看板集客 / 2026年8月29日 更新 / 読了目安 約10分

看板デザインの決め方
色と文字を選ぶ6つのステップ

看板の原稿をこれから作る方へ。「配色をどう選ぶか」「何を載せて何を捨てるか」 「できた原稿が正しいかどうか、掲出前に分かるのか」。 この3つに順番に答えていきます。

6手順条件から検証まで
12項目セルフチェック
5類型よくある失敗
この記事でわかること

原稿を作る前に決めておく3つの条件/ 見る速度によって決まる、面に置ける要素の数/ 地色と文字色の選び方(明るさの差で判断できます)/ 書体と配置の決め方/ 地域によって色や光り方に制限があること/ デザインにかかる費用の考え方と、回収の計算式/ 掲出前に読めるかどうかを確かめる4つの方法

「好みで選ぶ」以外の判断材料をつくる

デザインの相談でよく出るのが「おしゃれにしたい」「目立たせたい」という言葉です。 どちらも間違いではありませんが、そのままでは判断の物差しになりません。 結果として、原稿の良し悪しを誰も決められないまま入稿することになります。

実際に起きるつまずきは、だいたい似ています。書体が増えすぎて面がまとまらない。 地色と文字色の明るさが近く、曇りの日に文字が消える。ロゴを最大にしたせいで業種が伝わらない。 モニターだけで確認したので、掲出して初めて文字の小ささに気づく。

デザインの良し悪しは主観ですが、読めるかどうかは数値と手順で確かめられます。 見る条件を決める → 要素を削る → 色を決める → 書体と配置を決める → 地域の制限を確かめる → 掲出前に検証する。 以下、この順に見ていきます。

Step 1

見る条件を決める

色より先に決めることがあります。誰が、どのくらいの速さで、いつ見るのかです。

歩いて見るのか、車で見るのか

歩く人は立ち止まれます。車の人は止まれません。歩行者向けなら小さな文字でも成立し、写真や説明文も置けます。車から見る看板は、読める時間が数秒しかありません。同じ店の看板でも、この2つは別の設計になります。

何メートル手前から気づかせたいか

距離が決まると、面に置ける要素の数が決まります。遠いほど要素は減ります。「なるべく遠くから、なるべく多くの情報を」は両立しません。どちらを取るかを先に決めてください。

昼だけか、夜も見せるのか

夜も見せるなら、地色と文字色の関係が昼と入れ替わります。照明が当たると白は膨らみ、濃い色は沈みます。内側から光らせる形なら、昼に見えていた薄い色が夜は飛びます。営業時間帯に合わせて確認してください。

条件が決まらないまま原稿を作らない

この3つが曖昧なまま配色を検討すると、途中で判断がぶれます。 「かっこいいが読めない案」と「読めるが平凡な案」が並んだとき、選ぶ根拠がなくなるからです。 条件を先に紙に書き、原稿を見るたびにそこへ戻ってください。

Step 2

載せる要素を削る

面に置ける要素の数は、見る速度で決まります。好みでは決まりません。

時速40kmの車は1秒で約11m進みます。看板が視界に入ってから通り過ぎるまで、読める時間は数秒です。 その間に目が拾える情報の数には上限があります。

見る条件要素の数置く内容の例
車から/時速40km前後2つまで業種+店名
自転車・ゆっくり歩く3つまで業種+店名+一言
立ち止まって見る位置5つまで店名+営業時間+連絡先など

※ 要素とは、目が別々に認識するまとまりのことです。店名とロゴが並んでいれば2つと数えます。

ここでいう要素には、装飾も含まれます。枠線、イラスト、背景の模様。 どれも面積を取り、目の移動先を増やします。

削る順番を決めておく

後ろから捨てる順番をあらかじめ決めておくと、原稿の調整が速くなります。 一般的には、装飾 → キャッチコピー → 連絡先 → 営業時間 → ロゴ → 業種名・店名の順です。 最後まで残すのは、何の店で、どこの店かの2つだけです。

削った要素は捨てるのではなく、より近い距離の看板へ移します。 入口の近くやガラス面なら、立ち止まって読んでもらえます。

Step 3

地色と文字色を決める

配色は好みの問題に見えますが、読みやすさの部分は数値で判断できます。

地色を先に決める

文字色から決めると、あとで地色が窮屈になります。地色は面積が大きく、遠くから見たときの印象を支配します。周囲の建物や隣の看板を撮影し、その中で浮く色を選んでください。

明るさの差をつける

色相の違いより、明るさの差のほうが遠くから効きます。濃い地色に白、薄い地色に黒。文字の読みやすさの基準として使われる明暗比4.5:1を目安に、暗い色と明るい色を組み合わせてください。

使う色は3色までに抑える

地色・文字色・差し色の3つで足ります。4色目からは、面がにぎやかになるだけで読みやすさは上がりません。差し色は面の1割以下に留めると、どこを見ればよいかが伝わります。

明るさの差で見比べる

よく使われる配色を、明るさの差という観点だけで並べると次のようになります。

配色明るさの差向いている場面
濃紺の地に白大きい遠距離・夜間に強い
黄の地に黒大きい遠距離・注意喚起向き
赤の地に黒小さい近距離でも読みにくい
薄い灰の地に白小さい曇天でほぼ消える

※ 実際の見え方は、彩度、面の材質、照明の当たり方で変わります。原稿の段階で現物に近い形で確認してください。

赤地に黒は、色相が離れているので画面上では対比が強く見えます。 しかし明るさが近いため、距離が開くと文字が溶けます。 色相の対比と、明るさの差は別のものです。

その場でできる確かめ方

原稿を白黒に変換し、親指の爪ほどの大きさに縮めてください。 この状態で店名が読めれば、明るさの差は足りています。 読めなければ、色相をどう入れ替えても遠くからは読めません。

Step 4

書体と配置を決める

増やすほど良くなる要素はありません。ここでも上限を先に置きます。

書体は2種類まで

和文1つ、欧文1つ。これ以上増やすと統一感が崩れます。遠くから読ませる文字は、線の太さが均一な書体を選んでください。細い線は距離で消えます。

文字は面の3〜5割に収める

面いっぱいに文字を敷き詰めると、かえって読みにくくなります。余白は情報を減らす装置ではなく、目を誘導する装置です。

視線は左上から右下へ流す

横書きなら、いちばん伝えたい語を左上に置きます。中央揃えは整って見えますが、要素が3つを超えると読む順番が伝わりません。

ロゴを主役にしない

知られていない店のロゴは、通行者にとって意味のない図形です。開業直後は、ロゴより業種名を大きくしたほうが伝わります。

開業直後とそれ以降で、主役は入れ替わる

店名が知られていない時期は、業種名が主役です。何の店かが分からなければ、店名を覚える理由がありません。 知られてきたら、業種名を小さくして店名を大きくします。 看板は一度作ったら終わりではなく、店の段階に合わせて主役を入れ替えるものです。

Step 5

地域の制限を確かめる

原稿を作り込んだ後に制限が判明すると、やり直しになります。

屋外広告物は条例で規制されています。県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、 基準も申請の窓口も分かれます。デザインに関わるのは次の点です。

面の大きさと高さの上限基準を超える案は、そもそも掲出できません。
使える色の制限景観に配慮する地域では、彩度の高い色に上限がある場合があります。
光り方の制限点滅や動く表示を禁じている地域があります。
標識との紛らわしさ信号や道路標識に似た配色・形は避ける必要があります。
色に上限がある地域があります

景観に配慮する地域では、面積の大きい部分に鮮やかな色を使えないことがあります。 チェーン店の指定色がそのまま使えず、彩度を落とした版を用意する例もあります。 原稿の方向性を決める前に、制限の有無だけでも確かめてください。
※ 具体的な基準は自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口か施工業者にご確認ください。

Cost

デザインの費用がどこで動くかを知る

金額そのものより、何を増やすと上がるのかを押さえておくと交渉が楽になります。

原稿を作る手間案の数、修正の回数、素材の作成。ここが最も動きます。
色数と加工使う色が増えるほど、印刷や切り文字の工程が増えます。
文字の作り方シートを切るのか、立体の文字を作るのか。工程がまるごと変わります。
支給できる素材ロゴのデータや写真を自分で用意できると、その分の作業が減ります。

案を増やす、修正を重ねる、色を足す。いずれも費用に直結します。 条件を先に決めておくほど、原稿づくりの往復は減ります。 掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。

月あたりに直して、何人来れば釣り合うかを見る

初期費用 ÷ 使う年数 ÷ 12 = 月あたりのコスト
月あたりのコスト ÷ (客単価 × 粗利率) = 月に必要な新規客数

例:デザインを含む初期費用が12万円、5年使う予定なら、120,000 ÷ 5 ÷ 12 = 月2,000円。 客単価3,000円、粗利率50%の店なら、2,000 ÷ (3,000 × 0.5) = 1.33 で、 月に2人来れば釣り合います。

半月に1人という数字が出てきます。ここまで下りてくると、案を1つ増やすかどうかの判断もしやすくなります。

Step 6

掲出する前に検証する

最も差がつくところです。ここを飛ばすと、直せる時期を過ぎてから問題に気づきます。

実寸に近い距離で見る

原稿をモニターで見ても判断できません。原寸の一部を印刷して壁に貼り、想定する距離まで離れて見てください。ここで読めなければ、掲出しても読めません。

縮小して白黒にする

原稿を親指の爪ほどの大きさに縮め、色を抜きます。それでも店名の輪郭が残るなら、遠くからでも読めます。輪郭が溶けたら、配色を見直す合図です。

第三者に3秒だけ見せる

家族や知人に原稿を3秒見せ、何の店かを答えてもらいます。答えられなければ、要素が多すぎます。

夜と雨の日に現地で見る

掲出後の確認です。街灯の位置、向かいの店の照明、濡れた路面の反射。図面では分からない条件がここで出ます。

道具はいりません。このうち2つを実行するだけで、大きな取りこぼしは防げます。

見直すタイミング

入稿の直前縮小と白黒で最後の確認。この時点なら修正費はかかりません。
掲出から1か月昼夜と雨天の見え方を現地で確認します。
1年色褪せの進み方を写真で比べます。
3〜5年掲載内容と配色の見直し。許可の更新時期と重なることが多い時期です。

読まれていないときに、この順で疑う

  1. 1
    明るさの差が足りていないか

    色相ではなく明暗を見ます。文字色を白か黒に替えるだけで直ることがあります。

  2. 2
    要素が多すぎないか

    削る候補を先に決めます。電話番号と営業時間は、遠くの看板では不要なことがほとんどです。

  3. 3
    文字が細すぎないか

    書体の線幅を太いものに替えます。面の作り替えは不要で、表示層の貼り替えで済みます。

  4. 4
    照明が足りていないか

    器具の追加や向きの調整。面はそのまま使えます。

  5. 5
    面そのものが小さすぎないか

    ここまで確かめて残った場合だけ、作り替えを検討します。

面の作り替えは最後に置く

上の1〜4は、表示層の貼り替えや器具の調整で済むことが多く、面はそのまま使えます。 作り替えを決める前に、まず現地で自分の目で見てください。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、入稿の前に気づけば費用をかけずに直せます。

失敗何が起きるか直し方
書体を4種類使った面がまとまらず、格が下がって見える和文と欧文の2種類に絞る
地色と文字色の明るさが近い曇りの日に文字が消える文字色だけ白か黒に差し替える
ロゴを最大にした何の店か伝わらない業種名を最大にし、ロゴは添える
原稿をモニターだけで確認した掲出後に文字が小さすぎたと分かる掲出前に印刷して距離をとって見る
夜の見え方を確認していない営業時間帯に機能しない照明の向きを変える、文字だけ白に替える
Checklist

セルフチェックリスト

原稿ができた段階で使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。

  • 歩いて見る看板か、車から見る看板かを決めてある
  • 何メートル手前から気づかせたいかを数字で言える
  • 面に置く要素を数えたら3つ以内に収まっている
  • 地色を先に決め、周囲の色を撮影して比べた
  • 地色と文字色は、片方が暗く片方が明るい
  • 使っている色は3色以内である
  • 書体は2種類以内である
  • 原稿を縮小して白黒にしても店名が読める
  • 原稿を印刷し、想定する距離から見て読めることを確かめた
  • 夜間と雨天の見え方を確認する予定がある
  • 使える色や光り方に地域の制限がないか確認した
  • デザインを見直す時期を決めてある
FAQ

よくある質問

看板のデザインで最初に決めることは何ですか?
見る条件です。歩いて見るのか車から見るのか、何メートル手前からか、夜も見せるのか。この3つが決まると、面に置ける要素の数が自動的に決まります。色や書体を先に選ぶと、後戻りします。
配色はどう決めればいいですか?
地色を先に決め、それに対して明るさの差が大きい文字色を合わせます。色相の違いより明暗の差のほうが遠くから効きます。迷ったら、掲出する場所の周辺を撮影し、その写真の中で沈まない組み合わせを選んでください。
デザインに地域の決まりはありますか?
あります。面の大きさや高さのほか、彩度の高い色や点滅する表示に制限を設けている地域があります。原稿を作り込む前に、管轄の窓口か施工業者に確認してください。
作ったデザインが正しいかどうか、どう判断しますか?
原稿を縮小して白黒にし、店名が読めるかを見てください。読めれば明るさの差は足りています。あわせて、原寸の一部を印刷し、想定する距離まで離れて読めるかを確かめます。
掲出済みの看板のデザインは直せますか?
直せます。表示層の貼り替え、文字色の変更、照明の追加など、面を作り替えずに済む方法が先にあります。明るさの差と要素の数を見直すだけで読みやすくなることが多くあります。
費用を抑えたい場合、どこを削るべきですか?
色数と書体の数です。色を減らし書体を絞ると、制作の手間が減り、読みやすさは上がります。逆に、面の大きさと文字の太さは削らないでください。読めない看板は費用の多寡に関係なく無駄になります。

まとめ

読める看板の原稿は、次の順序でできあがります。

1 条件歩きか車か、距離、昼夜。
2 削る要素の上限を守り、捨てる順番を決める。
3 色地色が先。明るさの差で選ぶ。
4 書体2種類まで。余白を残す。
5 制限色と光り方の地域基準を確かめる。
6 検証縮小・白黒・距離。掲出前に読む。

センスの前に、順番があります。 条件を決めて要素を削るところまで進めば、残りの判断は驚くほど楽になります。

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