商店街・共同の看板
複数の店で出す5ステップ
これから通り全体で看板を出そうとしている方へ。 共同の看板が止まる理由は、たいてい技術ではなく合意です。 誰が決め、誰が払い、誰が持つのか。 この三つを先に片づけると、残りの工程はふつうの看板と変わりません。
持ち主と決め方を、着手の前に定める手順/ 共同で持つ面と、各店が持つ面の線引き/ 歩く速さから出す、読める文字数と文字の高さ/ 道路にかかる部分の手続きと、責任の所在/ 年数と店数で総額を割り、1店あたりの負担に直す式/ 店の入れ替えに耐える作り方と、外す判断の出し方
案が悪いのではなく、決め方が決まっていない
共同の看板は、案を出すところまでは早く進みます。 止まるのは、誰がどう決めるかを決めていない場合です。
起きやすいのは、次の四つです。 持ち主を定めないまま立て、壊れたときに直す人が決まらない。 共同の面に全店の名前を並べ、載る順で話が止まる。 閉めた店の欄が残り、面全体が古く見える。 設置費だけを集め、電気代と保険を見込んでいない。
どれも、着手の前に手を打てば起きません。 決める人を決め、面を線引きし、手続きを確かめ、費用を割り、数えて見直す。 この五つを順に埋めます。
決める人と払う人を、先に決める
デザインの話は、この工程が終わってから始めます。
団体の名義か、代表者の個人名か。持ち主が曖昧なまま立てると、壊れたときに直す人が決まりません。
全会一致か、多数決か、役員に任せるか。合意の取り方を先に決めると、案の中身で揉めても前へ進みます。
面に名前が載る店だけか、通りに面する全店か。線を後から引き直すのが、いちばん難しくなります。
閉めた店の欄をどうするか、新しい店をいつ足すか。数年のうちに必ず起きます。
書面に残す項目は、多くありません。 次の六つで足ります。
| 持ち主 | 団体名か個人名か。書面に残す。 |
|---|---|
| 決め方 | 全会一致か、多数決か、委任か。 |
| 負担の範囲 | 設置費だけか、電気代と保険も含むか。 |
| 更新の周期 | 何年ごとに面を見直すか。 |
| 入れ替えの手順 | 抜けた店、入った店をどう反映するか。 |
| やめるときの決め方 | 外す判断を、誰がどう出すか。 |
いちばん忘れられるのは、やめるときの決め方です。 立てる話は熱意で進みますが、外す話は誰も切り出しません。 判断を出す人と時期を、設置の合意と同じ紙に書いておきます。
建物の中に入っている店を案内する板は、決め方も作り方も別になります。 考え方はテナント案内板にまとめました。
共同で出す面と、各店が出す面を線引きする
線を引く場所を間違えると、合意の回数が増えます。
通り全体の話は共同で、店の話は各店で。 この分け方が、いちばん揉めません。
| 面 | 答える問い | 持ち主 |
|---|---|---|
| 入口の面 | 通り全体の名前 | 共同で持つ |
| 区画を分ける面 | どのあたりに何があるか | 共同で持つ |
| 共同の案内板 | 店の並びと位置 | 共同で持つ |
| 各店の袖看板 | その店が何屋か | 各店が持つ |
| 店頭の置き看板 | その日の売り | 各店が持つ |
並べた瞬間に、載る順と大きさの話になります。位置を示す図と、区画の呼び名だけに絞ると合意が早く済みます。
デザインをそろえると、各店の費用と自由を奪います。取り付けの高さと、出っ張る長さの上限だけを共通の約束にします。
店の入れ替えは必ず起きます。脚立で届く高さに差し替え枠を作ると、その日のうちに直せます。
載せられる量は、通り過ぎる速さで決まります。
5m手前から見える → 5 ÷ 1.1 = 約4.5秒
1秒に読めるのを2〜3文字と置く(目安)
4.5 × 2 = 9 / 4.5 × 3 = 13.5 → 9〜13文字
立ち止まって読む人は、この限りではありません。 ただし足を止めるかどうかは、最初の数秒で決まります。 通りすがりに読める9〜13文字で、止まる理由を作ってください。
自転車で通る人は、さらに短くなります。 時速15kmは秒速約4.2mなので、30mの区間は 30 ÷ 4.2 で約7秒です。
文字の高さを割り算で出す
読ませたい距離が決まれば、高さは計算で求まります。
30m先(入口の面) → 30,000 ÷ 500 = 60mm / ÷ 250 = 120mm → 6〜12cm
20m先(区画の面) → 20,000 ÷ 500 = 40mm / ÷ 250 = 80mm → 4〜8cm
5m先(案内板) → 5,000 ÷ 500 = 10mm / ÷ 250 = 20mm → 1〜2cm
この幅は、明るい場所で正面から見た値です。 書体、地の色との明暗差、日差しの向きで変わります。 屋根のある通りは昼でも暗くなるため、大きいほうへ寄せてください。
店の入れ替えは、数年のうちに必ず起きます。 名前を並べた面は、一店抜けるたびに直す必要が出ます。 区画の呼び名と位置図にしておけば、入れ替わっても面はそのまま使えます。 名前を載せるなら、脚立で届く高さの差し替え枠に限ってください。
道路にかかる手続きと、持ち主の責任を確かめる
共同の看板では、責任の所在が最初の争点になります。
路面や上空を使う看板には、屋外広告物とは別の手続きが重なります。 窓口が二つに分かれることを、前提に段取りを組んでください。
| 道路にかかる部分 | 路面や上空を使う場合、占用の手続きが要ることがある。 |
|---|---|
| 屋外広告物としての扱い | 面積と高さの上限。表示できる期間と更新の時期。 |
| 構造としての扱い | 大きさや高さによって、別の確認が要る場合がある。 |
| 持ち主の責任 | 落下や転倒が起きたとき、誰が負うかを書面にする。 |
| 保険の加入 | 共同で持つ面を、誰の名義で掛けるか。 |
| 点検の担当 | 誰が、いつ、どこまで見るかを決める。 |
屋外広告物としての扱いは、土地によって違います。 県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域に分かれます。 許可に表示できる期間が定められ、更新の手続きが要る場合もあります。 要否と様式は、管轄の窓口へお尋ねください。 流れそのものは屋外広告物の許可にまとめました。
点検の担当を、名前で決める
共同の看板は、全員のものであり、誰のものでもなくなります。
当番制にすると、引き継ぎのたびに抜けます。 役職に紐づけると、人が替わっても続きます。 高い場所や電気に触れる部分は、専門の業者へ回してください。 見る項目と周期は看板の点検で扱っています。
持ち主が曖昧な看板は、事故が起きてから所有者を探すことになります。
名義、保険の契約者、点検の担当。
この三つを同じ紙に書き、参加する全店へ配ってください。
※ 道路の占用、屋外広告物の許可、構造としての扱いは地域や大きさにより異なります。着手前に管轄の窓口へお確かめください。
年数と店数で割り、1店あたりの負担を出す
総額のままでは決まりません。1店の月額まで落とします。
費用が動くところを見る
| 面の数と大きさ | 入口と区画の面は、通りの長さで数が決まる。 |
|---|---|
| 道路上に出すかどうか | 路面や上空を使うと、手続きと構造の要件が加わる。 |
| 差し替えの方式 | 入れ替えを想定した枠にするかで、後年の費用が変わる。 |
| 照明の有無 | 電気を引くか、日中だけ読ませるかで工事の範囲が動く。 |
| 維持にかかるもの | 電気代、保険、清掃、点検。毎年出ていく。 |
| 外すときの費用 | 道路上の面は、外す作業にも手続きが要ることがある。 |
設置費だけを集める計画は、数年後に行き詰まります。 毎年出ていくものを、先に足し上げてください。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
1店あたりの月額まで落とす
一式の総額900,000円 ÷ 120か月 = 月7,500円
参加15店 → 7,500 ÷ 15 = 1店あたり月500円
この900,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
次に、1店の側で回収を見ます。
500 ÷ 1,800 = 0.277 → 月0.3人
3か月分の負担 = 500 × 3 = 1,500円
3か月に1人来れば 1,800円 → 1,500円を上回る
看板を見て入った客が、3か月に1人いれば釣り合う計算になります。 3,000円も粗利率0.6も、仮の置き方です。 自分の平均単価と、直近の粗利率に差し替えて計算し直してください。
1店あたりの月額に直すと、話が動きます。 総額で示すと反対が出やすく、月額で示すと判断が早まります。 店数が減れば負担が増えることも、同じ式で示せます。
通る人を数え、外す判断まで含めて見直す
増やす見直しだけでなく、減らす見直しも工程に入れます。
時間帯を決めて、10分だけ数えます。当番を回せば、一人の負担はほとんどありません。
会計のときに一言たずね、月末に持ち寄ります。面ごとの効き方が見えます。
初めて来た人の速さで通り抜けます。読めない面と、隠れた面がその場で分かります。
正面の入口だけを見ていると、横から入る人を数え落とします。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は当番を回せば、一人10分で済みます。
見る時期を決める
| 1か月 | 案内板の前で足が止まるかを見ます。数が少なければ位置の問題です。 |
|---|---|
| 3か月 | 各店の聞き取りを持ち寄り、効いている面を絞ります。 |
| 1年 | 店の入れ替えを面に反映します。許可の期限を確かめる時期でもあります。 |
| 3年 | 面の数そのものを見直します。減らす判断も、ここで出します。 |
通行の量は、催しと天候で大きく揺れます。 祭りの週と雨の週を混ぜると、面の効き方が見えません。 同じ曜日、同じ時間帯で数えてください。
効かないときは、この順で疑う
- 1入口から出口まで歩き直す
費用はかかりません。読めない面がどれか、ここでほとんど判明します。
- 2案内板の前の自転車と幟をどける
停めた自転車や、店が出した幟で下半分が隠れていることがあります。
- 3閉めた店の欄を消す
古い名前が残っていると、面全体が信用されません。上から貼るだけで済みます。
- 4案内板を、足が止まる場所へ移す
通り抜ける途中ではなく、信号待ちや合流点の脇へ寄せます。
- 5載せた店名を、区画の呼び名に置き換える
15店を並べるより、区画を3つに分けるほうが読まれます。
- 6面の数を減らし、残す面へ費用を寄せる
足すより減らすほうが効くことがあります。作り直しは、この後です。
上のほうほど、費用をかけずに手を打てます。 1番から3番は、その日のうちに終わります。 面を作り直すのは、六つを試した後です。 全体を作り替える段になったら、看板のリニューアルの進め方が使えます。
よくある失敗5パターン
どれも、紙に一行書くか、上から貼ることで手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 持ち主を決めずに立てた | 壊れたときに直す人が決まらない | 書面で名義を一つに定める。次の総会の議題にする |
| 共同の面に全店名を並べた | 載る順と大きさで合意が止まる | 区画の呼び名と位置図に置き換える |
| 閉めた店の欄を残した | 面全体が古い情報に見える | 上から貼って消す。年1回の入れ替え日を決める |
| 維持費を見積もりに入れなかった | 数年後に電気代と保険で揉める | 年に出ていく額を出し、負担の割り方を決めておく |
| 外すときの話をしなかった | 撤去の費用と手続きが後から出る | 外す判断の出し方を、設置の合意と同時に決める |
セルフチェックリスト
着手の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 看板の持ち主を、書面で一つに定めた
- 合意の取り方を、着手の前に決めた
- 費用を払う店の範囲を線引きした
- 共同で持つ面と、各店が持つ面を分けた
- 共同の面に、店名を並べない形にした
- 案内板の前で立ち止まらずに読める文字数へ収めた
- 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
- 差し替える枠を、脚立で届く高さに置いた
- 道路にかかる部分の手続きを窓口に確かめた
- 点検の担当と、保険の名義を決めた
- 抜けた店と入った店の反映の仕方を書いた
- 年数と店数で費用を割り、1店あたりの負担を出した
よくある質問
商店街の共同看板は、何から決めればいいですか?
案内板には、どのくらいの文字を載せられますか?
共同の面に、参加店の名前を並べてもいいですか?
道路にかかる看板には、手続きが要りますか?
効いているかは、いつ判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
共同で出す看板は、次の順序で決まります。
| 1 決める人を決める | 持ち主、決め方、負担の範囲を、書面で一つに定める。 |
|---|---|
| 2 面を線引きする | 通り全体の話は共同、店の話は各店。名前は並べない。 |
| 3 手続きを確かめる | 道路の占用と屋外広告物で、窓口が分かれることを前提に組む。 |
| 4 費用を割る | 年数と店数で総額を割り、1店あたりの月額まで落とす。 |
| 5 数えて見直す | 同じ曜日と時間で数え、減らす判断も工程に入れる。 |
共同の看板でいちばん大事なのは、外すときの決め方です。 立てる合意と同じ紙に書けば、十年後に困りません。