看板のきほん / 2026年9月7日 更新 / 読了目安 約12分

台風・地震に備える看板
前後にやることの5ステップ

これから荒天への備えを決める方へ。 台風は、来ることが前もって分かる数少ない災害です。 分かっている以上、当日に慌てる部分は減らせます。 何を、いつまでに、誰が動かすか。決めておけるのは、この三つです。

5手順並べ方から記録の残し方まで
24時間前片づけの締め切り
12項目季節の前に見る点
この記事でわかること

外れやすい順に、自分の面を並べる手順/ 風速が上がると力がどれだけ増えるかの計算/ 48時間前から当日までの、時間の区切り方/ 責任の所在と、連絡する順番の決め方/ 備えの費用を、休業1日分と比べる式/ 通り過ぎたあと、近づかずに確かめる順番

当日にできることは、思ったより少ない

風が強まってからでは、片づけそのものが危険になります。 荒天のときにやることは、前日までに終わっている必要があります。

起きやすいのは、次の四つです。 当日になって片づけ始め、作業のほうが危なくなる。 しまう場所を決めておらず、置き看板が屋外に残る。 ふだんの写真がなく、傷が新しいものか判断できない。 通り過ぎた直後に近づき、緩んだ部材の下に立つ。

どれも、季節の前に決めておけば起きません。 面を並べ、時間で区切り、責任を確かめ、費用を比べ、確かめて残す。 この五つを順に埋めます。

Step 1

外れやすい順に、自分の看板を並べる

備える順番は、面の大きさではなく、外れやすさで決まります。

自分の面を、外に出ている順に書き出す

置き看板、のぼり、幕、袖看板、壁面、屋上。数えると、たいてい思ったより多くなります。

動かせるものと、動かせないものに分ける

しまえる面は、前日までに片づけます。動かせない面は、点検して記録に残す対象です。

落ちたとき、下に何があるかを見る

歩道、駐車場、隣の建物。下の状況で、備える順番が変わります。

取り付けから何年経ったかを調べる

書類が残っていなくても、写真の日付から追えます。古い面ほど先に見ます。

風が受ける力は、速さが増すほど急に大きくなります。 比例ではなく、2乗で効くと考えられています。

風速20m/s と 40m/s を比べる
40² ÷ 20² = 1,600 ÷ 400 = 4倍
風速10m/s と 30m/s を比べる
30² ÷ 10² = 900 ÷ 100 = 9倍

ふだん平気な面が、急に外れるのはこのためです。 実際の力は面積や形でも変わるため、倍率の見当として使ってください。 なお、気象庁は風速25m/s以上の風が吹くか、吹く可能性のある範囲を暴風域と呼んでいます。

面の種類起きやすいこと先にやること
置き看板・のぼり倒れる、飛ぶ前日までにしまう
幕・シート類風をはらんで破れる外すか、たるみを取る
袖看板・突出し看板取り付け部が緩む固定部を見て、記録を残す
壁面・自立の面取り付け部から傷む足元と接合部を見る

設計の段階で風の条件を伝える話は、別にまとめてあります。 新しく作るなら風・雪・塩害に耐える看板の決め方を先にご覧ください。

Step 2

前日までの動きを、時間で区切って決める

締め切りを決めないと、片づけは当日に流れます。

予報が出てから当日までを、四つに区切ります。 区切りごとに、やることを一つずつ決めておきます。

48時間前予報を見て、人と道具の手配を決める。
24時間前置き看板と、のぼりをしまう。幕を外す。
当日面に近づかない。外から様子を見るだけにする。
通過後明るい時間に、遠くから見て回る。
しまう場所を、先に決めておく

当日になって置き場所を探すと間に合いません。屋内の空き場所を、あらかじめ空けておきます。

誰が動くかを、名前で決めておく

「手が空いた人」では動きません。担当と、その人が休みのときの代わりを決めます。

ふだんの状態を、写真に撮っておく

比べる相手がないと、変化が分かりません。晴れた日に撮った1組が、あとで効きます。

片づけに要する時間は、一度測っておくと見当がつきます。

置き看板・のぼりの収容 15分
幕の取り外し 30分
足元の点検と写真 15分
15 + 30 + 15 = 60分

面の数と高さで変わります。 自分の店で1度測り、その数字に置き換えてください。 1時間かかると分かっていれば、24時間前という締め切りは守れます。

足元に置く面は、しまう習慣そのものが備えになります。 ふだんの扱い方はのぼり・置き看板の使い方にまとめました。

高い場所の作業は、自分でやらない

屋上や袖看板の固定を、脚立で確かめようとしないでください。 風の出はじめは、地上より上のほうが強く吹きます。 高い位置の面は、季節の前に業者へ見てもらう形にします。 上がり方と手配は高い場所の看板工事ガイドで扱っています。

Step 3

責任の所在と、届け先を先に確かめる

起きてから調べると、いちばん時間がかかる部分です。

面が落ちて人や物に当たった場合、設置した工作物の管理をめぐる話になります。 誰がどこまで負うかは、契約の書き方と状況で変わります。

責任を負うのは誰か設置した工作物に不備があった場合の扱いを、契約書で確かめる。
借りた建物での取り決め外す・戻すの判断を、誰がするかを貸主と決めておく。
道路にはみ出す面倒れた先が公道になる面は、扱いが変わることがある。
加入している保険の範囲風水害が対象か。免責の額はいくらか。
連絡する順番貸主、保険、業者。誰から連絡するかを紙にしておく。
壊れたときの応急の掲示立入りを止める表示を、あらかじめ用意しておく。

借りた建物では、外す判断を誰がするかも決めておきます。 貸主の許可が要る面を、当日に連絡が取れないまま外すことになると困ります。 責任と保険の整理は看板の落下に備えるガイドにまとめました。

連絡の順番を、紙に書いて貼る

起きたときは、調べる時間がありません。

貸主・保険・業者。三つの番号を1枚に

事務所の壁と、手元の端末の両方に置きます。 担当者の名前まで書いておくと、代わりの人でも動けます。 年に1度、番号が変わっていないかを見直してください。

立入りを止める表示を、先に用意しておく

落下や傾きが見つかったとき、まずやるのは下に人を入れないことです。 コーンと表示を一組そろえておけば、その場で対処できます。 応急の掲示は、手書きでも役目を果たします。
※ 責任の範囲、必要な届け出、保険の適用は状況と契約により異なります。判断が必要な場合は、専門の窓口へご相談ください。

Step 4

備えの費用を、休業1日と比べる

備えは売上を生みません。失う側と比べると判断できます。

費用が動くところを見る

外す面の数毎回の作業時間が、そのまま費用に効く。
高さ高い位置は、上がるための手配が別に要る。
作業の時期予報が出てからの依頼は、手配が取りにくくなる。
ふだんの固定の作り外す前提の作りにしておくと、毎回の作業が短くなる。
記録の残し方写真を型どおりに撮っておくと、あとの手続きが早い。
直すか替えるかの判断傷んだ部分だけ替えられる作りかどうかで変わる。

外す前提の作りにしておくと、毎回の作業が短くなります。 新しく作るときに伝えておく価値のある条件です。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。

年にかかる備えを、休業に換算する

外して戻す作業を、1回24,000円と置く
年2回なら 24,000 × 2 = 48,000円/年

この24,000円は相場ではありません。 比べ方を見るために置いた、仮の数字です。

次に、店が1日止まったときに失う粗利を出します。

休業1日の粗利 = 日商80,000円 × 粗利率0.6 = 48,000円
48,000 ÷ 48,000 = 1 → 備えの1年分 = 休業1日分

面が壊れて店を1日閉めれば、年間の備えと同じだけ失う計算になります。 80,000円も粗利率0.6も、仮の置き方です。 自分の日商と、直近の粗利率に差し替えて計算し直してください。

この比べ方は、直す判断にも使えます。 修理を先送りした面が落ちれば、片づけと休業が同時に来ます。 直すか替えるかの切り分けは看板の修理ガイドにあります。

Step 5

過ぎたあとに確かめ、記録として残す

確かめる順番は、近づかない方法から始めます。

明るい時間に、離れた場所から全体を見る

近づく前に、傾きとずれを見ます。異常があるなら、この時点で分かります。

写真を撮り、ふだんの1枚と並べる

同じ位置から撮ると、違いがはっきりします。日付が入る設定にしておきます。

足元と取り付け部を、手を触れずに見る

さび、割れ、隙間。触って確かめたくなりますが、動かすと落ちることがあります。

夜になってから、点灯を確かめる

一部だけ消えているなら、水が入っている可能性があります。

上から順に、危険の少ない方法です。 1番目は、店の前の道に立つだけで終わります。

見る時期を決める

直後近づきません。離れた場所から、傾きと落下物だけを見ます。
翌日明るい時間に、写真を撮って前の状態と並べます。
1週間にじみと点灯を見ます。水は、時間が経ってから表に出ます。
年1回荒天の有無にかかわらず、点検の時期を決めておきます。

水の影響は、当日には見えません。 にじみや消灯として、数日たってから表に出ます。 1週間後にもう一度見る予定を、その場で入れてください。 年に1度の点検の進め方は看板の点検ガイドにまとめてあります。

異常を見つけたら、この順で動く

  1. 1
    電源を切る

    光る面なら、まず電気を止めます。手元のブレーカーで足ります。

  2. 2
    下に人が入らないようにする

    コーンや表示で、立入りを止めます。用意してあれば、その場で終わります。

  3. 3
    写真を撮る

    直す前に撮ります。あとの手続きで、この1枚が必要になります。

  4. 4
    貸主と業者へ連絡する

    順番を紙にしておけば、迷わずに済みます。

  5. 5
    応急の固定を頼む

    本格的に直す前に、落ちない状態にします。

  6. 6
    直すか替えるかを決める

    傷んだ部分だけ替えられることがあります。作り直しは、この後です。

上のほうほど、その場ですぐにできます。 1番から3番は、業者を待たずに終わります。 作り直すかどうかは、六つを踏んだ後に決めます。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、季節の前に決めておくことで手当てできます。

失敗何が起きるか直し方
当日になって片づけ始めた風が強まり、作業そのものが危険になる24時間前を締め切りにする。前日までにしまう
しまう場所を決めていなかった置き看板が屋外に残る屋内の置き場所を、季節の初めに空けておく
ふだんの写真がなかった変化なのか元からなのか判断できない晴れた日に、同じ位置から1組撮っておく
過ぎた直後に近づいた緩んだ部材が落ちる危険がある直後は離れて見る。触るのは翌日以降にする
直したあとの記録を残さなかった次に同じ判断をやり直す日付と、直した箇所を1行で残す
Checklist

セルフチェックリスト

季節の前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。

  • 外に出ている面を、すべて書き出した
  • 動かせる面と、動かせない面に分けた
  • 面が落ちたとき、下に何があるかを見た
  • 前日までにしまう面を決めた
  • しまう場所を、屋内に確保した
  • 当日に動く担当者を、名前で決めた
  • ふだんの状態を、同じ位置から写真に撮った
  • 責任の所在を、契約書で確かめた
  • 加入している保険の範囲を確かめた
  • 連絡する順番を、紙に書いて貼った
  • 立入りを止める表示を、用意してある
  • 備えの費用を、休業1日分と比べた
FAQ

よくある質問

荒天に備えるとき、何から手を付ければいいですか?
外に出ている面を書き出すことからです。動かせる面と動かせない面に分けます。動かせる面は前日までにしまい、動かせない面は写真で記録します。
風が強いと、看板にかかる力はどれだけ変わりますか?
風の力は、風速の2乗に比例すると考えられています。風速20m/sと40m/sなら、40²÷20²で4倍です。面積や形でも変わるため、倍率の目安として使ってください。
片づけは、いつまでに終えるべきですか?
24時間前を締め切りにします。風が強まってからの作業は、それ自体が危険です。置き看板の収容、幕の取り外し、足元の確認で1時間ほどを見込みます。
落ちて人や車に当たった場合、責任は誰が負いますか?
契約と状況によって変わります。設置した工作物の管理をめぐる話になるため、契約書の記載と加入している保険の範囲を、事前に確かめてください。判断が必要な場合は、専門の窓口へご相談ください。
通り過ぎたあと、いつ確かめればいいですか?
直後は離れた場所から見るだけにします。触れるのは、明るくなってからです。水の影響は遅れて出るため、1週間後にもう一度見てください。
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
しまう場所を空けることからです。費用はかかりません。次に、ふだんの状態を写真に残しておくと、あとの手続きがいちばん短くなります。

まとめ

荒天への備えは、次の順序で決まります。

1 面を並べる外に出ている面を書き出し、動かせるものと分ける。
2 時間で区切る24時間前を締め切りにし、しまう場所と担当を決める。
3 責任を確かめる契約と保険の範囲を読み、連絡の順番を紙にする。
4 費用を比べる年にかかる備えを、休業1日分の粗利と並べる。
5 確かめて残す離れて見る、写真を撮る、1週間後にもう一度見る。

当日にできることは、前日までに決めた分だけです。 しまう場所を空け、写真を1組撮る。この二つは、今日から費用なしで始められます。

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面の数も傷み方も、まだ何も分かっていない段階で構いません。 季節の前の点検を受けてくれるか、荒天のあとに来られる体制があるか。この二つは比べられます。