店内の消防・避難の掲示
開店前に確かめる5ステップ
これから店を開く方へ。 店に掲げる表示には、客を呼ぶためのものと、逃がすためのものがあります。 後者は内装の図面ができた段階で決めます。 工事が終わってからだと、壁を触り直すことになります。
建物の使い方と広さから、何が要るかを洗い出す順序/ 共用部と自分の区画の、受け持ちの境目/ 客の立つ位置から見て、隠れない場所の探し方/ 店で過ごす姿勢に合わせた、貼る高さの決め方/ 屋外広告物の窓口とは別に、消防署へ相談する内容/ 作り替えの周期で割って、月あたりの負担に直す式/ 貼った後、はがれと隠れを見つける仕組み
中の表示は、内装の図面と同時に決まります
看板の相談で後回しになりやすいのが、店の中に掲げる表示です。 外に出す看板と違い、こちらは決まりに沿って掲げるものです。
起きやすいのは、次の四つです。 内装が仕上がってから位置を考え、壁に穴を開け直す。 棚を据えた後に貼り、通路側から見えなくなる。 建物の共用部にある表示と、同じものを重ねて作る。 貼ったきりで、はがれや汚れに気づかないまま年が過ぎる。
どれも、図面の段階で手を打てば起きません。 何が要るかを洗い出し、位置と高さを決め、窓口に確かめ、費用を割り直し、貼った後を見る。 この五つを順に埋めていきます。
建物の使い方と広さから、何が要るかを洗い出す
必要な表示は、店の中身ではなく建物の条件で決まります。
飲食か、物販か、宿泊か。同じ広さでも、使い方が変われば求められる表示が変わります。用途を一言で言えるようにしておきます。
広さと、何階にあるか。地下と上階では、避難の経路の数が変わります。図面の数字をそのまま控えます。
席数、立ち見の想定、従業員の数。人数の見込みは、必要な表示の種類に関わります。
雑居ビルなら、共用部の表示は建物の側が持ちます。自分の区画だけが受け持ちではありません。
掲げる表示は、役目ごとに分かれます。 役目が分かると、貼る場所も自然に決まります。
| 掲示の種類 | 果たす役目 | 貼る場所 |
|---|---|---|
| 避難の経路を示す表示 | 出口までの方向 | 通路と曲がり角 |
| 出口の位置を示す表示 | どの扉から出るか | 扉の上と、その手前 |
| 設備の場所を示す表示 | 消火の道具のありか | 設置した場所の真上 |
| 禁止や注意の表示 | 火気や立入りの制限 | 対象の設備のそば |
| 管理に関わる掲示 | 責任者や連絡の先 | 事務室や共用部 |
どれが必要かは、この表ではなく所轄の消防署が決めます。
表は、相談へ持っていく前に頭を整理するためのものです。
※ 必要な表示の種類と数は、所轄の消防署へご確認ください。
雑居ビルやテナントの区画では、共用部の表示を建物の側が持っています。 自分の区画だけが受け持ちではありません。 境目を聞かずに進めると、同じ内容の表示が二つ並びます。 借りた区画で決めておくことは借りた店舗の看板にまとめています。
隠れない位置と、読める高さを決める
決め手は、人が留まる場所から見えるかどうかです。
位置は、次の順で決めます。
- 1出口を紙に描く
平面の図に、出られる扉を全部書き込みます。ふだん使わない扉も入れます。
- 2客の立つ位置から見る
入口、席、レジ。人が留まる場所に立ち、そこから出口の方向が分かるかを見ます。
- 3見えない場所を探す
棚、冷蔵庫、のれん、観葉植物。据えた物で隠れる位置が必ず出てきます。
- 4目線の高さに合わせる
立って過ごす店と、座って過ごす店では高さが違います。使う人の姿勢に合わせます。
- 5煙が来たときを想像する
天井に近い位置の表示は、煙で見えなくなることがあります。低い位置にも手がかりを置きます。
高さと文字の大きさを出す
高さは、店で過ごす姿勢に合わせます。 立った人の目線をおよそ1.4〜1.6mと置くのが一般的な目安です。 座って過ごす席が中心の店では、そこから下げます。
10m先から読ませる → 10,000 ÷ 500 = 20mm / 10,000 ÷ 250 = 40mm
→ 2〜4cm
書体、地との明暗差、照明の当たり方で変わります。 表示の種類によっては別の定めがあるため、消防署の指示を優先してください。 読みやすさの考え方はユニバーサルデザインの看板で扱っています。
隠れやすい物を先に挙げる
| 隠す物 | 何が起きるか | 先にやること |
|---|---|---|
| 背の高い棚 | 通路側の表示を覆う | 棚の高さを決める前に位置を決める |
| のれん・タペストリー | 扉の上の表示を隠す | 掛ける位置を表示より下にする |
| 季節の飾り | 一時的に見えなくなる | 飾る前に見える範囲を確かめる |
| 積み上げた在庫 | 通路そのものを塞ぐ | 床に置かない範囲を線で示す |
什器の高さを決める前に、表示の位置を決めてください。 順序が逆になると、どちらかを動かすことになります。
天井に近い位置の表示は、視界が悪くなると見えなくなります。
高い位置だけに頼らず、低い位置にも手がかりを置く考え方があります。
どこまで必要かは建物の条件によって変わります。
※ 設ける位置と数は、所轄の消防署へご確認ください。
屋外広告物とは別の窓口に確かめる
外に出す看板と、中に掲げる表示は、担当する先が違います。
何を掲げる必要があるかは、建物の使い方と広さで変わります。開店の前に図面を持って相談します。届出の要否もここで分かります。
共用部の表示は建物の側が持っています。自分の区画との境目を先に確かめると、二重に作らずに済みます。
壁や天井の工事と同時に決めると、後から穴を開けずに済みます。図面の段階で位置を書き込んでもらいます。
二つの表示は、目的から場所まで別ものです。 混ぜて考えると、確かめる先を間違えます。
| 見るところ | 外に出す看板 | 中に掲げる表示 |
|---|---|---|
| 目的 | 外の人を呼ぶ | 中の人を逃がす |
| 場所 | 建物の外側 | 建物の内側 |
| 確かめる先 | 屋外広告物の担当窓口 | 所轄の消防署 |
| 変えるとき | 許可の内容と照らす | 経路が変わるかで見る |
外に出す看板の手続きは屋外広告物の許可ガイドにまとめています。 こちらは県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
何が必要かは、用途と面積と人数の組み合わせで変わります。
言葉で説明するより、平面の図を持っていくほうが早く話が進みます。
届出が要るかどうかも、その場で分かります。
工事が終わってからの相談は、直す手が限られます。
※ 必要な手続きは、所轄の消防署へご確認ください。
作り替えの周期で割って、負担を出す
一度きりの出費に見えますが、内装を変えれば動きます。
額が動くところは五つです。
| 表示の枚数 | 出口の数と、通路の曲がり角の数で決まります。間取りが複雑なほど増えます。 |
|---|---|
| 素材と貼り方 | 紙に印刷して貼るか、板にするか。触れる高さにあるほど丈夫な作りが要ります。 |
| 電気を使うかどうか | 光る表示を入れる場合、配線と電気工事の手配が加わります。 |
| 内装工事と同時かどうか | 工事の途中なら位置決めだけで済みます。後からだと壁を触る手間が乗ります。 |
| 作り替える周期 | 内装を変えるたびに経路が動きます。動けば表示も作り直しになります。 |
四番目は、段取りで減らせます。 内装の工事に合わせれば、位置決めだけで済みます。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
月あたりに割り直す
持つ年数で割ると、負担の大きさが見えます。
総額60,000円 ÷ 60か月 = 月1,000円
この60,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
何人来れば釣り合うかに直す
2,000 × 0.5 = 1,000
1,000 ÷ 1,000 = 月1人
30 ÷ 1 = 30日に1人
客単価を2,000円、粗利率を5割と置いた場合です。 月に1人が新しく来れば、この負担と釣り合います。
これらの数字は、式の動きを見るための仮の置き方です。 中の表示は集客のためのものではありませんが、額の大きさを他の出費と比べる材料にはなります。
貼った後に、はがれと隠れを見つける
表示は劣化しませんが、店のほうが変わっていきます。
入口から出口まで、客と同じ経路を歩きます。歩けば、塞がっている場所がその場で分かります。
同じ位置から毎月1枚撮ります。並べて見ると、物が増えていく様子が分かります。
端が浮いていないか、油や煙で読めなくなっていないか。飲食では汚れの進みが早くなります。
棚を動かした日、席を増やした日。経路が変わった日は、その日のうちに確かめます。
見る回数を数えておくと、続けやすくなります。
12 × 5 = 5年で60回
1回にかかるのは、通路を歩く数分です。 点検の中で、いちばん安く続けられるのがこれです。
見つけたときは、この順で疑う
- 1置いた物をどけてみる
塞いでいるのが荷物なら、どければ済みます。費用はかかりません。
- 2貼り直して済むか見る
端が浮いているだけなら、貼り直しで戻ります。
- 3汚れを拭いてみる
拭いて読めるようになるなら、作り替えではありません。
- 4位置を変えて済むか見る
隠れているだけなら、同じ表示を別の面へ移します。
- 5作り替えを相談する
経路そのものが変わった場合です。所轄の消防署に相談してから決めます。
上のほうほど、費用がかからずに直せます。 1番から3番までは、その場で自分だけで済みます。 作り替えを最後に置くのは、経路が変わっていない限り不要だからです。
棚を動かした日、席を増やした日、季節の飾りを出した日。 変えた日が、いちばん見落としの起きる日です。 歩いて確かめるところまでを、模様替えの手順に入れておいてください。
よくある失敗5パターン
どれも、図面の段階で気づけば手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 内装が終わってから位置を決めた | 壁に穴を開け直すことになる | 次の改装で、図面の段階に位置決めを移す |
| 棚を置いてから表示を貼った | 通路側から表示が見えない | 棚を10cm動かすか、表示を別の面へ移す |
| 共用部の表示と二重に作った | 同じ内容が並び、費用も重なる | 建物の管理者に受け持ちの境目を聞く |
| 季節の飾りで覆ってしまった | 一時的に経路が分からなくなる | 飾る前に、見える範囲を写真で確かめる |
| 貼った後に見る日を決めなかった | はがれと汚れに気づかない | 月1回、客と同じ経路を歩く日を決める |
セルフチェックリスト
開店の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 建物の使い方を一言で言えるようにした
- 床の面積と、何階にあるかを図面から控えた
- 同時に入る人数の見込みを出した
- 共用部と自分の区画の、受け持ちの境目を確かめた
- 開店の前に、所轄の消防署へ図面を持って相談した
- 平面の図に、出られる扉を全部書き込んだ
- 客が留まる位置から、出口の方向が分かるかを見た
- 棚やのれんで隠れる位置がないかを確かめた
- 表示の高さを、店で過ごす姿勢に合わせた
- 内装工事と同じ図面に、表示の位置を書き込んでもらった
- 月あたりの負担を、必要な新規客数に直した
- 月に1回、客と同じ経路を歩く日を決めた
よくある質問
店内の消防や避難の掲示は、何から決めればいいですか?
文字の大きさに、目安はありますか?
屋外広告物の許可とは、別の手続きですか?
貼る位置は、いつ決めるのがいいですか?
内装を変えたら、掲示も見直しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
店の中に掲げる表示は、次の順序で決まります。
| 1 何が要るか洗い出す | 用途、面積、階、人数。共用部との境目も聞く。 |
|---|---|
| 2 位置と高さを決める | 人が留まる場所から見えるか。什器より先に決める。 |
| 3 窓口に確かめる | 中は消防署、外は屋外広告物の担当。図面を持って相談する。 |
| 4 費用を割り直す | 持つ年数で割る。内装を変えれば作り替えも動く。 |
| 5 貼った後を見る | 月1回、客と同じ経路を歩く。模様替えの日は必ず歩く。 |
この表示は、使われない日が続くことが正しい状態です。 だからこそ、置き忘れが起きます。歩く日を決めておいてください。