看板のきほん / 2026年9月7日 更新 / 読了目安 約12分

店内の案内表示の作り方
聞かれる前に答える5ステップ

これから店内の案内表示を整える方へ。 店内の表示が足りているかは、聞かれる質問の数で分かります。 同じことを毎日たずねられるなら、その答えがどこにも貼られていません。 表示は、装飾ではなく、質問への返事です。

5手順場所探しから直し方まで
13文字通路の表示の上限
12項目作る前に見る点
この記事でわかること

客が立ち止まる場所を、歩いて洗い出す手順/ 聞かれる質問を、表示の言葉に置き換える方法/ 歩きながら読める文字数と、貼る高さの決め方/ 差し替える表示と、変えない表示の分け方/ 表示にかけた費用を、月あたりに直す式/ 聞かれた回数を数え、安い順に手を入れる順番

同じ質問が続くなら、答えがどこにも貼られていない

店内の表示は、必要になってから一枚ずつ増えます。 気づくと紙が増え、どれも読まれなくなっているのが、この分野の難しさです。

起きやすいのは、次の四つです。 売場を動かしたのに表示が古いまま残り、案内どおり進んで行き止まる。 一枚に用件を三つ入れ、どれも読まれない。 低い位置に貼り、混んだ時間には人の背中で隠れる。 手書きの紙が増え続け、役目の終わったものが外されない。

どれも、作る前に決めておけば起きません。 止まる場所を探し、言葉に置き換え、高さと大きさを決め、費用を割り、数えて直す。 この五つを順に埋めます。

Step 1

客が立ち止まる場所を、歩いて洗い出す

表示の数は、売場の広さではなく、迷う場所の数で決まります。

入口から、客と同じ道をゆっくり歩く

普段は従業員の通路を使っています。客の入る扉から、客の進む向きでたどってください。

足が止まった場所に、印を打つ

迷いは、立ち止まる形で表れます。分かれ道、レジの前、階段の下。印の数が表示の数です。

印ごとに、そこで浮かぶ問いを一つ書く

「どっちへ行くのか」「ここで待つのか」。問いが書ければ、表示の文言は決まります。

同じ道を、荷物を持って歩き直す

両手がふさがると、見る高さが変わります。台車やベビーカーでも同じことが起きます。

迷いは、立ち止まる形で表れます。 止まった場所に印を打てば、必要な表示はそこに集まります。

止まる場所そこで浮かぶ問い表示が答えること
入ってすぐどこへ進むのか売場や受付の方向
通路の分かれ目どちらへ曲がるのかその先にあるもの
レジ・受付の前ここで待つのか並ぶ位置と順番
階段・エレベーターの下上に何があるのか階数と、その階の中身

毎日通っている人には、迷う場所が見えません。 初めて来た人に歩いてもらい、止まった位置を後ろから見るのがいちばん確かです。

建物に入る前の誘導は、別の話になります。 駐車場から入口までの並べ方は駐車場・入口の案内サインにまとめました。

Step 2

聞かれる質問を、表示の言葉に置き換える

表示の文言は、考えて作るものではなく、集めるものです。

レジの脇に紙を1枚置き、聞かれた質問を1週間書き取ります。 多い順に並べれば、作る表示の順番がそのまま決まります。

聞かれた質問を、そのまま見出しにする

「トイレはどこですか」が多いなら、表示は「トイレ」ではなく矢印つきの位置案内にします。

通路の表示は、13文字を上限にする

歩きながら読めるのは9〜13文字です。長い説明は、立ち止まる場所へ移します。

一枚に二つの用件を入れない

売場の案内と注意書きが同じ紙にあると、どちらも読まれません。紙を分けます。

通路の表示は、歩きながら読まれます。 載せられる量は、歩く速さで決まります。

歩く速さ = 4,000 ÷ 3,600 = 秒速 約1.1m
5m手前から見えるなら 5 ÷ 1.1 = 約4.5秒
1秒に読めるのを2〜3文字と置く(目安)
4.5 × 2 = 9 / 4.5 × 3 = 13.5 → 9〜13文字

通路の表示は、13文字を上限に置きます。 それ以上の説明は、立ち止まる場所へ移してください。 レジの前や受付の横なら、読む時間に制限はありません。

文字を減らす方法として、図記号を使う手もあります。 選び方と組み合わせ方はピクトグラムの使い方で扱っています。

一枚に、用件を二つ入れない

売場の案内と、注意書きを同じ紙に載せると、どちらも読まれません。 読む人は、自分の用件に関わる紙だけを見ているからです。 紙を分けて、貼る場所も分けてください。 枚数は増えますが、読まれる率は上がります。

Step 3

高さと大きさを、目線と距離から決める

読めない表示の多くは、大きさではなく高さの問題です。

混んだ時間には、低い位置の表示が人の背中で隠れます。 遠くから見つけさせる表示は、人の頭より上に置きます。

付ける場所読まれ方高さの決め方
通路の上から吊る遠くから見つける人の頭より上。混雑しても隠れない
壁に貼る曲がる位置で確かめる立った目線の高さに合わせる
棚や什器に付ける手を伸ばす前に読む商品より下げない
床に貼る並ぶ位置を示す足元だけ。文章は載せない

文字の高さを割り算で出す

読ませたい距離が決まれば、高さは計算で求まります。

文字の高さ = 視認距離 ÷ 250 〜 視認距離 ÷ 500
10m先(通路の奥から) → 10,000 ÷ 500 = 20mm / ÷ 250 = 40mm → 2〜4cm
5m先(曲がる位置) → 5,000 ÷ 500 = 10mm / ÷ 250 = 20mm → 1〜2cm
2m先(棚の前) → 2,000 ÷ 500 = 4mm / ÷ 250 = 8mm → 0.4〜0.8cm

この幅は、明るい場所で正面から見た値です。 書体、地の色との明暗差、照明の当たり方で変わります。 年齢の高い方が多く来る店では、大きいほうへ寄せてください。 読みやすさの整え方はユニバーサルデザインの看板にまとめてあります。

置く前に確かめること

避難の経路と非常口表示や什器で、通路や扉をふさがない。
法定の掲示との重なり掲げる義務のある表示は、隠れない場所に残す。
貸主・管理者の決まり借りた区画では、壁に穴を開けられない場合がある。
原状回復の範囲両面テープや粘着が、返すときに問題にならないか。
照明との位置関係照明の真下は反射する。角度を変えて見え方を確かめる。
車いすやベビーカーの通り幅表示を置いたあとの通路幅を、実際に測る。
法定の掲示と、避難の経路をふさがない

掲げる義務のある表示が、案内の紙で隠れることがあります。 非常口の前や通路に置いた什器も、同じ問題を起こします。 表示を足したあとに、通路の幅を実際に測ってください。 消防に関わる掲示は店内の消防・避難の掲示で扱っています。
※ 必要な掲示の種類と貼り方は、建物と業態により異なります。開店前に管轄の窓口へお確かめください。

Step 4

差し替えの頻度で作り方を分け、費用を割る

全部を同じ作りにすると、変えたいときに変えられません。

費用が動くところを見る

枚数一枚あたりより、総数が効く。同じ形でそろえると下がる。
差し替えの頻度毎月変えるものと、数年変えないものは作り方を分ける。
素材と厚み紙、板、金属。触れる場所ほど丈夫なものが要る。
取り付け方貼るか、吊るか、置くか。壁に穴を開けられるかで変わる。
図記号を作るか共通の図記号を使えば、作る手間は減る。
多言語にするか言語を増やすほど、一枚の情報量が増える。

毎月変えるものは、安く早く作れる形にします。 数年変えないものだけ、丈夫な作りにすれば足ります。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。

月あたりに直し、人数まで落とす

3年 = 3 × 12 = 36か月
一式の総額144,000円 ÷ 36か月 = 月4,000円

この144,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。

次に、1人が残す粗利で割ります。

1人あたりの粗利 = 客単価2,000円 × 粗利率0.6 = 1,200円
4,000 ÷ 1,200 = 3.33 → 月4人(切り上げ)
30 ÷ 4 = 7.5 → 約7.5日に1人
検算:4 × 1,200 = 4,800円 → 月4,000円を上回る

迷わずに買えた人が、8日に1人増えれば釣り合う計算になります。 2,000円も粗利率0.6も、仮の置き方です。 自分の平均単価と、直近の粗利率に差し替えて計算し直してください。

聞かれる回数を、時間に直す

店内の表示は、答える手間も減らします。

1日に20回 × 1回30秒 = 600秒 = 10分/日
10 × 30日 = 300分 = 5時間/月

20回も30秒も、仮の置き方です。 1週間数えて、自分の店の数字に差し替えてください。 表示を増やす判断は、売上より先に、この時間で説明できます。

Step 5

聞かれた回数を数え、貼り替えから直す

効いたかどうかは、質問が減ったかで分かります。

聞かれた質問を、1週間だけ正の字で数える

レジの脇に紙を1枚置きます。多い質問が、足りない表示です。

客の足が止まる場所を、10分眺める

同じ場所で複数の人が止まるなら、そこに表示が要ります。

表示の前で、見上げる人がいるか見る

見上げているのに進まないなら、読めていません。高さか文字数を疑います。

入れ替えた表示の前後で、質問の数を比べる

1週間ずつ数えれば足ります。効いた表示が、そのまま型になります。

上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は、紙とペンだけで始められます。

見る時期を決める

1週間聞かれる質問の数を数えます。多い順に並べます。
1か月表示を入れ替えたあと、同じ質問が減ったか確かめます。
3か月売場を動かした影響を見ます。表示と実際がずれていないか調べます。
1年日焼けとはがれを見ます。差し替えの型を見直す時期でもあります。

店内の表示は、売場を動かすたびに古くなります。 棚の位置を変える作業に、表示の差し替えを組み込んでください。 別々の作業にすると、直すのを忘れます。

効かないときは、この順で疑う

  1. 1
    客と同じ道を、もう一度歩く

    費用はかかりません。什器で隠れた表示が、この時点でほとんど見つかります。

  2. 2
    表示の前の商品と什器をどける

    売場は動きます。表示を動かすより、前を空けるほうが早く済みます。

  3. 3
    文字を13文字まで削る

    紙を刷り直すだけです。減らすほど、遠くから読めるようになります。

  4. 4
    高さを、立った目線に合わせ直す

    貼り替えるだけで済みます。低すぎる表示は、人が立つと隠れます。

  5. 5
    照明の反射しない角度へ振る

    真下からの光は、表面で跳ね返ります。数度傾けると読めます。

  6. 6
    分かれ道に、表示を一つ足す

    直すより、抜けている場所を埋めるほうが早く効きます。作り直しは、この後です。

上のほうほど、費用をかけずに手を打てます。 1番から3番は、その日のうちに終わります。 表示を作り直すのは、六つを試した後です。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、貼り替えるか、載せた用件を減らすことで手当てできます。

失敗何が起きるか直し方
売場を動かしたのに表示を直さなかった案内どおり進んで行き止まる売場を動かす作業に、表示の差し替えを組み込む
一枚に用件を三つ入れたどれも読まれず、質問が減らない紙を分ける。通路の表示は13文字までに削る
低い位置に貼った混雑すると人の背中で隠れる通路の表示は頭より上へ移す。貼り替えで足りる
照明の真下に付けた反射して角度によって読めない数度傾けるか、位置を横へずらす
手書きの紙が増え続けた表示が多すぎて、どれも見られない同じ形でそろえ、役目の終わった紙を外す
Checklist

セルフチェックリスト

作りはじめる前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。

  • 入口から、客と同じ道を実際に歩いた
  • 足が止まる場所を洗い出し、印を打った
  • 印ごとに、そこで浮かぶ問いを書き出した
  • よく聞かれる質問を、1週間数えた
  • 通路の表示を、13文字までに収めた
  • 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
  • 通路の表示を、人の頭より上に置いた
  • 一枚の紙に、用件を二つ入れていない
  • 照明の反射を、実際に立って確かめた
  • 表示を置いたあとの通路幅を測った
  • 避難の経路と法定の掲示をふさいでいない
  • 差し替える表示と、変えない表示を分けて作った
FAQ

よくある質問

店内の案内表示は、何から決めればいいですか?
客が立ち止まる場所からです。入口から客と同じ道を歩き、足が止まった位置に印を打ちます。印の数が、必要な表示の数になります。
通路の表示には、何文字まで載せられますか?
13文字までを目安にします。歩く速さは秒速約1.1mで、5m手前から見えても約4.5秒しかありません。長い説明は、立ち止まる場所へ移してください。
表示は、どのくらいの高さに付けますか?
通路の表示は、人の頭より上です。混雑すると、低い位置の表示は背中で隠れます。手に取る場所の表示は、立った目線の高さに合わせます。
法定の掲示と、案内の表示は一緒にしていいですか?
分けてください。掲げる義務のある表示が、案内の紙で隠れてしまうことがあります。避難の経路をふさがないことも合わせて確かめ、消防の窓口へお尋ねください。
効いているかは、いつ判断しますか?
聞かれる質問の数は1週間で見えます。入れ替えの効果は、前後で1週間ずつ数えて比べます。売場を動かした影響は、3か月ごとに見直してください。
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
いちばん多く聞かれる質問からです。紙とラミネートでも、表示としては働きます。何度も差し替える表示は、はじめから安く作るほうが続きます。

まとめ

店内の案内表示は、次の順序で決まります。

1 止まる場所を探す客と同じ道を歩き、足が止まった位置に印を打つ。
2 言葉に置き換える聞かれた質問を集め、通路の表示は13文字までに削る。
3 高さと大きさを決める遠くから読ませる表示は頭より上。距離から文字の高さを出す。
4 費用を割る差し替える表示と変えない表示を分け、月あたりに直す。
5 数えて直す質問の数を前後で比べ、貼り替えで済む順に手を入れる。

表示を足すほど、一枚あたりは読まれなくなります。 役目の終わった紙を外すことが、新しい表示を作るのと同じくらい効きます。

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枚数も素材も、まだ何も決まっていない段階で構いません。 差し替える表示を安く作り分けられるか、店内まで見て場所を決めてくれるか。この二つは比べられます。