看板のリニューアル
面を数えて仕分ける5ステップ
屋号やロゴを変えることになった方へ。「どこまで替えるか」「どれを残せるか」 「切り替えが伝わったかをどう知るか」。 この3つに順番に答えていきます。
看板を変える4つの理由と、修理で足りる場合の見分け方/ 面を数え上げる4か所/ 表示だけ替える・作り替える・やめるの仕分け/ 表示内容を変えるときに要る手続き/ 切り替えの順番で費用がどう変わるか/ 旧屋号の問い合わせで、浸透を測る方法
替えるものより、残せるものを先に探します
看板のリニューアルは、直すことでも外すことでもありません。変えることです。 そして変える作業の大半は、実は数え上げる作業です。 いま何面出ているかが分からないうちは、見積を取っても抜けが出ます。
つまずく場所は決まっています。屋外の面だけ替えて、車や封筒に古い名前が残る。 全部を一度に作り替えて、費用が跳ね上がる。 細い書体のロゴをそのまま拡大し、遠くから読めなくなる。地図の登録を後回しにする。
変える理由を決める、面を数える、3つに仕分ける、手続きを確かめる、順番と費用を組む。 この順に進めれば、残せる部分がはっきりします。
変える理由を、1文にする
理由があいまいなまま進むと、範囲がどこまでも広がります。
表示している名前が実態と違うと、初めての人が迷います。ここは替えないという選択がありません。
業態を広げた、主力を替えた。看板の業種表示が古いままだと、その店だと気づかれません。
色が抜け、文字が欠けている。この場合は修理で足りることがあります。まず切り分けてください。
目的が最もあいまいになりやすい理由です。何が変われば成功かを、先に1文で決めてください。
屋号が変わっていないのに読めなくなっているなら、それは修理の話です。 色あせや部分的な欠けは、面材の張り替えや塗り直しで戻る場合があります。 変えるか直すかの切り分けを、最初に済ませてください。 症状の切り分けは看板の修理ガイドで扱っています。
いま出ている面を数える
4か所を回れば、たいてい想定より多く見つかります。
| 屋外の面 | 壁面、袖、自立、窓、幕、のぼり。道から見えるものすべて。 |
|---|---|
| 入口まわり | ドアの表示、営業時間の札、館銘板、案内の矢印。 |
| 持ち物と車 | 名刺、封筒、包装、作業着、社用車。屋号が入っているもの。 |
| ネット上の表記 | 自社サイト、地図サービスの登録、SNSの名前。看板と食い違いやすい場所。 |
紙に、面の名前と場所と大きさを1行ずつ書き出してください。 書き出す作業そのものが、次の仕分けの材料になります。 写真も1面ずつ撮っておくと、業者との話が一度で済みます。
見落としが多いのは、ネット上の表記です。自社サイト、地図サービスの登録、SNSの名前。 看板を替えても、ここが古いままだと、初めての人は別の店だと思います。
面ごとに、3つに仕分ける
全部を作り替える必要はありません。
| 仕分け | やること | 選べる条件 |
|---|---|---|
| 表示だけ替える | 枠と取り付けを残し、面材だけ交換 | 工事が軽い。枠と面が分かれた構造なら選べる |
| 作り替える | 枠ごと外して、新しく付ける | 大きさや位置を変えたいとき。工事は重い |
| やめる | 外して、付け直さない | 数が多すぎて手が回っていない面はここへ |
枠と表示面が分かれた構造なら、面材だけの交換で済みます。 足場も基礎も電気も、そのまま使えます。 面ごとに、枠を残せるかどうかを先に確かめてください。
「やめる」を選択肢に入れることも大事です。手が回っていない面、 傷んだまま出し続けている面。切り替えは、数を減らす数少ない機会です。
新しいロゴが、看板で読めるか
紙とスマートフォンで見て良いロゴが、看板で読めるとは限りません。 細い線は遠くで消えます。文字の間が詰まっていると、離れると1つの塊に見えます。
看板に使う版は、線を太くし、字間を空けたものを別に用意してください。 ロゴをそのまま拡大すると、同じ寸法でも読める距離が短くなります。 書体と色の考え方は看板デザインの決め方にまとめています。
手続きが要るかを確かめる
中身を変えるだけでも、届出の対象になることがあります。
| 表示内容を変える扱い | 許可を受けている看板の中身を変えると、届出が要る場合があります。 |
|---|---|
| 大きさや位置を変える扱い | 寸法や場所が変わると、新しく出すのと同じ扱いになることがあります。 |
| 更新の期限 | 許可には期限があります。リニューアルのついでに、期限を確かめてください。 |
| 借りている建物の承諾 | 貸主や管理会社の承諾が、改めて要ることがあります。 |
| 同じ屋号を使う他の面 | 車両やのぼりも、扱いが分かれる場合があります。 |
屋外広告物の許可には期限があります。リニューアルは、それを確かめる良い機会です。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、期間も分かれます。
※ 要否は自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口か施工業者にご確認ください。
手続きの流れは屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
建物を借りている場合は、貸主や管理会社の承諾が改めて要ることがあります。 契約まわりの確認は借りた店舗の看板で扱っています。
順番を組んで、費用を抑える
同じ工事でも、まとめる面の組み合わせで金額が動きます。
| 表示だけか、作り替えか | ここが最大の分かれ目です。足場と基礎と電気の有無が変わります。 |
|---|---|
| 同時にやるか、分けるか | 足場や高所作業車は、1回で複数の面を扱えると回数が減ります。 |
| 外した面の処分 | 作り替えでは、外した看板の処分が別に載ります。 |
| ネット上の表記の直し | 費用は小さいものの、抜けやすい作業です。数に入れてください。 |
| 切り替えまでの仮の表示 | 工事の間、店名が出ない時間を作らないための費用です。 |
足場や高所作業車は、1回の手配で複数の面を扱えます。 高い場所の面を別々の日に工事すると、その回数だけ費用が乗ります。 高いところの面は、日をそろえてください。 高所の工事は高い場所の看板工事ガイドで扱っています。
掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
月に何人来れば釣り合うか
年あたりの費用 ÷ 12 = 月あたりのコスト
月あたりのコスト ÷ (客単価 × 粗利率) = 月に必要な新規客数
例:全体で60万円かけ、次の看板を8年使うとします。600,000 ÷ 8 = 年75,000円。 75,000 ÷ 12 = 月6,250円です。客単価4,000円、粗利率60%の店なら、 6,250 ÷ (4,000 × 0.6) = 2.6 になります。 月に約3人、12日に1人の新規客で釣り合う計算です。
切り替えが伝わったかを測る
古い名前で連絡が来る回数が、そのまま指標になります。
古い名前で連絡が来る回数を記録します。減っていけば、切り替えが伝わっています。
事情を知らない人に、離れた場所から店名と業種を読んでもらいます。新しい表示が読めるかを確かめます。
切り替えの前後で、来店時の「何で知ったか」の内訳を比べます。
登録した名前と、看板の表示がそろっているかを見ます。ここがずれると、初めての人が迷います。
旧屋号での問い合わせを数えるだけで足ります。減っていけば、伝わっています。
見るタイミング
| 切り替えの直後 | 古い名前が残っている面が無いかを、外を歩いて確かめます。 |
|---|---|
| 1か月 | 旧屋号での問い合わせの数を見ます。 |
| 3か月 | 通りかかりの新規客が、切り替え前と比べてどうかを見ます。 |
| 半年 | 残した面(やめると決めた面)に、未練が出ていないかを見直します。 |
うまくいかないとき、この順で疑う
- 1古い表示が残っていないか
車、封筒、地図の登録。屋外の面より、ここが残ります。
- 2名前がそろっているか
看板とネット上で表記が違うと、別の店だと思われます。
- 3業種が伝わっているか
名前だけ新しくして、何の店か分からなくなる例があります。
- 4読める大きさか
新しいロゴが細い書体だと、同じ寸法でも読めなくなります。
- 5そもそも変える必要があったか
ここまで確かめて残ったら、面の数を増やす方向に切り替えます。
古い面を外してから新しい面が付くまで、日が空くことがあります。 その間、店の名前がどこにも出ていない状態になります。 仮の表示を1枚用意するだけで、この穴は埋まります。
よくある失敗5パターン
どれも、数え上げの段階で防げます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 屋外の面だけ替えた | 車や封筒に古い名前が残り、混乱が続く | 4か所の棚卸しに戻り、残りを洗い出す |
| 全部を一度に作り替えた | 費用が跳ね上がり、途中で止まる | 表示だけ替えられる面を先に仕分ける |
| 細い書体のロゴをそのまま拡大した | 同じ大きさでも、遠くから読めなくなる | 看板用に、太さを調整した版を用意する |
| ネット上の表記を後回しにした | 地図の名前と看板が食い違い、初めての人が迷う | 切り替えの日に、登録の変更もまとめて行う |
| 手続きの届出を忘れた | 許可の内容と実際の表示が食い違う | 内容変更の扱いを、着工前に窓口へ確かめる |
セルフチェックリスト
工事を頼む前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 何が変われば成功かを、1文で言える
- 屋外の面をすべて数え上げた
- 入口まわりの表示を数え上げた
- 名刺・封筒・作業着・社用車を確かめた
- ネット上の表記を確かめた
- 面ごとに「表示だけ/作り替え/やめる」を決めた
- 枠と面が分かれた構造かを、面ごとに確認した
- 許可の内容変更が要るかを窓口に確かめた
- 借りている建物なら、貸主の承諾を得た
- 足場や高所作業車を使う面をまとめた
- 工事の間、店名が出ない時間を作らない段取りにした
- 旧屋号での問い合わせを記録する場所を用意した
よくある質問
看板のリニューアルは、何から始めればいいですか?
全部を作り替える必要がありますか?
表示を変えるときも、手続きは要りますか?
切り替えは、いつ効果を判断しますか?
傷んでいるだけの場合も、作り替えますか?
費用を抑えたい場合、どうしますか?
まとめ
看板のリニューアルは、次の順序で進めます。
| 1 変える理由 | 何が変われば成功かを1文にする。修理で足りないかを切り分ける。 |
|---|---|
| 2 面を数える | 屋外・入口・持ち物と車・ネット上の4か所を回る。 |
| 3 仕分ける | 表示だけ替える/作り替える/やめる、の3つに分ける。 |
| 4 手続き | 内容変更の届出と、許可の期限を同時に確かめる。 |
| 5 費用と順番 | 高いところの面をまとめ、工事の回数を減らす。 |
リニューアルの成否は、数え上げの精度で決まります。 面を1つ残すと、古い名前はそこから生き続けます。