台風・地震に備える看板
前後にやることの5ステップ
これから荒天への備えを決める方へ。 台風は、来ることが前もって分かる数少ない災害です。 分かっている以上、当日に慌てる部分は減らせます。 何を、いつまでに、誰が動かすか。決めておけるのは、この三つです。
外れやすい順に、自分の面を並べる手順/ 風速が上がると力がどれだけ増えるかの計算/ 48時間前から当日までの、時間の区切り方/ 責任の所在と、連絡する順番の決め方/ 備えの費用を、休業1日分と比べる式/ 通り過ぎたあと、近づかずに確かめる順番
当日にできることは、思ったより少ない
風が強まってからでは、片づけそのものが危険になります。 荒天のときにやることは、前日までに終わっている必要があります。
起きやすいのは、次の四つです。 当日になって片づけ始め、作業のほうが危なくなる。 しまう場所を決めておらず、置き看板が屋外に残る。 ふだんの写真がなく、傷が新しいものか判断できない。 通り過ぎた直後に近づき、緩んだ部材の下に立つ。
どれも、季節の前に決めておけば起きません。 面を並べ、時間で区切り、責任を確かめ、費用を比べ、確かめて残す。 この五つを順に埋めます。
外れやすい順に、自分の看板を並べる
備える順番は、面の大きさではなく、外れやすさで決まります。
置き看板、のぼり、幕、袖看板、壁面、屋上。数えると、たいてい思ったより多くなります。
しまえる面は、前日までに片づけます。動かせない面は、点検して記録に残す対象です。
歩道、駐車場、隣の建物。下の状況で、備える順番が変わります。
書類が残っていなくても、写真の日付から追えます。古い面ほど先に見ます。
風が受ける力は、速さが増すほど急に大きくなります。 比例ではなく、2乗で効くと考えられています。
40² ÷ 20² = 1,600 ÷ 400 = 4倍
風速10m/s と 30m/s を比べる
30² ÷ 10² = 900 ÷ 100 = 9倍
ふだん平気な面が、急に外れるのはこのためです。 実際の力は面積や形でも変わるため、倍率の見当として使ってください。 なお、気象庁は風速25m/s以上の風が吹くか、吹く可能性のある範囲を暴風域と呼んでいます。
| 面の種類 | 起きやすいこと | 先にやること |
|---|---|---|
| 置き看板・のぼり | 倒れる、飛ぶ | 前日までにしまう |
| 幕・シート類 | 風をはらんで破れる | 外すか、たるみを取る |
| 袖看板・突出し看板 | 取り付け部が緩む | 固定部を見て、記録を残す |
| 壁面・自立の面 | 取り付け部から傷む | 足元と接合部を見る |
設計の段階で風の条件を伝える話は、別にまとめてあります。 新しく作るなら風・雪・塩害に耐える看板の決め方を先にご覧ください。
前日までの動きを、時間で区切って決める
締め切りを決めないと、片づけは当日に流れます。
予報が出てから当日までを、四つに区切ります。 区切りごとに、やることを一つずつ決めておきます。
| 48時間前 | 予報を見て、人と道具の手配を決める。 |
|---|---|
| 24時間前 | 置き看板と、のぼりをしまう。幕を外す。 |
| 当日 | 面に近づかない。外から様子を見るだけにする。 |
| 通過後 | 明るい時間に、遠くから見て回る。 |
当日になって置き場所を探すと間に合いません。屋内の空き場所を、あらかじめ空けておきます。
「手が空いた人」では動きません。担当と、その人が休みのときの代わりを決めます。
比べる相手がないと、変化が分かりません。晴れた日に撮った1組が、あとで効きます。
片づけに要する時間は、一度測っておくと見当がつきます。
幕の取り外し 30分
足元の点検と写真 15分
15 + 30 + 15 = 60分
面の数と高さで変わります。 自分の店で1度測り、その数字に置き換えてください。 1時間かかると分かっていれば、24時間前という締め切りは守れます。
足元に置く面は、しまう習慣そのものが備えになります。 ふだんの扱い方はのぼり・置き看板の使い方にまとめました。
屋上や袖看板の固定を、脚立で確かめようとしないでください。 風の出はじめは、地上より上のほうが強く吹きます。 高い位置の面は、季節の前に業者へ見てもらう形にします。 上がり方と手配は高い場所の看板工事ガイドで扱っています。
責任の所在と、届け先を先に確かめる
起きてから調べると、いちばん時間がかかる部分です。
面が落ちて人や物に当たった場合、設置した工作物の管理をめぐる話になります。 誰がどこまで負うかは、契約の書き方と状況で変わります。
| 責任を負うのは誰か | 設置した工作物に不備があった場合の扱いを、契約書で確かめる。 |
|---|---|
| 借りた建物での取り決め | 外す・戻すの判断を、誰がするかを貸主と決めておく。 |
| 道路にはみ出す面 | 倒れた先が公道になる面は、扱いが変わることがある。 |
| 加入している保険の範囲 | 風水害が対象か。免責の額はいくらか。 |
| 連絡する順番 | 貸主、保険、業者。誰から連絡するかを紙にしておく。 |
| 壊れたときの応急の掲示 | 立入りを止める表示を、あらかじめ用意しておく。 |
借りた建物では、外す判断を誰がするかも決めておきます。 貸主の許可が要る面を、当日に連絡が取れないまま外すことになると困ります。 責任と保険の整理は看板の落下に備えるガイドにまとめました。
連絡の順番を、紙に書いて貼る
起きたときは、調べる時間がありません。
事務所の壁と、手元の端末の両方に置きます。 担当者の名前まで書いておくと、代わりの人でも動けます。 年に1度、番号が変わっていないかを見直してください。
落下や傾きが見つかったとき、まずやるのは下に人を入れないことです。
コーンと表示を一組そろえておけば、その場で対処できます。
応急の掲示は、手書きでも役目を果たします。
※ 責任の範囲、必要な届け出、保険の適用は状況と契約により異なります。判断が必要な場合は、専門の窓口へご相談ください。
備えの費用を、休業1日と比べる
備えは売上を生みません。失う側と比べると判断できます。
費用が動くところを見る
| 外す面の数 | 毎回の作業時間が、そのまま費用に効く。 |
|---|---|
| 高さ | 高い位置は、上がるための手配が別に要る。 |
| 作業の時期 | 予報が出てからの依頼は、手配が取りにくくなる。 |
| ふだんの固定の作り | 外す前提の作りにしておくと、毎回の作業が短くなる。 |
| 記録の残し方 | 写真を型どおりに撮っておくと、あとの手続きが早い。 |
| 直すか替えるかの判断 | 傷んだ部分だけ替えられる作りかどうかで変わる。 |
外す前提の作りにしておくと、毎回の作業が短くなります。 新しく作るときに伝えておく価値のある条件です。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
年にかかる備えを、休業に換算する
年2回なら 24,000 × 2 = 48,000円/年
この24,000円は相場ではありません。 比べ方を見るために置いた、仮の数字です。
次に、店が1日止まったときに失う粗利を出します。
48,000 ÷ 48,000 = 1 → 備えの1年分 = 休業1日分
面が壊れて店を1日閉めれば、年間の備えと同じだけ失う計算になります。 80,000円も粗利率0.6も、仮の置き方です。 自分の日商と、直近の粗利率に差し替えて計算し直してください。
この比べ方は、直す判断にも使えます。 修理を先送りした面が落ちれば、片づけと休業が同時に来ます。 直すか替えるかの切り分けは看板の修理ガイドにあります。
過ぎたあとに確かめ、記録として残す
確かめる順番は、近づかない方法から始めます。
近づく前に、傾きとずれを見ます。異常があるなら、この時点で分かります。
同じ位置から撮ると、違いがはっきりします。日付が入る設定にしておきます。
さび、割れ、隙間。触って確かめたくなりますが、動かすと落ちることがあります。
一部だけ消えているなら、水が入っている可能性があります。
上から順に、危険の少ない方法です。 1番目は、店の前の道に立つだけで終わります。
見る時期を決める
| 直後 | 近づきません。離れた場所から、傾きと落下物だけを見ます。 |
|---|---|
| 翌日 | 明るい時間に、写真を撮って前の状態と並べます。 |
| 1週間 | にじみと点灯を見ます。水は、時間が経ってから表に出ます。 |
| 年1回 | 荒天の有無にかかわらず、点検の時期を決めておきます。 |
水の影響は、当日には見えません。 にじみや消灯として、数日たってから表に出ます。 1週間後にもう一度見る予定を、その場で入れてください。 年に1度の点検の進め方は看板の点検ガイドにまとめてあります。
異常を見つけたら、この順で動く
- 1電源を切る
光る面なら、まず電気を止めます。手元のブレーカーで足ります。
- 2下に人が入らないようにする
コーンや表示で、立入りを止めます。用意してあれば、その場で終わります。
- 3写真を撮る
直す前に撮ります。あとの手続きで、この1枚が必要になります。
- 4貸主と業者へ連絡する
順番を紙にしておけば、迷わずに済みます。
- 5応急の固定を頼む
本格的に直す前に、落ちない状態にします。
- 6直すか替えるかを決める
傷んだ部分だけ替えられることがあります。作り直しは、この後です。
上のほうほど、その場ですぐにできます。 1番から3番は、業者を待たずに終わります。 作り直すかどうかは、六つを踏んだ後に決めます。
よくある失敗5パターン
どれも、季節の前に決めておくことで手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 当日になって片づけ始めた | 風が強まり、作業そのものが危険になる | 24時間前を締め切りにする。前日までにしまう |
| しまう場所を決めていなかった | 置き看板が屋外に残る | 屋内の置き場所を、季節の初めに空けておく |
| ふだんの写真がなかった | 変化なのか元からなのか判断できない | 晴れた日に、同じ位置から1組撮っておく |
| 過ぎた直後に近づいた | 緩んだ部材が落ちる危険がある | 直後は離れて見る。触るのは翌日以降にする |
| 直したあとの記録を残さなかった | 次に同じ判断をやり直す | 日付と、直した箇所を1行で残す |
セルフチェックリスト
季節の前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 外に出ている面を、すべて書き出した
- 動かせる面と、動かせない面に分けた
- 面が落ちたとき、下に何があるかを見た
- 前日までにしまう面を決めた
- しまう場所を、屋内に確保した
- 当日に動く担当者を、名前で決めた
- ふだんの状態を、同じ位置から写真に撮った
- 責任の所在を、契約書で確かめた
- 加入している保険の範囲を確かめた
- 連絡する順番を、紙に書いて貼った
- 立入りを止める表示を、用意してある
- 備えの費用を、休業1日分と比べた
よくある質問
荒天に備えるとき、何から手を付ければいいですか?
風が強いと、看板にかかる力はどれだけ変わりますか?
片づけは、いつまでに終えるべきですか?
落ちて人や車に当たった場合、責任は誰が負いますか?
通り過ぎたあと、いつ確かめればいいですか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
荒天への備えは、次の順序で決まります。
| 1 面を並べる | 外に出ている面を書き出し、動かせるものと分ける。 |
|---|---|
| 2 時間で区切る | 24時間前を締め切りにし、しまう場所と担当を決める。 |
| 3 責任を確かめる | 契約と保険の範囲を読み、連絡の順番を紙にする。 |
| 4 費用を比べる | 年にかかる備えを、休業1日分の粗利と並べる。 |
| 5 確かめて残す | 離れて見る、写真を撮る、1週間後にもう一度見る。 |
当日にできることは、前日までに決めた分だけです。 しまう場所を空け、写真を1組撮る。この二つは、今日から費用なしで始められます。