩数と写真で、見え方を確かめる。 |
持っていくかどうかは、全部か無かの選択ではありません。 枠だけ、面だけ、金具だけ。分けて考えると、途中の答えが見つかります。 まず今の看板を下から一枚撮り、枠と面の境目を探すところから始めてください。