看板に使う画像と権利
著作権と商標を確かめる5ステップ
これから看板のデザインを決める方へ。看板は、いちばん人目に触れる印刷物です。 手元の資料では通ることが、屋外では通らない場合があります。 確かめる順番を先に決めておけば、入稿の直前で止まりません。
看板で権利が関わる6つの要素/ 素材の出どころ別に、そのまま使えるかどうか/ 規約で必ず読む「商用」「屋外」「改変」の3か所/ 書体の契約が印刷物と屋外で分かれている理由/ 店名の登録状況を無料で調べる方法/ 掲出後に直す費用と、入稿前に直す費用の差/ 指摘を受けたとき、作り直しを最後に置く手順
看板は、いちばん見られる印刷物です
デザインの相談で後回しになりやすいのが、素材の出どころです。 絵柄が決まり、配置が固まったころに「この写真はどこから来たのか」という問いが浮かびます。 看板は数年そこに残り、通る人の全員が見ます。
確かめないまま進めると、こうなります。入稿の段階で出どころを聞かれ、答えられない。 資料には使えた素材が、屋外では使えないと分かる。 店名を決めてから、同じ分野に先の登録があると知る。 2枚目を別の業者へ頼もうとして、データを渡してもらえない。
要素を洗い出し、出どころを確かめ、使える範囲を読み、直す費用を知り、記録を残す。 この5つを順に埋めれば、あとから慌てずに済みます。
ここに書いたのは、確かめる段取りだけです。 当ガイドは弁護士でも弁理士でもなく、個別の可否は判断できません。 似ているかどうか、許される範囲かどうかは、実際の絵柄と使い方を見ないと決まりません。 判断の分かれる場面では、弁理士や弁護士へご相談ください。 この記事は、相談へ行く前に材料をそろえるために使ってください。
載せる要素を洗い出す
確かめる対象を先に数えます。数えていないものは、確かめられません。
自分で考えた名前でも、同じ分野で先に登録されていることがあります。看板は外から見えるため、気づかれやすい表示です。
撮った人に権利があります。写っている人や建物にも、別の配慮が要ります。自分で撮った1枚がいちばん安全です。
描いた人の許可が要ります。人気の絵柄を似せて描き直したものも、元の権利に触れることがあります。
有償の書体には、使ってよい範囲が契約で決められています。屋外への掲出を別扱いにしているものがあります。
案内図に使う地図にも権利があります。地図会社の素材か、自分で描き起こした略図かで扱いが変わります。
取扱店の表示や、資格を掲げる表示には、それぞれ決まりがあります。名乗ってよい形が定められている場合があります。
デザイン案を開き、要素ごとに指を差していきます。 写真、絵、文字、記号、地図。1つずつ「これはどこから来たか」を言えるかどうかを見ます。 言えないものが、そのまま確かめるべき対象です。
ここで効くのが、載せるものを減らす判断です。 要素が10あれば10か所を確かめることになります。5つに絞れば、手間は半分で済みます。 載せる言葉の削り方は看板の文言の決め方で扱っています。
店内、商品、外観。自分で撮った写真なら、出どころの説明で困りません。 ただし人が写り込んでいれば別の配慮が要ります。他店の看板や商品の箱も同じです。 撮る前に背景を片づけておくと、この手間が消えます。
出どころを確かめる
入手した経路によって、そのまま使えるかどうかが決まります。
| 入手した経路 | 基本の扱い | 見るところ |
|---|---|---|
| 自分で撮った・描いた | そのまま使える | 撮影に他人が関わっていないか |
| 業者に作ってもらった | 契約次第で変わる | 権利をどちらが持つと書いてあるか |
| 素材サイトから取得した | 規約の範囲でのみ使える | 商用と屋外掲出が許されているか |
| 取引先からもらった | 渡した側の権限を確かめる | 転用してよいと書面にあるか |
| 検索結果から保存した | 使えないと考える | 出どころが辿れるかどうか |
| 生成された画像 | 規約と元データの両方を見る | サービスの利用条件に掲出の可否があるか |
表の下から2行目に注意してください。検索して保存した画像は、出どころを辿れません。 辿れないものは、使えないものとして扱うのが安全です。 入稿の場でも、この点は必ず聞かれます。
2行目も見落としやすい行です。業者に作ってもらったデザインの権利が誰にあるかは、契約で決まります。 書いていなければ、2枚目を別の会社へ頼めないことがあります。 データの受け渡しは看板の入稿データの作り方にまとめています。
特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使うと、 登録された商標を誰でも無料で検索できます。 自分の店名と近い登録が、同じ分野にないかを見ます。 似ているかどうかの判断そのものは専門的な領域なので、近い登録が出てきたら弁理士へご相談ください。 看板を作ったあとで名乗り直すと、面の数だけ費用が重なります。
使ってよい範囲を読む
規約は長くても、看板に関わる条項は限られています。
| 商用利用 | 売上につながる場所で使ってよいかどうかです。 |
|---|---|
| 屋外での掲出 | 印刷物は可でも、屋外広告を別に扱う規約があります。 |
| 大きさや部数の上限 | 掲出の面積や、作ってよい枚数に上限を置く形があります。 |
| 改変の可否 | 色を変える、切り抜く、文字を重ねる。これらを禁じる規約があります。 |
| 表示の義務 | 作った人の名前を添えることを求める規約があります。 |
| 期間 | 使える期間が定められていることがあります。看板は年単位で残ります。 |
すべてを読む必要はありません。上の6項目を検索して拾えば足ります。 なかでも2行目が、看板に固有の落とし穴です。 資料や名刺で使えた素材が、屋外広告では別扱いになっていることがあります。
書体も同じ構造です。有償の書体には使ってよい範囲が契約で決められており、 屋外への掲出や、大きく引き伸ばす使い方を分けているものがあります。 提供元に問い合わせれば、可否はその場で分かります。
著作権は、原則として作った人の死後70年まで続きます。
商標権は設定登録の日から10年で、更新すればその先も残ります。
古い写真や昔からある図案でも、権利が生きていることがあります。
※ 期間の数え方には例外があります。判断が分かれる場合は専門家へご確認ください。
許可の手続きとは、別の話です。 屋外広告物の許可が下りても、載せた絵柄の権利までは審査されません。 制度の中身は屋外広告物の許可ガイドで扱っています。
直すことになった場合の費用を計算する
確かめる手間と、直す費用を並べて比べます。
仮に作り直しに25万円かかるとします。客単価5,000円、粗利率を6割としましょう。 250,000 ÷ 3,000 で、およそ84人です。 入稿前に止めていれば、かかったのはデータの手直しだけでした。
25万円という数字は、式の動きを見るための仮の置き方です。 実際の額は、面の数と取り付けの高さで大きく動きます。 高い場所の作業は高い場所の看板工事ガイドで扱っています。
直す費用を左右するところ
| 面の数 | 同じ絵柄を何面に使ったか。直すときは、その全部が対象になります。 |
|---|---|
| 印刷の方式 | 貼り替えで済む面と、板ごと作り直す面では、金額の桁が変わります。 |
| 取り付けの高さ | 足場や車が要る高さだと、作業そのものより上がる費用が大きくなります。 |
| 気づいた時期 | 設置前なら差し替えるだけです。掲出後は撤去と再設置が乗ります。 |
| 書体の契約 | 上位の契約に切り替えるだけで解けることがあります。面には手を付けずに済みます。 |
4行目が最も効きます。設置前に気づけば差し替えるだけです。 掲出後だと、製作費に加えて撤去と再設置が乗ります。 止めるなら入稿の直前が、いちばん安い地点です。
掲載社が公式サイトで公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。 面の作り直しがどれくらいの規模になるかは、そこで見当が付きます。
使った素材を記録して、更新に備える
数年後に効いてくるのは、そのとき書いた1行だけです。
素材の名前、入手先、入手した日、規約の版。この4つを1行にすると、数年後に辿れます。
規約は書き換わります。使った時点の版を残しておくと、後から条件が変わっても説明ができます。
デザインの権利をどちらが持つか。書いていなければ、書き足してもらいます。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で、自分の店名と近い登録がないかを確かめられます。無料で使えます。
誰に連絡し、誰が判断するか。決めていないと、対応が遅れて話が大きくなります。
規約は書き換わります。使った時点の版を残してください。後から条件が変わっても説明ができます。
見るタイミング
| デザイン案を受け取った日 | 使われている素材の一覧を業者に出してもらいます。 |
|---|---|
| 入稿の直前 | 差し替えが最も安く済む最後の地点です。ここで一度止めて確かめます。 |
| 掲出した日 | 完成写真を撮り、使った素材の台帳と一緒に保存します。 |
| 1年ごと | 書体や素材の契約に期間があるものを見直します。 |
| 店名を変えるとき | 新しい名前で登録状況を確かめます。看板を作る前に見ます。 |
2行目が分かれ道です。入稿を過ぎると、直す費用の桁が変わります。 面を作り替えるときも、同じ確認をもう一度通してください。 作り替えの進め方は看板のリニューアルにまとめています。
指摘を受けたとき、この順で疑う
- 1手元の規約を読み直す
まず自分が使った版の条項を確かめます。許されている範囲だったと分かれば、それで終わります。費用はかかりません。
- 2出どころの記録を辿る
台帳に残した入手先と日付を確かめます。正規に得ていた証拠があれば、話は短く済みます。
- 3追加の契約で解けるかを聞く
書体や素材は、上位の契約に切り替えれば使えることがあります。作り直すより軽く済む場合があります。
- 4部分の差し替えで足りるかを見る
面の一部だけなら、その部分の貼り替えで済むことがあります。板ごと作り直す前に確かめます。
- 5掲出を一時的に覆う
判断が付くまで、面を覆って止める方法があります。外すより費用が軽く、元にも戻せます。
- 6作り直す
ここまでで解けないときの最後の手段です。同じ絵柄を使った面をすべて数えてから発注します。
上から順に、費用の軽いものが並んでいます。 1番と2番は手元の書類を見るだけです。3番と4番は連絡と部分の手当てで収まります。 全面の作り直しは、いちばん最後に置いてください。
よくある失敗5パターン
いずれも、入稿の前に一手を打てば起きません。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 検索結果の画像をそのまま渡した | 出どころを説明できず、入稿で止まる | 自分で撮った写真か、規約のある素材に差し替える |
| 素材サイトの屋外掲出の条項を読まなかった | 印刷物は可でも看板は不可の場合がある | 契約の上位版に切り替えられるか聞く |
| 書体の契約を印刷物のまま使った | 掲出の範囲が契約に入っていない | 書体の提供元に掲出の可否を確かめる |
| ロゴの権利の所在を決めずに発注した | 2枚目を別の業者へ頼めない | 契約書に権利の帰属を1行書き足す |
| 店名を決めてから登録状況を調べた | 看板を作ったあとで名乗り直しになる | 名前を決める段階で登録状況を検索する |
セルフチェックリスト
入稿する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 看板に載せる要素を、すべて書き出した
- 写真の撮影者が誰かを言える
- 写真に人や他店の看板が写り込んでいないことを確かめた
- イラストの作者と、使ってよい範囲を確かめた
- 素材サイトの規約で、商用利用の可否を読んだ
- 同じ規約で、屋外への掲出が許されていることを確かめた
- 改変してよいかどうかを規約で確かめた
- 使った書体の契約に、掲出が含まれることを確かめた
- 店名とロゴについて、同じ分野の登録状況を検索した
- デザインの権利をどちらが持つか、契約書に書いてある
- 使った素材の一覧を、入手先と日付とともに残してある
- 指摘を受けたときの連絡先と判断者を決めてある
よくある質問
看板の権利は、何から確かめればいいですか?
どこまで調べれば十分ですか?
店名の登録状況は、自分で調べられますか?
商標の権利は、いつまで続きますか?
すでに掲出したあとで指摘を受けました。
費用を抑えたい場合、何を優先しますか?
まとめ
看板に載せるものの権利は、次の順序で確かめます。
| 1 洗い出す | 載せる要素を数え、出どころを言えるかを見る。 |
|---|---|
| 2 確かめる | 入手した経路ごとに、そのまま使えるかを判断する。 |
| 3 読む | 商用・屋外・改変の3か所を規約から拾う。 |
| 4 計算する | 掲出後に直す費用と、いま止める手間を比べる。 |
| 5 残す | 素材の一覧と規約の版を保存し、作り替えでも使う。 |
載せるものを減らすことが、そのまま確かめる手間を減らします。 要素が少ない看板は読みやすく、権利の面でも軽くなります。 まずデザイン案を開き、要素の数を数えるところから始めてください。