介護施設の看板の作り方
探す人から決める6ステップ
これから通いや泊まりの介護・福祉の施設を開く方、表示を見直す方へ。 この種類の施設には、走る速さも目の高さも違う人が集まります。 面の数は、探して来る人の種類から決まります。
探して来る人を、家族・送迎・本人の3つに分ける手順/ 5つの面への割り振りと、それぞれに載せる情報/ 住宅地を走る速さから、文字の高さを出す計算/ 事業の種類によって掲げる表示の確かめ方/ 費用を年あたりに直し、必要な利用月数を出す計算/ 見学の申し込みと、道を聞かれる電話を測る方法
この施設を探す人は、3種類います
店なら、来るのは客だけです。 介護や福祉の施設には、下見に来る家族、毎日の送迎、本人が入り混じります。 3種類は走る速さも目の高さも違うため、同じ面では足りません。
分けないまま作ると、こうなります。事業の種類を全部並べたため、施設名が小さくなり走りながら読めない。 車の入口と人の入口を分けなかったため、朝と夕方に出入りが詰まる。 掲げる表示を集客の面に混ぜたため、どちらも読みにくい。 玄関に受付の場所を書かなかったため、初めての家族が扉の前で立ち止まる。
探す人を分け、面を割り振り、文字の高さを出し、掲げる表示を確かめ、 費用を年あたりに直し、見学の数を測る。 この6つで、必要な面の数と大きさが決まります。
通いの施設、泊まりの施設、住まいの形の施設を想定しています。 扱うのは、道から玄関にたどり着くまでの表示です。 掲げる表示の扱いは事業の区分と地域で変わりますので、指定を行う窓口へご確認ください。
探して来る人を、3つに分ける
面の数は、この3つから逆算して決まります。
見学の下見です。初めての道を、番地を頼りに走ります。行き過ぎると、戻るのに時間がかかります。
運転するのは職員です。道は覚えていますが、停める位置と乗り降りの場所を利用者に伝える必要があります。
通いの施設では、本人が歩いて来ることがあります。歩く速さも、目の高さも、家族とは違います。
いちばん条件が厳しいのは、初めて車で探しに来る家族です。 道を知らず、番地だけを頼りに走ります。 見つけられなければ、そのまま別の施設を見に行きます。
歩いて訪ねる本人は、歩く速さも目の高さも違います。 取り付ける高さと明暗差の考え方は誰にでも読める看板にまとめてあります。 この記事では、面の割り振りのほうを扱います。
5つの面に、情報を割り振る
1枚にまとめようとすると、どの人にも届きません。
施設名と、何をする施設かの2つです。番地を頼りに走る家族が、行き過ぎずに気づける位置に置きます。細かい情報は載せません。
車の入口と、人の入口が別なら、両方に置きます。送迎の車と見学の車が同じ場所へ入ると、朝と夕方に詰まります。
車いすで降りる位置、送迎車が待つ位置、見学の車が停める位置。3つを分けておくと、当日の案内が要らなくなります。
施設名、受付の場所、呼び出しの方法。初めて来た家族が、扉の前で迷わないための面です。
制度の側から求められる表示を置く面です。集客の面と同じところに混ぜると、どちらも読みにくくなります。受付のそばに1つ確保します。
道から見える面に載せるのは、2つまでです。 施設名と、何をする施設か。それ以上は走りながら読めません。 事業の種類を全部並べると、施設名まで小さくなります。
入口は、必ず2つに分けます
送迎の車は、決まった時間にまとまって出入りします。 見学の車が同じ入口へ入ると、朝と夕方に詰まります。 入口が1つしかない敷地でも、停める位置は分けられます。
車いすで降りる位置は、別に示してください。 扉の幅と、屋根のある場所が要ります。 当日その場で案内する運用にすると、職員の手が取られ続けます。
敷地内の誘導は、面の数より順番で決まります。 入る、進む、停める、降りる。この順に1枚ずつ置くと迷いません。 分かれ道の手前に置くのが基本で、通り過ぎた後に置いても読まれません。 敷地内の並べ方は駐車場・入口の案内サインにまとめてあります。
掲げる表示は、別の面に確保します
制度の側から求められる表示は、事業の区分ごとに中身が変わります。 内容が決まる前でも、置く面だけは先に押さえられます。 受付のそばに、専用の面を1つ用意してください。
走る速さから、文字の高さを出す
住宅地を走る速さで計算します。幹線道路とは前提が違います。
住宅地を走る車を時速30kmとします。 30を3.6で割ると8.33で、秒速およそ8mです。 3秒ぶん手前は25mになります。ここから読み始められる大きさが要ります。
秒速8m × 3秒 = 25m手前から読み始める
25m ÷ 250 = 10cm / 25m ÷ 500 = 5cm → 文字の高さ5〜10cm
| 読ませたい距離 | 文字の高さ | 根拠 |
|---|---|---|
| 25m(車で探す家族) | 5〜10cm | 時速30kmで3秒ぶん |
| 10m(送迎車の運転席) | 2〜4cm | 停める位置の表示 |
| 3m(歩いて訪ねる人) | 1cm前後 | 玄関の案内 |
| 1m以内(手元で読む) | 制限なし | 受付の掲示 |
文字の高さは、視認距離の250分の1から500分の1が業界で使われる目安です。 250分の1のほうが大きく、読みやすくなります。 迷うときは大きいほうを採ってください。
読める距離は、書体、地色と文字色の差、照明の有無、見る人の年齢で変わります。 細い書体や、明暗差の小さい配色では、同じ高さでも読み切れません。 住宅地では速さも一定ではないため、実際の道で確かめてください。
面が隠れていないかを、道で確かめます
住宅地の敷地には、生け垣、塀、電柱があります。 図面の上では見えていても、道に立つと隠れていることがあります。 車が走ってくる向きから、25m手前に立って確かめてください。
見学は、夕方になることがあります。 暗い時間にも同じ位置に立ってください。 昼に見えていた面が、夜には沈んで見えることがあります。
掲げることになっている表示を確かめる
確かめるのは5つです。開設の準備と並行して進めます。
この分野では、集客の表示とは別に、掲げることが定められた表示があります。 事業の区分によって内容が変わります。 何が求められるかは区分で分かれます。指定を行う窓口へお問い合わせください。
| 施設内に掲げる表示 | 事業の種類によって、掲げることが定められている場合があります。 |
|---|---|
| 施設の名称の書き方 | 指定を受けた名称と、看板に出す呼び名が違うと確認を求められることがあります。 |
| 屋外広告物としての扱い | 面の大きさと位置に、届出や許可が要る場合があります。 |
| 住宅地での掲示 | 面の大きさや照明に、地域ごとの基準が設けられている場合があります。 |
| 借りている建物での掲示 | 共用部に掲げる場合、貸主や管理者の承諾が要ります。 |
短くした呼び名を看板に出すことがあります。 指定を受けた名称と違う場合、確認を求められることがあります。 板を発注する前に、出してよい書き方を窓口に尋ねてください。
面の大きさと位置には、屋外広告物の扱いがあります。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 手続きの流れは屋外広告物の許可にまとめてあります。
住まいの多い区域では、掲げられる面の大きさや、照らす明るさに基準が設けられている場合があります。 周りの窓の位置によっては、光の向きへの配慮も求められます。 位置と大きさが決まった時点で問い合わせてください。
費用を年あたりに直し、必要な利用月数を出す
この分野は1人が長く続くため、店とは計算の形が変わります。
1人あたりの月額 × 粗利率 = 1人が1か月に生む粗利
年あたりの費用 ÷ 1人が1か月に生む粗利 = 必要な利用月数
店の計算では「必要な新規客数」を出します。 この分野では、1人が何か月も続けて利用します。 人数ではなく月数で出すほうが、実際の感覚に近くなります。
埋める数字は4つ
| 表示一式の費用 | 屋外の面、敷地内の面、玄関の面を分けて出してもらいます。 |
|---|---|
| 使う年数 | 屋外の面は風雨を受けます。制度の表示は内容が変われば替えます。 |
| 1人あたりの月額 | 1人が1か月に支払う金額の平均です。 |
| 粗利率 | 人件費や食材費を引いて残る割合。事業の種類で大きく変わります。 |
体感できる単位まで落とす
表示一式を60万円、使う年数を10年と置きます。 600,000を10で割ると、年あたり60,000円です。
1人あたりの月額を80,000円、粗利率を2割とします。 80,000に0.2を掛けて、1人が1か月に生む粗利は16,000円。 60,000を16,000で割ると3.75。 年に1人、4か月続けて利用があればつり合う計算になります。
置いた金額は計算の置き方であり、相場ではありません。 粗利率は事業の区分で大きく変わります。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめてあります。
屋外の面と、掲げる表示の面は使う年数が違います。 1つにまとめて計算すると、年あたりの数字がずれます。
見学の申し込みと、道を聞かれた回数を測る
この分野は数が少ないため、聞き取りのほうが早く分かります。
玄関で一言尋ねます。行き過ぎた、入口が分からなかった。答えがそのまま直す場所になります。費用はかかりません。
「もうすぐ着くのですが」という電話です。回数が多いなら、道から見つける面が働いていません。
看板を替えた月の前後で比べます。紹介経由と、直接の問い合わせを分けて数えると、看板の分が見えます。
申し込み時に尋ねます。通りがかりが一定数あるなら、道から見つける面が働いている証拠です。
2つ目の電話の回数は、記録するだけで直す場所が分かります。
判断のタイミング
| 最初の1か月 | 見学に来た家族への聞き取りを続けます。迷った場所はここで出ます。 |
|---|---|
| 3か月 | 道を聞かれた電話の回数を並べます。減っていれば面は働いています。 |
| 半年 | 見学の申し込み数を、前年の同じ時期と比べます。 |
| 1年 | 色あせと汚れを見ます。掲げる表示の内容が古くなっていないかも確かめます。 |
見学の申し込みは、月ごとの数が小さくなります。 1か月の増減ではなく、前年の同じ時期と並べてください。
見つけてもらえないときは、この順で疑う
- 1入口の表示を足す
車の入口が分からないという声がいちばん多く出ます。矢印を1枚足すだけで、電話が減ることがあります。
- 2道から見える位置に付け替える
面はあるのに、生け垣や電柱で隠れている場合があります。道に立って、見え始める位置から確かめます。
- 3文字を減らす
事業の種類を全部並べていると、施設名が小さくなります。走りながら読めるのは2つまでです。
- 4夜の見え方を確かめる
見学は夕方になることがあります。照らし方を変えるだけで、見つかり方が変わります。
- 5道から見つける面を大きくする
ここで初めて、板の作り替えに近づきます。25m手前から読む前提で、文字の高さを計算し直します。
- 6面の位置そのものを移す
上の5つを試したうえで決めます。位置を移すのは、いちばん最後に置いてください。
並びは、費用のかからないものからです。 1番から4番までは、面を足すか位置を変えるだけで済みます。 板を作り替えるのは、最後に置いてあります。
よくある行き違い5パターン
どれも、板を替えずに手を打てます。
| 行き違い | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 事業の種類を全部並べた | 施設名が小さくなり、走りながら読めない | 道から見える面には2つまでにする |
| 車の入口と人の入口を分けなかった | 朝と夕方に出入りが詰まる | 入口ごとに1枚ずつ表示を足す |
| 掲げる表示を集客の面に混ぜた | どちらも読みにくくなる | 面を分けて確保する |
| 玄関に受付の場所を書かなかった | 初めての家族が扉の前で立ち止まる | 扉のそばに呼び出しの方法を書く |
| 生け垣の内側に面を置いた | 道から見えず、行き過ぎられる | 道に立って見え始める位置を確かめ、付け替える |
セルフチェックリスト
業者に相談する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、決め直す余地があります。
- 探して来る人を、家族・送迎・本人の3つに分けた
- 家族が車で走る速さから、読み始める距離を出した
- 道から見える面に載せる情報を、2つに絞った
- 車の入口と人の入口を、それぞれ表示した
- 車いすで降りる位置を、面で示した
- 送迎車が待つ位置と、見学の車が停める位置を分けた
- 玄関に、受付の場所と呼び出しの方法を書いた
- 掲げることになっている表示の面を、集客の面と分けて確保した
- 施設内に掲げる表示について、指定を行う窓口に尋ねた
- 面の大きさと位置について、屋外広告物の窓口に尋ねた
- 暗い時間に、道から施設の様子を確かめた
- 見学に来た家族に、迷ったかどうかを尋ねた
よくある質問
介護施設の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどのくらいの高さが要りますか?
掲げなければいけない表示はありますか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでに開いている施設を直すなら、どこからですか?
予算が限られるときの優先順位は?
まとめ
介護・福祉の施設の表示は、次の順序で決めます。
| 1 分ける | 家族・送迎・本人。走る速さと目の高さの違いで切り分ける。 |
|---|---|
| 2 割り振る | 5つの面に配り、道から見える面は2つまでにする。 |
| 3 高さを出す | 住宅地の速さから25mを出し、文字を5〜10cmにする。 |
| 4 確かめる | 掲げる表示と、看板に出す名称の書き方を窓口に尋ねる。 |
| 5 計算する | 費用を年に割り、必要な利用月数まで落とす。 |
| 6 測る | 見学時の聞き取りと、道を聞かれた電話の数を記録する。 |
この作業は、車で走ってくる向きから25m手前に立った時点で半分が終わります。 そこから見えないものは、図面の上でどれだけ整っていても届きません。 道に立って確かめる作業に、費用はかかりません。