物販店の看板の作り方
扱う物が伝わる5ステップ
これから服や雑貨の店を構える方へ。 物販の看板でいちばん多い相談は、何の店か外から分からないことです。 飲食と違い、匂いも湯気も出ません。 伝わる手がかりは、看板とウィンドウの二つだけです。
扱う物を、外から分かる一語まで絞る手順/ 伝わらない言葉と、その置き換え方/ 正面・入口・ウィンドウに役目を配る考え方/ 歩く速さから逆算した、読ませる言葉の量/ 入りにくさの元になる四つの分からなさ/ 費用を、必要な購入客数に直す式/ 立ち止まった人と入った人を数える方法
物販の看板は、扱う物を名乗るところから始まります
店の前を歩く人は、看板を2〜3秒しか見ません。 その間に伝わるのは、多くて二つです。
よく起きるのは、次の四つです。 店名だけを大きく出し、何の店か分からないまま素通りされる。 扱う物を全部並べ、読み切れずに何も残らない。 三つの面に同じ言葉を書き、伝わる量が増えない。 ウィンドウを紙で埋め、中の様子が見えなくなる。
どれも、発注の前に手を打てば起きません。 一語に決め、面に役目を配り、入りにくさを消し、費用を客数に直し、立ち止まりを数える。 この五つを順に埋めていきます。
扱う物を、一語に絞る
品ぞろえの広さと、店の顔になる物は別ものです。
売っている物を思いつくまま書き出します。20も30も出て構いません。絞るのは次の作業です。
数ではなく金額で並べます。品ぞろえの広さと、店の顔になる物は別だからです。
上から三つを見て、まとめて呼べる言葉を探します。二つに割れるなら、看板に出すのは上の一つです。
通りに立ち、その言葉で店の中が想像できるかを見ます。想像できないなら、まだ抽象的すぎます。
絞るときにつまずくのは、便利な言葉に逃げてしまうことです。 次の四つは、書いても中身が伝わりません。
| よく使われる言葉 | なぜ伝わらないか | どう置き換えるか |
|---|---|---|
| セレクトショップ | 何が置いてあるか分からない | 扱う物の名前に置き換える |
| ライフスタイル | 範囲が広すぎる | 売上の上位を一語で呼ぶ |
| こだわりの品ぞろえ | 中身がない | 品数か産地か、数字か土地で言う |
| 店名だけ | 知らない人には手がかりが無い | 店名の下に扱う物を足す |
足すのではなく、削るほうが伝わります。 看板に載せる語は、業種を示す一語と店名の二つまでにしてください。 言葉の削り方は看板の文言の決め方で扱っています。
歩く速さから、載せる量を決める
歩いて通る人が、店の前にいる時間はごく短いものです。
間口3mの店の前を通過 → 3 ÷ 1.11 = 約2.7秒
2.7秒で読めるのは、短い語が二つまでです。 三つ目からは、店に入った人に伝えれば足ります。
三つの面に、別々の役目を配る
同じことを三度書くと、二つは働きません。
物販の店には、使える面が三つあります。 見る距離が違うので、載せる中身も変わります。
| 面 | 果たす役目 | 載せる中身 |
|---|---|---|
| 正面の看板 | 遠くから見つけさせる | 業種を示す語と店名 |
| 入口まわり | 入っていいと分からせる | 営業時間と価格の幅 |
| ウィンドウ | 中の様子を想像させる | 実物と、その値札 |
歩道の反対側や、道の先から見えます。読ませたい距離を先に決め、そこから文字の高さを出します。
距離は1mほどです。文字は小さくてかまいません。代わりに、書ける量が増えます。
説明を貼るより、実物を1点置くほうが早く伝わります。値札を付けると、価格の幅まで伝わります。
同じ言葉が三つ並ぶと、二つは無駄になります。役目を分けると、伝わる量が増えます。
正面の文字の高さを出す
読ませたい距離を先に決めます。 歩道の反対側までなら10m、道の先からなら20mといった置き方をします。
10m先 → 10,000 ÷ 500 = 20mm / 10,000 ÷ 250 = 40mm → 2〜4cm
20m先 → 20,000 ÷ 500 = 40mm / 20,000 ÷ 250 = 80mm → 4〜8cm
書体、地との明暗差、庇の影の落ち方で変わります。 明暗差の付け方は看板の色の決め方にまとめています。
ガラス面に説明を貼ると、中が見えなくなります。 実物を1点置き、値札を付けるだけで、扱う物と価格の幅が同時に伝わります。 ガラス面の使い方は窓ガラス看板の作り方で扱っています。
入りにくさの元を、表示で消す
入らない理由の多くは、分からないことです。
店の前で立ち止まった人が、入るのをやめる理由は限られています。
| 分からないこと | 頭に浮かぶこと | どう消すか |
|---|---|---|
| 価格の幅 | いくらの店か分からない | 一番安い物と高い物を出す |
| 営業の時間 | 開いているか分からない | 曜日ごとの時間を書く |
| 入っていいか | 買わないと出にくそう | 見るだけで良いと書く |
| 支払いの方法 | 現金しか使えないかも | 使える方法を並べる |
| 店の中の広さ | 狭くて気まずそう | ウィンドウから奥を見せる |
一番効くのは、価格の幅を外に出すことです。 一番安い物と、一番高い物。二つの数字があれば、自分の予算と照らせます。
歩道に置き看板を出す場合、道路の使い方に関わる手続きが必要になることがあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。
建物から突き出す形も、同じく扱いが分かれます。
※ 出せる範囲と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。
費用を月あたりに直し、必要な客数を出す
総額のままでは、高いか安いかを決められません。
額が動くところは五つです。
| 面の数 | 正面だけか、三つの面に出すか。数がそのまま効いてきます。 |
|---|---|
| 面の大きさ | 間口の広さと、読ませたい距離で決まります。距離が伸びれば大きくなります。 |
| 光らせるかどうか | 夜も見せるなら、電気の配線と器具が加わります。 |
| 取り替える回数 | 扱う物を変えるたびに面を作り直すか、差し替えできる作りにするか。 |
| ウィンドウの作り | 貼るだけか、什器を置くか。什器は看板の費用とは別に見ます。 |
一番目と四番目は、自分で調整できます。 正面だけを作り込み、入口とウィンドウは差し替えできる作りにする。 この分け方だと、扱う物が変わっても正面は残せます。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
持つ年数で割り直す
総額600,000円 ÷ 60か月 = 月10,000円
この600,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
何人買えば釣り合うかに直す
2,500 × 0.4 = 1,000
10,000 ÷ 1,000 = 月10人
30 ÷ 10 = 3日に1人
客単価を2,500円、粗利率を4割と置いた場合です。 3日に1人が新しく買えば、月10,000円と釣り合います。
これらの数字は、式の動きを見るための仮の置き方です。 自分の店の客単価と粗利率に差し替えて計算してください。
立ち止まった人と、入った人を数える
二つを並べると、直す場所が分かれます。
店の中から、店前で足を止めた人を数えます。10分を3回で30分です。平日と休日の2日なら60分になります。
止まった人のうち、何人が入ったか。止まるのに入らないなら、入口まわりの問題です。
「何のお店ですか」と聞かれた回数を数えます。回数が多いほど、外の表示が足りていません。
レジで一言たずねます。看板か、通りがかりか、人づてか。三つに分けるだけで傾向が出ます。
数える時間は短くて構いません。
平日と休日の2日 → 30 × 2 = 60分
止まらないなら正面、止まるのに入らないなら入口の問題です。 この切り分けができると、直す面が一つに絞れます。
見る時期を決める
| 1か月 | 立ち止まる人の数を数え始めます。まだ比べる相手がありません。 |
|---|---|
| 3か月 | 止まった数と入った数を並べます。どちらが足りないかが見えます。 |
| 半年 | 季節がひとつ動きます。扱う物と看板の言葉がずれていないかを見ます。 |
| 1年 | 売上の上位が入れ替わっていないかを確かめます。入れ替われば言葉も変えます。 |
効かないときは、この順で疑う
- 1写真に撮って縮小して見る
費用はかかりません。読めない文字は、その場で分かります。
- 2ウィンドウの物を替える
置く物を1点変えるだけです。中身が想像できるかが変わります。
- 3入口に価格の幅を足す
紙1枚で足せます。入りにくさの多くは、ここで減ります。
- 4言葉を1語に削る
面の作り直しになりますが、正面だけで済みます。
- 5文字を大きくする
読ませたい距離を測り直し、そこから高さを出します。
- 6面の位置を変える
街路樹や庇で隠れている場合です。最後に検討します。
上のほうほど、費用がかからずに直せます。 1番から3番までは、その日のうちに手を付けられます。 面の位置を変えるのを最後に置くのは、工事が要るからです。
よくある失敗5パターン
どれも、作り直さずに手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 店名だけを大きく出した | 何の店か分からず素通りされる | 店名の下に、扱う物を示す一語を足す |
| 三つの面に同じ言葉を書いた | 伝わる量が増えない | 入口の面を、営業時間と価格の幅に書き換える |
| 扱う物を全部並べた | 読み切れず、何も残らない | 売上の上位を包む一語まで削る |
| ウィンドウを紙で埋めた | 中の様子が見えず入りにくい | 紙を減らし、実物を1点と値札に替える |
| 数える仕組みを作らなかった | 効いているか判断できない | 立ち止まった人を10分だけ数え始める |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 扱う物を、売上の大きい順に並べ替えた
- 上位を包む言葉を、一語で決めた
- その言葉を店の外で声に出し、中が想像できるかを見た
- 正面・入口・ウィンドウの三つに、別の役目を割り振った
- 正面から読ませたい距離を決め、そこから文字の高さを出した
- 三つの面に同じ言葉が並んでいないかを確かめた
- 入口に、営業の時間を曜日ごとに書いた
- 価格の幅が外から分かるようにした
- 見るだけでよいことが伝わる表示を置いた
- 月あたりの費用を、必要な新規客数に直した
- 立ち止まった人を数える用紙を、レジに用意した
- 道の反対側から写真を撮り、縮小して読めるか見た
よくある質問
物販店の看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさは、どう決めますか?
正面・入口・ウィンドウに、同じことを書いてもいいですか?
ウィンドウには何を貼るのがいいですか?
効いているかは、いつ判断しますか?
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
まとめ
物販店の看板は、次の順序で決まります。
| 1 一語に絞る | 売上の上位を包む言葉を探す。便利な言葉に逃げない。 |
|---|---|
| 2 面に役目を配る | 正面は見つけさせる、入口は入らせる、ウィンドウは想像させる。 |
| 3 入りにくさを消す | 価格の幅、営業の時間、見るだけでよいこと、支払いの方法。 |
| 4 費用を客数に直す | 持つ年数で割り、客単価と粗利率で必要な人数を出す。 |
| 5 二つの数を並べる | 立ち止まった人と入った人。どちらが足りないかで直す面が決まる。 |
売っている物の名前より強い言葉は、物販にはありません。 飾りの言葉を足す前に、その一語が外にあるかを見てください。