看板業者の選び方ガイド
依頼先を絞る5つのステップ
看板を頼みたいが、どこに声をかければよいか決まっていない方へ。 看板の仕事は1種類ではなく、請ける会社の得意な範囲も分かれています。 先に決めるのは相手ではなく、頼む仕事の中身です。
頼む仕事を1枚の紙にまとめる書き方/ 依頼先の6つの型と、自分の仕事との対応/ 候補を3社に絞る理由と、そこで生まれる手間の量/ 屋外広告業の登録、工事の資格、保険で確かめること/ 費用を年あたりに直し、必要な客数を出す計算/ 頼んだあとの付き合い方を、記録で測る方法
相手を探す前に、仕事の中身を決めます
看板の相談で多いのが「近くの看板屋を教えてほしい」というご依頼です。 ところが看板の仕事は、作る、直す、外す、移すで中身がまったく違います。 頼む仕事が決まっていないと、比べる相手も決まりません。
中身を決めないまま声をかけると、こうなります。届いた見積の前提が社ごとに違い、 金額を並べても意味がない。写真だけで出してもらった額が、工事の途中で動く。 光る看板を頼んだのに、配線の工事が別扱いだったと後で分かる。 届出を誰が出すのかが宙に浮き、設置の日が後ろにずれる。
仕事を書き出し、依頼先の型を選び、登録と資格を確かめ、 費用を年あたりに直し、頼んだあとを測る。 この5つの順で進めれば、どこに声をかけるかは自分で決められます。
扱うのは、依頼先を決めるまでの手順です。 届いた見積の項目をどう読むかは別の記事にまとめてあります。 登録や許可の扱いは仕事の中身と地域で変わりますので、管轄の窓口へご確認ください。
頼む仕事を、1枚の紙に書き出す
書くのは6つだけです。長い説明より、この6行のほうが伝わります。
紙の上に、これから頼む仕事を並べます。 文章にする必要はありません。単語で構いません。 この紙が、そのまま見積を頼むときの依頼書になります。
- 1何をするのかを動詞で書く
作る、直す、外す、移す、光らせる。この5つのどれかです。複数あるなら分けて書きます。
- 2取り付ける先を書く
自社の建物か、借りている建物か。壁か、地面か、屋上か。付ける先で頼める会社が変わります。
- 3地面からの高さを書く
脚立で届くのか、車両や足場が要るのか。高さは、そのまま必要な体制の話になります。
- 4電気が要るかを書く
光らせるなら配線の工事が付いてきます。要るか要らないかで、確かめる資格が1つ増えます。
- 5いつまでに要るかを書く
開店日や催しの日から逆算した期限です。期限だけは、あとから短くできません。
- 6絵と写真を1枚ずつ用意する
手描きで構いません。付ける場所の写真と並べれば、言葉での説明が半分になります。
6行が埋まらないところは、まだ決まっていない部分です。 そこを空欄のまま渡して構いません。 空欄を見た相手が何を聞き返してくるかで、相手の仕事の進め方が分かります。
情報を足すより、削るほうが効きます。 載せたい言葉や好きな色は、この段階では書かないでください。 先に決まるのは、場所と大きさと期限です。
依頼先の型を知り、候補を3社に絞る
看板を請ける会社は6つに分かれます。得意な範囲が違います。
デザインから製作、取り付けまでを一続きで請けます。窓口が1つで済みます。屋外の看板を新しく作るなら、まずここが候補です。
取り付け、撤去、高い場所の作業を請けます。板だけ別で用意する場合や、外すだけの仕事に向きます。
シート、幕、のぼりのように、印刷が中心のものを扱います。短い期間だけ出すものは、ここが速いことがあります。
見た目を作るところまでを請けます。製作は別の会社になるため、窓口は2つになります。
店をまるごと作る工事の一部として看板を含めます。工事全体の日程に合わせやすい形です。
規格の決まったものを型どおりに作ります。現地を見ないため、取り付けは自分で手配することになります。
どの型が上ということはありません。仕事との相性だけです。 1枚の看板を新しく出すなら製作会社、外すだけなら施工専門というように、 仕事の中心がどこにあるかで選びます。
仕事と依頼先を対応させる
| 頼む仕事 | 向く依頼先 | 理由 |
|---|---|---|
| 屋外に新しく1枚出す | 製作会社 | 設計・製作・取り付け・届出まで通しで頼める |
| 光る看板を入れる | 製作会社+電気の資格 | 配線を伴うため、資格の確認が要る |
| 既にある看板を直す | 製作会社/施工専門 | 症状によって、直す先が変わる |
| 高い場所から外す | 施工専門 | 車両や足場の手配が仕事の中心になる |
| 短い期間だけ出す | 印刷・出力の会社 | 幕やのぼりは印刷の比重が大きい |
窓口が2つに分かれる形もあります。 デザインを事務所に、製作を別の会社に頼む場合です。 分けると各社の得意が生きますが、進行の管理は自分の側に残ります。
候補を3社にする理由
比べるための手間は、社数に比例して増えます。 1社あたり、現地を見てもらう時間と打ち合わせで、合わせておよそ2時間です。 3社なら6時間、5社なら10時間になります。
1社あたり2時間 × 5社 = 10時間
2社では、出てきた金額のどちらが外れているのか判断できません。 5社を超えると、比べる作業そのものが仕事を圧迫します。 3社は、判断の軸が作れて、手間が仕事を邪魔しない社数です。
大きさ、素材、取り付け方が社ごとに違えば、安い高いは判断できません。 STEP 1で作った紙を、3社に同じものを渡してください。 項目の読み方は看板の見積書の読み方にまとめてあります。
登録・資格・保険を、着工の前に確かめる
尋ねるのは5つです。すべて、見積を頼む段階で聞けます。
看板の仕事には、行政への登録や作業の資格が関わります。 何が要るかは、仕事の中身と地域で変わります。 必要なものが揃っていないと、良い案が出ても実行できません。
| 屋外広告業の登録 | 屋外に広告物を出す仕事を請けるための登録です。地域ごとの条例で定められています。 |
|---|---|
| 建設業の許可 | 一定の規模を超える工事で要ります。金額の数え方は窓口でご確認ください。 |
| 電気工事の資格 | 電源をつなぐ作業に関わります。光る看板を入れるときに確かめます。 |
| 高い場所の作業に関する資格 | 足場、高所作業車、玉掛けなど。使う機械と作業の内容で変わります。 |
| 工事中の事故に備える保険 | 第三者への損害に備えるものです。加入の有無と、対象になる範囲を尋ねます。 |
一般に、請負代金が500万円に満たない工事は、軽微な建設工事として 許可がなくても請け負えるとされています。 税の扱いや材料費の数え方で結果が変わりますので、事前に管轄の窓口へご確認ください。
屋外広告業の登録は、地域ごとの条例で定められています。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 有効期間と更新の周期も、その地域の定めによります。
届出や許可の書類を誰が出すのかも、この段階で決めます。 代行を頼めるかどうか、費用に含まれるかどうか。 ここが宙に浮いたまま進むと、設置の日が動きます。 手続きの流れは屋外広告物の許可にまとめてあります。
加入しているかどうかだけでは足りません。 工事中に通行人や隣の建物へ損害が出たときに使えるのか、 取り付けたあとの落下も対象になるのか。この2つは別扱いのことがあります。
費用を年あたりに直し、取り戻すラインを計算する
合計額のままでは、安い1社に引っぱられます。年に割ってから見ます。
年あたりの費用 ÷ (客単価 × 粗利率) = 年に必要な新規客数
看板は一度付けると何年も残ります。合計額だけを見ると重く感じます。 比べる相手は、他社の見積ではなく1年ぶんの粗利です。
埋める数字は5つ
| 制作と取り付けの費用 | 見積の合計額。届出の代行費が含まれるかを分けて確かめます。 |
|---|---|
| 使う年数 | 何年もたせるか。素材と取り付け場所で変わります。 |
| 年の維持費 | 電気代、清掃、部材の交換。光る看板は電気代が乗ります。 |
| 客単価 | 1人が1回で使う金額。売上を客数で割れば出ます。 |
| 粗利率 | 売上から仕入れや材料を引いて残る割合。 |
体感できる単位まで落とす
費用を40万円、使う年数を8年、年の維持費を1万円と置きます。 400,000を8で割ると50,000円。これに10,000円を足して、年あたり60,000円です。
客単価を3,000円、粗利率を6割とします。 3,000に0.6を掛けて、1人あたり1,800円。 60,000を1,800で割ると33.33で、年に約33人です。 365を33.33で割ると10.95。およそ11日に1人、新しい客が増えればつり合います。
置いた金額は計算の置き方であり、相場ではありません。 自分の店の数字を入れて、もう一度計算してください。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめてあります。
3社の見積が並んだら、それぞれをこの式に通します。 高いほうが長く使えるなら、年あたりでは逆転することがあります。 使う年数を書いていない見積は、その場で尋ねてください。
頼んだあとの付き合い方を、記録で測る
2回目の依頼先は、1回目の記録が決めます。
問い合わせを送った日と、返事が来た日を書き留めます。見積の前に分かる唯一の手がかりです。同じ質問を3社に送れば、差はそのまま出ます。
工事が終わったら、最初の見積と実際の請求を並べます。増えた項目に説明が付いているかを見ます。差が出ること自体は珍しくありません。
取り付け後の写真、使った部材、保証の範囲。紙かデータで受け取れるかを確かめます。数年後に直すとき、この記録が費用を下げます。
点灯しない、音が出る、ゆがみが出た。伝えた日から見に来るまでの日数を記録します。2回目からは、この数字で判断できます。
取り付け直後と同じ位置から撮ります。色の抜け方、留め具のさび、汚れの付き方。1年で差が出るのは、材料と下地の処理です。
1つ目は、見積を受け取る前から始められます。
判断のタイミング
| 問い合わせから1週間 | 返事の速さと、聞き返しの中身。ここで候補が絞れます。 |
|---|---|
| 見積を受け取った時点 | 項目の分け方と、書かれていない作業の有無を見ます。 |
| 引き渡しの直後 | 約束した仕様との違いを、その場で書き出します。 |
| 1年 | 色あせ、留め具、汚れ。次に同じ会社へ頼むかの判断はここです。 |
記録は日付を付けて残します。 看板は数年に一度しか動かないため、記憶では次の判断に間に合いません。 紙1枚をファイルに入れておけば足ります。
噛み合わないときは、この順で疑う
- 1伝えた内容を書き直す
口で説明した条件が、相手に届いていないことがあります。1枚の紙にまとめ直すだけで、返ってくる見積が変わります。
- 2同じ条件で出し直してもらう
大きさ、素材、取り付け方が社ごとに違えば、金額は比べられません。1社の見積を基準にして、他社へ同じ条件で頼みます。
- 3現地を見てもらう
写真だけで出た金額は、工事の途中で動きます。現地調査を頼み、下地と搬入経路を見てもらいます。
- 4仕事を分けて頼む
デザイン、製作、取り付けを1社にまとめる必要はありません。得意な部分だけを頼む形にすると、話が通りやすくなります。
- 5依頼先の型を変える
求めている仕事と、相手の主な仕事がずれていることがあります。ここで初めて、別の型の会社を当たります。
- 6候補を入れ替える
上の5つを試したうえで決めます。相手を変えるのは、いちばん最後に置いてください。
並びは、費用のかからないものからです。 1番と2番は紙の書き直しで済み、3番も小さな出費で終わります。 相手を入れ替えるのは、最後に置いてあります。
よくある行き違い5パターン
どれも、相手を変えずに手を打てます。
| 行き違い | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 安い1社だけに頼んだ | 比べる基準が作れない | 同じ条件で、あと2社に声をかける |
| 条件を口で伝えた | 社ごとに違う前提で見積が出る | 大きさと素材を1枚の紙に書いて渡す |
| 写真だけで見積を取った | 工事の途中で金額が動く | 着工前に現地調査を頼む |
| 届出の扱いを決めていない | 設置日が後ろにずれる | 代行の有無を、見積の段階で決める |
| 引き渡しの記録を受け取らなかった | 数年後の修理で調べ直しになる | 写真と部材の一覧を、引き渡し時にもらう |
セルフチェックリスト
声をかける前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、決め直す余地があります。
- 頼む仕事を、動詞ひとつで書き出した
- 取り付ける先と、地面からの高さを書いた
- 電気の工事が付いてくるかを確かめた
- 期限を、開店日や催しの日から逆算して決めた
- 付ける場所の写真と、手描きの絵を用意した
- 自分の仕事に合う依頼先の型を選んだ
- 候補を3社に絞り、同じ条件で声をかけた
- 屋外広告業の登録について尋ねた
- 工事中の事故に備える保険の範囲を尋ねた
- 届出の代行が費用に含まれるかを確かめた
- 費用を年あたりに直し、必要な客数まで計算した
- 引き渡しで受け取る記録の中身を決めた
よくある質問
看板を頼むとき、最初に決めるべきことは何ですか?
候補は何社くらいがよいですか?
資格や登録は、どこまで確かめればいいですか?
選んだ会社が合っていたかは、いつ分かりますか?
すでに頼んでいる会社がある場合、どうしますか?
予算が限られるときは、何を優先しますか?
まとめ
依頼先を決めるときは、次の順序で進めます。
| 1 書き出す | 頼む仕事、取り付け先、高さ、電気、期限を紙にまとめる。 |
|---|---|
| 2 絞る | 依頼先の型を選び、同じ紙を3社に渡す。 |
| 3 確かめる | 登録、資格、保険、届出の担当を着工前に尋ねる。 |
| 4 計算する | 見積を年に割り、必要な客数まで落とす。 |
| 5 測る | 返事の速さと引き渡しの記録を残し、次の判断に使う。 |
この作業は、紙を1枚書いた時点で半分が終わります。 仕事の中身が決まれば、声をかける相手の型は自動的に決まります。 あとは同じ条件で並べ、年あたりに直すだけです。