不動産店舗の看板の作り方
面を配分する5ステップ
これから店舗を開く方、店頭の掲示を見直す方へ。 不動産の店は、掲げることになっている表示と、集客のための掲示が同じ面に集まります。 先に決めるのは、どの面に何を割り当てるかです。
店の前を通る人を6つに分け、届く情報量を決める手順/ 屋号の面と、物件の掲示を分けて配分する考え方/ 目の高さの帯の高さと、そこに収まる枚数の計算/ 事務所に掲げる表示と、屋外広告物の扱いの分け方/ 店頭の費用を年あたりに直し、必要な件数を出す計算/ 足を止めた人と、引き返した人を数える方法
店頭の面は、取り合いになります
不動産の店では、1つの面にいくつもの用件が集まります。 掲げることになっている表示、屋号、物件の紙、営業時間。 面の広さは決まっているので、割り当てを決めないと物件の紙が全部を覆います。
配分を決めないまま貼ると、こうなります。窓が紙で埋まり、中が見えないので入口の前で引き返される。 屋号の面に条件を載せたため、遠くから業種が読めない。掲示が上下に散らばり、 目の高さから外れた紙が読まれない。買い手向けの掲示ばかりで、売りたい人から声がかからない。
通る人を分け、面を配分し、掲げる表示を確かめ、 費用を年あたりに直し、足を止めた人を測る。 この5つで、どの面に何を出すかが決まります。
店舗を構えて仲介や売買を行う事業者を想定しています。 扱うのは、店頭の面の配分と、物件の前に立てる板の考え方です。 掲げることになっている表示の様式は変わりますので、管轄の窓口へご確認ください。
店の前を通る人を、6つに分ける
速度と目的が違えば、届く情報の量も変わります。
店の前に15分立って、通る人を数えます。 歩きと車の割合が分かれば、面の使い方は半分決まります。 物件の条件を読めるのは、歩いて立ち止まった人だけです。
- 1歩いて前を通る人
通勤、買い物のついで。速度が遅く、立ち止まれます。物件の紙を読むのはこの人です。
- 2車で通り過ぎる人
読めるのは屋号と業種まで。物件の条件を載せても届きません。
- 3地図を見て来た人
入口を探しています。屋号と入口の位置さえ分かれば入ります。
- 4物件を見に来た人
現地に立てた板を見て動きます。店頭ではなく、その土地の上での話です。
- 5近所に住んでいる人
売りたい人になり得ます。買い手向けの掲示だけでは声がかかりません。
- 6入るか迷って引き返す人
店の中が見えないと引き返します。掲示で窓を埋めるほど、この人が増えます。
数えるのは平日と休日の2回です。 通りに面した店では、時間帯によって歩きと車の比率が入れ替わります。 車が多い通りなら、物件の紙を増やしても読まれません。
6つ目を見落とさないでください。 入るか迷って引き返す人は、数えないと存在に気づけません。 扉の前まで来て戻る動きを、意識して見ます。
面ごとに役割を割り当てる
面は6つに分かれます。1つの面に2つの役割を持たせません。
屋号と業種の2つだけを載せます。車からも歩きからも、まずここを探します。条件や物件の情報を混ぜると読めなくなります。
床から1,200〜1,700mmの範囲です。立ち止まった人が読む場所で、物件の紙を貼るのはここに限ります。上下は空けておきます。
扉の位置、営業時間、休みの日。迷っている人がここで判断します。掲示で隠さないでください。
窓の一部を空けたままにします。人がいるかどうかが外から分かると、入口の前で止まる人が減ります。
買い手向けの掲示に埋もれがちです。1枚だけ、別の高さに独立して置きます。
その土地や建物の前に置くものです。店頭とは別に、土地の持ち主の承諾と屋外広告物の扱いが関わります。
いちばん守るべきは、中が見える面です。 紙を貼れる場所が空いていても、そこは埋めないでください。 入るかどうかを決めるのは、条件ではなく店の中の様子です。
目の高さの帯を測る
立ち止まった人が無理なく読めるのは、床から1,200〜1,700mmの範囲です。 1,700から1,200を引くと500mm。ここが紙を貼る帯になります。 帯の外に貼った紙は、見上げるか、かがまないと読めません。
| 項目 | 値 | 出し方 |
|---|---|---|
| 帯の高さ | 500mm | 1,700から1,200を引いた値 |
| A4を横に置く | 2段 | 500 ÷ 210 = 2.38 |
| A3を縦に置く | 1段 | 500 ÷ 420 = 1.19 |
| 読める枚数 | 3〜10枚 | 足を止める時間から逆算 |
A4を横に置くと高さは210mmです。500を210で割ると2.38なので、2段が入ります。 A3を縦に置くと420mmで、500を420で割ると1.19。1段だけです。 大きい紙にすると、貼れる枚数は目に見えて減ります。
読まれる枚数から、貼る数を決める
店頭で足を止める時間は、およそ10〜20秒です。 紙1枚に目を通すのに2〜3秒かかります。 10を3で割ると3.3、20を2で割ると10。読まれるのは3〜10枚までです。
足を止める20秒 ÷ 1枚2秒 = 10枚
20枚貼っても、読まれる数は増えません。増えるのは、諦めて通り過ぎる人です。 枚数を絞り、入れ替えで新しさを出すほうが効きます。 窓ガラスへの貼り方は窓ガラス看板の作り方にまとめてあります。
買い手向けの掲示と同じ帯に混ぜると、埋もれて読まれません。 帯の上か下に、1枚だけ別に置いてください。 周りに何も貼らないことが、この1枚を読ませる条件です。
掲げる表示と、届出が要る看板を分ける
確かめるのは5つです。事務所の側と、屋外の側に分かれます。
不動産を扱う事業者には、事務所に掲げることになっている表示があります。 これは集客の掲示とは別枠で、面を確保しておく必要があります。 様式や掲げ方には定めがありますので、事前に管轄の窓口へご確認ください。
| 事務所に掲げる標識 | 定められた様式があります。掲げる場所と大きさも決まっています。 |
|---|---|
| 報酬の額の掲示 | 事務所に掲げることになっています。様式は窓口でご確認ください。 |
| 屋外に出す看板 | 屋外広告物の扱いがあります。届出や許可が要る場合があります。 |
| 窓の内側からの掲示 | 外から見える掲示は、屋外広告物として扱われることがあります。 |
| 現地に立てる板 | 土地の持ち主の承諾が先です。そのうえで屋外広告物の扱いを確かめます。 |
室内に貼ったものでも、外から見えれば屋外広告物として扱われることがあります。 県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、窓口も変わります。 貼る面積が決まった時点で問い合わせてください。
物件の前に立てる板は、店頭とは別の手続きになります。 先に土地の持ち主の承諾を取り、そのうえで屋外広告物の扱いを確かめます。 道路にかかる位置なら、さらに別の窓口が関わります。 手続きの流れは屋外広告物の許可にまとめてあります。
物件の条件をどう書くかについては、看板とは別の決まりが関わります。 誇張にあたる表現や、必要な事項の記載漏れが問題になることがあります。 掲示の文面は、扱いをご確認のうえ作成してください。
費用を年あたりに直し、取り戻すラインを計算する
取引の件数が少ない業種では、1件の重みが大きくなります。
年あたりの費用 ÷ 1件あたりの粗利 = 年に必要な件数
飲食や物販とは、式の後ろが変わります。 1人あたりではなく、1件あたりで割ります。
埋める数字は5つ
| 店頭の看板の費用 | 屋号の面と、掲示の枠を分けて出してもらいます。 |
|---|---|
| 使う年数 | 屋号の面は長く、掲示の枠は入れ替えを前提に短く見ます。 |
| 年の維持費 | 照明の電気代、掲示の印刷代、貼り替えの手間。 |
| 1件あたりの粗利 | 取引1件で残る額。件数の少ない業種ほど、1件の重みが大きくなります。 |
| 店頭からの割合 | 問い合わせのうち、店の前を通って来た人の割合。 |
体感できる単位まで落とす
店頭の看板一式を50万円、使う年数を8年、年の維持費を2万円と置きます。 500,000を8で割ると62,500円。これに20,000円を足して、年あたり82,500円です。
1件あたりの粗利を12万円とします。 82,500を120,000で割ると0.6875で、年に1件に届きません。 365を0.6875で割ると531。およそ1年5か月に1件、取引が増えればつり合います。
置いた金額は計算の置き方であり、相場ではありません。 自分の店の数字を入れて、もう一度計算してください。 掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめてあります。
屋号の面と、掲示の枠は使う年数が違います。 屋号は長く残り、掲示の枠は入れ替えを前提にします。 1つにまとめて見積もると、年あたりの数字がずれます。
足を止めた人と、引き返した人を測る
来店した数だけでは、掲示の善し悪しは分かりません。
窓の前で立ち止まった人を、時間を決めて数えます。1日15分で足ります。天気と曜日を書き添えれば、月をまたいで比べられます。
扉の前まで来て戻る人がいます。この数は、中の見えなさを表します。掲示を1枚外すだけで減ることがあります。
「何を見て来られましたか」と最初に聞きます。店頭か、地図か、紹介か。3つに分けて数えるだけで十分です。
物件の前に立てた板を見た人と、店頭を見た人は別の動線です。問い合わせの記録で分けておくと、次にどちらへ費用をかけるか決まります。
紙が古いままだと、店ごと動いていないように見えます。貼り替えた日を控え、間隔が空いていないかを月末に確かめます。
2つ目を数え始めると、掲示を減らす判断がしやすくなります。
判断のタイミング
| 最初の2週間 | 足を止める人の数を毎日数えます。掲示の位置はここで直せます。 |
|---|---|
| 1か月 | 来店のきっかけを集計します。店頭の割合が見えます。 |
| 3か月 | 季節で人の流れが変わります。時間帯ごとの差もここで出ます。 |
| 1年 | 色あせと、周りの店の入れ替わり。掲示の枠ごと見直します。 |
数えるのは同じ時間帯にそろえてください。 朝と夕方では通る人の目的が違います。 比べる相手は先週の同じ曜日です。
立ち止まらないときは、この順で疑う
- 1掲示の高さをそろえる
貼り直すだけです。目の高さの帯から外れた紙は読まれません。上下に散らばっているなら、まず帯に集めます。
- 2枚数を減らす
貼るほど読まれなくなります。10枚を超えているなら、半分に減らして残りを入れ替え制にします。
- 3窓の一部を空ける
中が見えない店は、入口の前で止まる人が増えます。掲示を外して視線の通り道を作ります。
- 4屋号の面から情報を削る
遠くから見つける面に条件を載せていると、屋号が読めません。2つに絞ります。
- 5売りたい人向けの面を独立させる
買い手向けの掲示に混ぜると埋もれます。別の高さに1枚だけ置きます。
- 6看板を作り直す
上の5つを試したうえで決めます。作り直しは、いちばん最後に置いてください。
並びは、費用のかからないものからです。 1番から3番までは、紙を貼り直すだけで済みます。 看板そのものを作り直すのは、最後に置いてあります。
よくある行き違い5パターン
どれも、作り直さずに手を打てます。
| 行き違い | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 窓を掲示で埋めた | 中が見えず、入口で引き返される | 視線の通る帯を1本空ける |
| 屋号の面に条件を載せた | 遠くから業種が読めない | 屋号と業種の2つに削る |
| 掲示を上下に散らして貼った | 帯から外れた紙が読まれない | 床から1,200〜1,700mmに集める |
| 買い手向けの掲示だけを出した | 売りたい人から声がかからない | 別の高さに1枚だけ独立して置く |
| 現地の板を承諾なしに立てた | 外すことになり、費用が二重にかかる | 土地の持ち主の承諾を先に取る |
セルフチェックリスト
業者に相談する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、決め直す余地があります。
- 店の前を通る人を、歩きと車に分けて数えた
- 遠くから見つける面に、屋号と業種だけを載せた
- 掲示を貼る帯の高さを、床から測って決めた
- 帯に貼る枚数を10枚以内に収めた
- 窓の一部を空け、中が見える状態を保った
- 入口の位置と営業時間を、掲示で隠していない
- 売りたい人に向けた面を、別の高さに独立して置いた
- 事務所に掲げる標識の様式を、窓口で確かめた
- 窓の内側からの掲示が屋外広告物にあたるかを尋ねた
- 現地に板を立てる前に、土地の持ち主の承諾を取った
- 費用を年あたりに直し、必要な件数まで計算した
- 来店した人に、来たきっかけを尋ねている
よくある質問
店頭の看板は、何から決めればいいですか?
物件の紙は、どの高さに何枚まで貼れますか?
掲げることになっている表示はありますか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでに掲示を貼っている場合、どこから直しますか?
予算が限られるときの優先順位は?
まとめ
店頭の面を決めるときは、次の順序で進めます。
| 1 分ける | 前を通る人を6つに分け、歩きと車の割合を数える。 |
|---|---|
| 2 配分する | 面ごとに役割を割り当て、帯の枚数を計算する。 |
| 3 確かめる | 事務所に掲げる表示と、屋外広告物の扱いを分ける。 |
| 4 計算する | 費用を年に割り、必要な件数まで落とす。 |
| 5 測る | 足を止めた人と引き返した人を数え、掲示から直す。 |
この作業は、窓の紙を1枚はがした時点で半分が終わります。 面の取り合いを整理すれば、屋号も掲示も同時に読まれます。 減らすほど、残した情報は届きます。