看板の入稿データの作り方
ロゴと文字を渡す5ステップ
看板を頼んだら、ロゴのデータを送ってくださいと言われた方へ。 看板は名刺の10倍以上に引き伸ばして作ります。 紙で足りていたデータが、そのままでは使えないことがあります。
ロゴの元データが残っている場所と、探し方/ 輪郭で持つデータと、画素で持つデータの違い/ 仕上がりの幅から、必要な画素数を計算する方法/ 書体、写真、ロゴの使用条件で確かめること/ データを整える費用を年あたりに直す計算/ 校正を紙で見る手順と、色を決める場所
看板のデータは、拡大率で考えます
名刺やホームページで使っているロゴは、手のひらの大きさで足ります。 看板は、そのロゴを幅3mに引き伸ばして作ります。 紙のときの14倍を超える拡大が、当たり前に起きます。
名刺やA4の紙は幅210mmです。3,000を210で割ると、およそ14.3。 14倍に伸ばしても崩れないデータと、崩れるデータがあります。 この違いを知らないまま送ると、こうなります。画像を引き伸ばして輪郭がぼやける。 送った文字が相手の環境で別の書体に置き換わる。画面で決めた色が、現物では暗く見える。 使う予定だった写真が、屋外への掲出を認められていないと後から分かる。
手元を棚卸しし、形式を決め、使用条件を確かめ、 整える費用を年あたりに直し、仕上がりを紙で確かめる。 この5つで、渡すデータは揃います。
扱うのは、看板を作る会社へ渡すデータの用意です。 色や書体をどう選ぶかは看板デザインの決め方にまとめてあります。 使用条件は提供元によって異なりますので、規約をご確認ください。
手元にあるものを棚卸しする
新しく作る前に、すでにあるものを探します。
看板のデータづくりで最も費用が動くのは、ロゴを一から起こす作業です。 ところが元データは、たいてい過去に頼んだ先に残っています。 探す1本の電話が、そのまま費用を減らします。
- 1ロゴの元データを探す
開業のときに作った会社、名刺を刷った会社、ホームページを作った会社。この3か所のどれかに残っています。
- 2いちばん大きい画像を選ぶ
同じロゴが何枚もあるなら、画素数の多いものを1つ選びます。小さい画像を引き伸ばしても、輪郭は戻りません。
- 3使っている書体を書き出す
看板に載せる文字の書体です。分からなければ、名刺やのぼりの写真を添えれば調べてもらえます。
- 4色の指定を確かめる
印刷物で使っている色番号があれば書き出します。無ければ、現物を1つ渡すのがいちばん確実です。
- 5写真やイラストの出どころを書く
誰が撮ったか、どこで買ったか。出どころが分からない画像は、この段階で候補から外します。
- 6載せる文字を全部書き出す
屋号、業種、電話、営業時間。書き出したうえで、看板に残すものを選びます。
棚卸しで大事なのは、最後の1行です。 載せたい文字を全部書き出したうえで、看板に残すものを選びます。 足すのではなく削ることで、遠くから読める看板になります。
データの持ち方を決める
形式は4つです。どれで持っているかで、できることが変わります。
点と線で形を記録した形式です。何倍に拡大しても輪郭が崩れません。看板ではこの形が基本になります。ロゴと文字は、できるだけこの形で渡します。
色の付いた点を並べた形式です。写真はこの形になります。拡大すると輪郭がぼやけるため、仕上がりの大きさから必要な画素数を先に計算します。
文字の形を輪郭に置き換えた状態です。相手の環境に同じ書体が無くても形が変わりません。渡す前にこの処理をしておくと、やりとりが1往復減ります。
文字も画像も1つの書類に収めた形式です。確認用として渡しやすい形です。ただし後から文字を直す作業には向きません。
ロゴと文字は輪郭で、写真は画素で持つのが基本の形です。 輪郭で持っていれば、幅3mでも幅10mでも同じデータで作れます。 画素のデータは、大きさを決めてから必要な数を確かめます。
仕上がりの幅から、必要な画素数を出す
計算は2段です。仕上がりの幅をミリで測り、25.4で割ってインチに直します。 そこへ原寸あたりの点の細かさを掛けます。 看板では原寸25〜50dpiが目安として使われます。
インチ × 原寸の dpi = 必要な画素数
| 仕上がりの幅 | 原寸25dpi | 原寸50dpi |
|---|---|---|
| 1m | 約984px | 約1,969px |
| 2m | 約1,969px | 約3,937px |
| 3m | 約2,953px | 約5,906px |
| 5m | 約4,921px | 約9,843px |
| 10m | 約9,843px | 約19,685px |
幅3mなら、3000を25.4で割って118インチ。 これに25を掛けて約2,953px、50を掛けて約5,906pxです。 遠くから見る看板ほど、少ない値で足ります。
原寸25〜50dpiは、離れた位置から見ることを前提にした目安です。 手が届く距離で見る室内の表示や、細かい図を載せる案内図では足りません。 どこから見せるものかを伝えたうえで、必要な値を確かめてください。
渡す前に、文字を輪郭に変える
書体は、相手の環境に同じものが無ければ別の形に置き換わります。 文字の形を輪郭に変えておけば、この置き換わりは起きません。 変えたあとは文字を打ち直せなくなるため、元のデータも一緒に残します。
校正のたびに文字を直すなら、輪郭に変えるのは最後の1回で構いません。 渡す順番は、確認用が先で、製作用が後です。
使ってよいかを、渡す前に確かめる
確かめるのは5つです。あとから差し替えると、費用も日程も動きます。
手元にあることと、看板に載せてよいことは別です。 書体も写真も、提供元が使い方の条件を定めています。 条件の確認は、データを作り始める前に済ませます。
| 書体の使用条件 | 大きく出力する用途が条件に含まれるかを、提供元の規約でご確認ください。 |
|---|---|
| 写真とイラストの権利 | 撮った人や販売元の条件によります。屋外での掲出が対象外のことがあります。 |
| ロゴの権利 | 作った側に権利が残る契約があります。手を加えてよいかを確かめます。 |
| 地図や記号の扱い | 出どころによって条件が変わります。案内図を載せるときに関わります。 |
| 届出に添える図面 | 屋外に出す看板では、書式に合わせた図面を求められることがあります。 |
画面や紙で使えることと、屋外で大きく出せることは、条件が分かれている場合があります。 写真の販売元でも、屋外への掲出だけを対象外にしている例があります。 いずれも提供元の規約によりますので、使う前にご確認ください。
ロゴを外部に頼んで作った場合、手を加えてよいかは契約によります。 色を変える、横並びを縦並びにするといった変更が制限されていることがあります。 看板は形を変えて使う場面が多いため、先に確かめておくと後戻りしません。
屋外に出す看板では、届出や許可の書類に図面を添えることがあります。 寸法の入れ方や縮尺が定められている場合があり、デザインのデータとは別に用意します。 扱いは地域によって変わりますので、事前に管轄の窓口へご確認ください。
データを整える費用を、年あたりに直す
整えたデータは、看板が終わっても残ります。1回きりの出費ではありません。
年あたりの費用 ÷ (客単価 × 粗利率) = 年に必要な新規客数
輪郭で持ったロゴは、看板だけでなく名刺、封筒、車両にも回せます。 1枚の看板の費用として見ると、実際より重く見えます。
埋める数字は5つ
| データを整える費用 | ロゴのトレース、書体の置き換え、図面の作成。見積で分けてもらいます。 |
|---|---|
| 看板の製作費 | 板を作って取り付けるまでの額。データの費用と分けて見ます。 |
| 使う年数 | 同じデータを何年使うか。看板だけでなく名刺や封筒にも回せます。 |
| 客単価 | 1人が1回で使う金額。売上を客数で割れば出ます。 |
| 粗利率 | 売上から仕入れや材料を引いて残る割合。 |
体感できる単位まで落とす
データを整える費用と製作費を合わせて28万円、使う年数を7年、年の維持費を8千円と置きます。 280,000を7で割ると40,000円。これに8,000円を足して、年あたり48,000円です。
客単価を5,000円、粗利率を5割とします。 5,000に0.5を掛けて、1人あたり2,500円。 48,000を2,500で割ると19.2で、年に約19人です。 365を19.2で割ると19.01。およそ19日に1人、新しい客が増えればつり合います。
置いた金額は計算の置き方であり、相場ではありません。 自分の店の数字を入れて、もう一度計算してください。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめてあります。
仕上がりを確かめ、次に使えるようにする
画面の中では判断できません。紙に出し、離れて見ます。
校正の画像を、紙に出して確かめます。画面は光っているため、実際より明るく鮮やかに見えます。紙に出すだけで、色の思い違いは大きく減ります。
文字1文字ぶんを原寸で出力し、壁に貼ります。全体を出す必要はありません。1文字の大きさが分かれば、遠くからの読みやすさは想像できます。
校正の紙を床に置き、立ち上がって見下ろします。細かい要素が消え、遠目の見え方に近づきます。読めない要素は、その場で削れます。
同じ色番号でも、材料が変われば見え方が変わります。使う素材の見本を取り寄せ、屋外の光の下で確かめてください。
通りの決まった場所から写真を残します。次に作り直すとき、この1枚が判断材料になります。撮る位置を決めておくのが要点です。
1つ目を紙1枚でやるだけで、見落としはかなり減ります。
判断のタイミング
| データを渡す前 | 書体を図形に変えたか、画素数が足りているかを確かめます。 |
|---|---|
| 校正を受け取ったとき | 文字の間違い、色、要素の大きさ。直すならここが最後です。 |
| 取り付けた直後 | 離れた位置から読めるか。読めない要素を書き留めます。 |
| 次に何かを作るとき | 同じデータを使い回せるか。使えないなら整え直しどきです。 |
校正は、複数人で読み合わせてください。 電話番号と屋号の誤りは、書いた本人には見えません。 声に出して読むと、目で追うだけでは飛ばしていた文字に気づきます。
粗が出るときは、この順で疑う
- 1元データをもう一度探す
名刺、封筒、ホームページ。過去に頼んだ先に元の形が残っていることがあります。見つかれば費用はかかりません。
- 2大きいほうの画像に差し替える
同じロゴでも、手元の複数のファイルで画素数が違います。多いものに替えるだけで、ぼやけが収まることがあります。
- 3文字だけを打ち直す
ロゴ以外の文字は、輪郭を持つ形で作り直せます。屋号や電話番号なら、打ち直したほうが速く仕上がります。
- 4ロゴを輪郭に起こしてもらう
画像しか無いときは、輪郭を作り直す作業を頼みます。一度作れば、看板以外にも使い回せます。
- 5要素を削る
すべてを載せようとするから、細かい要素の粗が目立ちます。遠くから読ませるものだけ残せば、粗は見えなくなります。
- 6ロゴそのものを作り直す
上の5つを試したうえで決めます。作り直しは、いちばん最後に置いてください。
並びは、費用のかからないものからです。 1番と2番は探すだけで終わり、3番も短い作業です。 ロゴを作り直すのは、最後に置いてあります。
仕上がったデータは、保管場所を決めて残します。 次に何かを作るとき、同じものが使えれば費用は繰り返しかかりません。 受け取った形式と、作った日付を一緒に記録してください。
よくある行き違い5パターン
どれも、作り直さずに手を打てます。
| 行き違い | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 小さい画像を引き伸ばした | 輪郭がぼやけて出力される | 仕上がりの幅から必要な画素数を計算する |
| 書体を図形に変えずに渡した | 相手の環境で別の書体に置き換わる | 渡す前に文字を輪郭へ変える |
| 画面の色だけで決めた | 現物が想像より暗く見える | 使う素材の見本を屋外の光で確かめる |
| 出どころの分からない画像を使った | 掲出できるか判断できない | 出どころが説明できるものだけ残す |
| 校正を画面で流し読みした | 取り付け後に文字の誤りが残る | 紙に出し、声に出して読み合わせる |
セルフチェックリスト
データを送る前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、揃え直す余地があります。
- ロゴの元データを、過去に頼んだ先に問い合わせた
- 手元で最も画素数の多い画像を選んだ
- 仕上がりの幅から、必要な画素数を計算した
- 看板に載せる文字を、すべて書き出した
- 書き出したうえで、載せない文字を決めた
- 使っている書体の名前か、名刺の写真を用意した
- 書体を大きく出力してよいか、提供元の条件を確かめた
- 写真やイラストの出どころを説明できる
- 渡す前に、文字を輪郭に変える処理を頼んだ
- 色は、使う素材の見本で確かめた
- 校正を紙に出し、声に出して読み合わせた
- 完成したデータの保管場所を決めた
よくある質問
入稿データは、何から用意すればいいですか?
画像の大きさは、どのくらい必要ですか?
書体や写真の権利は、どこまで気にすべきですか?
データの出来は、いつ判断できますか?
すでにある看板のデータが見つからないときは?
費用を抑えたいときは、何を優先しますか?
まとめ
渡すデータを用意するときは、次の順序で進めます。
| 1 棚卸しする | 元データを探し、載せる文字を書き出して選ぶ。 |
|---|---|
| 2 決める | ロゴと文字は輪郭で、写真は必要な画素数を計算して。 |
| 3 確かめる | 書体、写真、ロゴの使用条件を渡す前に確認する。 |
| 4 計算する | 整える費用を年に割り、必要な客数まで落とす。 |
| 5 見る | 校正を紙に出し、離れた位置から読み合わせる。 |
この作業は、元データが見つかった時点で半分が終わります。 あとは仕上がりの幅から数を出し、条件を確かめるだけです。 整えたデータは、次に何かを作るときにもそのまま使えます。