看板のきほん / 2026年9月5日 更新 / 読了目安 約13分

クリニックの看板の作り方
書ける内容から決める5ステップ

これから医院・歯科・整骨院を開こうとしている方へ。医療の看板には、他の業種にない決まりがあります。 デザインより先に、載せてよい内容を確かめるところから始めます。

5手順道筋から測定まで
12項目相談前のチェック
5類型よくある失敗
この記事でわかること

来院までの道筋を区間に分け、必要な面を数える方法/ 医療の広告で扱いが定められている表現と、確認先/ 読ませたい距離から文字の高さを出す早見表/ 診療時間外と夜の見え方を決める手順/ 面の数から費用を見る計算式/ 新しく来た患者さんに聞いて効果を測る方法/ 反応がないとき、安く直せる順に疑う手順

医療の看板は、書ける内容が先に決まります

開業の準備では、物件、内装、機器、人の順に決まっていきます。 看板はそのあとに回りやすい項目です。 ところが医療の看板は、原稿を作る前に確かめることがあります。 載せてよい内容に、法令や指針上の決まりがある点です。

つまずく場所は、だいたい似ています。 建物の壁に1面だけ掲げ、通りからは角度が合わずに気づかれない。 原稿を仕上げてから広告の扱いを確認し、書き直しになる。 診療時間を面に直接印刷し、時間が変わるたびに作り替えになる。 明るい時間にしか見に行かず、診療時間外に存在が消える。

患者さんが来る道筋を書き出す。書ける内容を確かめる。読める大きさと夜の見え方を決める。 面の数で費用を見る。新しく来た患者さんに聞いて測る。 この順に進めれば、開院前に決めることは出そろいます。

Step 1

来院までの道筋を書き出す

面の数は、デザインではなく道筋から決まります。

患者さんが来る向きを2つに絞る

四方から来る前提で考えると、面がいくつあっても足りません。駅から歩いてくる向きと、車で通りかかる向き。多くの医院はこの2つで収まります。

建物の何階かを、どこに書くか決める

ビルの中の医院で最も多い問い合わせが「入口が分からない」です。階数は、建物の外から見える面に入れてください。中の案内板は外の人に届きません。

歩いて来る人と、車で来る人を分ける

歩く速さは分速80mほど、時速30kmの車は秒速8.3mです。同じ面を両方に読ませることはできません。誰に向けた面かを決めます。

迷いやすい地点を1つ特定する

工事や内覧会の期間に、初めて来る人がどこで足を止めるかを見ておきます。その地点に1面足すほうが、大きい面を作るより効きます。

区間ごとに、担当する面を1つずつ置く

駅や道路から待合まで、患者さんは5つの区間を通ります。 区間ごとに伝えることが違うため、1枚の看板ではまとめられません。

区間その面が伝えること見るところ
駅・幹線道路から存在に気づかせる遠くから読める高さの文字か
建物の手前建物を特定させる通りから面の正面が見えるか
建物の前何階にあるかを示す立ち止まらずに階数が読めるか
入口入ってよいと伝える診療時間と休診日が読めるか
待合・院内受付と動線を示す初めての人が迷わず座れるか

遠い区間ほど文字を大きく、近い区間ほど情報を細かく。 大きい面を1つ作るより、小さい面が区間ごとにそろっているほうが、たどり着ける人は増えます。 入口や駐車場まわりは駐車場・入口の案内サインで扱っています。

Step 2

看板に書ける内容を確かめる

ここが、他の業種といちばん違うところです。

届出の名称と診療科名を先に固める

看板の原稿は、開設の届出に書いた名称と診療科名から組み立てます。デザインより先に、この2つを確定させてください。

広告できる事項に決まりがある

医業・歯科医業の広告は、医療法や厚生労働省の医療広告に関する指針で扱いが定められています。院外に掲げる看板も、その広告にあたる場合があります。

比較や保証の言葉は扱いが決まっている

「他の医院より優れている」「必ず治る」といった表現は、比較優良広告や誇大広告として扱われる場合があります。窓口へご相談ください。

体験談や写真の扱いを確かめる

患者さんの体験談、治療の前後を並べた写真も、指針の中で扱いが定められています。自己判断せず、確認してから決めてください。

医療の広告には、一般の広告と別の枠組みがあります

一般的に、医業・歯科医業や病院・診療所に関する広告は、医療法と、 厚生労働省が示す医療広告に関する指針の対象になります。 広告できる事項の範囲、名乗れる診療科名、比較や誇大にあたる表現の扱いなどが定められています。 院外に掲げる看板が、その広告に該当する場合があります。
この記事は個別の可否を判断するものではありません。
※ 制度の運用は改正や地域によって異なります。原稿を作る前に、 厚生労働省の医療広告に関する指針や、管轄の保健所・自治体窓口へ事前にご確認ください。

載せたい項目を並べて、扱いを確かめる

載せたい項目一般的な扱い進め方
医院の名称掲げる面の基本になる開設の届出の表記と合わせる
診療科名名乗れる範囲に決まりがある届出の内容と照らして選ぶ
診療日・診療時間表示できる事項にあたる変更できる作りにしておく
院長の氏名表示できる事項にあたる資格の書き方もあわせて確認
「日本一」などの比較比較優良広告として扱われる場合原稿の段階で窓口へ相談
「必ず治る」などの保証誇大広告として扱われる場合別の言い方が可能か相談

同じ文言でも、面の大きさや掲げる場所で扱いが変わる場合があります。 清書の前に相談すれば、直すのは文字データだけで済みます。

屋外広告物の手続きも、並行して確かめる

看板そのものにかかる決まりも、別にあります。 一定の大きさを超える看板や、決められた区域に出す看板は、 屋外広告物の条例にもとづく許可の対象になる場合があります。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。

許可に更新の期限が設けられていることもあります。 手続きの流れは屋外広告物の許可の取り方にまとめています。

Step 3

読める大きさと、夜の見え方を決める

「読めるかどうか」は、感覚ではなく距離で決まります。

必要な文字の高さは、読ませたい距離の1/250〜1/500が目安です。 50m先から読ませたいなら、10〜20cm。 この数字は書体、背景との色の差、照明の有無で動きます。

読ませたい距離必要な文字の高さその距離で起きること
10m2〜4cm入口の前で立ち止まって読む
20m4〜8cm建物の前の歩道から読む
30m6〜12cm交差点の手前から見つける
50m10〜20cm通りの向こう側から気づく
100m20〜40cm車で走りながら気づく

読める時間も計算します。歩く速さは分速80m、秒速に直すと約1.33mです。 建物の間口が10mなら、前を通り過ぎるのは 10 ÷ 1.33 で7.5秒。 時速30kmの車は秒速8.3mなので、30m手前から見えたとして 30 ÷ 8.3 で3.6秒です。

3.6秒で読めるのは、名称と診療科名の2つが限度です。 電話番号や診療時間は、立ち止まって読む面へ移してください。 遠くの面と近くの面で役割を分けます。

診療時間外の見え方を決める

看板が見られている時間の多くは、診療していない時間です。 通勤や帰宅の途中に前を通り、そこで名前を覚えます。 暗い時間に見えないと、その機会が消えます。

暗くなってから、現地に立って確かめる

街灯の位置、隣の建物の明かり。条件は場所ごとに違います。 日が落ちてから、通りの反対側に立って自分の建物を見てください。 読めなければ、内側から光らせるか、外から照らすかを検討します。 光らせ方は電飾・LED看板の選び方で扱っています。

診療時間と休診日は、直せる作りにしておく

開院から数年のあいだに、診療時間はたいてい一度は変わります。 面に直接印刷すると、そのたびに作り替えです。 時間の欄だけ差し替えられる作りにできるかを、見積もりの前に業者へ伝えてください。 最初に少し足しておくと、あとの費用がまるごと消えます。

Step 4

面の数で費用を見る

1面の金額ではなく、そろえる面の合計で見ます。

金額が動くところ

面の数区間ごとに1面ずつ要るかを見ます。数がそのまま金額に効きます。
1面あたりの大きさ読ませたい距離から決まります。距離が延びれば材料も施工も増えます。
光らせるかどうか内側から光らせる、外から照らす、光らせない。電源工事の有無で変わります。
取り付ける高さと場所高い位置や道路際は、作業のための足場や車両が必要になります。
あとから直せる作りか診療時間の欄だけ差し替えられる作りは、初回に少し足して長く効きます。

掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。

月あたりに直して、何人来れば釣り合うかを見る

そろえる面の初期費用の合計 ÷ 使う月数 = 月あたりのコスト
月あたりのコスト ÷ (新規の患者さん1人あたりの粗利) = 月に必要な新規の人数
30 ÷ 月に必要な新規の人数 = 何日に1人でトントンか

式に、仮の数字を置いてみます。 以下は計算の手順を見せるための仮の値で、金額の目安ではありません。 面の初期費用の合計を仮に36万円、5年つまり60か月使うとします。 360,000 ÷ 60 = 月6,000円です。

新規の患者さん1人あたりの粗利を仮に3,000円とすると、6,000 ÷ 3,000 = 2 になります。 月に2人で釣り合う計算です。30 ÷ 2 = 15なので、15日に1人という単位まで下ります。 ここまで下ろすと、入口の面を足すかどうかも、その場で判断できます。

初期費用も粗利も、診療科目と条件で変わります。 見積もりが出たら、実額と自院の想定を入れ直して計算してください。

Step 5

新しく来た患者さんに聞いて、効果を測る

看板は、初診の人にしか効きません。聞く相手はそこです。

問診票に1行足す

「当院を何で知りましたか」の選択肢に「看板」を入れます。初診の全員に聞ける方法は、これがいちばん手間がかかりません。

受付で口頭のきっかけを記録する

選択肢では拾えない答えが出ます。「入口が分からず一度通り過ぎた」が続くなら、入口の面が足りていません。

入口の前を見る

建物の前で足を止め、上を見上げてから入る人を数えます。見上げる動作は、外の面で階数が伝わっていない合図です。

電話の内容を書き留める

道順を尋ねる電話が月に何件あるかを数えます。開院から3か月たっても減らないなら、途中の区間に面が足りません。

「入口が分からなかった」という声は、看板の不足を教えてくれる合図です。

見るタイミング

掲げた初日患者さんが来る向きに実際に立ち、文字が読めるかを確かめます。
1か月問診票で「看板」を選んだ人が何人いたかを数えます。
3か月道順を尋ねる電話の件数が、開院直後より減ったかを見ます。
半年診療時間や休診日の表示が、今の運用と合っているかを見直します。
数年ごと色あせ、器具の傷み、取り付け部の状態を点検します。

反応がないとき、この順で疑う

  1. 1
    前に何か立っていないか

    街路樹の枝、電柱、路上の掲示物。数か月で視界は変わります。剪定の依頼や、面の角度を振るだけで直る場合があります。

  2. 2
    読ませたい距離と、文字が合っているか

    現地で距離を測り、早見表と照らします。土台を残して文字の面だけ作り替えられる構造なら、費用を抑えて直せます。

  3. 3
    書いてある項目が多すぎないか

    遠くから読ませる面に載せるのは、名称と診療科名までです。時間や電話番号は、近くで読む面へ移します。

  4. 4
    夜に消えていないか

    近くの光源で読めるか、照明を足す必要があるか。暗くなってから現地で確かめます。

  5. 5
    入口が分かる面があるか

    気づかれているのに来ない場合、足りないのは大きい面ではなく入口の面です。小さい面を1つ足すほうが安く済みます。作り直しは最後です。

看板が担当するのは、通りかかった人だけです

遠方から探して来る人は、検索や紹介でたどり着きます。 看板が届くのは、その建物の前を通る人だけです。 来院数の全体を看板の成果として数えると、判断を誤ります。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、原稿を作る前に決めておけば避けられます。

失敗何が起きるか直し方
壁面に1面だけ掲げた通りから角度が合わず気づかれない入口側に小さい面を足す
原稿を仕上げてから確認した書き直しになり、開院に間に合わない原稿の段階で窓口へ相談する
診療時間を面に直接印刷した時間の変更のたびに作り替えになる差し替えられる部分を分ける
項目を詰めて文字を小さくした通りからは何も読み取れない載せる項目を減らして拡大する
明るい時間にだけ確認した診療時間外に存在が消える照明の追加や光源の位置を見直す
Checklist

セルフチェックリスト

業者へ相談する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。

  • 患者さんが来る向きを2つまでに絞って書き出した
  • 駅や道路から入口までを区間に分け、必要な面を数えた
  • 建物の何階にあるかを、外から見える面に入れると決めた
  • 掲げたい文言を書き出し、開設の届出の表記と照らした
  • 比較や効果に関する表現が原稿に入っていないか読み返した
  • 医療広告の扱いについて、管轄の窓口へ相談する日を決めた
  • 屋外広告物の許可が要る場所かどうかを業者に尋ねた
  • 主な面について、読ませたい距離をメジャーで測った
  • 測った距離をもとに、必要な文字の高さを計算した
  • 暗くなってから現地へ行き、見え方を目で確かめた
  • 診療時間の表示を、あとから差し替えられる作りにするか決めた
  • 新しく来た患者さんにきっかけを聞く方法を決めた
FAQ

よくある質問

クリニックの看板は、何から決めればいいですか?
患者さんが来る道筋からです。駅や道路から入口までを区間に分け、区間ごとに必要な面を数えてください。大きさや素材を考えるのは、その次です。
文字の大きさは、どう決めますか?
読ませたい距離の1/250〜1/500が目安です。50m先から読ませたいなら10〜20cmになります。書体、背景との色の差、照明の有無で変わるので、現地で確かめてください。
看板に書ける内容に、決まりはありますか?
医療の広告には、医療法と厚生労働省の指針にもとづく枠組みがあります。診療科名や広告できる事項に制限がかかる場合があります。原稿の段階で、管轄の保健所・自治体窓口へご確認ください。
屋外広告物の手続きは、別に必要ですか?
看板の大きさや設置場所によっては、屋外広告物の条例にもとづく許可が要る場合があります。どの条例が適用されるかは、設置する場所で変わります。予定地を管轄する窓口へご確認ください。
効果があったかどうかは、いつ判断しますか?
1か月で、問診票の「看板」を選んだ人の数を見ます。3か月では、道順を尋ねる電話が減ったかを見てください。半年を過ぎたら、表示している内容が今の運用と合っているかの確認に切り替えます。
費用を抑えたい場合、どこから削りますか?
面の数ではなく、1面あたりの大きさから削ります。入口や階数を示す面を削ると、たどり着けない人が増えます。小さくても数がそろっているほうが迷いません。

まとめ

医院の看板は、次の順序で決めていきます。

1 道筋駅や道路から待合までを区間に分け、区間ごとに面を1つ置く。
2 書ける内容届出の名称と診療科名を固め、広告の扱いを窓口へ確認する。
3 大きさと夜読ませたい距離の1/250〜1/500で文字を決め、暗い時間に見に行く。
4 費用面の合計を使う月数で割り、何日に1人でトントンかまで下ろす。
5 測定問診票と受付でのきっかけを記録し、1か月と3か月で見る。

デザインの相談より先に、載せてよい内容の確認を済ませてください。 原稿が固まってからの手戻りが、いちばん時間を食います。

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区間ごとの面、文字の大きさ、夜の見え方、差し替えのしやすさ。 まだ何も決まっていない段階でも、この4つで各社を比べられます。 物件の外観写真と、患者さんが来る向きのメモ。この2つで初回の相談が具体的になります。