看板の発注スケジュール
開店日から逆算する5ステップ
開店や移転の日が見えてきた方へ。看板は、頼んだ翌日に届くものではありません。 先に決めるのは「何を作るか」ではなく「いつ動き出すか」です。 その日付を、開店日から後ろ向きに出していきます。
開店日から工程を後ろ向きに並べ、動き出す日を出す手順/ 予備日を、説明のつく形で何日積むかの決め方/ 業者に渡す前に、自分の側で確定させておく5つのこと/ 待ち時間が読めない手続きの見つけ方/ 遅れを金額に直し、前倒しの費用と比べる計算/ 予定と実際の差を残し、次の看板に使う方法
看板は、間に合わせるものではなく、逆算するものです
内装の日程は工事会社が引いてくれます。看板だけは、頼む側が自分で日程を持つことになりがちです。 誰も引いてくれない一本だから、後ろへ後ろへとずれていきます。
日程を持たないと、こうなります。内装が固まってから看板を思い出し、残りが二週間しかない。 急ぎで頼んだぶん、選べる仕様が減る。手続きの待ち時間を知らずに組み、当日に取り付けられない。 開店の告知を出したあとで、看板だけが空欄のまま残る。
逆算し、自分の側を確定させ、待ち時間を確かめ、遅れの損を計算し、実績を残す。 この5つを順に埋めれば、看板の日程は自分の手の中に入ります。 何を作るかを決める前に、まず日付から始めてください。
開店日から後ろ向きに並べる
紙の右端に開店日を書き、そこから左へ工程を置いていきます。
ここを動かせない日として置きます。すべての起点になります。
雨、部材の遅れ、直しの一往復。ここを削ると全部が崩れます。
足場や高所作業車が要る面は、その手配日も含めます。
発注が確定してから、物ができ上がるまでの日数です。
文字とレイアウトに、赤を入れて戻す往復の期間です。
ここが動き出す日です。逆算の答えになります。
右から左へ、引き算で進みます。ここで各工程の日数を埋めたくなりますが、実数はまだ分かりません。 製作にかかる日数は、看板の種類と業者の込み具合で変わります。 空欄のまま業者へ渡し、その欄を埋めてもらうのが最も早い進め方です。
見積もりを頼むときの連絡文に、開店日を1行入れてください。 日数の入った工程表が返ってくれば、比べる材料が金額のほかにもう1つ増えます。 納期を書けない相手なら、その時点で判断がつきます。
予備日は、工程の数だけ積む
上の6つから開店日を除くと、動く工程は5つです。5 × 1 で5日になります。 雨も、部材の遅れも、直しの往復も、どれか1つの工程の中で起きます。 工程が増える看板ほど、予備日も増える。この対応が、説明のつく置き方です。
日程が苦しくなると、まず予備日が消されます。すると、雨が二日降った時点で開店に間に合いません。 削るなら、載せる情報の数や仕様のほうを先に削ってください。 日数は買い戻せませんが、仕様はあとから足せます。
自分の側で決めることを先に終わらせる
日程が伸びる原因の多くは、作る側ではなく決める側にあります。
正式名と、看板に載せる短い形。この2つが違うことは珍しくありません。ふりがな、英字、記号の有無まで書き出してください。
業種と屋号の2つで足りるか。電話番号を入れるか。載せる数を先に決めておくと、校正の往復が一度で済みます。
印刷に使える形式が手元にあるかを確かめます。画像しかない場合、描き起こす期間が別に要ります。
壁のどこに、床から何メートルの位置か。現地を見てもらう前に、写真と寸法を用意しておきます。
光らせるなら電源の位置が要ります。電気工事は別の業者が入ることがあり、日程が一本増えます。
この5つが決まっていれば、校正の往復は一度で済むことがあります。 決まっていなければ、案を見てから迷い、戻し、また待つ。 往復が一度増えるたびに、日程は数日ずつ後ろへ動きます。
載せる内容の絞り方は看板デザインの決め方で扱っています。 ここで言えるのは1つだけです。 載せるものを減らすほど、決める時間も作る時間も短くなります。
案が上がってきたとき、家族や共同経営者に一斉に見せると、意見が割れます。 割れた意見を一つにまとめる時間は、工程表のどこにも書かれていません。 見せるのは構いません。ただし、最後に決める人を先に一人決めておいてください。
待ち時間のある手続きを確かめる
自分の努力では縮まない工程です。だから最初に手を付けます。
| 屋外広告物の許可 | 申請から結果が出るまで、待つ期間があります。 |
|---|---|
| 道路の占用・使用 | 歩道の上に出す面や、作業で車道を使う場合に関わります。 |
| 建物の所有者の承諾 | 借りている物件では、書面での承諾を求められます。 |
| 管理規約と入居のきまり | 商業施設や複合ビルは、独自の様式と締切があります。 |
| 電源の引き込み | 電気工事の日程が、取り付けの前に入ります。 |
製作は、急いでもらえば少し縮むことがあります。審査の期間は縮みません。 だから、逆算表を作ったその日に、まず窓口へ問い合わせます。 書類がそろってから結果が出るまで、どのくらいかかるか。 この1問だけでも、日程の輪郭が決まります。
屋外に出す看板は、大きさや高さによって許可が必要になる場合があります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、扱いも様式も異なります。
必要かどうかの判断を自分で下さず、看板の位置と大きさを伝えて尋ねてください。
※ 扱いは自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口へご確認ください。
制度の中身は屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
借りている物件では、建物の所有者の承諾が別に要ります。 口頭で了解をもらっていても、書面を求められる場面があります。 契約の側から見た確認事項は借りた店舗の看板で扱っています。
遅れを金額に直して、前倒しと比べる
日数の話は、金額に直すと判断できるようになります。
見込んでいる1日の売上が5万円、粗利率が6割なら、1日あたり3万円です。 1週間遅れれば、3万円 × 7 で21万円になります。 この21万円が、前倒しにかけてよい費用の上限になります。
急ぎの手配や、暫定の表示を用意する費用が21万円を下回るなら、前倒しは見合う計算です。 上回るなら、開店日そのものを動かすほうが軽く済みます。 数字にすると、悩んでいた判断が引き算で片づきます。
日数が動く条件
| 面の数が多い | 同時に作れる数には限りがあります。数が増えるほど後ろへ伸びます。 |
|---|---|
| 特注の形や大きさ | 既製の枠が使えないぶん、部材の手配から始まります。 |
| 光らせる仕様 | 中の部品の手配と、電気工事の日程が加わります。 |
| 取り付けが高い場所 | 足場や車の手配日に、こちらの都合を合わせることになります。 |
| 繁忙の時期 | 年度替わりや年末は、どの工程も混みます。 |
急ぎの依頼は、金額の側にも出ます。 休日の作業、特急の手配、二度手間になる段取り。 掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。 見積書のどこに日程が影響しているかは看板の見積書の読み方で扱っています。
予定と実際の差を記録する
今回の日程は、次の看板のための実測値になります。
工程ごとに、予定した日と実際の日を2列で残します。差が出た工程が、次に余裕を積む場所になります。
一度で終わったか、三度かかったか。回数がそのまま、次回に必要な確定作業の量を教えてくれます。
待たされたのか、自分が止めていたのか。ここを分けないと、原因が業者側に見えてしまいます。
使い切ったなら、次はもっと積みます。まったく使わなかったなら、削れる余地があります。
店を続けるかぎり、看板を頼む機会はまた来ます。2回目の逆算は、1回目の記録があるかどうかで精度が変わります。
見るタイミング
| 発注した日 | 各工程の予定日を紙に書き出し、見えるところに貼ります。 |
|---|---|
| 工程が1つ終わるたび | 実際の日付を書き足します。あとでまとめて思い出すのは難しい作業です。 |
| 取り付けの前日 | 残りの予備日を数え、間に合うかを判断します。 |
| 開店の翌週 | 予定と実際の差を合計し、次の看板のための数字として残します。 |
5つの工程で出た差を足すと、次に積むべき予備日が出ます。 工程の数から出した日数より多ければ、次はそちらを採ってください。 自分の店の実測値のほうが、一般的な置き方より当たります。
遅れたとき、この順で疑う
- 1自分の返事が止まっていないか
まず手元を見てください。校正が机の上で二日眠っていた、というのは実際によくあります。ここを直すのに費用はかかりません。
- 2決めきれていない項目がないか
文字の大きさを保留にしたまま先へ進むと、後ろの工程で必ず戻ります。保留を1つ潰すたび、日程は前へ動きます。
- 3連絡の窓口が分かれていないか
担当が二人いると、伝えたつもりの内容が片方で止まります。窓口を一本にするだけで往復が減ります。
- 4手続きの結果を待っていないか
待ち時間が読めない工程は、こちらの努力では縮みません。並行して進められる工程がないかを探してください。
- 5仮の表示でつなげないか
本設の看板が間に合わないなら、開店を止めるより先に、暫定の表示を検討します。
- 6開店日そのものを動かすか
いちばん最後に置いてください。ここを動かすと、告知も仕入れも人の手配もやり直しになります。
上から順に、費用のかからないものが並んでいます。 1番から3番は、その日のうちに手を打てます。 4番から先は、こちらだけでは動かせない領域に入ります。
壁に固定する看板が間に合わないとき、幕や置き型の表示でつなぐ方法があります。 短い期間で用意でき、本設ができたら外せます。 使い方はのぼり・置き看板の使い方と 横断幕・懸垂幕の作り方にまとめています。
よくある失敗5パターン
どれも、動き出す前に決めておけば起きません。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 開店日を伝えずに見積もりを取った | 納期の合わない案が並び、比べ直しになる | 最初の連絡文に開店日を1行入れる |
| ロゴを画像でしか持っていなかった | 描き起こしの期間が後から挟まる | 早い段階でデータの形式を確かめる |
| 予備日を積まなかった | 雨が二日降っただけで開店に間に合わない | 工程の数だけ日数を足しておく |
| 校正を関係者に一斉に回した | 意見が割れ、往復が三度に増える | 決める人を一人に決めてから回す |
| 電源の位置を後回しにした | 取り付け当日に光らせられない | 光らせるなら電源から先に決める |
セルフチェックリスト
業者へ連絡する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 動かせない開店日を、日付で書き出した
- 開店日から後ろ向きに、工程を並べた紙がある
- 工程の数だけ、予備日を足してある
- 看板に載せる屋号の表記を、文字で確定させた
- 載せる情報の数に、上限を決めた
- ロゴが印刷に使える形式で手元にあることを確かめた
- 取り付ける面の写真と、おおよその寸法を用意した
- 夜に光らせるかどうかを決めた
- 許可や承諾が要る面かどうかを、窓口に確かめた
- 校正の赤を入れる人を、一人に決めた
- 間に合わなかった場合の暫定の手を考えてある
- 工程ごとの予定日と実日を書く場所を用意した
よくある質問
看板の準備は、何から決めればいいですか?
予備日は何日くらい見ればいいですか?
許可の審査には、どのくらいかかりますか?
開店日に間に合わないと分かったら、どうしますか?
すでに発注済みですが、日程が心配です。
予算が限られるとき、日程はどう考えますか?
まとめ
看板の日程を組むときは、次の順序で決めていきます。
| 1 逆算する | 開店日を右端に置き、工程を左へ並べる。 |
|---|---|
| 2 先に確定させる | 屋号、情報の数、データ、面、光らせるか。 |
| 3 待ち時間を確かめる | 審査と承諾の期間を、窓口へ直接尋ねる。 |
| 4 金額に直す | 1日の粗利 × 遅れた日数で、前倒しの上限を出す。 |
| 5 記録する | 予定日と実日の差を残し、次の予備日にする。 |
日数は、あとから買い足せない資源です。 仕様は削れます。載せる情報も削れます。過ぎた日だけが戻りません。 まず開店日を紙に書き、そこから左へ引き算するところから始めてください。