ギャラリー・展示施設の看板
会期ごとに替える5ステップ
これからギャラリーや展示施設の看板を決める方へ。 この施設の看板は、掲げて終わるものではありません。 中身が入れ替わるたびに、面も入れ替わります。 替える回数から逆算して作るのが、いちばん近道です。
恒久の面と会期ごとの面を、どこで切るか/ 5年で何回替えるかを数え、道具を選ぶ考え方/ 枠の内寸を先に固定して、毎回の刷り替えを軽くする手順/ 読ませたい距離から文字の高さを出す早見表/ 差し替えの扱いと、景観の定めで確かめる先/ 月に何人拾えば釣り合うかを出す式/ 立ち寄りを記録して、安く直せる順に手を入れる方法
建物は動かないが、中身は入れ替わる
展示の施設は、建物と中身の寿命が違います。 建物の名前は10年変わりません。 けれど通る人が反応するのは、いま何をやっているかだけです。 面の作りは、この差を前提に決まります。
つまずきやすいのは、次の四つです。 展示の名前を恒久の面に入れ、次の会期で直せない。 会期ごとに寸法が変わり、毎回その場で紙を切っている。 入場できるかどうかが書かれておらず、関係者だけの場所に見える。 会期の合間に閉める日が、外から分からない。
どれも、面を大きくしても解けません。 替わるものと替わらないものを仕分け、枠の寸法を先に決める。 差し替えの扱いを確かめ、費用を人数に換算し、立ち寄りを数える。 この五つを順に埋めます。
なお、会場を借りて数日だけ出す催しは、掲出の期間も道具も別です。 その場合はイベント・催事の看板ガイドをご覧ください。 このページは、常設の建物で中身だけが入れ替わる施設に絞ります。
替わるものと替わらないものを仕分ける
この仕分けを飛ばすと、2回目の会期で作り直しになります。
本数が、替える面の作り方を決めます。年1本と年12本では、選ぶ道具が変わります。
職員か、展示する人か、業者か。替える人が変われば、要る手間の上限も変わります。
入りにくさの多くは、いくらかかるか分からないことから来ます。
会期の合間に閉める施設は多いものです。閉まっている日をどう伝えるか、先に決めます。
まず、5年でさわる回数を数えます。 年に6本の展示を組むと置きます。
30回さわる面は、職員が替えられる作りでなければ回りません。 6本は仮の置き方です。自分の施設の年間の本数に置き換えてください。
回数が出たら、項目を仕分けます。軸は1つ、会期で変わるかどうかです。
| 項目 | どちらの面 | 理由 |
|---|---|---|
| 施設の名前 | 恒久 | 5年動かない。目印として残す。 |
| 何の施設か | 恒久 | 通りがかりの人には、これが最初の情報になる。 |
| 開いている時間 | 恒久 | 毎回同じなら固定できる。会期で変わるなら会期側へ。 |
| 展示の名前 | 会期ごと | 入れ替わる。恒久の面に入れない。 |
| 会期の日付 | 会期ごと | 過ぎれば嘘になる。必ず替えられる面に。 |
| 入場の有無と料金 | 条件つき | 展示ごとに変わるなら、会期の面に載せる。 |
設立の経緯も、掲げている考えも、面の上では読まれません。 読む人は歩いています。 恒久の面が引き受けるのは、施設名と、何の施設かの二つで足ります。 残りは中に入ってから渡してください。
会期の面の寸法と替え方を決める
寸法を先に固定すると、2回目以降の手間がまとめて減ります。
会期ごとの面で効くのは、デザインではありません。 枠の内寸を先に決めることです。 寸法が決まっていれば、毎回そこへ流し込むだけで済みます。 決めていないと、刷るたびに寸法から相談が始まります。
| 差し込み式の枠にする | 刷った紙を入れ替えるだけ。職員が数分で替えられる。 |
|---|---|
| 寸法を先に固定する | 枠の内寸を決めてから、毎回その寸法で刷る。デザインの手間が減る。 |
| 替える面を1か所に集める | 建物のあちこちに散ると、替え忘れが出る。 |
| はずした紙の置き場を決める | 前の会期の紙が現場に残ると、貼り直しの事故になる。 |
| 予備の枠を1つ用意する | 次の会期の紙を先に入れておける。入れ替えが数十秒で済む。 |
5番目は、忙しい施設ほど効きます。 枠を2つ持っておけば、次の会期の紙を先に入れておけます。 入れ替えの当日は、はめ替えるだけで終わります。
読ませたい距離から、文字の高さを出す
距離が決まると、文字の高さが出ます。目安は視認距離の1/250〜1/500です。
| 読ませたい距離 | 文字の高さの目安 | その距離で伝わること |
|---|---|---|
| 1m(掲示の前) | 0.2〜0.4cm | 会期の日付と、細かい但し書き |
| 5m(歩道の上) | 1〜2cm | 展示の名前が読める |
| 15m(道の向かい) | 3〜6cm | 施設名と、何の施設か |
書体、地と文字の色の差、灯りの有無で、読める大きさは前後します。 寸法を根拠から出す手順は看板の大きさの決め方が扱っています。
高さも同時に決めます。 会期の面は、立った人の目の高さに中心を置きます。 扉の上に貼ると、前に立ったときに見上げる位置になります。
掲出の手続きと建物の制約を確かめる
差し替える紙まで対象になるかは、地域で分かれます。
恒久の面だけでなく、会期ごとに替える紙も確かめます。 差し替えの扱いは、地域によって分かれます。 古い街並みの中にある施設は、色や大きさに別の定めが置かれていることもあります。
| 建物に付ける恒久の面 | 大きさと位置で、屋外広告物の手続きが要る場合がある。 |
|---|---|
| 会期ごとに替える紙 | 差し替えでも、扱いが変わる地域がある。 |
| 歴史的な建物・景観の地域 | 色や大きさに、別の定めが置かれていることがある。 |
| 歩道に出す立て看板 | 道路に出る部分は、道路を管理する窓口の扱いになる。 |
| 借りている建物 | 貸主の承諾が要る。壁に穴を開ける工事はとくに。 |
町並みの保存を定めている地域では、使える色や素材に幅が置かれていることがあります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
決めたあとに直すと、費用も日数も倍になります。
※ 必要な手続き、出せる大きさ、更新の時期は地域によって異なります。設計に入る前に、管轄の窓口へお確かめください。
調べる順番と、更新の管理の仕方は屋外広告物の許可ガイドに整理しました。 2階以上に入っている施設は、2階の店の看板もあわせてご覧ください。
費用と回収ラインを計算する
拾うのは、前を通っただけで帰っていた人です。人数に直します。
費用が動くところを見る
| 恒久の面の作り | 施設名の面は長く使う。素材と留め方で持ちが変わる。 |
|---|---|
| 替える仕組み | 差し込み式の枠を組み込むと、はじめは上がり、2回目以降が下がる。 |
| 1回あたりの刷り替え | 寸法と枚数で動く。寸法を固定すると、毎回の手間が減る。 |
| 夜に読ませるか | 灯りを当てるか。夜間も開ける施設なら要る。 |
| 年に何本組むか | 本数が、5年分の合計をいちばん動かす。 |
2行目と5行目は対です。 本数が多い施設ほど、はじめに枠を組み込むほうが5年分では軽くなります。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
月あたりに直して、人数に換算する
恒久の面と、会期ごとの面を分けて直します。
150,000 ÷ 60 = 2,500円/月
会期の面:年6回、1回あたり仮に3,000円
6 × 3,000 = 18,000円/年
18,000 ÷ 12 = 1,500円/月
合わせて 2,500 + 1,500 = 4,000円/月
150,000円も3,000円も、相場ではありません。 割り算の動きを見るための、仮の数字です。
次に、ひとりから受け取る額で割ります。 入場料と、物販の分を合わせて置きます。
800 × 0.5 = 400円
4,000 ÷ 400 = 10人/月
前を通っただけで帰っていた人を、月に10人拾えば釣り合います。 開ける日を月25日と置くと、25 ÷ 10 = 2.5。2〜3日に1人です。
800円も0.5も、仮の置き方です。 入場が無料の施設は、物販や次の来館につながる分で置き換えてください。
立ち寄りを記録して直す
数えるのは総数ではありません。会期ごとに分けた数です。
受付から見える範囲で足ります。止まったのに入らない人が、いちばん近い客です。
受付での一言です。「外の掲示」と返れば、その面が働いています。
合計では動きが見えません。展示ごとに並べると、面の効き方が見えます。
入っていいか分からなかった印です。料金か、開いているかの表示を疑います。
上にあるものほど、手間がかかりません。 1番目は今日から始められます。受付に紙を1枚置けば足ります。
止まったのに入らなかった人は、いちばん近くにいた来館者です。 その数が増えていれば、会期の面は働いています。 入館に変わらないなら、原因は入りにくさのほうにあります。
展示の中身が変われば、来る人の数も変わります。 面の良し悪しだけを見たいなら、会期の同じ日数どうしで並べてください。 それでも中身の差は混ざります。判断は3会期を待ってください。
見る時期を決める
| 会期の前半 | 足を止めた人の数だけを見ます。前の会期の同じ日数と並べます。 |
|---|---|
| 会期の終わり | 来た人の数を、前の会期と並べます。展示の中身の差も混ざります。 |
| 3会期 | 面の効き方は、ここでようやく見えます。回収の計算と並べます。 |
| 1年 | 恒久の面に載せた語を並べ直します。足すより、減らすほうが先です。 |
展示の施設は、来館の間隔が長い業種です。 いま面を見た人が来るのは、次の会期かもしれません。 1会期の数字で、面の良し悪しを決めないでください。
反応が薄いときは、この順で試す
- 1展示の名前を、施設の名前より大きくする
通る人が反応するのは、いま何をやっているかです。紙の版を替えるだけで試せます。
- 2入れるかどうかを、一語で足す
「見学無料」「どなたでも」。入っていいと分かる語が、いちばん足りません。
- 3会期の面を、目の高さへ下ろす
扉の上に貼ると、前に立つと見上げる位置になります。
- 4閉まっている日を、外から読めるようにする
会期の合間に来た人を、次の会期へつなげます。
- 5恒久の面から、語を減らす
沿革や理念が入っていないか読み返します。減らせば残りを大きくできます。
- 6面そのものを作り直す
前の五つを終えてから、はじめて検討します。
1番から4番までは、紙の版を替える範囲で試せます。 費用のかかる手当ては、後ろに寄せてあります。 会期の合間の休みを伝える面は、お知らせの掲示の作り方が入口になります。
よくある失敗5パターン
どれも、刷り替えと枠の切り出しで手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 展示の名前を恒久の面に入れた | 次の会期で直せず、終わった展示の名前が残る | 会期の部分だけ差し込み式の枠に切り出す |
| 会期ごとに寸法を変えて刷った | 枠に入らず、毎回その場で切ることになる | 枠の内寸を決め、以後はその寸法で刷る |
| 入場の可否を書かなかった | 関係者だけの場所に見え、通る人が入らない | 「どなたでも」の一語を、入口の面に足す |
| 会期の合間の休みを外に出さなかった | 閉まっている日に来た人が、次も来なくなる | 差し替える面に、次の会期の初日を1行足す |
| 前の会期の紙が、別の面に残った | 日付が二つ並び、どちらが本当か分からなくなる | 替える面の一覧を紙に書き、替えたら消し込む |
セルフチェックリスト
発注の前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 年に何本の展示を組むか数えた
- 恒久の面と、会期ごとの面を分けた
- 展示の名前を、恒久の面から外した
- 会期の面の寸法を、先に固定した
- 替える人を決め、数分で替えられる道具にした
- 替える面の置き場所を、1か所にまとめた
- 入場の可否が分かる語を、外の面に入れた
- 会期の合間に閉める日を、外から読めるようにした
- 読ませたい距離から、文字の高さを出した
- 屋外に出す面について、管轄の窓口へ問い合わせた
- 看板にかかる費用を月あたりに直し、必要な人数を出した
- 入口の前で足を止めた人の数を、数え始めた
よくある質問
展示施設の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの高さにすればいいですか?
会期ごとに紙を替えるだけでも、手続きは要りますか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでにある看板を、作り直さずに直せますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
ギャラリー・展示施設の看板は、次の順序で決まります。
| 1 面を仕分ける | 年間の本数を数え、会期で変わるものを恒久の面から外す。 |
|---|---|
| 2 枠と替え方を決める | 内寸を先に固定し、職員が数分で替えられる道具を選ぶ。 |
| 3 掲出を確かめる | 差し替えの扱いと、景観の定めを設計の前に確かめる。 |
| 4 費用を計算する | 月あたりに直し、拾えば釣り合う人数まで落とす。 |
| 5 記録して直す | 会期ごとに分けて数え、刷り替えから手を入れる。 |
この施設の看板は、作品ではなく道具です。 いちばん良い面は、次の会期でも同じ手間で替えられる面です。 替えやすさが、そのまま会期ごとの集客の差になります。