自動車販売店・整備工場の看板
広い敷地で決める5ステップ
これから中古車の販売店や整備工場の看板をそろえる方へ。この敷地では、看板より車のほうが目立ちます。 並んだ展示車が、そのまま壁になるからです。 車が主役の敷地で、板に何を残すかという話をします。
掲げる前に現地で測る6項目/ 道路側から作業場まで、面ごとに役割を配る表の作り方/ 道路側に載せる語を二つに絞る根拠/ 展示車の高さから、看板の下端を決める考え方/ 年の来店回数まで含めた回収ラインの式/ 反応が薄いとき、費用をかけずに疑う順序
敷地が広いほど、看板は埋もれます
車を扱う敷地の看板づくりで多いのが、大きな一枚を目立つ場所に建てたいという要望です。 ところが、その敷地には車が並びます。
配り方を決めずに作ると、こうなります。道路側に車種と在庫を並べ、屋号まで読まれない。 看板の下端が展示車より低く、並んだ車の陰に入る。 入口の位置を示さず、通り過ぎた車が戻ってこない。 のぼりが増え、どの面も読み取れなくなる。
速度と入口を測り、面に役割を配り、掲示の決まりを確かめ、費用を計算し、入庫の件数から測る。 この五つを順に埋めると、建てる枚数が先に決まります。
敷地を通る速度と入口の位置を測る
来る人は車に乗っています。歩く人とは、読める量も見る場所も違います。
制限速度で、読み取れる語数が決まります。速いほど、載せられる語は減ります。標識を見たうえで、実際に車で通り過ぎてみてください。
その位置から看板が読めなければ、読み終えた頃には入口を過ぎています。手前の建物や樹木で隠れることもあります。降りて歩いて確かめてください。
中央線をまたげない道なら、片側からしか入れません。入れない側に向けた面は、次の交差点で戻る道順を示す役に回ります。
並んだ車がそのまま壁になります。乗用車でおよそ1.4mから1.5m。この高さより下に置いた面は、道路の側から見えなくなります。
敷地が広いほど、止めた場所から受付まで歩く距離が伸びます。20mを超えるなら、途中に向きを示す面が要ります。荷物を持って歩いてみてください。
買いに来た人と、預けに来た人では用事が違います。入口を分けられるなら、面も分けられます。分けられないなら、建物の壁で示します。
六つのうち、先に効くのは二つ目です。入口が見え始める位置と、屋号を読み終える位置。 この二つが離れていると、読めても入れません。 読み終えたときには、もう入口の先まで進んでいるからです。
時速40kmなら、1秒で11.1m進みます。2秒で22.2mです。この間に読み取れるのは2語ほど。 時速60kmになると1秒で16.7m、2秒では33.3m進みます。 速度が上がるほど、道路側に載せられる語は減っていきます。
必要な文字の高さは、読ませたい距離のおよそ250分の1から500分の1が目安です。 車に50m先から読ませるなら、50,000mm ÷ 500 で100mm、50,000mm ÷ 250 で200mm。 つまり10cmから20cmになります。 書体、背景との明暗差、照明の有無で変わるため、迷う場合は大きいほうを取ってください。
展示車の高さは、乗用車でおよそ1.4mから1.5m、背の高い車でおよそ1.9mです。
いずれも一般的な目安として見てください。
看板の下端がこの高さより低いと、並んだ車の陰に入ります。
※ 台数が増えるほど、隠れる範囲は広がります。
面の役割を配分する
一つの面に一つの用事。決めた瞬間に、載せない物も決まります。
| 面 | 出すもの | 出さないもの |
|---|---|---|
| 道路側の高い面 | 屋号と、扱う車の二語 | 在庫の台数や価格 |
| 敷地の入口 | 入口であることと、入る向き | 屋号の繰り返し |
| 建物の壁 | 販売か整備か、用事の別 | 車の一覧 |
| 受付の扉 | 受付の場所と、開いている時間 | 展示の案内 |
| 作業場の側 | 立ち入れる範囲の区分 | 集客のための言葉 |
| 展示の列の端 | 展示中であること | 細かい仕様 |
| 出口の口元 | 出る向きと、道路への合流 | 屋号 |
使いどころは右の列です。載せる物だけを決めていくと、面はいくらでも増えます。 載せない物を先に決めると、枚数が止まります。 迷った項目は、道路側から一段ずつ敷地の奥へ送ってください。
一行目は二語までです。屋号と、扱う車の種類。整備が主なら、屋号と整備の二語になります。 三語目を足すと、一語目が薄くなります。 道路側の面をどこまで高く上げられるかは、支柱の立て方で決まります。 立て方の選び方は自立看板・ポールサインの作り方で扱っています。
三行目と四行目は、用事の分かれ目です。車を買う人は数年に一度、預ける人は年に何度か来ます。 整備で来た方が知りたいのは「今日できるか」の一点です。 受付の扉に、今日の受付が可能かどうかを示す面を独立して持たせてください。
敷地が広いと、止めた場所から受付まで歩く距離が伸びます。 20mを超えるようなら、途中に向きだけを示す面を一つ置いてください。 矢印と「受付」の二つで足ります。 止める場所から扉までの導き方は駐車場・入口の案内サインの作り方にまとめています。
掲示の決まりと敷地の条件を確かめる
建てられる大きさと、掲げる義務。この二つは別の話です。
| 屋外広告物としての制限 | 大きさ、高さ、色、出せる場所に制限がかかることがあります。地域で中身が変わります。 |
|---|---|
| 掲げるよう定められた事項 | 車を扱う商売では、定められた事項を掲げるよう求められる場合があります。 |
| 掲げる場所の指定 | 見やすい場所と決まっていることがあります。集客の面とは別に、置き場所を取ります。 |
| 作業の区画を示す表示 | 整備の区画と、お客が歩ける範囲を分けます。足元の線と、区分の表示で示します。 |
| 火気と可燃物の表示 | 油や塗料を置く区画には、定められた表示が要る場合があります。 |
| 敷地の外へ出す面 | 道路にはみ出す面や、敷地の外に建てる面は、別の扱いになります。 |
一行目は、地域によって中身が変わります。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 同じ寸法の看板でも、通りをまたぐと扱いが変わることがあります。 一般的には、図面を確定する前に管轄窓口へ確かめる流れになります。
四行目と五行目は、集客とは別の目的で置く面です。 整備の区画に人が入ると、危険が生まれます。足元の線と区分の表示で、歩ける範囲を示してください。
車を扱う商売では、事務所の見やすい場所に掲げるべき事項が定められている場合があります。
何を、どこに、どの大きさで掲げるか。ここは看板の見栄えとは切り離して考えます。
屋外広告物としての大きさや設置場所の制限とは、分けて確かめてください。
※ 制度は変わることがあります。掲げる前に管轄の窓口へお問い合わせください。
掲出そのものの許可については屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
費用と回収ラインを計算する
一度きりではなく、年に何度来るかまで入れて見ます。
1回あたりの粗利 × 年の来店回数 = 1人あたり年の粗利
年のコスト ÷ 1人あたり年の粗利 = 年に必要な新しい人数
整備の側で置いてみます。1回あたりの単価を30,000円、粗利率を40%とします。 1回あたりの粗利は12,000円です。年に2回預かるなら、1人あたり年の粗利は24,000円になります。
看板にかかる年のコストが240,000円だとします。 240,000 ÷ 24,000 で10。年に10人の新しい方で釣り合う計算です。 365 ÷ 10 は36.5。およそ37日に1人でトントン、という見え方になります。
30,000円、40%、年2回、240,000円は、式の動きを見るための仮の置き方です。 自分の店の数字に差し替えてください。 販売の側は1回の粗利が大きく、来る間隔が長くなります。二つを分けて計算し、あとで足すほうが読めます。
費用を左右するところ
| 面の数 | 道路側、入口、壁、受付、作業場、出口。数えた分がそのまま費用に乗ります。 |
|---|---|
| 道路からの距離 | 離れるほど文字を大きくします。文字が大きくなれば、板の寸法も上がります。 |
| 取り付ける高さ | 展示車より上に出すほど、支柱も基礎も大きくなります。 |
| 地面の状態 | 舗装の下がどうなっているかで、基礎の掘り方が変わります。 |
| 光らせるかどうか | 夕方まで開ける敷地ほど、点灯している時間が電気代に効いてきます。 |
| 差し替えの仕組み | 展示の中身は入れ替わります。刷り込むか、差し替えるかで後の費用が分かれます。 |
三行目が、この敷地では大きく効きます。展示車より上に出すほど、支柱も基礎も太くなるからです。 掲載社が公式サイトで公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
入庫と来店の件数から測る
件数そのものより、手前にある問い合わせの中身が先に動きます。
「何を見てお越しになりましたか」。初めての方に添えるだけで、来た経路が毎月たまっていきます。費用はかかりません。
経路を書く欄を一行足します。預かるときに必ず記入するので、記録が途切れません。
「どこから入りますか」が多いなら、入口の面が足りていません。見るのは件数ではなく、聞かれた中身のほうです。
道路側、入口、受付で別のあて先を用意します。どの面が読まれたかまで分かれます。
数えるのではなく、見え方を確かめます。展示車の列越しに屋号が読めるか、入口の位置が分かるかを見ます。
入庫の伝票に一行足すのが、いちばん安い測定の道具です。集めていなければ、比べる材料が残りません。
判断のタイミング
| 1か月 | 入口をたずねる電話が減ったかを見ます。入庫の数はまだ動きません。 |
|---|---|
| 3か月 | 初めて来た方の経路に、看板が現れるかを見ます。 |
| 半年 | 季節の波を除いて比べられます。前の年の同じ時期と並べます。 |
| 1年 | 面ごとの効き方を比べ、減らす面を決めます。 |
| 展示の並びを変えたとき | 看板の前に背の高い車を置いていないか、道路の側から確かめます。 |
預け先を変える判断には時間がかかります。 1か月で件数を見て決めるのは早すぎます。 まず電話で聞かれる中身を見て、そのあとで初めて来た方の経路をたどってください。
効いていないとき、この順で疑う
- 1たずねているかを疑う
来た経路を書き留める場所がなければ、効いていないのか、分かっていないだけなのかを区別できません。伝票に一行足すところから始まります。
- 2展示車の陰を疑う
道路の反対側に立ちます。看板の手前に背の高い車が並んでいれば、置き場所を入れ替えるだけで戻ります。費用はかかりません。
- 3入口が示せているかを疑う
入口の手前で速度を落とせるか、車で走って確かめます。示す面が無ければ、向きだけの小さな面を一つ足します。
- 4のぼりの本数を疑う
数えて、半分に減らします。本数が増えるほど、屋号の面が埋もれます。減らして戻るなら、原因はここです。
- 5道路側の語数を疑う
屋号と扱う車の二語まで削れるかを見ます。語を足すほど、どれも読まれなくなります。
- 6面を上げる、作り替える
ここまでで動かないときに検討します。支柱と基礎が絡むため費用が大きく、いちばん最後に置きます。
上から順に、費用のかからないものが並びます。 1番から3番は、書き足すか、車を動かすだけで済みます。4番と5番は減らす作業です。 のぼりの本数と置き方はのぼり・置き看板の使い方で扱っています。 面を作り替えるのは、いちばん最後に置いてください。
よくある失敗5パターン
どれも、図面の段階で気づけば直せます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 道路側に車種と在庫を並べた | 屋号まで読まれない | 二語に削り、詳しい中身は敷地の中の面へ移す |
| 看板の下端を展示車より低くした | 並んだ車の陰で見えない | 面を上げる前に、看板の手前から展示の列を外す |
| のぼりを敷地の前に並べた | 本数が増え、屋号が埋もれる | 本数を半分にし、入口の手前だけに残す |
| 入口の位置を示さなかった | 通り過ぎた車が戻ってこない | 入口の手前に、入る向きだけの小さな面を足す |
| 販売と整備を同じ面に載せた | 受付で行き先をたずねられる | 建物の壁で、用事ごとに面を分ける |
セルフチェックリスト
図面が出てきた段階で使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 前の道の制限速度を調べ、読み取れる語数を見積もった
- 入口が見え始める位置に立ち、そこから看板が読めるか確かめた
- 進行方向から右に入れるかどうかを確かめた
- 道路側の面に載せた語が、屋号と扱う車の二つに収まっている
- 看板の下端が、並んだ展示車の高さより上にある
- 展示車の列が看板を隠していないか、道路の反対側から見た
- 販売の入口と、整備の受付を別の面で示している
- 止めた場所から受付まで歩き、途中で迷わないか確かめた
- 作業の区画と、お客が歩ける範囲を表示で分けている
- 掲げるよう定められた事項の置き場所を、窓口に確かめた
- のぼりの本数を数え、屋号より目立っていないか見た
- 初めて来た方に、経路をたずねる仕組みがある
よくある質問
自動車の販売店や整備工場の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの大きさが要りますか?
掲示や表示に決まりはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに看板があり、反応が薄い場合は?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
車を扱う敷地の看板は、次の順序で決めていきます。
| 1 測る | 前の道の速度と、入口が見え始める位置を確かめる。 |
|---|---|
| 2 配る | 道路側、入口、壁、受付、作業場に役割を割り振る。 |
| 3 確かめる | 屋外広告物の制限と、掲げる定めを別々に見る。 |
| 4 計算する | 年の来店回数を掛けて、必要な人数を割り出す。 |
| 5 測り直す | 伝票から経路を集め、問い合わせの中身で追う。 |
車が主役の敷地では、看板は道案内の役に回ります。 屋号と扱う車の二語を高い位置に残し、あとは入口と受付へ導く面にしてください。 まず道路の反対側に立ち、展示車の列越しに屋号が読めるかを見るところからです。