薬局・ドラッグストアの看板
二つの動線を分ける5ステップ
これから薬局やドラッグストアの看板をそろえる方へ。この店先には、用事の違う人が同時に来ます。 処方せんを持つ人と、日用品を買う人です。 同じ面で両方に話しかけると、どちらにも届きません。
店先へ来る人が6つに分かれること/ 面ごとに役割を割り当てる表の作り方/ 道路側に載せる語を二つに絞る根拠/ 受付の締め切りを、閉店の時刻と分けて出す理由/ 読ませたい距離から必要な文字の高さを出す方法/ 年の来店回数まで含めた回収ラインの式/ 反応が薄いとき、費用をかけずに疑う順序
店先で、二つの用事が交わります
薬を扱う店の看板づくりで多いのが、扱うものを全部載せたいという要望です。 処方せんの受付、健康の相談、日用品、化粧品。どれも伝えたい中身ではあります。 けれども面は一つで、読む人は二種類います。
分けずに作ると、こうなります。受付の締め切りが閉店の時刻に紛れ、間に合わない時間に来られる。 品目を並べたせいで、処方せんを受け付けることが埋もれる。 車で寄った人が止める場所を探して、店の前で止まってしまう。 閉めたあとに来た人が、翌日の受付開始を知らないまま帰る。
来る人を分け、面に役割を配り、時間の表示を貼り替えられる形にし、 費用を計算し、受付の件数から測る。この五つを順に埋めれば、面を増やさずに整います。
薬を扱う店では、店内に掲げるべき事項が定められています。
何をどこに掲げるか、書き方にどんな条件がつくか。ここは看板の見栄えとは別の話です。
屋外広告物としての大きさや設置場所の制限とは、分けて確かめてください。
※ 制度は変わることがあります。図面を確定する前に管轄窓口へご確認ください。
人の医療機関が掲げる内容の制限はクリニック・歯科の看板で扱っています。
来る人を二つに分ける
用事が違えば、見る場所も、読める量も変わります。
受付が開いているか、締め切りに間に合うか。見ているのはそこだけです。歩きながら読む時間は数秒しかありません。
飲み合わせや、体調のことを聞きたい人です。相談できる窓口があるかどうかを、入る前に外から探しています。
扉の前で迷います。手帳がなくても受け付けるかを扉の脇に出すと、立ち止まる時間が短くなります。
何の売り場があるかが分かれば入ります。品目を並べる必要はありません。分類が三つか四つ読めれば足ります。
店名より先に、止める場所を探しています。入口の面に駐車場の案内を混ぜると、店の前まで来てしまいます。
締め切りを過ぎています。翌日の受付開始と、急ぐときの連絡先が外から読めれば、次の日につながります。
六つは、大きく二本の流れに束ねられます。処方せんを軸に来る流れと、買い物として来る流れです。 前者が知りたいのは時刻、後者が知りたいのは売り場。 この二本を同じ面に載せると、どちらの用事も片づきません。
車で寄る人には、さらに時間の制約がつきます。時速40kmなら1秒で11m進みます。 2秒だけ目を向けたとして、その間に22m。読み取れるのは2語ほどです。 道路側の面は、店名と受付の二語まで。ここが出発点になります。
必要な文字の高さは、読ませたい距離のおよそ250分の1から500分の1が目安です。 歩く人に20m先から読ませるなら、20,000mm ÷ 500 で40mm、20,000mm ÷ 250 で80mm。 つまり4cmから8cmです。車に40m先から読ませるなら、同じ計算で8cmから16cmになります。 書体、背景との明暗差、照明の有無で変わるため、迷う場合は大きいほうを取ってください。
面ごとに役割を割り当てる
一つの面に一つの用事。決めた瞬間に、載せない物も決まります。
| 面 | 出すもの | 出さないもの |
|---|---|---|
| 道路側の面 | 店名と、処方せんを受け付ける旨 | 品目や料金の一覧 |
| 駐車場の入口 | 車を止める場所と、止められる台数 | 営業の時間 |
| 入口の正面 | いま開いているかどうか | 掲げる定めのある事項 |
| 扉の脇 | 受付の締め切りの時刻 | 売り場の分類 |
| 窓の内側 | 売り場の分類を三つか四つ | 道路から読ませたい文字 |
| 店内の所定の位置 | 掲げるよう定められた事項 | 広告としての言い回し |
| 時間外に読ませる面 | 翌日の受付開始と連絡先 | その日の在庫の話 |
右の列が、この表の働きどころです。出すものだけを決めると、面は増えていきます。 出さないものを先に決めると、面の数が止まります。 迷った項目は、道路側から一段ずつ店の中へ送ってください。
三行目と六行目の関係に注意します。掲げるよう定められた事項は、 読ませる相手も置き場所も、集客の面とは別に決まります。 道路側に並べると項目が増え、店名まで届かなくなります。
駐車場の入口を示す面は、道路側に独立して置きます。 入口の面に混ぜると、車の人が建物の前まで来ます。 止める場所から扉までの導き方は駐車場・入口の案内サインの作り方にまとめています。
日用品の側は、品目ではなく分類で伝わります。 何が置いてある店かが分かれば、入るかどうかは決まるからです。 窓の内側に分類を三つか四つ並べ、細かい表示は棚の側へ回してください。 店内で人手をかけずに案内する工夫は無人店舗・省人化店舗の看板で扱っています。
時間の表示を貼り替えられる形にする
時刻は変わります。変わる前提で、面を分けておきます。
| 開店と閉店の時刻 | 毎日そろっているなら、刷り込んでも困りません。曜日で変わるなら差し替えの面へ移します。 |
|---|---|
| 受付の締め切りの時刻 | 閉店より前で切れる場合があります。閉店の時刻と同じ大きさで並べると、読み違えられます。 |
| 曜日ごとの違い | 土曜だけ短いといった形なら、その行だけを別の札にします。表ごと作り直さずに済みます。 |
| 臨時の休み | 手で書ける面を一つ用意します。刷り込んだ面に紙を貼り重ねると、元の時刻まで読めなくなります。 |
| いま開いているかの表示 | 時刻の表よりも先に見られます。開閉の状態だけを示す面を、独立して持たせます。 |
| 翌日の受付開始 | 閉めたあとに来た人が読みます。灯りが落ちても読める位置を選びます。 |
二行目が、この記事でいちばん強く伝えたい一点です。 受付の締め切りは、閉店より前に切れることがあります。 同じ大きさで並べると、閉店の時刻のほうが記憶に残ります。 締め切りの文字を一段大きくし、別の面に出してください。
五行目も独立させます。時刻の表を読ませるより、開閉の状態を一目で示すほうが早いからです。 差し替えの札でも、灯りの有無でも構いません。夜まで開ける店なら、 点灯そのものが開いている合図になります。
締め切りを過ぎて来た人は、その場で次をどうするか決めます。
翌日の受付開始と、急ぐときの連絡先が読めれば、翌朝につながります。
何も無ければ、そのまま別の店を探すことになります。
※ 灯りを落とす時間帯でも読める位置を選んでください。
明るさの取り方は電飾看板・LED看板の選び方で扱っています。
費用と回収ラインを計算する
一度きりではなく、年に何度来るかまで入れて見ます。
1回あたりの粗利 × 年の来店回数 = 1人あたり年の粗利
年のコスト ÷ 1人あたり年の粗利 = 年に必要な新しい人数
1回あたりの単価を2,000円、粗利率を25%と置きます。1回あたりの粗利は500円です。 年に12回来るなら、1人あたり年の粗利は6,000円になります。
看板にかかる年のコストが180,000円だとします。 180,000 ÷ 6,000 で30。年に30人の新しい方で釣り合う計算です。 365 ÷ 30 はおよそ12。12日に1人でトントン、という見え方になります。
2,000円、25%、12回、180,000円は、式の動きを見るための仮の置き方です。 自分の店の数字に差し替えてください。 通い続ける方の割合が高いほど、看板にかけられる額は上がります。
費用を左右するところ
| 面の数 | 道路側、駐車場、入口、扉の脇、時間外。数えた分がそのまま費用に乗ります。 |
|---|---|
| 貼り替えの仕組み | 差し替え式にするか、刷り込むか。作るときの差より、変えるときの差が大きく出ます。 |
| 光らせるかどうか | 夜まで開ける店ほど、点灯している時間が電気代に効いてきます。 |
| 道路からの距離 | 離れるほど文字を大きくします。文字が大きくなれば、板の寸法も上がります。 |
| 駐車場の位置 | 建物と離れていると、そこへ導く面が別に要ります。 |
| 取り付ける高さ | 高い位置ほど、掲げるときの手間が増えます。あとの点検も同じです。 |
二行目が、数年たってから効いてきます。 時刻を刷り込んだ面は、変えるたびに作り直しです。 掲載社が公式サイトで公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
受付の件数から測る
受付そのものより、手前にある電話の数が先に動きます。
「何を見てお越しになりましたか」。初めての方に添えるだけで、来た経路が毎月たまっていきます。費用はかかりません。
締め切りの表示が読めているかは、ここに出ます。読めていれば駆け込みが減り、受付の山が手前に寄ります。
「何時までですか」「今日は開いていますか」。この二つが多いなら、面が答えられていません。
面ごとに別のあて先を用意すると、どの面が読まれたかまで分かれます。
数えるのではなく、どこで足が止まるかを見ます。止まる位置と、読ませたい面の位置がずれていないかです。
受付での一言が、いちばん安い測定の道具です。集めていなければ、判断そのものが始まりません。
判断のタイミング
| 1か月 | 電話での確認が減ったかを見ます。受付の件数はまだ動きません。 |
|---|---|
| 3か月 | 初めて来た人の経路に、看板が現れるかを見ます。 |
| 半年 | 季節の波を除いて比べられます。前の年の同じ時期と並べます。 |
| 1年 | 面ごとの効き方を比べ、減らす面を決めます。 |
| 時刻を変えたとき | 古い時刻が残っている面がないか、外を一周して確かめます。 |
1か月で受付の数を見て決めるのは早すぎます。 通う先を変える判断には時間がかかり、覚えてから来るまでに日が空くからです。 電話での確認を先に見て、そのあとで初めて来た人の経路をたどってください。
効いていないとき、この順で疑う
- 1たずねているかどうかを疑う
来た経路を書き留める場所がなければ、効いていないのか、分かっていないだけなのかを区別できません。一言添えるところから始まります。
- 2締め切りの時刻が読めるかを疑う
閉店の時刻と同じ大きさで並んでいないかを見ます。締め切りのほうを大きくすると、間に合わない来店が減ります。
- 3開いていることが伝わるかを疑う
暗くなってから、道路の側に立ちます。開いているのに閉まって見える店は、その時間帯を丸ごと逃しています。
- 4車と歩きの入口が分かれているかを疑う
駐車場の側から歩いてみます。車で来た人が、歩く人向けの入口に着いてしまうなら、面の位置がずれています。
- 5道路側の語数を疑う
店名と受付の二語まで削れるかを見ます。語を足すほど、どれも読まれなくなります。
- 6面を増やす、作り替える
ここまでで動かないときに検討します。費用がいちばん大きいので、最後に置きます。
上から順に、費用のかからないものが並びます。 1番から4番までは、書き足すか、歩いて見るだけで済みます。5番は語を減らす作業です。 面を作り替えるのは、いちばん最後に置いてください。
よくある失敗5パターン
どれも、図面の段階で気づけば直せます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 締め切りを閉店の時刻と並べた | 間に合わない時間に来られる | 締め切りだけを大きくし、別の面に出す |
| 営業の時刻を面に刷り込んだ | 変えるたびに面ごと作り直しになる | 時刻は差し替えの札へ逃がす |
| 定めのある掲示を道路側に並べた | 項目が増え、店名まで読まれない | 定めのある掲示は店内の所定の位置へ |
| 売り場の品目を道路側に書き並べた | 処方せんの受付が埋もれる | 道路側は分類だけ、品目は窓の内側へ |
| 駐車場の入口を示さなかった | 車が店の前で止まり、後続が詰まる | 道路側に、止める場所の面を別に置く |
セルフチェックリスト
図面が出てきた段階で使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 道路側の面に載せた語が、店名と受付の二つに収まっている
- 処方せんを受け付けることが、道路の側から読める
- 受付の締め切りを、閉店の時刻とは別の面に出している
- 締め切りの文字が、閉店の時刻より大きい
- いま開いているかを示す面を、独立して持っている
- 暗くなってから、道路の側に立って見た
- 営業の時刻を、差し替えられる面に置いている
- 臨時の休みを手で書ける面が一つある
- 駐車場の入口を、道路側で示している
- 止めた場所から入口まで、荷物を持って歩いてみた
- 掲げるよう定められた事項の置き場所を、窓口に確かめた
- 初めて来た人に、経路をたずねる仕組みがある
よくある質問
薬局の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの大きさが要りますか?
掲示や表示に決まりはありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに看板があり、反応が薄い場合は?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
薬を扱う店の看板は、次の順序で決めていきます。
| 1 分ける | 処方せんの用事と、買い物の用事を別々に扱う。 |
|---|---|
| 2 配る | 面ごとに一つの用事。出さない物も同時に決める。 |
| 3 逃がす | 変わる時刻は、差し替えられる札へ移しておく。 |
| 4 計算する | 年の来店回数を掛けて、必要な人数を割り出す。 |
| 5 測る | 受付での一言を集め、電話の件数から追う。 |
面を分けるほど、一つの面が読まれます。 用事の違う二人に、同じ板で話しかけないことです。 まず道路の側に立ち、店名と受付の二語が読めるかを確かめるところから始めてください。