書店・古書店の看板の作り方
立ち寄る理由をつくる5ステップ
これから書店や古書店の看板を決める方へ。 本は、どこで買っても同じ物が手に入ります。 だから面に載せるのは商品名ではなく、この店の棚に何が並んでいるかです。
棚の性格を一言に絞るまでの手順/ 面ごとに載せる内容と、文字数の上限の目安/ 表紙や帯を面に使うときの確かめ方と、許可の調べ方/ 費用を月あたりに直し、1日の立ち寄り人数まで落とす式/ 立ち寄った人の数え方と、見る時期/ 作り直さずに直す順番
同じ本が買える中で、棚を外に出す
本の中身は、どの店で買っても変わりません。 差がつくのは、何を選んで棚に並べたかだけです。 看板が外に出せる情報も、そこにしかありません。
探している一冊が決まっている人は、在庫のある場所へ向かいます。 看板が働くのは、その手前です。 書店の面がつくるのは、目的買いではなく立ち寄りです。
起きやすいのは、次の四つです。 「書店」「古本」の二文字だけが掲げられ、棚の中身が想像できない。 扱う分野を思いつくだけ並べたため、遠くから何ひとつ読めない。 買取を受けているのに面に書いておらず、持ち込みが集まらない。 立ち寄った人を数えていないので、直す先を勘で選ぶことになる。
どれも、面をきれいに作り直しても解けません。 棚の性格を決め、面に振り分け、きまりを確かめ、費用を計算し、立ち寄りを記録する。 この五つを順に埋めます。
なお、扱う物を外から伝える全体像は物販店の看板の作り方にあります。 持ち込みを集めるのが主目的ならリサイクル店・買取店の看板が近い内容です。 このページは、本を並べて売る店の面に絞ります。
棚の性格を一言に決める
何の店かが決まらないうちは、面のどこも埋まりません。
棚の背表紙を思い浮かべ、段数の多い順に並べます。4つ目から先は棚そのものに任せます。
冊数ではなく棚の段で数えると、体感と合います。半々なら、両方を外に書く理由があります。
受けるなら、面の役目が1つ増えます。受けないなら、その旨を書くと応対の手間が減ります。
椅子があるか、時間をかけて見てよいか。滞在を許すかで、外に出す一言が変わります。
四つのうち、先に済ませるのは1番目です。 分野を3つに絞れない店は、面でも絞れません。 書き出した語が10を超えたら、棚の段数で順位をつけて上から3つを残します。 残った語を、立ち寄る人の姿と並べて眺めます。
| 棚の性格 | 外に出す一語 | 立ち寄る人 |
|---|---|---|
| 分野をしぼった棚 | その分野の名を1語 | その分野を探している人 |
| 暮らしに寄せた棚 | 手に取る場面を1語 | 近所を歩いている人 |
| 絶版や古い本が多い棚 | 扱う年代や版のこと | 探し物を抱えている人 |
| 新刊と雑誌が中心の棚 | 入荷の頻度 | 通勤や通学の途中の人 |
比率と買取の可否を、先に決める
新刊と古書の両方を扱う店は多く、外からは見分けがつきません。 棚の段数で数え、多いほうを主役にします。 どちらかが2割に届かないなら、その語は遠くの面から外します。
買取を受けるなら、面の役目が1つ増えます。 本を買いに来る人と、持ち込む人では、歩いている理由が違うからです。 受付の時間帯と持ち込める量まで決めておくと、面の文言が短く済みます。
面ごとに載せる内容を決める
面を増やすより、1面あたりの役目を1つに絞るほうが読まれます。
面は、見る距離で役割が分かれます。 遠くの面は業種を知らせるだけ、手前の面は寄る理由を渡す。 1つの面に二つの役目を持たせると、どちらも読まれません。
| 面 | 載せる内容 | 上限の目安 |
|---|---|---|
| 遠くから見える面 | 業種と、棚の性格を1語 | 8字まで |
| 入口の上の面 | 店名と、扱う分野 | 16字まで |
| ガラス面 | 棚の並びと、買取の受け方 | 50字まで |
| 足元の置き看板 | 今日の入荷と、催しの案内 | 30字まで |
上の2行は、歩きながら読む面です。 やや急ぐ歩みを時速4.5kmと置くと、面の前にいる時間はこう出ます。
間口3mの前を通る間 = 3 ÷ 1.25 = 2.4秒
遠くの面と入口の上は、この2.4秒で読み切れる量に収めます。 荷物や同行者の有無で、歩く速さは前後します。 下の2行は、足を止めてから読む面です。字数を増やせるのは、そのためです。 文字の高さの出し方は看板の大きさの決め方にまとめました。
扱う分野を全部掲げたくなりますが、並べるほど1語あたりの文字が小さくなります。 遠くの面から削り、細かい棚の案内は立ち止まって読む位置へ寄せてください。
ガラス面は、外から棚が見える度合いも決めます。 全面を貼り込むと日焼けは防げますが、中の様子が消えます。 掲出そのものは窓ガラス看板の作り方で扱っています。
足元の置き看板は、書き換えて使う
入荷も催しも、週ごとに変わります。 彫り込みや印刷で固めると、変わるたびに作り直しになります。 黒板や差し替えのできる形なら、中身だけを動かせます。 この面は、後の手順で試験の道具にもなります。
掲出のきまりを確かめる
面に出してよいものは、店の判断だけでは決まりません。
本の表紙も帯も挿絵も、店の持ち物ではありません。 仕入れた本を売る権利と、その絵柄を面へ掲げる権利は別です。 掲出の前に、どこまで出してよいかを書面で受け取ってください。
| 本の表紙の画像 | 面に出せる範囲を、発行元と仕入れ元へ書面で確かめる。 |
|---|---|
| 帯に刷られた文言 | そのまま写してよいかどうかを、発行元へ確かめる。 |
| 挿絵や登場人物の絵 | 使える形式と条件の指定を、権利者から受け取る。 |
| 著者名や作品名の表示 | 大きく掲げる形は、許諾の要否を先に確かめる。 |
| 買取に関する掲示 | 古物の取り扱いで要る表示を、管轄の窓口へ確かめる。 |
| 屋外に出す面の許可 | 大きさと位置によっては、届け出が要る。 |
図案が固まる前に聞いておけば、直しが軽く済みます。 入稿の直前の確認では、日程が動きます。 他人の画像やロゴを使うときの考え方は、看板に使う画像と権利に整理しました。
自分で撮った棚の写真も、扱いは同じです。 撮影したのが店主でも、写っているのは他人の作った表紙だからです。 背表紙が読めるなら、掲げる前に確かめます。
同じ棚に並ぶ本でも、表紙を出せるものと出せないものがあります。
面に載せる案は、発行元と仕入れ元へ先にご確認ください。
古い本や絶版の本は、権利の窓口を探すところから時間がかかります。
※ 掲出の可否、必要な許諾、届け出の要否は、対象と地域によって異なります。判断が必要な場合は、権利者および専門の窓口へご相談ください。
屋外に出す面には、屋外広告物の許可が絡みます。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 調べる順番は屋外広告物の許可ガイドにまとめました。 買取に伴う掲示は、管轄の窓口へ直接お問い合わせください。
費用と回収ラインを計算する
総額のままでは判断できません。月に直し、1日の人数まで落とします。
費用が動くところを見る
| 面の数 | 製作と取り付けが、面の数だけ積み上がる。 |
|---|---|
| 面の大きさ | 材料の量と、高い位置での作業の手間が変わる。 |
| 夜も光らせるか | 配線の引き回しと、器具の分が乗る。 |
| 書き換えのしやすさ | 差し替えられる作りにすると、後から直す費用が下がる。 |
| ガラス面の仕上げ | 全面に貼るか一部で止めるかで、面積が動く。 |
| 取り付ける下地 | 壁の材質と足場の要否で、工事の手間が変わる。 |
4行目は、書店でとくに効きます。 入荷も催しも動くので、差し替えられる面をどこかに残すと後が楽です。 掲載社が公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめました。
1日あたりの立ち寄り人数まで落とす
書店は1冊あたりの粗利が小さく、点数で積み上げる業態です。 金額のまま眺めても、面が足りているかは分かりません。 まず、掲出の総額を持つ年数で割ります。
480,000 ÷ 96 = 5,000円/月
この480,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
1,250 × 0.2 = 250円
5,000 ÷ 250 = 20人/月
20 ÷ 25 = 0.8人/日 → 5日に4人
ここで止めずに、買った人から立ち寄った人まで戻します。 看板は本を売る道具ではなく、扉を開けてもらう道具だからです。
0.8 ÷ 0.25 = 3.2人/日
1日に3人強。 営業10時間なら 3.2 ÷ 10 = 0.32人/時、およそ3時間に1人です。 この単位なら、現実味を測れます。
480,000円も、8年も、1,250円も、0.2も、25日も、0.25も、式の形を見るために置いた値です。 自分の客単価と粗利率、営業日数に差し替えて計算し直してください。 買う割合は、次の手順で数えた実測を入れます。
立ち寄りを記録して直す
記録がないと、直す先を勘で選ぶことになります。
「外の掲示をご覧になりましたか」で足ります。答えは紙に正の字で残します。
開店直後と夕方に10分ずつ。通った人と、足が止まった人を分けて数えます。
入口用と置き看板用を分ければ、読み取り数が面ごとに残ります。行き先は棚の案内で足ります。
入れ替えた週と、そのままの週を並べます。書き換えられる面は、試験の道具になります。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は、会計の脇に紙を1枚置くだけで始まります。
2番目が、この業種では効きます。 通った人と止まった人を分けると、面で止まらないのか、止まっても入らないのかが分かれます。 前者なら遠くの面の言葉、後者なら入口の言葉を疑います。
帳票を作り込むと、忙しい日に書かれなくなります。 項目は「通った」「止まった」「入った」の三つで十分です。
見る時期を決める
| 2週間 | 面の前で足が止まるかだけを見ます。数えるのは人数です。 |
|---|---|
| 1か月 | 扉を開けた人数を見ます。止まった人との差が、入口の言葉の効き方です。 |
| 3か月 | 買われた点数と客単価を並べ、回収の計算と突き合わせます。 |
| 半年 | 棚の性格そのものを見直します。面の位置は、その後です。 |
本の売れ方は、季節と新刊の出方で大きく動きます。 1か月の数字だけで、面の良し悪しを決めないでください。 前の年の同じ月と並べられるなら、そちらのほうが読み違えが減ります。
届いていないときは、この順で疑う
- 1棚の性格の一語を、別の語に替える
紙に書いて入口へ貼れば、その日から試せます。候補は3つまでにします。
- 2遠くの面から、字を削る
通り過ぎる2.4秒で読み切れるかを見ます。減らすほうが先で、大きくするのは後です。
- 3歩道に立って、面を見上げる
庇や街路樹で隠れていないか、立つ位置を3か所変えて確かめます。
- 4置き看板を、半歩だけ前へ出す
通行の妨げにならない範囲で、位置と角度を試します。
- 5夜と雨の日に、自分の店の前に立つ
日が落ちてから見ると、読めない理由が分かります。照明の向きで直ることもあります。
- 6面そのものを作り直す
五つを試したうえで、それでも届かないときに考えます。
1番から4番までは、紙とテープと少しの手間で試せます。 費用のかかる手当ては、後ろに置いてあります。 作り直しを検討するのは、六つを踏んだ後です。
よくある失敗5パターン
どれも、面を作り直さずに手当てできます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 「書店」の二文字だけを大きく出した | 棚の中身が想像できず、通り過ぎられる | 入口の面に、扱う分野を1語足す |
| 扱う分野を思いつくだけ並べた | 1語あたりが小さくなり、遠くから読めない | 遠くの面を1語に戻し、残りはガラス面へ移す |
| 買取をしているのに面に書かなかった | 持ち込みが集まらず、棚の仕入れが細る | 置き看板に、買取の受付時間を1行足す |
| 表紙の画像を、確かめずに面へ使った | 差し替えを求められ、面ごと作り直す | 掲出の前に、発行元と仕入れ元へ書面で確かめる |
| 立ち寄った人を数えなかった | どの面が効いたか分からず、直す先を選べない | 会計の脇に紙を1枚置き、翌日から正の字で数える |
セルフチェックリスト
発注の前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 扱う分野を3つまでに絞って、紙に書き出した
- 新刊と古書の比率を、棚の段数で数えた
- 買取を受けるかどうかを決めて、面に書いた
- 棚の性格を表す一語を、1つに決めた
- 遠くから見える面の字数を、上限の中に収めた
- 面ごとに、役目を1つに絞った
- 置き看板を、書き換えられる作りにした
- 表紙や帯を面に使う範囲を、発行元と仕入れ元に確かめた
- 屋外に出す面の届け出について、管轄の窓口へ問い合わせた
- 看板の費用を、月あたりの額に直した
- 1日あたりに必要な立ち寄り人数まで、計算を落とした
- 立ち寄った人を数える紙を、会計の脇に用意した
よくある質問
書店の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの量に収めればいいですか?
本の表紙や帯を、看板に使ってよいですか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでに出している看板を、作り直さずに直せますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
書店・古書店の看板は、次の順序で決まります。
| 1 棚の性格を決める | 扱う分野を3つまでに絞り、新刊と古書の比率、買取の可否を決める。 |
|---|---|
| 2 面と内容を決める | 面ごとに役目を1つに絞り、通り過ぎる時間で読める量に収める。 |
| 3 きまりを確かめる | 表紙と帯の扱いを権利者へ、屋外に出す面を管轄の窓口へ確かめる。 |
| 4 費用を計算する | 月あたりの額に直し、1日あたりに必要な立ち寄り人数まで落とす。 |
| 5 立ち寄りを記録する | 通った人と止まった人を分けて数え、安く直せる順に手を入れる。 |
看板に書けるのは、棚の要約だけです。 棚の性格が言葉になっていないうちは、面の大きさを決めても迷います。 背表紙を思い浮かべて、まず3語だけ紙に書いてください。