看板の点検ガイド
自主点検を始める6つのステップ
看板を管理している方へ。「何をどこまで見ればいいのか」「業者に頼むべき線はどこか」 「点検の義務はあるのか」。 この3つに順番に答えていきます。
看板の台帳に書いておく4つの項目/ 地上から目で見て分かる6つの項目/ 見る頻度の目安(日常・年次・専門・荒天後)/ 専門業者に切り替える5つの条件/ 点検の制度と、許可の更新との関係/ 点検にかける費用の考え方/ 記録の残し方と、傷みを見つけたときの優先順位
点検は、壊れる前にする作業です
看板の相談で多いのは「落ちそうなので見てほしい」という段階のものです。 その時点では選べる手が少なく、費用も大きくなります。 点検は、選べる手が多いうちに気づくための作業です。
つまずきは似ています。管理している看板の枚数を把握していない。 正面からしか見ていないので、たわみと傾きに気づけない。強い風雨のあとに確認していない。 記録がないため、進んでいるのか止まっているのか判断できない。
棚卸し → 目で見る → 専門点検に切り替える → 制度を確かめる → 費用を決める → 記録を残す。 この順に進めれば、道具も資格もない状態から始められます。
看板を数えて、台帳を作る
最初の作業は点検ではありません。何があるかを把握することです。
壁の看板、突き出した看板、自立した看板、袖看板、屋上のもの。数えてみると、把握していなかった1枚が出てくることがあります。テナントが入れ替わったまま残っている看板も、管理する側の責任に含まれます。
掲出した年と、施工した会社の名前。これが分かるだけで、点検も修理も話が早くなります。分からない場合は「不明」と書いて構いません。空欄にすると、次に見る人が調べたかどうかを判断できません。
面材、光るかどうか、取り付け方。写真を1枚添えれば、文章で書ききれない情報が残せます。正面と、取り付け部分の2枚あれば十分です。
テナントが入れ替わったまま外されずに残っている看板は、実際によく見かけます。 誰のものか曖昧なまま年数が経つと、傷んでも誰も見に行きません。 使っていない看板こそ、残すか外すかを早めに決めてください。 外し方は看板撤去のきほんにまとめています。
地上から目で見る
道具はいりません。見る場所と角度さえ決まっていれば十分です。
| さび、特に取り付け部分 | ボルト、金具、脚。面よりも先に傷むところです。 |
|---|---|
| 面のたわみ、浮き、ずれ | 正面ではなく、真横や斜め下から見ると分かります。 |
| ふちの剥がれ、コーキングの割れ | 水が入る入口になります。指でなぞると気づけます。 |
| 雨のあと、水がたまっていないか | 傾きやたわみのしるしです。 |
| 光り方のムラ、ちらつき | 内部の器具か配線に不具合が出ています。 |
| 壁のひび、しみ、変色 | 看板ではなく、支えている建物側の合図です。 |
見落としが最も多いのは角度です。正面から見ると、たわみも傾きも分かりません。 真横と、斜め下から見てください。 この2方向を加えるだけで、気づけることが大きく増えます。
見る頻度を決める
| 種類 | 頻度の目安 | やること |
|---|---|---|
| 日常の見回り | 月に1回 | 店を開けるついでに、遠目と近くから見る |
| じっくり見る点検 | 年に1回 | 台帳を持って、項目を1つずつ確かめる |
| 専門業者による点検 | 数年に1回 | 手の届かない部分、内部、取り付けの状態 |
| 強い風雨のあと | そのつど | 傾き、揺れ、落下物がないかを目視で |
※ 頻度は一般的な目安です。設置場所、高さ、掲出からの年数によって適切な間隔は変わります。
専門業者に切り替える線を引く
自分で見る範囲には限界があります。線を先に決めておけば、迷わずに済みます。
| 手が届かない高さにある | 見えるところだけ見ても、判断の材料になりません。 |
|---|---|
| 歩道や道路の上に出ている | 落ちたときの影響が大きく、点検の優先度が上がります。 |
| 掲出から年数が経っている | 見た目に出ない部分の劣化が進んでいる可能性があります。 |
| 揺れ、異音、傾きがある | 目視で分かる時点で、内部は進んでいます。 |
| 前の入居者から引き継いだ | 作りも施工時期も分からないため、一度は見てもらう価値があります。 |
地上から見えるのは表面だけです。取り付けの内部、下地の状態、金物の緩みは見えません。 高い場所にあるものを地上から眺めて「大丈夫そう」と判断するのは、判断ではなく見送りです。
脚立や梯子で無理に近づくと、看板より先に人が危険にさらされます。 高い場所の作業には足場や高所作業車が必要になることがあります。 届かない場所は、届く道具を持つ人に頼んでください。 考え方は高い場所の看板工事ガイドにまとめています。
制度上の決まりを確かめる
点検が任意なのか、求められているのか。ここは地域で分かれます。
屋外広告物は条例で規制されています。県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、 点検に関する扱いも分かれます。確認するのは次の点です。
| 屋外広告物の許可の更新 | 数年ごとの更新が一般的です。更新のときに点検の結果を求められる地域があります。 |
|---|---|
| 点検の結果を出す仕組み | 一定の大きさや高さの広告物に、点検を求める制度を持つ地域があります。 |
| 点検する人の要件 | 資格や講習の修了を求める場合があります。 |
| 管理者を届け出る仕組み | 広告物の管理者を定めて届け出る決まりがある場合があります。 |
許可の更新には期限があります。更新のたびに点検を行う形にしておくと、
見る時期を別に決めなくて済み、記録も残ります。
更新の通知は、点検を思い出す合図として使えます。
※ 点検の要否、方法、担当できる人の要件は自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口へご確認ください。
手続きの全体像は屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
点検にかける額を決める
かける金額は、看板を何年もたせたいかから逆算できます。
費用が動くところ
| 高さと近づき方 | 地上から見るのか、高所作業車や足場が要るのか。ここが最も動きます。 |
|---|---|
| 見る深さ | 目で見るだけか、たたいて音を聞くか、器具を開けて中を見るか。 |
| 枚数 | まとめて依頼すると、1枚あたりの移動と準備の分が薄まります。 |
| 報告書の有無 | 制度上の提出に使う形式が要るかどうかで変わります。 |
枚数が複数あるなら、時期をそろえて1回にまとめてください。 掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
何年延ばせれば釣り合うか
例:交換に30万円かかる看板が10年もつなら、300,000 ÷ 10 = 年3万円。 点検と手入れで12年もつなら、300,000 ÷ 12 = 年2.5万円。差は年5,000円です。 点検にかける額が年5,000円を下回るなら、計算のうえでは釣り合います。
この計算に、落下を防いだ分は入っていません。人や車に当たった場合の負担を思えば、 釣り合いの線はもっと手前にあります。
記録を残して、次につなげる
最も抜けやすいところです。記録がないと、点検は毎回ふりだしに戻ります。
誰がいつ見たかが残っていないと、記録として使えません。手書きのノートでも、写真のフォルダ名でも構いません。
正面と取り付け部分。毎回同じ位置から撮ると、変化が並べて分かります。位置は最初の1回で決めてしまってください。
「様子見」も立派な記録です。次に見たとき、進んでいるのか止まっているのかを判断できます。
同じ場所が繰り返し傷むなら、原因が別にあります。履歴が残っていれば、そこに気づけます。
形式は問いません。日付と写真がそろっていれば、記録として使えます。
傷みを見つけたら、この順で手を付ける
- 1落ちる危険があるか
人の通る場所の上なら、他のすべてより先に手を打ちます。
- 2水が入る入口ができているか
ふちの剥がれやコーキングの割れ。埋めるだけなら費用は小さく済みます。
- 3電気の不具合があるか
ちらつきや発熱。器具の交換で収まることが多い部分です。
- 4見た目だけの問題か
汚れ、色褪せ。危険はなく、まとめて直す機会を待てます。
- 5作り替えるべきか
ここまで切り分けて残った場合だけ、交換を検討します。
危険につながる部分だけを先に処置し、見た目の問題は次の機会にまとめる。 この分け方ができると、費用を平らにならせます。 優先順位をつけることが、点検の目的の半分です。 症状ごとの切り分けは看板の修理ガイドで扱っています。
よくある失敗5パターン
どれも、費用をかけずに直せるものばかりです。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 台帳がなく、枚数を把握していない | 見落とした1枚が最初に傷む | 紙1枚に書き出す。写真だけでもよい |
| 正面からしか見ていない | たわみと傾きに気づけない | 真横と斜め下から見る習慣にする |
| 強風のあとに確認していない | 緩みが進んで落下につながる | 荒天の翌日に見る日を決めておく |
| 記録を残していない | 進んでいるのか判断できない | 日付入りの写真を同じ位置で撮る |
| 前の入居者の看板を放置した | 管理する側の責任が問われる | 一度点検し、残すか外すかを決める |
セルフチェックリスト
いま管理している看板について答えてください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 管理している看板の枚数を、数字で言える
- それぞれの掲出時期を把握している、または不明と記録してある
- 取り付け部分の写真がある
- 月に1回、遠目と近くから見る習慣がある
- 真横や斜め下からも見たことがある
- ふちの剥がれやコーキングの割れを確認した
- 雨のあと、水がたまっていないか見たことがある
- 強い風雨のあとに確認する決まりがある
- 手の届かない部分を、専門業者に見てもらったことがある
- 許可の更新時期を把握している
- 点検の結果を出す仕組みがある地域かどうか確認した
- 点検の記録を、日付入りで残している
よくある質問
看板の点検は何から始めればいいですか?
どのくらいの頻度で見ればいいですか?
点検は法律で義務づけられていますか?
自分で見て分かることと、分からないことは何ですか?
傷みを見つけたら、どこから手を付けますか?
費用をかけずに始められますか?
まとめ
点検の仕組みは、次の順序で組み上がります。
| 1 棚卸し | 枚数、掲出時期、作り、写真を紙1枚に。 |
|---|---|
| 2 目で見る | 月1回。真横と斜め下からも見る。 |
| 3 専門点検 | 届かない場所と、道路の上のもの。 |
| 4 制度 | 更新の時期と、点検を求める仕組みの有無。 |
| 5 費用 | もつ年数から逆算して額を決める。 |
| 6 記録 | 日付と同じ位置の写真を残す。 |
最初の一歩は、数えることだけです。 台帳が1枚あれば、その先の判断はすべてそこから伸びていきます。
点検を頼める業者を探す
当ガイドは仲介や紹介を行っていません。ご相談・お見積もりは各社へ直接お願いいたします。
傷んでいるかどうか分からない段階でも、対応範囲と高い場所への上がり方は比べられます。
看板の写真と、おおよその高さ。この2つがあると初回の相談が具体的になります。