ピクトグラム(図記号)の使い方
文字を減らして伝える5手順
これから案内表示に図記号を使う方へ。 図に置き換えられる項目と、文字でなければ伝わらない項目があります。 線引きを先にすると面の要素が減り、残った表示が読まれます。 仕分けから直し方まで、手を動かす順に並べました。
図にできる項目と、文字を残す項目の仕分け方/ 一つの面に載せる図の上限/ 通じる図の探し方と、意味を人に確かめる方法/ 読ませる距離から、文字と図の大きさと余白を出す割り算/ 標準化された図記号と、配布されている素材の使用条件の確かめ方/ 月あたりの費用を、必要な新規客数に直す式
図に置き換えると、読む時間が短くなる
案内表示の相談は、載せる文言を足す方向へ進みがちです。 ところが、通りかかった人が使える時間は増えません。
起きやすいのは、次の四つです。 文字を図に置き換えたが、意味が伝わらない。 見た目をそろえるために、図を自分で描き起こす。 図を文字と同じ大きさで並べ、遠くから見分けられない。 配布されている素材を、利用の範囲を確かめないまま入稿する。
どれも、発注の前に手を打てば起きません。 仕分けて、図を選び、大きさを出し、条件を確かめて、測って直す。 この五つを順に埋めていきます。
図に置き換える表示と、文字を残す表示を仕分ける
全部を図にはできません。線引きから始めます。
面ごとではなく、項目ごとに並べます。トイレ、順路、禁煙、営業時間、注意書き。数え上げると、頭の中にあった数より増えます。
読んだ人が次にする動きを、となりに書きます。動きが書けない項目は、そこに掲示する理由がありません。
進む、入らない、押す。動きが一つに決まるなら、絵で示せます。ここが図に置き換えられる項目です。
時間、金額、例外。数字や但し書きが付くものは、絵にすると意味が変わります。文字で書いたほうが早く伝わります。
仕分けの基準は一つです。 見た人の動きが一つに決まるなら図、条件が付くなら文字。
| 表示する項目 | 扱い | そう決める理由 |
|---|---|---|
| トイレの位置 | 図にする | 動きが「向かう」の一つに決まる |
| 非常口 | 図にする | 見慣れた形が広く使われている |
| 禁煙 | 図にする | 「しない」を一つ示すだけで済む |
| 立入禁止の範囲 | 図と文字を併記 | どこまでかを言葉で補う |
| 営業時間 | 文字を残す | 数字そのものが情報になる |
| 料金の条件 | 文字を残す | 例外と但し書きが付く |
図に置き換えても、項目の数は減りません。 減るのは、一項目あたりの文字の量です。 項目そのものを減らしたいなら、掲示する理由から見直します。
面の幅は決まっています。図を並べるほど、一つあたりが小さくなります。 四つ目からは、別の面へ移すか、その場に要るかを見直してください。 トイレ・順路・非常口。この三つが並ぶ面には、注意書きの図を足しません。 複数の行き先を一覧にする面は、テナント案内板の作り方で組み方を扱っています。
見慣れた図を選び、自作を避ける
図は、見た人が過去に見た形と照らして意味を取ります。
駅や空港、大きな施設で使われている形は、多くの人が一度は目にしています。同じ形を使えば、意味の説明が要りません。
図だけを見せて、何の表示かを言ってもらいます。5人に聞いて4人が同じ答えなら、その面で使えます。
離れた位置から見えるのは輪郭です。細部を描き込むほど、遠くでつぶれて別の形に見えます。
人や矢印の向きが通路と逆だと、逆方向へ歩く人が出ます。図を左右反転させてよいかは、出典の条件で決まります。
通じる図と、通じない図の差は、絵の巧みさではありません。 見た人にとって、その形が初めてかどうかです。
| 図の出どころ | 伝わり方 | 向く面 |
|---|---|---|
| 公共施設で使われる形 | 説明なしで通じやすい | 不特定の人が来る面 |
| 業界で決まっている形 | その仕事の関係者に通じる | 関係者だけが見る面 |
| 自分で描き起こした形 | 初めて見る人には通じない | 装飾として添える面 |
図にした項目は、言語の数だけ増えません。 言語の絞り方は多言語表記の看板・案内サインの作り方で扱っています。
店の雰囲気に合わせて図を作ると、面の見た目はそろいます。 ただし、初めて見る人には、その形を読み解く材料がありません。 描き起こすなら、図の下に短い言葉を一語だけ添えてください。 飾りとして置く図と、案内として働かせる図は、分けて考えます。
図の大きさと余白を、距離から出す
感覚で決めません。読ませる距離から割り算で出ます。
最初に、その図を何m先から見せるかを決めます。 距離が決まれば、あとは計算です。
30m先 → 30,000 ÷ 500 = 60mm / ÷ 250 = 120mm → 6〜12cm
10m先 → 10,000 ÷ 500 = 20mm / ÷ 250 = 40mm → 2〜4cm
5m先 → 5,000 ÷ 500 = 10mm / ÷ 250 = 20mm → 1〜2cm
3m先 → 3,000 ÷ 500 = 6mm / ÷ 250 = 12mm → 0.6〜1.2cm
図は、同じ距離の文字より大きく取ります。 文字は横に並べて追いますが、図は一目で形を見分けるからです。 輪郭の内側が残る大きさが要ります。
30m先 → 6 × 2 = 12cm / 12 × 3 = 36cm → 12〜36cm
10m先 → 2 × 2 = 4cm / 4 × 3 = 12cm → 4〜12cm
5m先 → 1 × 2 = 2cm / 2 × 3 = 6cm → 2〜6cm
3m先 → 0.6 × 2 = 1.2cm / 1.2 × 3 = 3.6cm → 1.2〜3.6cm
| 読ませる距離 | 文字の高さ | 図の高さ |
|---|---|---|
| 30m先(道から見せる) | 6〜12cm | 12〜36cm |
| 10m先(敷地の中で見せる) | 2〜4cm | 4〜12cm |
| 5m先(廊下の先で見せる) | 1〜2cm | 2〜6cm |
| 3m先(扉の前で見せる) | 0.6〜1.2cm | 1.2〜3.6cm |
この幅は、明るい場所で正面から見た場合の目安です。 書体、明暗差、光の当たり方で動きます。 取り付ける高さと明暗差の決め方はユニバーサルデザインの看板にまとめています。
余白は、図の高さから出す
図のまわりが詰まっていると、輪郭が背景に溶けます。 空ける幅も、図の大きさから決まります。
図の高さ20cm → 20 ÷ 4 = 5cm
面の一辺 = 20 + 5 × 2 = 30cm
図を大きくするより、まわりを空けるほうが安く済みます。 となりの掲示を一枚はがせば、材料を増やさずに同じ効果が出ます。
使用条件を確かめ、費用の動きを見る
図は絵であると同時に、誰かが作ったデータです。
形が決まったら、その図の出どころを確かめます。 出どころごとに、使える範囲が違います。
示されている使用条件を確かめる
案内用として標準化された図記号があります。 使用の条件が示されている場合があります。出典と条件をご確認ください。
形を変えずに使うことを求めるもの、色の指定があるものがあります。 加工してよい範囲は、出典ごとに違います。 左右の反転や色の変更が許されるかは、制作を頼む前に確かめます。
無料で配られている図記号にも、条件が付きます。 仕事に使えるか、加工してよいか、出どころの表示が要るか。この三つが配布元ごとに違います。 ダウンロードした画面ではなく、利用条件が書かれたページを保存してください。 発注の際は、同じ条件を制作を頼む相手にも渡します。 画像や図の権利をどう確かめるかは看板に使う画像と権利で扱っています。
施設の種類によっては、掲示する内容や方法が定められている場合があります。
図に置き換えてよいか、文字を併記するかは、そこで決まります。
屋外に出す表示は、屋外広告物としての手続きに関わることもあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
※ 要否と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。
費用が動くところを見る
| 図の数 | 面に載せる図の数だけ、版下(印刷用のデータ)の手間が増えます。 |
|---|---|
| 使えるデータの有無 | 形のデータをそのまま使えるか、描き起こしが要るかで変わります。 |
| 使用条件の確認 | 出典をたどり、条件を読み、記録に残す手間が入ります。 |
| 色数 | 単色にするか、複数の色を使うか。刷り方と材料の選び方が変わります。 |
| 面の大きさ | 図を大きく取ると、面も大きくなります。材料の面積で動きます。 |
| 改訂の回数 | 図を差し替えるたびに、データの手直しと貼り替えが要ります。 |
掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
月あたりに直し、必要な人数を出す
一式の総額120,000円 ÷ 60か月 = 月2,000円
この120,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
1人1,500円 × 粗利率0.6 = 900
2,000 ÷ 900 = 2.22 → 月3人
体感に直す → 30日 ÷ 3人 = 10日に1人
10日に1人、迷わず入れた人が増えれば釣り合う計算です。 客単価と粗利率は、自分の店の数字へ置き換えてください。 聞かれる手間が減る面もあります。 人手で見るなら、客単価を時給に置き換えて計算します。
迷った人の動きで測り、直す
伝わったかどうかは、見た人の足の向きに出ます。
「トイレはどこですか」と聞かれた数を、日ごとに正の字で残します。準備も費用も要らず、その日から始められます。
図の前で足が止まった人を数えます。止まる人が多い図は、意味を読み取るのに時間がかかっています。
図を見た後で戻ってきた人です。矢印や人の向きを取り違えている印になります。
面から図の部分だけを切り出して見せ、意味を答えてもらいます。5人に聞けば、通じる図と通じない図が分かれます。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目はその場の会話に混ぜられるので、道具が要りません。
見る時期を決める
| 1週間 | 聞かれた回数を数え、質問の多い項目を書き出します。 |
|---|---|
| 1か月 | 立ち止まる人と引き返す人を、面ごとに並べます。 |
| 3か月 | 聞かれた回数を、最初の1週間と並べて比べます。 |
| 1年 | 色あせと汚れを見ます。輪郭がぼやけていないかを確かめます。 |
数える前の記録がないと、比べる相手ができません。 図を貼る前の1週間に、聞かれた回数を数えておいてください。 後から作れない数字は、これだけです。
効かないときは、この順で疑う
- 1図の前に立ち、視線をさえぎる物をどける
のぼり、棚、植木。費用はかかりません。読まれない原因の多くは、ここで見つかります。
- 2図の位置を、目の高さへ動かす
貼り替えるだけで済む場合があります。見上げる位置の図は、近づくほど視野から外れます。
- 3まわりの掲示をはがし、余白を作る
となりに紙が貼られていると、図の輪郭が背景に埋もれます。はがすと戻ります。
- 4図に短い言葉を一語だけ添える
「順路」「関係者以外」。一語なら、図の大きさを変えずに収まります。
- 5一回り大きい図に貼り替える
面はそのままで、図の部分だけを差し替えます。大きさは距離から出した数字で選びます。
- 6見慣れた形の図に差し替える
描き起こした図を、公共の場で使われている形へ置き換えます。面ごと作り直すのは、この後です。
上のほうほど、費用をかけずに直せます。 1番から3番までは、その日のうちに手を付けられます。 面ごと作り直すのは、六つを試した後です。
よくある失敗5パターン
どれも、図を貼り替えるか、まわりを片づけることで手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 図を文字と同じ大きさで並べた | 遠くから見分けられず、通り過ぎられる | 図だけを一回り大きく貼り替える。面は作り直さない |
| 一つの面に図を七つ載せた | どれも小さくなり、探す時間が伸びる | 三つに絞り、残りを別の面へ移す |
| 見た目に合わせて図を描き起こした | 意味が伝わらず、聞かれる回数が減らない | 図の下に一語を添える。次の改訂で見慣れた形へ寄せる |
| 配布元の条件を見ずに入稿した | 差し替えが必要になり、納期が延びる | 発注前に利用条件を保存し、制作を頼む相手へ渡す |
| 図を貼った後に、前へ棚を置いた | 図が隠れ、案内が途切れる | 棚をどける。動かせないなら図の位置を変える |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 表示する項目を書き出し、読んだ人が取る動きを一つずつ書いた
- 動きが一つに決まる項目だけを、図の候補にした
- 時間や金額など、条件の付く項目は文字のまま残した
- 一つの面に載せる図を、三つまでに収めた
- 図の意味を、事情を知らない人に聞いて確かめた
- 図を見せる距離を決め、文字の高さを割り算で出した
- 図の高さを、同じ距離の文字の2〜3倍で取った
- 図のまわりに、図の高さの4分の1にあたる余白を空けた
- 使う図の出典をたどり、示されている使用条件を読んだ
- 素材の配布元の利用範囲を保存し、制作を頼む相手へ渡した
- 月あたりの費用を、必要な新規客数に直した
よくある質問
ピクトグラムは、何から決めればいいですか?
図はどのくらいの大きさにしますか?
図記号は自由に使ってよいですか?
手続きや届出は要りますか?
伝わったかは、どう判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
文字を図に置き換える判断は、次の順序で進みます。
| 1 仕分ける | 動きが一つに決まる項目を図に、条件の付く項目を文字にする。 |
|---|---|
| 2 図を選ぶ | 公共の場で使われている形を探し、意味を人に答えてもらう。 |
| 3 大きさを出す | 距離から文字の高さを割り、図はその2〜3倍で取る。 |
| 4 条件を確かめる | 出典と利用の範囲を保存し、制作を頼む相手へ渡す。 |
| 5 測って直す | 聞かれた回数を数え、さえぎる物をどけるところから直す。 |
図にする目的は、飾ることではなく、読む時間を短くすることです。 通じない図は、文字より遠回りになります。