アパート・マンションの看板の作り方
物件名が伝わる5ステップ
所有する物件に看板を用意する方へ。「どこに何枚要るのか」「何を書けば伝わるのか」 「手続きは要るのか」。 この3つを順に片づけていきます。
誰に見せる面かで分ける4つの区分/ 面ごとに載せる情報と、載せないもの/ 見せたい距離から決める文字の高さの早見表/ 条例・掲出期間・管理組合の承認で確かめること/ 家賃の何か月分かに直して費用を見る計算式/ 問い合わせの出どころを測る4つの方法と、疑う順序
看板は1枚では足りません
物件の看板を1枚だけ作ると、情報が渋滞します。 募集の連絡先、物件名、ゴミ出しの注意。この3つは読む人が別々です。 面を分けるところから始めます。
相談で多いのは次の4つです。募集の看板に建物の良さを書き込み、連絡先が小さくなる。 館名板を高い位置に付け、入口に立つ人に読めない。募集が決まったあとも出したままにする。 共用部に取り付けたあとで、承認が要ることを知る。
誰に見せるかで面を分け、面ごとに情報を削る。手続きを確かめ、家賃で費用を見る。 問い合わせの出どころを記録する。この順に進めます。
誰に向けた面かを分ける
同じ敷地でも、読む人によって立つ場所が違います。
道から見える位置に置く募集の看板です。ねらいは問い合わせを1件受けること。物件名より、募集中の一言と連絡先が先に読まれます。
建物の入口に置く館名板です。ねらいは「ここで合っている」と確かめさせること。読む人はすでに住所を知っています。物件名だけで足ります。
共用部の内側に置く掲示板です。ゴミ出しの曜日、駐車場の区画、工事の予定。読む人は立ち止まります。文字が多くても届きます。
外向きの面に注意書きを並べると、通る人はその建物の管理の様子を読み取ります。入居希望者の目に入る位置からは外してください。
入居希望者は道の上にいます。訪問者は建物の入口にいます。入居者は共用部の中にいます。 立つ場所が違えば、見える大きさも、読める時間も変わります。 1枚で3者に届けようとすると、誰にも届きません。
| 面 | 読む人 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 募集の看板 | 入居希望者 | 道から見える位置 |
| 館名板 | 訪問者と配達 | 建物の入口 |
| 棟と部屋の案内 | 来客と配達 | 敷地に入ってすぐ |
| 掲示板 | 入居者 | 共用部の内側 |
玄関が2か所ある建物では、館名板も2枚要ります。駐車場が別の道に面していれば、 そこにも案内が要ります。図面を見るより、人が入ってくる経路を実際に歩いて数えるほうが早く済みます。 駐車場と入口まわりの動線は駐車場・入口の案内サインで扱っています。
面ごとに載せる情報を絞る
面の主役を1つ決めると、文字を大きくできます。
読める時間を、速さから出す
歩く速さは分速80mほど、秒速に直すと約1.33mです。 募集の看板が見える範囲を10mとすると、通り過ぎるまで 10 ÷ 1.33 で約7.5秒あります。 時速40kmの車は秒速11.1mなので、同じ10mは0.9秒です。 桁の多い電話番号を読み取れるのは、歩いている人だけです。
連絡先を主役にした面は、歩道側に置きます。車から見せる面には、募集中であることと物件名だけを残します。 番号を大きく書くより、置く場所を変えるほうが効きます。
文字の高さを距離から決める
| 見せたい距離 | 読む人 | 必要な文字の高さ |
|---|---|---|
| 10m(入口の手前) | 歩いて近づく人 | 2〜4cm |
| 15m(道の反対側) | 歩いている人 | 3〜6cm |
| 40m(走る車から) | 運転している人 | 8〜16cm |
必要な文字の高さは、読ませたい距離の1/250から1/500が目安です。 幅があるのは条件で変わるためです。書体、地色と文字色の対比、夜の照明の有無で必要な大きさは動きます。 迷ったら大きいほう、つまり1/250の値を採ってください。
| 面 | 載せるもの | 載せないもの |
|---|---|---|
| 募集の看板 | 募集中と連絡先 | 間取りや設備の詳細 |
| 館名板 | 物件名だけ | 注意書きと広告 |
| 棟と部屋の案内 | 棟の記号と部屋の並び | 入居者の氏名 |
| 掲示板 | 日付と連絡先 | 個人が特定できる話 |
訪ねてくる人は、住所を調べてから来ます。建物の前で知りたいのは「ここで合っているか」の一点です。 建築年も、階数も、そこでは要りません。足すのではなく削ると、遠くから読める大きさになります。
手続きと共用部の扱いを確かめる
作る前に確かめると、外し直しが減ります。
| 屋外広告物の条例 | 大きさ、数、色、出せる場所に決まりがあります。県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 |
|---|---|
| 募集看板の掲出期間 | 募集が終わったあとも出したままにすると、掲出の扱いが変わる場合があります。外す日を決めてから出してください。 |
| 道路へのはみ出し | 塀や門から道側へ張り出す掲出は、道路の占用にあたる場合があります。敷地の線を図面で確かめてください。 |
| 区分所有の建物 | 共用部に取り付ける面は、管理組合の承認が要る場合があります。総会の日程から逆算して準備します。 |
| 外壁への穴あけ | 穴をあける取り付けは、防水の保証に関わることがあります。施工の記録を残しておいてください。 |
自分の敷地の内側で、自分の専有部分に付けるなら、決められる範囲は広くなります。
道側へ張り出す掲出と、区分所有の建物の共用部は、自分だけでは決められません。
着手の前に、この2本の線がどこにあるかを図面で押さえてください。
※ 扱いは自治体や建物によって異なります。着手前に管轄の窓口と、管理者へご確認ください。
一般的に、屋外広告物の条例は建物の用途を問わず適用されます。 住宅であっても、大きさや出せる場所の決まりがかかる地域があります。 許可の要否と申請の流れは屋外広告物の許可にまとめてあります。
空室が埋まるまでで費用を見る
金額そのものではなく、家賃の何か月分かに直します。
費用が動くところ
| 要る面の数 | 募集、館名、案内、掲示。枚数がそのまま費用に効きます。 |
|---|---|
| 文字の高さ | 遠くから読ませるほど面が大きくなり、材料が増えます。 |
| 取り付ける高さ | 手が届く高さか、足場や高所作業車が要るかで作業が変わります。 |
| 照明の有無 | 夜も読ませるなら、電源の引き込みと器具が加わります。 |
| 書き換えの想定 | 募集の内容を差し替える面は、差し替えられる作りにします。 |
掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別に載せてあります。
家賃の何か月分かに直して比べる
家賃の何か月分か ÷ 1部屋あたり短くなった空室の月数 = 釣り合うのに必要な部屋数
例として、看板一式が家賃2か月分だったと仮定します。 看板を出したことで、1部屋あたりの空室期間が1か月短くなったとします。 2 ÷ 1 = 2 なので、2部屋ぶんで釣り合う計算です。 年に2回の入退去がある物件なら、1年で戻ります。
ここまで下りてくると、面を何枚作るかも決められます。 空室の1か月は、あとから取り返せません。募集の面を1枚増やす判断は、この物差しで測ってください。 なお2か月分という数字は、式を動かすために置いた仮定です。実額は建物と面の数で変わります。
問い合わせの出どころを記録して測る
数えられる形にしておくと、次の判断が速くなります。
電話を受けたら「何をご覧になりましたか」と一言たずねます。看板と答えた件数を月ごとに数えます。紙とペンで足ります。
募集の看板にのみ、別の連絡先を載せます。その番号への着信は、すべて看板からの反応です。たずねなくても数が残ります。
募集を始めた日と、契約が決まった日を記録します。看板を出す前の期間と、出したあとの期間で比べます。
館名板と部屋の案内が働いているかは、この回数に出ます。「どこですか」という電話が減れば、面は読まれています。
記録がなければ、看板の話は好みの話になります。数えた件数だけが、次の一手を決めます。
見るタイミング
| 出した当日 | 道の反対側と、車が通る側に立ち、文字が読めるかを見ます。 |
|---|---|
| 1か月 | 問い合わせの件数を数えます。0件なら、まず位置を疑います。 |
| 3か月 | 空室が埋まるまでの日数を、前の募集と並べて比べます。 |
| 1年 | 色あせと汚れを見ます。物件名の表示は、建物の顔になります。 |
| 入退去のたび | 掲示板の内容が古びていないかを確かめます。 |
反応がないとき、この順で疑う
- 1草木で隠れていないか
半年あれば枝は伸びます。切るだけで戻ります。看板を疑う前に、周りを見てください。
- 2汚れていないか
雨だれの筋が入るだけで、読める距離は短くなります。拭くのに費用はかかりません。
- 3見る人の側に立ったか
家主は敷地の中から自分の看板を見ます。入居希望者は道の上から見ます。立つ位置を変えると、隠れている面が見つかります。
- 4連絡先が読み取れる高さか
桁の多い番号は、短い語より読み取りに時間がかかります。歩いて近づける面へ移すだけで解決することがあります。
- 5そもそも面が足りているか
募集の面しか無ければ、訪ねてきた人は建物を確かめられません。作り直す前に、足りない1枚を足すほうが安く済みます。
上の5つは、上から順に安く済みます。枝を切る、拭く、立つ位置を変える。ここまでは当日にできます。 面を1枚足すのは、その次です。 いま付いているものを作り直す判断は、4つを試したあとで十分間に合います。
よくある失敗5パターン
どれも、発注の前に決めておけば避けられます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 1枚に全部を書いた | 文字が小さくなり、どれも読まれない | 面を分け、募集は連絡先を主役にする |
| 募集が決まっても外さなかった | 空室が続く建物に見える | 外す日を決め、記録に残しておく |
| 館名板を高い位置に付けた | 入口で確かめたい人の目に入らない | 目の高さの面を1枚足す |
| 注意書きを外向きに貼り続けた | 通る人に管理の様子が伝わる | 共用部の内側の掲示板へ移す |
| 管理組合に諮らず取り付けた | 取り外しを求められる | 着手前に承認の手順を確かめる |
セルフチェックリスト
相談に行く前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 募集、館名、案内、掲示のうち、どの面が要るかを書き出した
- 面ごとに、見せる相手を1種類に決めた
- 募集の看板を、道から見える位置に置くと決めた
- 館名板に載せるのは物件名だけにした
- 見せたい距離を測り、必要な文字の高さを計算した
- 連絡先を、歩いて近づける面に置いた
- ゴミ出しや駐車場の掲示を、内側の面へ分けた
- 敷地の線を図面で確かめ、道へ張り出さないことを確認した
- 屋外広告物の扱いを管轄の窓口にたずねた
- 区分所有の建物なら、承認の手順を確かめた
- 募集の面を外す日を決めてある
- 問い合わせの出どころを記録する場所を用意した
よくある質問
アパートの看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさは、どう決めますか?
看板を出すのに、手続きは要りますか?
効果があったかどうかは、どう判断しますか?
すでに付いている看板を、直せますか?
予算が限られる場合、どれを先に作りますか?
まとめ
所有する物件に看板を用意するときは、次の順序で決めていきます。
- 1面を分ける
入居希望者と、訪問者や配達と、入居者。読む人で切り分ける。
- 2情報を絞る
館名板は物件名だけ。募集の面は連絡先を主役にする。
- 3手続きを確かめる
条例、掲出期間、敷地の線、共用部の承認を押さえる。
- 4費用を見る
家賃の何か月分かに直し、短くなる空室の月数と比べる。
- 5効果を測る
問い合わせの出どころを数え、3か月で判断する。
物件名が読めるかどうかは、道に立てば分かります。 今日いちど、道の側から自分の建物を見てください。どの面が足りないかは、そこで見えます。