看板のきほん / 2026年9月5日 更新 / 読了目安 約12分

工場・倉庫の看板の作り方
見る人で分ける5つのステップ

工場や倉庫、物流拠点の表示をこれから決める方へ。 門の前で車が迷うかは、デザインではなく分け方で決まります。 敷地に来る人は4種類いて、読む距離も速さも違います。

5手順分けてから測るまで
4種類表示を分ける相手
6段階安い順に疑う
この記事でわかること

敷地に来る4種類の人と、要る表示の違い/ 何メートル手前で読ませるかの計算/ 距離から文字の高さを出す早見表/ 屋外広告物の手続きと、安全な表示の相談先/ 金額が動く6項目と、門で消える手間を直す式/ 誤進入の数え方と、安い順に直す段取り

工場の看板は、迷わせないために作ります

表示を新しく作るとき、最初に出るのが「何を書けばいいか」という問いです。 答えは、誰に読ませるかで変わります。 店の看板は人を呼ぶために作りますが、工場や倉庫の看板は人を迷わせないために作ります。

分けずに1枚へ詰めると、こうなります。来客と搬入を並べて書き、走行中に読み切れない。 曲がる地点に立て、読んだ時には通り過ぎている。 乗用車の目線で高さを決め、トラックから見えない。 日が落ちると、門の場所が分からない。

見る人を分け、位置と大きさを決め、手続きを確かめ、費用の動く所を知り、件数で測る。 この5つを順に埋めれば、業者に渡す要件が揃います。

この記事が扱う範囲

扱うのは、敷地の外から中へ入る人を導く表示です。 駐車場や玄関まわりの案内は駐車場・入口の案内サインの作り方にあります。

Step 1

誰のための表示かを分ける

敷地に来る人は4種類。1枚で兼ねさせないところから始めます。

来客の乗用車は入口を探す

初めて来る人には、どれが正門か分かりません。会社名と「来客用」の2語が門の手前で読めれば足ります。棟の番号は、入ってからで間に合います。

トラックはどの門かを探す

搬入口が正門と別なら、道路上で伝えないと間に合いません。運転席は高く、速度もほぼ一定です。曲がる判断を、交差点の手前で終えてもらいます。

従業員は決まりを確かめる

毎日通る人は案内を読みません。目を向けるのは手順と禁止の表示です。駐輪の場所、喫煙の場所、立入りを分ける線。置く高さも案内とは別です。

近隣の人は誰の敷地かを見る

塀の外を歩く人が知りたいのは、そこが何の建物かだけです。名前と連絡先が1つ読めれば、問い合わせは電話で片づきます。掲示を並べても読まれません。

4つは読む条件が違います。乗用車は徐行して探し、トラックは走りながら判断します。 従業員は立ち止まって読み、近隣の人は歩きながら一瞥するだけです。 1枚で全員に応えると、どの相手にも中途半端になります。

分ける単位は、人ではなく門です。 搬入口が正門と別なら、道路上で「来客用」「大型車はこの先」と選ばせます。 門が1つなら、外で1枚、入ってすぐに1枚。 外は選ばせるため、中は導くため。役割が決まれば、載せる語は減ります。

1枚に載せるのは、行き先1つと矢印1つまで

走ってくる車が読める語数には上限があります。 目安は、1枚につき行き先1つ、矢印1つまで。2つあるなら、看板も2枚に分けます。 足すほど読まれなくなるのが、走行中に読ませる表示の性質です。 電話番号、営業時間、案内図。止まってから読むものは、門の中へ回します。

Step 2

置く位置と大きさを決める

先に位置が決まり、大きさはそこからの距離で出ます。

分岐点の手前に置く曲がる地点そのものに立てると、読んだ時には通り過ぎています。
大型車の目線に合わせる運転席は高い位置です。低い表示はボンネットの陰に入ります。
進入路の向きに面を振る道路と平行な面は細く見えます。少し振ると読める幅が増えます。
門の外と中で役割を分ける外は「どの門か」、中は「どこへ行くか」。二度出す必要はありません。
暗い時間と雨の日に見に行く照明の無い門は、日が落ちると位置が分かりません。

いちばん効くのが1つ目です。読んで判断するには時間が要り、車はその間も進みます。 読ませたい地点は、曲がる場所そのものではなく、その手前になります。

何メートル手前で読ませるか

時速30km = 30 ÷ 3.6 = 1秒あたり約8.3m
読んで判断するのに3秒 → 8.3 × 3 = 約25m手前
時速40km = 40 ÷ 3.6 = 1秒あたり約11.1m → 11.1 × 3 = 約33m手前

構内へ向かうトラックが時速30kmとします。1秒で約8.3m進むので、3秒で約25mです。 曲がる地点の25m手前で読み終えていないと、判断が間に合いません。 幹線から入ってきて時速40kmなら、約33m手前になります。

門から道路へ25mを測り、その位置に立ってみてください。 建物の角や街路樹で視線が切れていれば、置けません。

距離から文字の高さを出す

読ませる距離文字の高さあてはまる場面
15m先約3〜6cm門の前で止まってから読む
25m先約5〜10cm時速30kmで3秒。曲がる手前
33m先約7〜13cm時速40kmで3秒。幹線から進入
50m先約10〜20cm敷地の外から建物を特定する

文字の高さは、読ませたい距離の1/250〜1/500が目安です。 25m先なら、25 ÷ 500 で5cm、25 ÷ 250 で10cm。幅を取って5〜10cmです。 50m先なら10〜20cmになります。ここから面の大きさと立て方が決まります。

この数字は、条件で動きます

同じ高さの文字でも、書体、地と文字の明るさの差、照明の有無で読める距離は変わります。 細い書体と薄い色を組み合わせると、表の下限では届きません。 原寸で印刷した紙を候補の位置に掲げ、決めた距離まで下がって読めるかを試してください。

Step 3

手続きと敷地の決まりを確かめる

自社の土地でも、手続きが不要とはかぎりません。

屋外広告物の手続き大きさや高さによって許可が要る場合があります。
敷地の内か外か自社の土地か、道路側へ向けて出すかで扱いが変わることがあります。
地面に立てる構造物大きな自立看板は、構造の面から別に確認が要る場合があります。
消防や安全に関する表示避難、危険物、立入り制限。看板とは別の決まりによります。
設置の日に道路を使うか車両を止めて作業するなら、事前の届け出が要ることがあります。

引っかかりやすいのが2つ目です。 塀の内側に立てる表示と、道路へ向けて出す表示では、扱いが変わることがあります。 図面に位置を落として尋ねると、話が早く進みます。

安全に関する表示は、看板屋の判断に委ねない

避難の経路、危険物の区分、立入りを制限する区域。 これらは案内の看板とは別の決まりで定められています。 デザインを揃えることはできても、内容を決めるのは看板業者の役目ではありません。
※ 扱いは施設の用途や保管するものによって異なります。所轄の窓口や有資格者にご確認ください。

手続きの要否は、大きさと高さで決まる部分があります。 条例が県の単位で適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、様式も同じではありません。 候補地、面の寸法、高さの3つを揃えて相談してください。 ※ 着手の前に、管轄の窓口へお尋ねください。制度の側は屋外広告物の許可ガイドにまとめています。

Step 4

費用が動くところを知り、迷いが減る分を計算する

集客ではなく、門の前で消える手間の量で見ます。

表示の枚数相手を分けた数だけ増えます。総額をいちばん動かす項目です。
面の大きさ読ませる距離が延びれば、文字も面も大きくなります。
立て方壁に付けるか、地面に基礎を作るか。基礎は掘る工事が加わります。
照明の有無電源を引く距離と、点け消しの管理。夜の搬入がある敷地では外せません。
素材と表面の仕上げ粉じん、潮風、薬品の飛散。環境で使えるものが変わります。
作業できる時間帯稼働中の構内に入るか、休みの日に入るか。

金額をいちばん動かすのは枚数です。ただし同時に作る必要はありません。 道路側で門を選ばせる1枚から始めれば、誤進入の多くはそこで止まります。

門でのやりとりを、金額に直す

1件あたりの対応時間(分) × 月の件数 ÷ 60 × 人件費の時間あたり
月に消えている金額

工場の看板は売上を増やすものではないので、回収は手間の削減で見ます。 1件の対応に5分、月に20件、人件費が時間あたり2,000円と置きます。 5 × 20 ÷ 60 でおよそ1.67時間。2,000円をかけると、月におよそ3,300円です。

月3,300円を30日で割ると、1日あたり約110円です。 1日あたり110円ほどが、門の前でのやりとりに消えている計算になります。 件数が3倍なら、消える額も3倍です。

次に、この額と看板の月あたりの負担を並べます。 設置の費用を使う月数で割り、電気代と手入れの分を足した数字です。

看板の月あたりの負担 < 月に消えている額 → 手間の側だけで見合う

負担のほうが小さければ、迷いを減らすだけで計算が合います。 大きければ、枚数を減らすか、道路側の1枚から始めます。 ただし、迷わせないことの値打ちは、手間の削減だけではありません。 搬入の遅れや、近隣への誤進入が減ることも同じ表示の働きです。

なお5分、20件、2,000円はいずれも仮の置き方です。まず1か月、件数だけを日誌に書いてください。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。

Step 5

誤って入ってきた件数を測り、直す順序を決める

数えるのは1つで足ります。門で止めた回数です。

誤って入ってきた数を数える

門で「こちらではありません」と伝えた回数を、日誌に1行だけ書きます。月に何件かが分かれば、直す価値があるかも決まります。

道を尋ねる電話を数える

事務所にかかってくる「どこから入りますか」の件数です。表示が届いていない距離が、ここに数字で出ます。

初めて来る人に運転してもらう

取引先の車に同乗し、どこで迷うかを見ます。速度が落ちた地点と、読み直した地点。そこが置き直しの候補になります。

暗い時間と雨の日に同じ道を走る

昼に読めた表示が、暗さと水滴で消えることがあります。時間帯を変えて2回走れば、照明が要るかどうかが決まります。

トラックの運転席から写真を撮る

高い位置からの見え方は乗用車と違います。搬入の担当者に1枚頼むだけで、取り付けた角度と高さの過不足が見えます。

設置の前に数え始めておくと、比べる相手ができます。上の2つは今日からできます。

見るタイミング

設置の前1か月ぶんの誤進入と電話を数えます。比べる相手になります。
設置の翌週搬入に来る運転手に、迷わなかったかを尋ねます。
1か月後同じやり方で数え直し、減り方を見ます。
3か月後残った理由を分けます。表示か、地図の案内か、時間帯か。
半年後足す・動かす・作り直すのどれを取るかを決めます。

件数は、天候と出荷の波で上下します。1週間だけで判断すると、波を効果と読み違えます。

まだ迷われるとき、この順で疑う

  1. 1
    手前の障害物を疑う

    伸びた枝、停めた車両、積んだ資材。視線を切るものは、その日に片づきます。

  2. 2
    面の向きと角度を疑う

    走ってくる方向に面が向いていますか。金具を数度振ると戻ることがあります。

  3. 3
    載せすぎを疑う

    行き先が3つも4つも並ぶと選べません。減らす直し方が、いちばん早く効きます。

  4. 4
    暗い時間の見え方を疑う

    昼だけ読めているのかもしれません。反射材は、照明工事より軽く済みます。

  5. 5
    置いてある位置を疑う

    曲がる地点そのものに立っていないか。手前へ動かせるかを尋ねてください。

  6. 6
    文字の大きさを疑う

    ここまで試して届かないときだけです。作り直す判断は最後に置きます。

上から順に、費用のかからないものが並びます。 1番と2番は、業者を呼ばずに手が打てます。 3番から5番は、いまある看板を動かすか、足すかの範囲です。 作り直しの検討は、6番だけに残します。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、発注の前に現地で確かめれば防げます。

失敗何が起きるか直し方
来客と搬入を1枚にまとめた走行中に読み切れず、両方が迷う門ごとに分け、行き先を1つに絞る
曲がる地点に看板を立てた読んだ時にはもう通り過ぎている手前の分岐点へ動かせるか尋ねる
乗用車の目線で高さを決めた大型車から見下ろす形になり読めない取り付けを上げ、面を上へ振る
敷地の外向きの表示を確かめなかった設置後に手続きのやり直しが起きる位置を図にして窓口へ先に尋ねる
明るいうちにしか現地を見なかった夜の搬入だけ読めない状態が残る反射材を足す。照明工事は次に考える
Checklist

セルフチェックリスト

見積もりを頼む前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。

  • 来る人を、来客・搬入・従業員・近隣の4つに分けた
  • 1枚に載せる行き先を、1つに絞った
  • 搬入の門と来客の門が同じか別かを決めた
  • 曲がる地点から何メートル手前で読ませるかを決めた
  • その距離から、必要な文字の高さを計算した
  • 大型車の運転席から看板が見えることを確かめた
  • 走ってくる方向に面が向いていることを現地で見た
  • 暗い時間と雨の日に、同じ進入路を通った
  • 屋外広告物の手続きが要るかを窓口へ尋ねた
  • 消防や安全に関する表示は、別の相談先を決めた
  • 誤って入ってきた件数を、設置の前に数えた
  • 設置のあとに数え直す日を決めてある
FAQ

よくある質問

工場や倉庫の看板は、何から決めればいいですか?
来る人を分けるところからです。来客、搬入のトラック、従業員、近隣。読む距離も速さも違うため、1枚で兼ねさせるとどれにも届きません。
文字の大きさは、どう決めますか?
読ませたい距離の1/250〜1/500が高さの目安です。書体やコントラスト、照明の有無で変わるため、原寸で印刷して現地であててみてください。
敷地の中に立てる看板にも、手続きは要りますか?
大きさや高さによって必要になる場合があります。内と外で扱いが変わることもあります。立てる位置を図にして、管轄の窓口へ事前にご確認ください。
消防や安全の表示も、看板屋に任せていいですか?
案内の看板とは別の決まりで定められています。避難や危険物に関わる表示は、所轄の窓口や有資格者にご確認ください。
効果は、いつ判断すればいいですか?
設置の前と1か月後で件数を比べます。3か月で減り方が止まったら、残った理由を分けます。半年たっても変わらなければ、置く位置から見直します。
予算が限られるときは、どこから作りますか?
曲がるかどうかを決めさせる1枚からです。門を選ばせる表示が道路側にあれば、誤進入の多くはそこで止まります。構内の案内は、あとから足せます。

まとめ

表示を決めるときは、次の順序で進めます。

1 分ける来客、搬入、従業員、近隣。相手ごとに別の1枚を考える。
2 決める曲がる地点の手前に置き、距離から文字の高さを出す。
3 確かめる屋外広告物の窓口と、安全な表示の相談先を分けて当たる。
4 計算する金額が動く項目を押さえ、消えている時間を金額に直す。
5 数える誤進入と道を尋ねる電話を数え、安い手当てから打つ。

敷地のどこに、誰向けの表示を、どの大きさで置くか。この3つが言えれば、打ち合わせは半分終わっています。 まずは門から道路へ25m下がり、敷地を見てください。何が見えないかが、最初の材料です。

工場・倉庫の看板を頼める業者を探す

当ガイドは仲介や紹介を行っていません。ご相談・お見積もりは各社へ直接お願いいたします。
枚数も置く場所もまだ決まっていない段階で、構内での作業に対応できるかは比べられます。 敷地の図面と、門から道路を撮った写真があると、初回のやりとりが短く済みます。