車両広告・カーラッピングの作り方
社用車で始める5ステップ
社用車を広告に使いたい方へ。「どの車に貼るのか」「何を書けば読まれるのか」 「貼っていい範囲はどこまでか」。 この3つに順番に答えていきます。
どの車のどの面を使うかを決める4つの見方/ 加工4種類の違いと、費用と変更しやすさの関係/ すれ違いの時間から逆算した、載せられる情報量/ 窓ガラスの制限と、条例で対象になる場合のこと/ 車の使用年数で割って回収を見る計算式/ 車からの反応だけを切り分けて測る方法
読まれているのは、走っているときではありません
車の広告というと、走り回って人目に触れる姿を思い浮かべます。 ところが、すれ違う車から読める時間はごくわずかです。 この広告が働くのは、車が止まっているあいだです。
つまずく場所は決まっています。走行中に読ませるつもりで情報を詰め込み、 止まっていても読まれない面になる。文字を名刺の感覚で入れ、離れると消える。 窓ガラスに貼ってよい範囲を確かめないまま加工する。 借りている車に全面のシートを貼り、返すときに費用が出る。
車と面を決める、載せる量を決める、制限を確かめる、費用を見る、反応を測る。 この順に進めれば、貼ってから気づく問題は減らせます。
どの車の、どの面を使うか決める
走行距離ではなく、停車している時間で選びます。
走っている車は1秒ほどしか見られません。現場や取引先の前に停めている車は、何十分も読まれます。稼働の多い車より、停車の長い車を選んでください。
道に面して停める車は、歩道側の面がよく見られます。駐車場では後ろの面です。使い方を思い出しながら、面を1つに絞ってください。
貼ったものは、その車と一緒に使い終わります。あと2年で入れ替える車に、全面のラッピングは向きません。
車は住宅街にも停まります。業種によっては、訪問先が知られること自体が問題になります。取引先に確認しておくと安全です。
全車にまとめて貼ると、効いたかどうかを比べる相手がいなくなります。 1台に貼り、貼っていない車と反応を比べてください。 複数台への展開は、最初の1台の記録が出てからで間に合います。
載せる量と、加工の種類を決める
読める時間から逆に決めると、量は自然に絞られます。
時速40kmの車どうしがすれ違うとき、近づく速さは合わせて80kmです。 80 ÷ 3.6 で秒速およそ22.2m。読める範囲を30mとすれば、30 ÷ 22.2 で約1.35秒しかありません。 この時間で読めるのは、大きな語がひとつです。
例:30m先から読ませたい → 30 ÷ 250 = 0.12m、30 ÷ 500 = 0.06m → 6〜12cm
停車中なら時間の制約はありません。ただし、近づいて読む人はまれです。 歩道からの距離を考えると、必要な大きさは走行中と大きく変わりません。 載せるのは業種と連絡先の2つまで。事業内容の一覧は、この面の仕事ではありません。
| 加工の種類 | やり方 | 選ぶときの考え方 |
|---|---|---|
| カッティングの文字だけ | 文字の形に切ったシートを貼る | 費用が軽い。剥がしやすく、内容の変更もしやすい |
| 部分的な印刷シート | ドアや後ろの面だけに貼る | 絵柄が使える。面を選べるので費用を抑えられる |
| 全面のラッピング | 車体をシートで覆う | 目立つが費用が重い。塗装面の状態に左右される |
| マグネットシート | 貼り外しができる板を付ける | 外せる。ただし走行中の脱落と、下の錆に注意が要る |
貼れる範囲と手続きを確かめる
車には、建物の看板には無い制限があります。
| 窓ガラスへの貼り付け | 前面と運転席・助手席側面のガラスは、法令で認められたもの以外を貼れません。 |
|---|---|
| 屋外広告物としての扱い | 車体を使った広告は、条例で規制の対象になる場合があります。 |
| 自社の広告か、他社の広告か | 他社の広告を有償で載せると、扱いが変わることがあります。 |
| 車両保険と車検 | 加工の内容によっては、事前に保険会社と整備の窓口へ確認が要ります。 |
| リース車かどうか | 借りている車では、貼ることと返すときの原状回復を契約で確かめます。 |
前面のガラスと、運転席・助手席の側面ガラスには、法令で認められたもの以外を貼れません。
後ろのガラスの扱いは車の構造によって変わります。
車体を使った広告は、屋外広告物の条例で規制の対象になる場合もあります。
加工の前に、整備の窓口と管轄窓口の両方へ確認してください。
※ 扱いは車種・自治体によって異なります。事前にご確認ください。
車の使用年数で割って費用を見る
加工の金額を、その車に乗る年数で割ってから判断します。
費用が動くところ
| 貼る面積 | 文字だけか、面全体か。材料と作業の両方に効きます。 |
|---|---|
| 車体の形 | 曲面と凹凸が多いほど、貼る手間が増えます。 |
| 面の数 | 両側面と後ろ。増やすほど比例して上がります。 |
| 剥がす作業の有無 | 前の広告が貼ってある場合、剥がして糊を落とす手間が加わります。 |
| 車の台数 | 同じ絵柄を複数台に貼ると、1台あたりは軽くなります。 |
掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
何件の問い合わせで釣り合うかを出す
年あたりの費用 ÷ 12 = 月あたりのコスト
月あたりのコスト ÷ (客単価 × 粗利率) = 月に必要な新規客数
例:片側の面に8万円で加工し、その車を6年使うとします。80,000 ÷ 6 = 年13,333円。 13,333 ÷ 12 = 月1,111円です。客単価20,000円、粗利率30%の事業なら、 1,111 ÷ (20,000 × 0.3) = 0.19 になります。 年に3件の問い合わせがあれば釣り合う計算です。
客単価が高い事業ほど、必要な件数は少なくなります。 車の入れ替えが近いなら、年数が短くなるぶん必要な件数は増えます。
車からの反応を測る
車は動くので、切り分ける仕組みを先に作ります。
「車を見た」という答えが出るかを記録します。台数が少ないほど、この一言が唯一の手がかりになります。
車専用の電話番号や読み取り用の符号を載せると、そこからの連絡だけを切り分けられます。
同じ現場でも、道に面して停めるか奥に入れるかで見られ方が変わります。1か月ずつ変えて比べてください。
30m離れて立ち、文字が読めるかを確かめます。運転席から見た印象と、通行人が見る景色は違います。
連絡先を分けておくかどうかで、あとから分かることが変わります。仕組みは貼る前に作ってください。
見るタイミング
| 貼った直後 | 30m離れて読めるか、夜のライトの下でどう見えるかを確かめます。 |
|---|---|
| 3か月 | 問い合わせのきっかけに、車の話が出てくるかを見ます。 |
| 1年 | シートの端の浮きと、色あせを確認します。 |
| 車を入れ替えるとき | 次の車に貼り直すかどうかを、それまでの記録で判断します。 |
反応がないとき、この順で疑う
- 1停める場所が奥すぎないか
敷地の奥や裏手では、誰の目にも触れません。停め方を変えるだけで直ります。
- 2文字が小さすぎないか
30m先から読ませるには、6〜12cmの高さが要ります。名刺の感覚で作ると読めません。
- 3情報が多すぎないか
走っている車は1秒ほどしか見られません。載せるのは業種と連絡先の2つまでです。
- 4連絡先の切り分けができていないか
効いていても、それが分かる仕組みが無ければ判断できません。
- 5そもそも面が違わないか
ここまで確かめて残ったら、貼る面や台数を見直します。
現場に着いたとき、道に面して停めるか、敷地の奥へ入れるか。 この違いだけで、読まれる回数は変わります。 作り直しを考える前に、1か月だけ停め方を変えてみてください。 効果の測り方をもっと広く扱ったものは看板広告の作り方ガイドにあります。
よくある失敗5パターン
どれも、加工の前に確かめれば避けられます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 走行中に読ませようとした | すれ違いの1秒では何も読めない | 停車中に読ませる前提で内容を絞る |
| 文字を名刺の感覚で入れた | 離れると読めず、面が埋まっただけ | 30m先から読める高さまで大きくする |
| 窓ガラスに貼った | 基準に触れる貼り方になる | 貼れる範囲を事前に確認する |
| リース車に全面ラッピングした | 返すときの原状回復で費用が出る | 契約を確認し、剥がせる方法を選ぶ |
| 連絡先を本社と共通にした | 車を見て連絡が来ても分からない | 車専用の番号か符号を載せる |
セルフチェックリスト
発注の前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- いちばん長く停まっている車を選んである
- 人の目に触れる面を1つに絞った
- その車をあと何年使うかを確かめた
- 載せる情報を2つ以内に絞った
- 30m先から読める文字の高さを計算した
- 窓ガラスに貼らない前提で設計した
- 条例の対象になるかどうかを窓口に確かめた
- リース車の場合、貼ることの承諾を得ている
- 返すときの原状回復の範囲を決めてある
- 車からの連絡だけを切り分ける手段を用意した
- 夜のライトの下での見え方を確かめた
- 停める場所と時間を、効果測定の対象に入れてある
よくある質問
車の広告は、何から決めればいいですか?
文字はどのくらいの大きさが要りますか?
車に広告を貼るのに、手続きは要りますか?
効果があったかどうかは、どう判断しますか?
すでに貼ってある場合、直せますか?
費用を抑えたい場合、どうすればいいですか?
まとめ
社用車を広告に使うときは、次の順序で決めていきます。
| 1 車と面 | 停まっている時間の長い車の、人の目に触れる1面。 |
|---|---|
| 2 中身 | 読める時間から逆算し、載せるのは2つまで。 |
| 3 制限 | 窓ガラスの範囲、条例、リース契約。 |
| 4 費用 | 加工の金額を、その車に乗る年数で割る。 |
| 5 測定 | 車専用の連絡先を用意し、停め方を変えて比べる。 |
この広告の値打ちは、走った距離ではなく停まった場所で決まります。 1台に貼り、停め方を変えて記録を取る。そこから台数を増やすかを決める順番が確実です。