ユニバーサルデザインの看板
誰にでも読める5ステップ
高齢の方、子ども、車いすの方も訪れる場所に表示を出す方へ。 同じ1枚でも、立っている人と座っている人では見える位置が違います。 先に決めるのは見た目ではなく、床から測った高さです。
来る人の幅を書き出し、必要な条件を決める手順/ 立った人と座った人の目の高さと、表示の中心の置き方/ 明暗差を、白黒に変えて確かめる方法/ 色以外の手がかりを重ねる考え方/ 建物と屋外広告物で、それぞれ確かめる決まり/ 費用を年あたりに直し、必要な客数を出す計算
読めるかどうかは、高さで半分決まります
表示の相談では、色と書体の話から始まることが多くあります。 ところが同じ配色でも、付ける高さが変われば読まれ方は大きく変わります。 先に決めるのは、床から測った取り付けの位置です。
見る人の幅を考えないまま決めると、こうなります。壁の空いた場所に付けたところ、 座っている人には見上げる位置になった。色の違いだけで区別したため、 見え方に幅のある人には同じ色に見えた。細い書体を選び、離れると線が消えた。 1枚に案内をまとめたので、分岐の手前で足が止まる。
見る人を書き出し、高さと明暗差を決め、決まりを確かめ、 費用を年あたりに直し、読めているかを測る。 この5つで、どこに何を出すかが決まります。
店舗、事務所、施設の入口と館内の表示を想定しています。 扱うのは、見る人の幅を広げるための決め方です。 建物の規模や用途による決まりは地域と建物で変わりますので、管轄の窓口へご確認ください。
誰が見るのかを、先に書き出す
「みんなに見やすく」では決まりません。端にいる人を書きます。
見やすさは、いちばん条件の厳しい人に合わせると全体が上がります。 まず、来る人の端を書き出してください。 真ん中の人ではなく、端の人が基準になります。
- 1来る人の年齢の幅を書く
上と下の端を書きます。上の端が高いほど、必要な明るさと文字の大きさが上がります。
- 2乗り物と足取りを書く
歩いて来るか、車いすやベビーカーを押して来るか。目の高さが数百ミリ変わります。
- 3手がふさがるかを書く
荷物、子ども、杖。手がふさがると、立ち止まって読む時間が短くなります。
- 4初めて来る割合を書く
常連ばかりなら表示は少なくて済みます。初めての人が多いほど、分岐に1枚ずつ要ります。
- 5見る時間帯を書く
朝、夕方、夜。同じ表示でも、光の量で読める距離が変わります。
- 6読まずに動く人を数える
表示の前を素通りする人がどれだけいるか。数えると、直す場所がすぐ分かります。
書き出したら、その条件で自分が歩いてみます。 車いすが無くても、いすに座ってみれば目の高さは再現できます。 荷物を両手に持って通路を歩けば、読める時間の短さが分かります。
高さと明暗差を、数字で決める
案の段階で決めるのは4つです。順番に片づけます。
立った人と、座った人の両方から見える位置に置きます。壁の空き場所で決めると、どちらかが見上げるか見下ろすことになります。
色の組み合わせより、明るさの差が効きます。似た明るさの2色は、離れると1色に見えます。差を付ければ、色の見え方に幅があっても読めます。
飾りの少ない書体を選びます。細すぎる線は離れると消えます。似た形の文字が並ぶときは、大きさより間隔を広げるほうが効きます。
色だけで区別すると、伝わらない人が出ます。形、位置、文字、記号のうち、2つ以上を重ねてください。
床から測って、中心の位置を決める
立った大人の目の高さは、およそ1,450〜1,600mmです。 いすや車いすに座る人は、およそ1,100〜1,300mmになります。 身長と座り方で変わるため、幅で書いています。
| 見る人 | 目の高さの目安 | 表示の中心 |
|---|---|---|
| 立って歩く大人 | 約1,450〜1,600mm | 1,400〜1,600mm |
| いすや車いすに座る人 | 約1,100〜1,300mm | 1,200〜1,400mm |
| 小学校低学年の子ども | 約1,000〜1,150mm | 1,000〜1,200mm |
| 両方に届かせる1枚 | — | 1,300〜1,400mm |
1枚で両方に届かせたいときは、真ん中を取ります。 1,500と1,150を足して2で割ると1,325です。 中心を1,300〜1,400mmに置けば、立った人も座った人も見上げずに読めます。
高い位置に付けてよいのは、遠くから探させる表示だけです。 近づいて読ませる表示を高い場所に置くと、真下では見えなくなります。
明暗差は、白黒にして確かめる
文字と地色の関係で効くのは、色の違いではなく明るさの差です。 案の画像を白黒に変えてください。色の情報が消え、明るさの差だけが残ります。 ここで読めない組み合わせは、離れた位置でも読めません。
色の見え方には人によって幅があります。 赤と緑、青と紫のように、明るさの近い2色は見分けにくくなることがあります。 色だけで区別せず、形か文字を必ず重ねてください。
屋外の表示は、日射しで色が抜けます。濃い色ほど変化が目立ちます。 作った直後にちょうどよい差では、数年後に足りなくなることがあります。 最初から差を大きめに取っておくと、寿命が延びます。
載せる要素を減らす
文字が小さくなる原因は、板の大きさではなく要素の数です。 1枚に3つ以上の用件を入れると、どれも小さくなります。 用件ごとに分けて、分岐の場所に置き直してください。
文字の高さの決め方は看板デザインの決め方にまとめてあります。 敷地内で人を運ぶ表示は駐車場・入口の案内サインが扱います。
関わる決まりを、位置が決まった時点で確かめる
確かめるのは5つです。建物の側と、屋外の側に分かれます。
表示には、建物に関わる決まりと、屋外広告物に関わる決まりがあります。 どちらが関わるかは、出す場所で分かれます。 扱いは建物の規模と用途で変わりますので、事前に管轄の窓口へご確認ください。
| 建物の案内表示に関する決まり | 規模や用途によって、案内表示の設け方が定められている場合があります。 |
|---|---|
| 触って読む表示、点字の表示 | 設ける場所や高さの考え方があります。位置は触れる範囲に収めます。 |
| 避難に関する表示 | 看板とは別の決まりがあります。位置や大きさを案内の都合で動かせません。 |
| 屋外に出す看板 | 屋外広告物の扱いがあります。届出や許可が要る場合があります。 |
| 通路にはみ出す表示 | 通る人の動線を狭めます。突き出す長さと高さの扱いを確かめます。 |
消防や避難に関する館内の表示には、看板とは別の決まりがあります。 位置や大きさが定められているものがあり、案内の都合では動かせません。 先にこちらを確定してから、案内の表示を配置してください。
触って読む表示や点字の表示は、手が届く範囲に置きます。 高い位置に付けると、触れる人が使えません。 設ける場所の考え方も窓口で確かめられます。
壁から突き出す表示は、車いすやベビーカーの通り道を削ります。 突き出す長さと取り付けの高さには扱いがあり、地域で変わります。 位置が決まった時点で問い合わせてください。
費用を年あたりに直し、取り戻すラインを計算する
表示は何年も残ります。合計額のままでは判断できません。
年あたりの費用 ÷ (客単価 × 粗利率) = 年に必要な新規客数
読める表示にすることで増えるのは、入りかけてやめた人です。 比べる相手は、1年ぶんの粗利です。
埋める数字は5つ
| 表示一式の費用 | 看板と館内の表示を分けて出してもらいます。使う年数が違います。 |
|---|---|
| 使う年数 | 屋外は日射しと風雨を受けます。館内の表示より短くなります。 |
| 年の維持費 | 清掃、貼り替え、照明の電気代。 |
| 客単価 | 1人が1回で使う金額。売上を客数で割れば出ます。 |
| 粗利率 | 売上から仕入れや材料を引いて残る割合。 |
体感できる単位まで落とす
表示一式を18万円、使う年数を6年、年の維持費を6千円と置きます。 180,000を6で割ると30,000円。これに6,000円を足して、年あたり36,000円です。
客単価を2,400円、粗利率を5割5分とします。 2,400に0.55を掛けて、1人あたり1,320円。 36,000を1,320で割ると27.27で、年に約27人です。 365を27.27で割ると13.38。およそ13日に1人、新しい客が増えればつり合います。
置いた金額は計算の置き方であり、相場ではありません。 自分の店や施設の数字を入れて、もう一度計算してください。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめてあります。
読めているかを測り、直す場所を決める
測る道具は、紙とストップウォッチだけで足ります。
案の画像を白黒に変えます。色の違いが消え、明るさの差だけが残ります。ここで読めなくなる組み合わせは、離れた位置でも読めません。
紙に出して床に置き、立ち上がって見下ろします。細かい要素が消え、遠目の見え方に近づきます。消えた要素は、そもそも要らない要素です。
表示の前で立ち止まる人と、そのまま通る人を数えます。1日15分で足ります。素通りが多い表示は、位置か高さが合っていません。
道を聞かれたら、聞かれた地点を記録します。同じ場所が繰り返し出るなら、そこに表示が足りていません。
夕方と夜に見に行きます。昼に見えていた表示が沈むことがあります。照明の向きを変えるだけで戻ることもあります。
1つ目は、作る前に済ませられます。
判断のタイミング
| 案の段階 | 白黒に変えて読めるかを確かめます。ここが最も安く直せます。 |
|---|---|
| 取り付けた直後 | 素通りする人を数えます。位置と高さの見直しはここです。 |
| 3か月 | 尋ねられた場所を集めます。足す表示の枚数が決まります。 |
| 1年 | 色あせと汚れ。明暗差は、退色でいちばん先に失われます。 |
数えるのは、1日15分で足ります。 同じ時間帯に、同じ場所で数えてください。 雨の日と晴れの日を混ぜると、数字が動く理由が分からなくなります。
読まれないときは、この順で疑う
- 1取り付けの高さを変える
外して付け直すだけで済みます。見上げる位置にあるものを、目の高さまで下げると読まれ方が変わります。
- 2照明の向きを変える
表示が暗いのではなく、光が当たっていないことがあります。既にある照明の角度を変えるだけで届きます。
- 3要素を削る
文字が小さいのではなく、載せた要素が多いことがあります。減らせば、残った文字を大きくできます。
- 4色の組み合わせを入れ替える
同じ2色でも、どちらを地にするかで読みやすさが変わります。明るい地に濃い文字が基本の形です。
- 5分岐に1枚足す
1枚を大きくするより、迷う場所に小さい1枚を足すほうが効きます。矢印と行き先だけで足ります。
- 6作り直す
上の5つを試したうえで決めます。作り直しは、いちばん最後に置いてください。
並びは、費用のかからないものからです。 1番と2番は付け替えと角度の調整で終わります。 作り直しは、最後に置いてあります。
よくある行き違い5パターン
どれも、作り直さずに手を打てます。
| 行き違い | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 壁の空いた場所に付けた | 座った人からは見上げる位置になる | 中心を1,300〜1,400mmに付け直す |
| 色の違いだけで区別した | 見え方に幅がある人に伝わらない | 形か文字を重ね、手がかりを2つにする |
| 細い書体で統一した | 離れると線が消える | 太さのある書体に替え、間隔を広げる |
| 1枚に案内をまとめた | 分岐の手前で足が止まる | 迷う場所に、矢印だけの小さい板を足す |
| 昼にだけ現地を見た | 夕方以降に表示が沈む | 暗い時間に立ち、照明の向きを変える |
セルフチェックリスト
業者に相談する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、決め直す余地があります。
- 来る人の年齢の幅を、上と下の端で書き出した
- 車いすやベビーカーで来る人がいるかを確かめた
- 手がふさがった状態で通路を歩いてみた
- 表示の中心の高さを、床から測って決めた
- 座った人からも見えることを、実際に座って確かめた
- 文字と地色の明暗差を、白黒にして確かめた
- 色以外の手がかりを2つ以上重ねた
- 飾りの少ない書体を選び、線の太さを確かめた
- 触って読む表示や点字の扱いを、窓口に尋ねた
- 避難に関する表示を、案内の表示と分けて決めた
- 費用を年あたりに直し、必要な客数まで計算した
- 取り付け後に、素通りする人を数えた
よくある質問
見やすい表示は、何から決めればいいですか?
取り付ける高さの目安はありますか?
色の組み合わせは、どう確かめますか?
決まりや基準は、どこまで関わりますか?
すでにある表示を直すなら、どこからですか?
予算が限られるときの優先順位は?
まとめ
誰にでも読める表示にするときは、次の順序で進めます。
| 1 書き出す | 来る人の年齢、乗り物、手のふさがり方を端で書く。 |
|---|---|
| 2 決める | 中心の高さを床から測り、明暗差を白黒で確かめる。 |
| 3 確かめる | 建物側の決まりと、屋外広告物の扱いを分けて尋ねる。 |
| 4 計算する | 費用を年に割り、必要な客数まで落とす。 |
| 5 測る | 素通りする人を数え、高さと照明から直す。 |
この作業は、いすに座って自分の表示を見た時点で半分が終わります。 見上げる位置にあるなら、それが最初に直す場所です。 高さを変えるだけで、読む人は増えます。