看板の色の決め方
好みでなく明暗差で選ぶ5ステップ
色見本を前にして、選ぶ基準が決まらない方へ。 読めるかどうかを決めるのは、色そのものではありません。 文字と地の、明るさの差です。同じ赤でも、地が黒か白かで結果が変わります。
まわりの色を集めて、地の色の候補を絞る手順/ 白黒にして明るさの差を判じる方法と、文字の高さの早見表/ 色数の上限と、地・文字・差し色の面積の配りかた/ 照明の色で、面の色がどう変わるか/ 褪せる速さを決めるものと、その見込み方/ 読めていないとき、費用をかけずに疑う順序
色は好みではなく、明るさの差で決まる
色見本を並べると、どれも良く見えます。 気に入った一色を選び、そこへ文字を載せる。 この進め方では、読めるかどうかを誰も判定できません。
つまずきは、だいたい同じ形をしています。 好みで組んだ二色が、離れると溶けて見えない。 まわりの建物と明るさが近く、通りから沈む。 昼に決めた配色が、夜には別の面のように見える。 数年たって褪せ、店名だけが先に消える。
人の目が遠くから拾うのは、色の違いではなく明るさの差です。 同じ赤でも、白い地の上と黒い地の上では見え方が変わります。
まわりの色を集める。明るさの差で文字の色を決める。色数と面積を決める。 昼夜と褪せを見込む。掲げたあとに測る。この順に埋めます。
要素の数、書体、配置まで含めた原稿全体の作り方は、 看板デザインの決め方にあります。 こちらは色だけを深く扱います。
まわりの色を集めて、地の色を絞る
看板は白い紙の上ではなく、建物の並びの中に置かれます。
- 1看板を置く位置に立って撮る
通りの向かい側まで下がり、建物ごと入れます。晴れと曇りで1枚ずつ。
- 2隣と向かいの面も撮る
隣の看板、向かいの壁、道路の舗装。目に入る面を集めます。
- 3写真の横に候補の色を並べる
色見本を写真に添えて撮り直すだけです。見本帳の印象とは変わります。
見本帳の色は、白い紙に囲まれた状態で見ています。 実際の面を囲むのは、隣の壁と向かいの看板です。 沈むかどうかは、まわりと並べたときにしか分かりません。
まわりの色を写真で並べる
撮った写真の色を抜いて、白黒にしてみてください。 看板の位置だけ明るさが違えば、その色は通りから見つかります。 まわりと同じ濃さなら、候補から外します。
| まわりの様子 | 沈みやすい地の色 | 浮きやすい地の色 |
|---|---|---|
| 灰色の建物が並ぶ | 灰・薄い青・淡い茶 | 濃い色か、白に近い色 |
| 木や植え込みが背にある | 深い緑・濃い青 | 白や、黄みの明るい色 |
| 白い壁の建物が続く | 白・生成り・淡い黄 | 濃紺・黒・濃い茶 |
| のぼりや幕が多い通り | 中くらいの明るさの赤や黄 | 明暗の差が大きい二色 |
| 日が落ちると暗くなる道 | 暗い地に暗い文字 | 明るい地に暗い文字 |
屋外の広告物には、地域ごとの決まりがあります。
景観に配慮する区域では、広い面に鮮やかな色を使えないことや、光りかたに条件が付くことがあります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、窓口も分かれます。
地の色の候補が絞れた時点で、掲げてよい色かどうかを先に聞いてください。
※ 基準は場所によって異なります。管轄の窓口か、依頼先の業者にお確かめください。
明るさの差で、文字の色を決める
地の色が決まれば、文字の色は自動的に絞られます。
地が暗ければ文字は明るく、地が明るければ文字は暗く。 色の名前ではなく、明るいか暗いかで組みます。
赤と黒の組み合わせが、分かりやすい例です。 画面の上では色が離れているため、対比が強く見えます。 ところが明るさが近く、距離が開くと文字が地に沈みます。 色の対比と、明るさの差は別のものです。
白黒にして判じる
道具はいりません。原稿の色を抜き、親指の爪ほどに縮めます。 その状態で店名の形が残れば、差は足りています。 輪郭が溶けたなら、色を入れ替えても遠くからは読めません。
明るさの差を測る指標は、いくつかあります。 ただ、原稿を前にした店主が使えるのは、もっと簡単な方法です。 色を抜く。縮める。離れて見る。掲げる前に答えが出ます。
大きさでは差を補えない
必要な文字の高さは、読ませたい距離の250分の1から500分の1が目安です。 30m先なら、30,000mm ÷ 500 で60mm、30,000mm ÷ 250 で120mm。 6cmから12cmになります。
| 読ませる場面 | 見る距離 | 必要な文字の高さ |
|---|---|---|
| 走る車から見つけさせる | およそ50m先 | 10〜20cm |
| 道の反対側から読ませる | およそ30m先 | 6〜12cm |
| 歩いて近づきながら読む | およそ20m先 | 4〜8cm |
| 店の前で立ち止まって読む | およそ10m先 | 2〜4cm |
| 入口の表示を読む | およそ5m先 | 1〜2cm |
この表が効くのは、明るさの差が足りている場合だけです。 差が足りない組み合わせは、字を倍にしても輪郭が出ません。 大きさは、差を確かめたあとで効いてくる要素です。 高さの目安は、書体の太さと照明でも動きます。
赤と緑のような組み合わせは、見分けにくい方がいます。 明るさの差で組んでおけば、色の判別に頼らずに読めます。 考え方は誰にでも読める看板の作り方にあります。
使う色を3つに絞り、面積を配る
上限を先に決めておくと、原稿の往復が短くなります。
面に載せる色は、3つまでにします。 地の色、文字の色、差し色。この三役で足ります。 4つ目からは、目が行き先を選べません。
枠線、模様、イラストの色も数に入れます。 色は載せるものではなく、割り当てるものだと考えてください。
面積の配りかたを先に決める
同じ3色でも、どれだけの広さを与えるかで結果が変わります。 出発点として、次の割合を置いてください。
| 役割 | 面積の目安 | 受け持つ中身 |
|---|---|---|
| 地の色 | およそ70 | 面のいちばん広い部分 |
| 文字の色 | およそ25 | 店名と業種名 |
| 差し色 | およそ5 | 線一本、印ひとつ |
70と25と5で100です。 ※ この割合は目安であり、守るべき規格ではありません。
差し色の5を、寸法から出しておきます。 面が100cm × 50cmなら、5,000平方cm。 5,000 × 0.05 で250平方cm。 16 × 16 が256ですから、おおよそ16cm角です。 線一本と印ひとつで、すぐ使い切る広さです。
差し色が広がると、店名より飾りが先に目に入ります。 色を足したくなったら、何を減らすかを先に決めます。
昼と夜、そして褪せた先を見通す
看板は、決めた日の光の下だけに置かれるのではありません。
面の色は、当たる光で変わります。 オレンジみを帯びた電球色の下では、赤と黄が明るく出て、青みの色は暗いほうへ寄ります。 白い昼白色なら、昼に近い見え方に戻ります。
| 夜の照らし方 | 昼との違い | 色の決め方 |
|---|---|---|
| 外から当てる(電球色) | 赤と黄が明るく出る | 青みの地は沈むと見込む |
| 外から当てる(昼白色) | 昼に近い見え方になる | 昼の判断をそのまま使える |
| 内側から光らせる | 地が光り、文字が影になる | 明るい地に濃い文字を置く |
| 光らせず街灯だけ | 明暗の差が縮んで見える | 差を昼より大きく取る |
昼との関係がひっくり返るのは、表の三行目です。 内側から光らせる面では、地そのものが光ります。 暗い地に明るい文字を置くと、光がにじんで文字が太ります。 夜に読ませたい面は、明るい地に濃い文字が有利です。
外から照らす形なら、昼の関係が夜も続きます。 どちらにするかは、営業の終わる時刻から決めてください。
原稿を作る段階で、電球色か昼白色かを依頼先に確かめてください。 決まっていれば、その光の下で見本を当ててもらえます。
褪せる速さは、向きと材料で変わる
どの色も、日に当たれば褪せます。 褪せない色を探すより、褪せた先を見込むほうが確実です。
日の当たる時間が長く、褪せが先に出ます。向きが違えば進み方も変わります。
褪せると白っぽい方へ寄ります。文字との差が縮み、読みにくさが先に出ます。
色の層が薄く、塗った面より早く動きます。貼り替えで戻せます。
陰の部分だけ元の色が残ります。日なたと見比べれば進み方が分かります。
いちばん困るのは、二番目です。 濃い地は褪せると白へ寄り、明るい文字との差が縮みます。 新品のうちに差を大きく取れば、縮んでも読める幅が残ります。 材料ごとの持ちかたは、看板の素材の選び方にあります。
褪せるまでの年数で、費用を割る
月あたりのコスト ÷ (客単価 × 粗利率) = 月に必要な新規客数
面にかかる費用を72,000円、読める状態が8年続くと置きます。 72,000 ÷ 8 で9,000。12で割ると750。月あたり750円です。
客単価3,000円、粗利率50%の店なら、3,000 × 0.5 で1,500。 750 ÷ 1,500 で0.5。 2か月に1人の新規客でトントン、という見え方になります。
72,000円と8年と3,000円は、式の動きを見るための仮の置き方です。 金額の水準を示すものではないので、自分の店の数字に差し替えてください。
色数を1つ増やすと、切る工程か刷る工程が1つ増えます。 褪せにくい材料を選べば初期費用は上がり、持つ年数は伸びます。 式の上と下が同時に動くため、年数まで含めて比べます。 掲載社が公開している金額は、看板の費用にまとめています。
掲げたあとに、読めているかを測る
数えるのは売上ではありません。読めているかどうかです。
掲げた翌日に歩きます。読める位置と読めない位置の境目を、足で確かめます。
手元の携帯で足ります。二枚を並べると、夜に沈む色が分かります。
白黒にして、店名の形が残るかを見ます。残らなければ差が足りていません。
褪せは少しずつ進みます。毎日見ていると気づけないので、写真に任せます。
看板が目に入ったかを尋ねます。見えなかったという声が続くかどうかを見ます。
上の三つは、最初の一週間で終わります。
見直す時期を決めておく
| 掲げる前 | 原稿を白黒にして、店名の形が残るかを見る。 |
|---|---|
| 掲出の翌日 | 昼と夜に、道の反対側から見る。 |
| 1か月 | 曇りと雨の日の見え方を足す。 |
| 半年 | 最初の写真と並べ、褪せの出かたを見る。 |
| 3年 | 差が残っているかで、貼り替えを決める。 |
売上の増減から色の良し悪しを決めるのは、筋が通りません。 天気も曜日も品書きも、同時に動いているためです。
読めていないとき、この順で疑う
- 1汚れを疑う
面を洗います。埃と雨だれは明るい色を暗くし、文字との差を縮めます。
- 2照明の向きを疑う
器具の角度を変えます。上半分だけ明るいと、下の文字が沈みます。
- 3文字の色だけを替える
表示の層を貼り替えます。地の色も枠も、そのまま使えます。
- 4差し色の面積を疑う
飾りが広がりすぎていないかを見ます。減らせば目の行き先が戻ります。
- 5地の色を替える
面積が大きいぶん費用は上がります。枠と取り付けは残せます。
- 6面ごと作り替える
五つを試したあとで検討します。費用がかかるため、最後です。
上から順に、かかる額が小さいものが並びます。 1番と2番は、その日のうちに試せます。 6番だけが作り替えです。手を付ける前に、上を通してください。
よくある失敗5パターン
どれも、入稿の前に気づけば費用をかけずに直せます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 色見本だけで地の色を決めた | 掲げたら周囲に沈んだ | 周囲の写真に候補を並べ、選び直す |
| 赤の地に黒の文字を置いた | 離れると文字が溶ける | 文字だけ白に替える。面は使える |
| 差し色を面の半分に広げた | 店名より飾りが目に入る | 線と印に戻し、面積を1割まで落とす |
| 昼の見え方だけで決めた | 夜に文字がにじんで太る | 内から光る面は、地を明るく文字を濃く |
| 褪せない前提で濃い地を選んだ | 数年で文字との差が縮む | 文字の層だけ貼り替え、差を大きく取る |
セルフチェックリスト
配色の案が出そろった段階で使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 看板を置く位置から、まわりの建物を写真に撮った
- その写真に色の候補を並べ、沈まないことを見た
- 地の色と文字の色は、片方が明るく片方が暗い
- 原稿を白黒にしても、店名の形が残った
- 読ませたい距離を決め、文字の高さを割り算で出した
- 使う色を3つまでに絞った
- 地の色、文字の色、差し色の面積の配分を決めた
- 差し色が面の1割を超えていない
- 夜も読ませるかどうかを決めた
- 照明が電球色か昼白色かを、依頼先に確かめた
- 面の向きを調べ、褪せた先の見えかたを見込んだ
- 色や光りかたの制限を、管轄の窓口に問い合わせた
よくある質問
看板の色は、何から決めればいいですか?
読める配色かどうかは、どう確かめますか?
看板の色に、決まりはありますか?
色の良し悪しは、いつ判断しますか?
もう掲げた看板の色は、直せますか?
費用を抑えたいとき、色はどこを削りますか?
まとめ
看板の色は、次の順序で決まっていきます。
| 1 まわりを見る | 周囲を撮り、沈まない地の色を選ぶ。 |
|---|---|
| 2 差をつける | 地と文字を、明るい側と暗い側に分ける。 |
| 3 数を決める | 3色まで。70・25・5を目安に面積を配る。 |
| 4 昼夜と年月 | 照明の色と、褪せた先の見えかたを見込む。 |
| 5 測る | 写真の色を抜き、差が残っているかを見る。 |
好きな色から始めても構いません。決め手にするのは、明るさの差です。 地と文字が明暗の両側に分かれていれば、その配色は遠くからも夜も働きます。