テナント案内板の作り方
入れ替えに強くする5ステップ
ビルや複合施設の案内板を作る方へ。 この板は、作った日から古くなっていきます。 入居者が替わるたびに直せるかどうかで、10年後の姿が変わります。 決め手は、作り方より直し方です。
三つの読み手から、誰に合わせるかを選ぶ考え方/ 区画の数から行数を出す数え方と、予備の持ち方/ 差し替えの方式を、入れ替わりの多さから選ぶ手順/ 立ち止まって読む距離での、文字の高さの出し方/ 差し替えと作り直しを、枚数に直して比べる式/ 1区画あたりの月の負担に割り直す方法/ 入れ替わっても更新が止まらない仕組み
案内板は、直せる作りかどうかで寿命が決まります
入口に掲げる一覧の板は、建物の側が持つものです。 板そのものは10年もちますが、中身は毎年古くなります。
よく起きるのは、次の四つです。 板ごと一体で作り、1区画の入れ替わりで全面を作り直すことになる。 区画の数ちょうどで行を作り、分割したときに行が足りなくなる。 項目を欲張って載せ、行が高くなって一覧に収まらない。 退去した区画をそのまま残し、古い名称が何年も掲げられる。
どれも、発注の前に手を打てば起きません。 読み手を選び、行数と方式を決め、位置と高さを決め、費用を枚数で比べ、更新を止めない。 この五つを順に埋めていきます。
三つの読み手から、一つを選ぶ
全員に向けると、行が増えて誰にも読めなくなります。
案内板を読む人は、大きく三つに分かれます。 探しているものが違うので、必要な情報も変わります。
| 読み手 | 探しているもの | 要る情報 |
|---|---|---|
| 初めて来た訪問者 | 目当ての区画を探す | 階と区画の番号 |
| 配達に来た人 | 受け取り先を確かめる | 区画ごとの名称 |
| 建物で働く人 | 空きと入居を知る | 空き区画の扱い |
いちばん多い読み手に合わせてください。 訪問者が多い建物と、配達が多い建物では、板の作りが変わります。
三つの読み手のうち、いちばん多い人に合わせます。全員に向けると、行が増えて読めなくなります。
階、区画の番号、名称。この三つで探せます。業種や電話番号を足すと、行の高さが倍になります。
空欄にするか、番号だけ残すか。決めておかないと、抜けた行がそのまま何年も残ります。
入口の外か、風除室の中か。外に置くと、雨と日射しで傷みが早くなります。
階、区画の番号、名称。この三つで目的の場所にたどり着けます。 業種や電話番号を足すと、1行の高さがおよそ倍になります。 行が高くなるぶん、板も大きくなります。 借りる側が自分で出す表示の範囲は借りた店舗の看板にまとめています。
行数を数え、差し替えの方式を選ぶ
行数が板の大きさを決め、方式が後の手間を決めます。
行数は、次の順で出します。
- 1区画の数を数える
現在の入居数ではなく、区画の数を数えます。空いている区画にも行が要ります。
- 2予備を2行足す
区画を分割したときのために、余白を残します。10区画なら12行です。
- 31行の高さを決める
行数が決まると、板の高さが決まります。載せる項目が三つを超えると、ここで破綻します。
- 4読む距離を測る
板の前に立ち、目から板までの距離を測ります。だいたい1〜2mに収まります。
- 5文字の高さを出す
測った距離から計算します。案内板は立ち止まって読むので、算出した幅の大きいほうに寄せます。
10区画 → 10 + 2 = 12行
入居中の数ではなく、区画の数で数えます。 空いている区画にも、行そのものは要ります。
文字の高さを出す
案内板は、立ち止まって読む板です。 走って通り過ぎる看板とは、読む距離が違います。
2m先から読む → 2,000 ÷ 500 = 4mm / 2,000 ÷ 250 = 8mm
→ 4〜8mm
算出した幅のうち、大きいほうに寄せてください。 立ち止まって読む板でも、読む人の視力はさまざまです。 読みやすさの考え方はユニバーサルデザインの看板で扱っています。
差し替えの方式を選ぶ
| 方式 | 向く建物 | 入れ替えのとき |
|---|---|---|
| 1枚ずつ差し替える | 入れ替わりが多い建物 | 1枚だけ作り替える |
| 文字を貼り替える | 名称が長い区画がある | 文字の部分だけ剥がす |
| 板ごと作り直す | 入れ替わりが少ない建物 | 全面をまとめて替える |
| 書き込み式にする | 短期の区画がある建物 | その場で書き替える |
方式は、作る前にしか選べません。 一体で作った板を、後から差し替え式にはできません。
置く位置と高さを決める
読まれない板の多くは、位置で決まっています。
扉を開けて最初に目に入る面に置きます。奥に進んでから探すことになると、板の意味が薄れます。
立った人の目線はおよそ1.4〜1.6mが一般的な目安です。一覧の中ほどがこの高さに来るようにします。
夜と曇りの日に読めるか。板そのものより、当たる光の量で読みやすさが変わります。
手が届く位置にある板は、いたずらや汚れがつきます。差し替えの部分を狙われないようにします。
一覧の中ほどが目線の高さに来るように置きます。 上の行が高すぎると、見上げて読むことになります。
車いすでの利用を見込む建物では、全体を下げます。 この場合、下の行が低くなりすぎないかも一緒に見てください。
屋外に掲げる板は、屋外広告物として扱われることがあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
風除室の中に置くか、外壁に取り付けるかで、確かめる先が変わることもあります。
※ 許可の要否と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。
手続きの流れは屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
差し替えと作り直しを、枚数で比べる
どちらが安いかは、入れ替わりの多さで決まります。
額が動くところは五つです。
| 行数と板の大きさ | 区画の数がそのまま行数になり、行数が板の高さを決めます。 |
|---|---|
| 差し替えの方式 | 1枚ずつ替えられる作りは、初めの手間が増えます。後の手間は減ります。 |
| 取り付ける場所 | 屋外か、風除室の中か。外は素材と取り付けの作りが変わります。 |
| 光らせるかどうか | 夜も読ませるなら、照明か内蔵の光源が加わります。 |
| 入れ替わりの多さ | 年に何区画が入れ替わるか。回数がそのまま後の費用になります。 |
二番目と五番目は、組み合わせで効きます。 入れ替わりが多い建物ほど、初めに差し替え式へ寄せる意味が出ます。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
何枚ぶんに当たるかを出す
全面の作り直しが、差し替え何枚ぶんかを割り算で出します。
年2枚のペースなら 20 ÷ 2 = 10年ぶん
10年より早く20枚に届く建物なら、差し替え式が向きます。 100,000円と5,000円は相場ではありません。 比の動きを見るために置いた、仮の数字です。
1区画あたりの負担に割り直す
10,000 ÷ 12 = 月あたり約833円
833 ÷ 10区画 = 1区画あたり月約83円
区画で割ると、負担の大きさが見えます。 入居する側から見れば、次の式になります。
5,000 × 0.4 = 2,000
1,000 ÷ 2,000 = 月0.5人
1 ÷ 0.5 = 2か月に1人
客単価を5,000円、粗利率を4割、区画の負担を月1,000円と置いた場合です。 2か月に1人が案内板を見て来れば、釣り合います。 いずれも式の動きを見るための仮の置き方です。
入れ替わっても、更新が止まらない仕組みを作る
差し替えられる作りでも、直す人がいなければ古びます。
入居と退去の手続き書に、板の差し替えを1行足します。手続きの一部にすれば、忘れません。
空欄の板を1枚用意しておきます。急に必要になったとき、その日のうちに差し替えられます。
区画ごとに、いつ替えたかを1行で残します。傷み方の差が分かるようになります。
一覧を上から読み、実際の入居と照らします。抜けと重複はここで見つかります。
一番効くのは、契約の手続きに組み込むことです。 覚えておく方式にすると、忙しい月に必ず抜けます。
2 × 5 = 5年で10枚
5年で10枚なら、差し替えの手間は年に2回です。 手続き書の1行があれば、その2回が漏れません。 社名が変わったときの直し方は社名・屋号を変えるときの看板の直し方で扱っています。
読めないときは、この順で疑う
- 1板の前に立って読んでみる
自分で読めるかを確かめます。費用はかかりません。
- 2照明を確かめる
切れている、向きがずれている。光の当て方だけで読みやすさが戻ることがあります。
- 3板を拭く
手あかと埃で読みにくくなっているだけの場合があります。
- 4載せる項目を減らす
三つを超えているなら、行の高さを取り戻せます。差し替えの範囲で済みます。
- 5行の高さを上げる
板の作り直しになります。行数を減らせないかを先に考えます。
- 6置く場所を変える
入口から見えない位置にある場合です。取り付けの工事が要ります。
上のほうほど、費用がかからずに直せます。 1番から3番までは、その場で自分だけで済みます。 置く場所を変えるのを最後に置くのは、取り付けの工事が要るからです。
よくある失敗5パターン
どれも、発注の前に気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 板ごと一体で作った | 1区画の入れ替わりで全面を作り直す | 次の更新で、1枚ずつ差し替えられる作りにする |
| 区画の数ちょうどで行を作った | 分割したときに行が足りない | 予備の行を作れないか、余白の使い方を相談する |
| 項目を五つ載せた | 行が高くなり、一覧に収まらない | 業種と電話番号を外し、三つまでに戻す |
| 退去した区画をそのまま残した | 古い名称が何年も掲げられる | 契約の手続き書に、差し替えの1行を足す |
| 照明を考えずに置いた | 夜と曇りの日に読めない | 照明の向きを直す。器具の追加は最後に考える |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 三つの読み手のうち、誰に向けた板かを一つ選んだ
- 載せる項目を三つまでに絞った
- 区画の数を数え、予備を2行足した
- 空き区画をどう見せるかを決めた
- 差し替えの方式を、入れ替わりの多さから選んだ
- 板の前に立ち、目から板までの距離を測った
- 測った距離から、文字の高さを計算した
- 一覧の中ほどが、立った人の目線に来るようにした
- 夜と曇りの日に読めるかを、現地で確かめた
- 入居と退去の手続き書に、差し替えの1行を足した
- 差し替えと作り直しの費用を、枚数に直して比べた
- 年1回、一覧と実際の入居を照らす日を決めた
よくある質問
テナント案内板は、何から決めればいいですか?
行数は、どう決めますか?
文字の大きさは、どのくらいですか?
許可の手続きは要りますか?
差し替え式と、板ごと作り直すのはどちらが安いですか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
テナント案内板は、次の順序で決まります。
| 1 読み手を一つ選ぶ | 訪問者、配達、働く人。いちばん多い人に合わせる。 |
|---|---|
| 2 行数と方式を決める | 区画の数に予備2行。方式は作る前にしか選べない。 |
| 3 位置と高さを決める | 入口から見える面へ。一覧の中ほどを目線に合わせる。 |
| 4 枚数で比べる | 作り直しが差し替え何枚ぶんか。入れ替わりの速さと照らす。 |
| 5 更新を止めない | 契約の手続き書に1行足す。予備の板を1枚持つ。 |
この板は、作った瞬間から古びていくものです。 直しやすさを先に決めておくと、10年後も読める板になります。