パン屋・洋菓子店の看板
持ち帰る店を見せる5ステップ
これからパン屋や洋菓子店の看板を用意する方へ。 買って帰る店の前は、三つの速さで人が通ります。 歩く人、自転車の人、車で寄る人。読める時間が違えば、載せられる量も違います。 焼き上がりの時刻のように、日ごとに動く情報もあります。
歩く人・自転車・車で、読める秒数がどれだけ違うか/ 秒数から、載せる文字数を割り算で出す方法/ 読ませたい距離から、文字の高さを出す式/ 変わらない一語と、今日だけ動く情報の分け方/ 歩道側の面と食品の表示で、確かめる先/ 書き替えの手間を、年の時間に直す数え方/ 月の費用を、1日の必要な客数に直す式
買って帰る店は、通る速さで見え方が変わります
持ち帰りの店は、滞在の短さが特徴です。 店を選ぶ判断は、たいてい店の前を通り過ぎる数秒で終わります。
起きやすいのは、次の四つです。 屋号だけを大きく出し、何を売る店か伝わらない。 歩く人を基準に文字を決め、自転車と車から読めない。 焼き上がりの時刻を作り付けの面に入れ、動かせなくなる。 停める場所を書かず、寄ろうとした人がそのまま行ってしまう。
どれも、発注の前に手を打てば起きません。 速さで分け、一語と今日を分け、決まりを確かめ、費用を客数に直し、数えて直す。 この五つを順に決めていきます。
誰がどの速さで通るかを分け、読ませる距離を決める
文字の量は、好みではなく秒数で決まります。
歩く人、自転車の人、車の人。同じ面を違う速さで見ています。読める時間が変われば、載せる量も変わります。
駅や住宅のある側から、歩いて、自転車で、車で通ります。三度とも、見えはじめる地点が違います。
建物の角、街路樹、隣の店の庇。面が隠れる場所を控えます。ここが読ませる区間の始まりです。
見えはじめてから通り過ぎるまでの距離です。メジャーが無ければ歩数で足ります。
面が見えている距離を12mと置き、秒数に直します。 時速を3.6で割ると、秒速が出ます。
時速15km = 15,000 ÷ 3,600 = 秒速 約4.17m(自転車)
時速30km = 30,000 ÷ 3,600 = 秒速 約8.33m(生活道路の車)
12m ÷ 1.11 = 約10.8秒 / 12 ÷ 4.17 = 約2.9秒 / 12 ÷ 8.33 = 約1.4秒
1秒に読めるのを2〜3文字と置くと、載せられる量が出ます。
| 通り方 | 読める時間 | 載せられる文字数 |
|---|---|---|
| 歩く(時速4km) | 約10.8秒 | 21〜32文字 |
| 自転車(時速15km) | 約2.9秒 | 6〜9文字 |
| 車(時速30km) | 約1.4秒 | 3〜4文字 |
歩く人と車の人では、7倍以上の開きがあります。 同じ面で三つの速さに応えることはできません。 誰に読ませる面かを、面ごとに決めてください。
読ませ始める距離を、速さから逆算する
3秒読ませたいなら、必要な手前の距離は掛け算で出ます。
車 → 8.33 × 3秒 = 約25m手前
この距離に、隣の建物や街路樹がかぶっていないかを見ます。 かぶるなら、面の位置か向きを変えます。
歩く人は、気づいてから足を止められます。 自転車と車の人は、気づいた地点で止まれるとは限りません。 停める場所が見えないと、通り過ぎるほうを選びます。 この二者には、内容より先に置ける場所を見せます。
外から分かる一語と、今日だけ変わる情報を分ける
動かない情報と動く情報を、同じ面に載せません。
扱う物を一語で置きます。屋号だけの面は、知らない人に何の店かを伝えません。
焼き上がりの時刻、売り切れ、季節の品。日ごとに動くものは、書き替える面へまとめます。
1個から買えるか、箱で買うか。中に入る前に決めたい人がいます。持ち帰りの店に固有の点です。
自転車をどこに置くか、車をどこへ入れるか。分からないまま速度を戻す人がいます。
分ける基準は、変わる頻度です。 数年動かないものと、朝夕で動くものを同じ面に置くと、片方が直せません。
| 面 | 出すもの | 変わる頻度 |
|---|---|---|
| 建物に付く面 | 扱う物の一語と屋号 | 数年に一度 |
| 扉のまわり | 営業時間と買い方の単位 | 変わったときだけ |
| 歩道側の置き面 | その日の焼き上がりと品 | 毎日 |
| 窓ガラス | 季節の品と、中の様子 | 月ごと |
| 停める場所の表示 | 自転車と車の置き場 | 変わったときだけ |
建物に付く面に載せるのは、扱う物の一語と屋号だけです。 言葉の絞り方は看板の文言の決め方にまとめています。
焼き上がりの時刻、売り切れ、季節限定の品。 これらを金属や樹脂の板へ入れると、変わった日に直せません。 古い時刻が出たままの面は、次から読まれなくなります。 動く情報は、書き替える面か窓ガラスへ移してください。
文字の高さを、読ませたい距離から出す
高さは割り算で出ます。距離を先に決めてください。
5m先(扉のまわり) → 5,000 ÷ 500 = 10mm / ÷ 250 = 20mm → 1〜2cm
15m先(自転車に読ませる面) → 15,000 ÷ 500 = 30mm / ÷ 250 = 60mm → 3〜6cm
30m先(車に読ませる面) → 30,000 ÷ 500 = 60mm / ÷ 250 = 120mm → 6〜12cm
この幅は、明るい時間に正面から見た場合です。 書体、地の色との明暗差、庇の影の落ち方で動きます。 朝や夕方に読ませる面は、幅の大きいほうへ寄せてください。
ガラス面は、書き替えの負担がいちばん軽い場所です。 使い方は窓ガラス看板の作り方で扱っています。
屋外に出す表示と、食品まわりの決まりを確かめる
面の場所ごとに、確かめる相手が変わります。
図面を引く前に、出せるかどうかを確かめます。 後で分かると、作った面を使えないことがあります。
| 建物に付ける面 | 屋外広告物としての手続きに関わります。土地ごとに決まりが違います。 |
|---|---|
| 歩道側へ出す置き面 | 敷地の内か外かを先に確かめます。道路の使用に関わることがあります。 |
| 借りている店舗 | 貸主と管理者の承諾が要ります。退去時に戻す範囲も文書で確かめます。 |
| 食品に関わる表示 | 表示が求められる場合があります。所管の窓口へご確認ください。 |
| 価格の見せ方 | 表示の方法が定められている場合があります。出す前にお尋ねください。 |
敷地の内側なら自分の判断で動かせますが、外へはみ出すと話が変わります。 置き看板の仕様はのぼり・置き看板の選び方で扱っています。
原材料やアレルゲンについては、表示が求められる場合があります。
対象になるかどうかは、扱う品と売り方で変わります。
条文や区分の判断は、所管の窓口へご確認ください。
出す量が多いなら、屋外の面ではなく店内の一覧へまとめる形も取れます。
建物に付ける面の大きさや高さには、地域ごとの決まりがあります。
県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域に分かれます。
景観に関する区域では、色や面積の扱いが別に決まることもあります。
※ 許可の要否は、管轄の窓口へお確かめください。
書き替えの手間から方式を決め、1日あたりの客数に直す
毎日さわる面は、作りより手間で選びます。
書き替える面は、作った後も手がかかり続けます。 方式を選ぶ前に、年の時間を数えます。
方式は四つです。 板の貼り替えは年に数回で外注が要り、手書きは毎日で自分の手で回せます。 文字の差し替えは週ごと、布の掛け替えは季節ごとになります。
焼き上がりに合わせて1日3回書き替える場合を、時間に直します。
週6日営業 → 6 × 52週 = 312日 → 312 ÷ 12 = 月26日
6 × 26 = 156分/月 → 156 × 12 = 1,872分/年
1,872 ÷ 60 = 年 31.2時間
年30時間を超えるなら、書きやすさが仕様の一部になります。 高い位置の面や、雨の日にしまう面は、この時間がさらに伸びます。
金額が動くところを見る
| 面の数 | 変わらない面と書き替える面を別に数えます。総額にいちばん効きます。 |
|---|---|
| 書き替えの方式 | 貼り替えか、手書きか、差し替えか。下地がここで決まります。 |
| 面の大きさ | 車から読ませる面は大きく、扉のまわりは小さくできます。 |
| 夜の見え方 | 光らせるか、光を返すか。配線の要否で工事が変わります。 |
| 出し入れの回数 | 毎日しまう置き面には、軽さと丈夫さが要ります。 |
掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。
1日あたりの必要な客数を出す
一式の総額540,000円 ÷ 60か月 = 月9,000円
書き替えの材料 月3,000円 を足す → 9,000 + 3,000 = 月12,000円
この540,000円と3,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。
客単価800円 × 粗利率0.5 = 400
12,000 ÷ 400 = 30人/月
30 ÷ 26営業日 = 1.15 → 1日あたり 約1.2人
検算します。1.15 × 26 = 29.9 で、ほぼ30人に戻ります。 30 × 400 = 12,000 となり、月あたりのコストと釣り合います。
1日に1人か2人、新しく買う人が増えれば足りる計算です。 客単価が小さい業態は、月では大きな人数に見えます。 客単価と粗利率は、自分の店の数字へ差し替えて置き直してください。
立ち止まった数と、時間帯の偏りで測って直す
売上の合計より、時間帯ごとの動きに答えが出ます。
レジから外を見て、面の前で止まった人を数えます。時計を決めておけば、日をまたいで比べられます。
「初めてですか」の一言で足ります。会計の流れに混ぜられるので、人手が増えません。
焼き上がりの直後と、そうでない時間を分けます。書き替えが効いた時間帯が見えます。
歩く人だけを見ると、寄って買う人の動きを取りこぼします。台数は外から数えられます。
上から順に、手間の軽い方法です。 1番目は昼と夕方の2回、10分ずつで足ります。
見る時期を決める
| 1週間 | 書き替えた日と、そうでない日のレシート枚数を並べます。 |
|---|---|
| 1か月 | 足を止めた人の数を、時間帯ごとにまとめます。偏りが出ます。 |
| 3か月 | 初めての人の割合を、前の3か月と比べます。 |
| 1年 | 色あせと汚れを見ます。品ぞろえが変わった店は面を組み直します。 |
比べる相手を作らないと、数えた数字は読めません。 天気と曜日で、通る人の数は動きます。 同じ曜日、同じ時間帯で並べてください。
効かないときは、この順で疑う
- 1書き替える面の中身を、その日に合わせる
時刻が古いままだと、面そのものが見られなくなります。費用はかかりません。
- 2置き面の位置を、歩く向きへずらす
半歩ずらすと、見えはじめる地点が変わります。その日のうちに確かめられます。
- 3面の前をふさぐ物をどける
停めた自転車、植木鉢、積んだ空き箱。下半分が隠れていることがあります。
- 4車から読む面の文字を、3〜4文字まで削る
1.4秒で読めるのはこの範囲です。2行あるなら1行に減らします。
- 5面の高さを、自転車の目線へ下げる
歩く人と自転車では、目の高さが変わります。金具の付け替えで済む場合があります。
- 6停める場所を示す面を、1つ足す
足りない面を埋めるほうが早く効きます。作り直しは、ここまで試した後です。
上のほうほど、費用をかけずに直せます。 1番から3番までは、その日のうちに手を付けられます。 6つを試しても動かないときに、はじめて作り直しを考えます。
よくある失敗5パターン
どれも、一語を足すか、面を1つ増やすことで手を打てます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 屋号だけを大きく出した | 何の店か分からず素通りされる | 扱う物の一語を足す。既存の面は触らない |
| 焼き上がりの時刻を作り付けにした | 時刻が動くたびに直せない | 書き替えられる面へ移す。置き面で足りる |
| 歩く人だけを見て高さを決めた | 自転車と車から読めない | 1面を下げるか、短い文字の面を足す |
| 1つの面に品名を並べた | どれも読まれず、足が止まらない | 一語だけ残し、残りは窓と店内へ移す |
| 停める場所を書かなかった | 寄りたい人が通り過ぎる | 矢印と一語で足りる。小さな面で済む |
セルフチェックリスト
発注の直前に使います。5つ以上「いいえ」があれば、見直す余地があります。
- 歩く人・自転車・車のうち、誰に読ませるかを決めた
- 来る向きから、店の前を三通りで通ってみた
- 面が見えてから通り過ぎるまでの距離を測った
- 読める秒数から、載せる文字数を割り算で出した
- 読ませたい距離から、文字の高さを割り算で出した
- 扱う物を、外から分かる一語にして出した
- 今日だけ動く情報を、書き替える面へ移した
- 自転車と車を停める場所を、面のどこかに書いた
- 歩道側へ出す面が、敷地の内か外かを確かめた
- 食品に関わる表示を、所管の窓口へ問い合わせた
- 書き替えにかかる年の時間を、分に直して数えた
- 月の費用を、1日あたりの必要な客数に直した
よくある質問
パン屋・洋菓子店の看板は、何から決めればいいですか?
1つの面に、どのくらいの文字を載せられますか?
焼き上がりの時刻は、外に出したほうがいいですか?
許可や届出は要りますか?
効いているかは、どう判断しますか?
アレルゲンの表示は、看板にも要りますか?
まとめ
持ち帰りの店の看板は、次の順序で決まります。
| 1 速さで分ける | 歩く・自転車・車で読める秒数を出し、面ごとに相手を決める。 |
|---|---|
| 2 一語と今日を分ける | 動かない一語は作り付けへ。動く情報は書き替える面へ。 |
| 3 決まりを確かめる | 面の場所ごとに窓口が変わる。食品の表示は所管へ聞く。 |
| 4 方式と費用を決める | 書き替えの時間を年で数え、月の費用を1日の客数に直す。 |
| 5 数えて直す | 足を止めた人を10分数え、偏りを見て安い順に直す。 |
通り過ぎる速さが違えば、届く言葉の長さも違います。 面を増やす前に、誰に読ませる面かを決めるほうが早く効きます。