動物病院・ペットサロンの看板
飼い主に伝える5ステップ
これから動物病院やサロンの看板を作る方へ。ここへ来る人には、ひとつ特徴があります。 手がふさがっていて、しかも急いでいることが多いのです。 読める量には限りがあります。
看板を読む人が6つに分かれること/ 面に載せる項目を5つに絞る基準/ 料金や施術の一覧を道路側に載せない理由/ 動物を抱えたまま歩く区間の作り方/ 読ませたい距離から必要な文字の高さを出す方法/ 再来を含めて必要な新規の飼い主数を出す式/ 反応が薄いとき、費用をかけずに疑う順序
ここへ来る人は、手がふさがっています
動物を扱う施設の看板で最も多いのが、対応できることを全部載せたいという要望です。 診療の科目、施術の種類、料金、対応する動物。伝えたいことは確かにたくさんあります。 ところが読む側は、動物を抱えたまま立っています。
そこを考えずに作ると、こうなります。項目が多すぎて、施設の名前まで目が届かない。 対応する動物が書かれておらず、電話で確認されてから来る。 駐車場の案内が入口の面にあり、車の人が建物の前まで来てしまう。 閉まっている時間に来た人が、そのまま帰ってしまう。
読む人を分け、項目を絞り、動線を作り、費用を計算し、経路を測る。 この5つを順に埋めれば、面の数を増やさずに伝わります。
動物の診療を行う施設が広告として掲げられる事項には、法令上の制限があります。
名称の書き方、診療科目の示し方、専門性をうたう表現。いずれも確認が要る領域です。
これとは別に、屋外広告物としての大きさや設置場所の制限もあります。
※ 制度は改正されることがあります。掲出の前に管轄窓口へご確認ください。
看板を読む人を分ける
読める量は、その人が置かれている状況で決まります。
動物の具合が悪く、余裕がありません。読めるのは名称と、いま開いているかどうかだけです。文字を大きくする一点で決まります。
引っ越してきた人、初めて動物を迎えた人。対応する動物の種類と、時間帯を見ています。
近くまで来て、建物と駐車場を探しています。必要なのは建物の名前と、車を止める場所の2つです。
動物を連れて歩いています。立ち止まれる場所があるかどうかで、読める量が変わります。
仕上がりと、預ける時間の長さを知りたがります。診療と施術を分けて示すと迷いません。
開いていない時間に来ます。閉まっているときの案内が1枚あるだけで、次につながります。
6つのうち、面の設計を左右するのは1番目です。 急いで駆け込む人が読めるのは、施設の名称と、いま開いているかどうか。それだけです。 この2つが遠くから読めない看板は、いちばん大事な場面で役に立ちません。
車で来る人も同じです。時速40kmなら1秒で11m進みます。 2秒間そちらを見ていられるとして、その間に22m。 読み取れるのは2語ほどです。道路側の面で語数を増やしても、届きません。
必要な文字の高さは、読ませたい距離のおよそ250分の1から500分の1が目安です。 30m先から読ませたいなら、30,000mm ÷ 500 で60mm、30,000mm ÷ 250 で120mm。 つまり6cmから12cmになります。 書体、背景との明暗差、照明の有無で変わるため、迷う場合は大きいほうを選んでください。
面に載せる項目を絞る
道路側の面には5つまで。残りは入口へ移します。
| 項目 | 扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 施設の名称 | 必ず載せる | いちばん大きい文字にする |
| 対応する動物 | 必ず載せる | 犬と猫だけか、他も診るか |
| 診療または営業の時間 | 必ず載せる | 午前と午後で切れるなら両方書く |
| 休診日 | 必ず載せる | 曜日で書く。日付で書かない |
| 電話番号 | 必ず載せる | 離れた位置から読める大きさで |
| 予約の要否 | 面の余白があれば | 予約制なら必ず出す |
| 駐車場の位置 | 別の面に置く | 入口の面には載せない |
| 料金と施術の一覧 | 面に載せない | 入口の掲示か窓の中に置く |
上の5つで、急いでいる飼い主の用は足ります。 対応する動物を書く行は、ここに固有の項目です。 犬と猫だけを診るのかどうかは、電話で最も多く聞かれる質問です。
表の最後の2行に注意してください。料金や施術の一覧は、道路側に置くと逆に効きます。 項目が増えるほど、施設の名称が読まれなくなるからです。 一覧は入口の掲示か、窓の内側へ移してください。
診療時間、休診日、料金。いずれも数年のうちに変わります。 これらを面に刷り込むと、変えるたびに作り直しになります。 小さな貼り替えの面を1つ用意し、そこへ集めてください。 削り方は看板の文言の決め方で扱っています。
動物を連れた動線を作る
片手がふさがっている前提で、道を作ります。
| 駐車場から入口まで | 抱えたまま、あるいは引いたまま歩く区間です。手がふさがっている前提で作ります。 |
|---|---|
| 扉の前 | 押すか引くかが分からないと止まります。片手で開ける人がいます。 |
| 待つ場所の分かれ道 | 犬と猫、あるいは診療と施術で分けているなら、扉の前で示します。 |
| ケージの置き場 | 床に置いてよい場所を示すと、待合の流れが整います。 |
| 閉まっているときの案内 | 時間外の連絡先を、外から読める位置に置きます。 |
| 連れて入れない範囲 | 入ってよい範囲を先に示すと、注意する回数が減ります。 |
いちばん効くのが1行目です。車を止めた場所から入口まで、動物を抱えて歩いてみてください。 手がふさがった状態で迷う地点が、案内の要る地点です。 荷物を持って歩くのとは、見え方がまるで違います。
駐車場の位置は、道路側で示します。入口の面に混ぜると、車の人が建物の前まで来てしまいます。 車を止める場所の案内は駐車場・入口の案内サインの作り方にまとめています。
時間外に来た飼い主は、そこで判断を迫られます。
連絡先が外から読めれば、電話がかかってきます。何もなければ、そのまま帰ります。
夜に光る必要はありません。街灯の下で読める位置にあれば足ります。
※ 夜間の対応がある施設では、明るさの取り方も併せて検討してください。
明るさの決め方は電飾看板・LED看板の選び方で扱っています。
費用と回収ラインを計算する
1回きりではなく、年に何度来るかまで含めて見ます。
1回あたりの粗利 × 年の来院回数 = 1人あたり年の粗利
年のコスト ÷ 1人あたり年の粗利 = 年に必要な新規の飼い主数
1回あたりの単価を6,000円、粗利率を5割としましょう。1回あたりの粗利は3,000円です。 年に3回来るなら、1人あたり年の粗利は9,000円になります。
看板にかかる年のコストが120,000円だとします。 120,000 ÷ 9,000 で、およそ13.3。年に14人の新しい飼い主で釣り合います。 月に直すと、ひと月に1人強という計算です。
なお6,000円、3回、120,000円は、式の動きを見るための仮の置き方です。 自分の数字を入れて計算してください。 通い続ける割合が高い施設ほど、看板にかけられる額は大きくなります。
費用を左右するところ
| 面の数 | 道路側、入口、駐車場、時間外の案内。数がそのまま費用になります。 |
|---|---|
| 光らせるかどうか | 夜間の対応があるなら、点灯の時間が電気代に効きます。 |
| 書き換える頻度 | 診療時間を面に刷り込むと、変えるたびに作り直しになります。 |
| 道路からの距離 | 離れているほど、文字を大きくする必要があります。 |
| 駐車場の位置 | 建物と離れていると、案内の面が別に要ります。 |
3行目が、あとで効いてきます。 時間を面に刷り込むと、変えるたびに作り直しです。 掲載社が公式サイトで公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
来院までの経路を測る
来院の数より、その手前の電話の数が先に動きます。
「何を見てお越しになりましたか」。問診票に1行足すだけで、経路が毎月たまります。費用はかかりません。
来院の手前にある数字です。面に出した電話番号が読めているかは、ここに出ます。
面ごとに別のあて先を用意すると、どの面が読まれているかまで分かります。
閉まっているときの案内が機能しているかが分かります。
朝の散歩の時間に10分、外の様子を見ます。数えるのではなく、どこで止まるかを見ます。
問診票の1行が、いちばん安い測定の道具です。集めていなければ、判断そのものができません。
判断のタイミング
| 1か月 | 電話の問い合わせが動いたかを見ます。来院はまだ判断できません。 |
|---|---|
| 3か月 | 初診の経路に、看板が現れているかを見ます。 |
| 半年 | 季節の影響を除いて比べられます。前年の同じ時期と並べます。 |
| 1年 | 面ごとの効き方を比べ、減らす面を決めます。 |
| 時間を変えたとき | 面に刷り込んだ時間が残っていないかを確かめます。 |
1か月で来院の数を見て判断するのは早すぎます。 かかりつけを変える判断には時間がかかり、覚えてから来るまで日が空きます。 まず電話の問い合わせを見て、そのあとで初診の経路を見てください。
効いていないとき、この順で疑う
- 1聞き取りをしているか疑う
問診票に経路の欄がなければ、効いていないのか分かっていないだけなのかを区別できません。1行足すだけで始まります。
- 2夜と雨の日の見え方を疑う
暗い時間と、雨で視界が悪い日に外から見ます。急ぐ飼い主が来るのは、そういう日です。
- 3駐車場からの道を疑う
車を止めた場所から、動物を抱えて歩いてみます。手がふさがった状態で迷うなら、案内が足りません。
- 4載せている項目の数を疑う
項目が多いほど、1つも読まれなくなります。5つまでに絞れるかを見ます。
- 5名称と対応動物が読めるかを疑う
離れた位置から、施設名と何を診るかが読めるか。文字の高さが足りていない場合があります。
- 6面を増やす、作り替える
ここまでで動かないときに検討します。費用が最も大きいので、最後に置きます。
上から順に、費用のかからないものが並んでいます。 1番から3番までは、歩いて確かめるだけです。4番は載せる項目を減らすだけで済みます。 面を作り替えるのは、いちばん最後に置いてください。
よくある失敗5パターン
いずれも、発注の前に気づけば直せます。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 診療時間を面に刷り込んだ | 時間を変えるたびに作り直しになる | 時間は貼り替えられる面に置く |
| 料金や施術の一覧を道路側に載せた | 項目が多く、名称まで読まれない | 一覧は入口の掲示か窓の中に移す |
| 対応する動物を書かなかった | 診てもらえるか分からず、電話で確認される | 犬と猫だけかどうかを面に出す |
| 駐車場の案内を入口の面に混ぜた | 車で来た人が入口の前まで来てしまう | 駐車場の案内は道路側に別で置く |
| 閉まっているときの案内を置かなかった | 時間外に来た飼い主が次につながらない | 時間外の連絡先を外から読める位置に置く |
セルフチェックリスト
図面が出てきた段階で使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 離れた位置から、施設の名称が読める
- 対応する動物の種類を、面に出している
- 診療または営業の時間を、外から読める
- 休診日を曜日で書いている
- 電話番号が、離れた位置から読める大きさになっている
- 面に載せた項目が5つ以内に収まっている
- 料金や施術の一覧を、道路側の面に載せていない
- 時間や料金の数字を、貼り替えられる面に置いている
- 駐車場の位置を、道路側で示している
- 車を止めた場所から入口まで、動物を抱えて歩いてみた
- 閉まっているときの連絡先が、外から読める
- 問診票に「何を見て知ったか」の欄がある
よくある質問
動物病院の看板は、何から決めればいいですか?
文字はどれくらいの大きさが必要ですか?
広告に制限はありますか?
効果はいつ判断すればいいですか?
すでに看板を出していて、反応が薄い場合は?
予算が限られる場合、何を優先しますか?
まとめ
動物を扱う施設の看板は、次の順序で決めていきます。
| 1 分ける | 急ぐ人と、探している人で読める量が違うと知る。 |
|---|---|
| 2 絞る | 道路側の面は5項目まで。一覧は入口へ移す。 |
| 3 作る | 動物を抱えて歩き、迷う地点に案内を置く。 |
| 4 計算する | 年の来院回数まで含めて、必要な人数を出す。 |
| 5 測る | 問診票に1行足し、電話の件数から追う。 |
載せるものを減らすほど、名称が読まれます。 急いで来る飼い主が探しているのは、そこだけです。 まず車を止める場所に立ち、施設の名前が読めるかを確かめるところから始めてください。