工事現場の看板ガイド
仮囲いに何を掲げるか5手順
これから工事を始める方へ。 現場に掲げるものは、着工の前に紙の上で決まります。 分けるのは、法令で掲げる表示と、自分の判断で出す告知の2つだけです。
法令で掲げる表示と、自分の判断で出す告知を分ける考え方/ 仮囲いと足場のどの面に何を割り振るかの決め方/ 読ませたい距離から、必要な文字の高さを出す早見/ 屋外広告物の扱いと、道路にかかるときの窓口の数え方/ 掲示にかかる費用を工事日数で割り、取り戻すラインを出す計算/ 完了日に外すものと、効果の測り方
掲げるものは、法令の分と自分の分に分かれます
これから工事を始める方から届く質問に「現場に何を出せばいいですか」というものがあります。 答えは2つの筋に分かれます。法令で掲げることになっているものと、自分の判断で出すものです。 この2つを先に分けておくと、あとの手戻りがなくなります。
分けないまま進むと、こうなります。元請が用意する表示と、自分で出す告知を同じ面に混ぜてしまう。 仮囲いが立ってから、貼れる場所が残っていないことに気づく。 文字が小さく、前を通る人に読まれないまま工期が終わる。 工事が終わったあと、外す段取りを誰も決めていない。
必要な表示を洗い出し、出す面を割り振り、掲げ方の条件を確かめ、費用を工事日数で割り、 終わったあとの扱いを決める。 この5つを順に埋めれば、元請にも看板業者にも同じ話ができます。
ここで書くのは、現場に掲げるものの決め方だけです。 工事そのものの進め方や、請負契約の結び方は扱いません。 法令で掲げる表示は工事の種類と規模によって変わりますので、 発注の前に元請と、管轄の窓口へご確認ください。
現場に必要な表示を洗い出す
出どころの違う2種類を、混ぜずに書き出します。
法令で掲げることになっているもの
| 建設業の許可を示す表示 | 工事を請け負う側が掲げるものです。元請が用意するのが通例になっています。 |
|---|---|
| 労災保険の関係が成立している旨の表示 | 保険の関係が成立していることを、現場で示すための表示です。 |
| 建築の計画を知らせる表示 | 建築の計画について、着工の前から掲げることになっているものがあります。 |
| 作業の種類ごとの表示 | 足場や重機を使う作業では、別に掲げる表示が加わります。 |
| 現場を管理する人を示す表示 | 誰が現場を見ているかを示すものです。連絡先を並べて書く形もあります。 |
これらを用意するのは、工事を請け負う側です。 ただし、どれが掲げられるかは着工の前に元請へ尋ねてください。 面をどれだけ使うかが、そこで決まります。
上に並べたのは、現場で見かける表示の類型だけです。
条文の番号や様式の名前を、ここで断定することはできません。
何を、いつから掲げるかは、元請と管轄の窓口へお尋ねください。
自分の判断で出すもの
何の工事か、いつまでか。この2つがあるだけで、前を通る人の受け取り方が変わります。
開く時期と業種を出します。日が固まっていなければ「◯月ごろ」で構いません。あとで貼り替えられる作りにしておきます。
音や車の出入りについての断りです。連絡先を1つ添えておくと、苦情が現場へ直接届きます。
歩く人がどちら側へ回るかを示します。矢印1つで足ります。文を足すほど、立ち止まる人が増えて危なくなります。
4つ全部を出す必要はありません。工期が3か月に満たないなら、再開の告知1つに絞る手もあります。
仮囲いと足場に、何をどう出すか決める
面は限られています。1つの面に3行までが目安です。
いちばん人目に触れる面です。ここに置くのは、再開を知らせる内容だけにします。
車と人が交差する場所です。告知は端へ寄せ、視線をふさがない位置に置きます。
高い位置から見える面です。遠くから読ませる文字を、大きく1行だけ入れます。
法令で掲げる表示を集める場所です。通行者に向けた告知とは分けておきます。
読ませたい距離から、文字の高さを出す
必要な文字の高さは、距離から計算できます。 視認距離の1/250から1/500が、文字の高さの目安です。 分母が小さいほど、文字は大きくなります。 書体、背景との色の差、明るさによって前後します。
| 読ませたい距離 | 文字の高さ | その距離で読ませる内容 |
|---|---|---|
| 3m(仮囲いの前を歩く) | 0.6〜1.2cm | 連絡先や工期の細かい行 |
| 5m(歩道の反対の端) | 1〜2cm | 業種と、再開する時期 |
| 10m(道路の向かい側) | 2〜4cm | 見出しにあたる1行 |
| 20m(車で通り過ぎる) | 4〜8cm | 屋号だけ |
| 50m(先の交差点から) | 10〜20cm | 大きな面の主題 |
仮囲いの前を歩く人は、3mから5mの範囲で読みます。 つまり、通り側の面に必要な文字は1cm前後から始まります。 車で通り過ぎる人にも読ませたいなら、その行だけ4cm以上に上げます。 1つの面に、この2つの大きさを同居させないでください。
仮囲いの高さは1.8m以上とされることが多く、これも一般的な目安です。 おとなの目の高さは、おおむね地上1.4mから1.6mにあります。 読ませたい行は、この帯に置くと届きます。 実際の寸法は、現場の条件と元請の仕様で決まります。
載せる行は3つまでにしてください。 業種、再開する時期、連絡先。この3つが埋まれば、前を通る人が次に取る行動は決まります。
掲げ方と設置の条件を確かめる
尋ねる窓口は、1か所とは限りません。先に数えます。
工事の告知として出す掲示には、屋外広告物の決まりがかかることがあります。 かかるかどうかは、出す場所、面の大きさ、掲げる期間で変わります。 期間が限られていても、届け出が要る場合があります。
この決まりは地域ごとに置かれています。 県が条例を定めている地域と、市が独自の条例を持つ地域とに分かれます。 どちらに当たるかは、現場の住所で決まります。 窓口の見つけ方と、測って伝える項目は屋外広告物の許可にまとめました。
道路にかかるときは、窓口が2つになる
仮囲いや足場が道路にはみ出す場合、話す先は2つに分かれます。 道路を管理する側と、警察の側です。 前者は道路を占めて使うことを、後者は道路を使う行為を扱います。 どちらか一方だけでは足りません。
この2つは、工事の手続きの中で元請が取ることが多い部分です。 看板だけを別に出す場合は、誰が取るかを先に決めてください。
掲げる位置と期間を決める
位置は、地面からの高さで決まります。 低すぎると人の背に隠れ、高すぎると見上げさせます。 読ませたい行を目の高さの帯に置き、遠くから読ませる行だけを上へ回してください。
期間は、着工から完了までの日数で数えます。 途中で内容を貼り替える予定があるなら、その日も先に決めておきます。
屋外広告物の扱い、道路にかかるときの手続き、掲げてよい期間。
この3つは地域ごとに書き方が違います。
ここに書けるのは、窓口が分かれるという一般論までです。
着工の前に、元請と管轄の窓口へお尋ねください。
工事期間の費用と、取り戻すラインを計算する
一式の金額のままでは、判断の材料になりません。
費用は、印刷と取り付け、そして外す手間まで含めて数えます。 それを工事日数で割ります。 工期が長いほど、1日あたりの重さは軽くなります。
置いて計算してみます。掲示にかかる費用を60,000円、工事日数を120日とします。 60,000 ÷ 120 で、1日あたり500円です。 なお60,000円は計算の置き方であって、相場ではありません。
取り戻すラインを出す
新規客数 × 客単価 × 粗利率 = 取り戻した額
同じ60,000円で続けます。客単価を2,000円、粗利率を0.6と置きます。 2,000 × 0.6 は1,200円です。60,000 ÷ 1,200 で50人になります。 開店後に50人が来れば、掲示の費用は戻ります。
開店から1か月で50人なら、1日に2人足らずです。 50 ÷ 30 は約1.7人になります。 この人数を軽いと見るか重いと見るかは、業種と立地で変わります。
埋める数字は5つ
| 掲示にかかる費用 | 印刷、表示板、取り付け、外す手間まで合計します。 |
|---|---|
| 工事日数 | 着工から完了までの日数です。カレンダーの日で数えます。 |
| 客単価 | 開店したあと、1人が1回に払う見込みの額です。 |
| 粗利率 | 売上から原価を引いて残る割合です。0.6のように小数で置きます。 |
| 開店後の新規客数 | 工事中の掲示を見て来た人の数です。数え方は次の章に。 |
短い工事ほど、1日あたりの額は重くなります。 工期が1か月に満たないなら、貼るだけで済む掲示に絞る考え方があります。
掲載社が公開している金額は看板の費用に種類別にまとめました。 見積もりを取る前の材料としてお使いください。
工事後に残すものを決め、効果を測る
外す日と、振り返る日を先にカレンダーへ入れます。
工事の中身を知らせる掲示と、通行を導く表示です。残っていると、まだ工事が続いているように見えます。
開く時期を知らせる掲示です。仮囲いが取れたあと、扉や窓へ移せる作りにしておくと無駄になりません。
掲げた面の写真と、原稿のデータです。本設の看板を決めるときの材料になります。
外す担当を決めていないと、掲示は残り続けます。着工の日に、外す日と担当者を紙へ書いてください。
効果を測る
| 工事中の問い合わせ件数 | 電話とメールを、日付だけ控えます。紙のメモ1枚で足ります。 |
|---|---|
| 掲示の前を通る人の数え取り | 掲示の前に立ち、10分だけ数えます。時間帯を変えて3回。 |
| 開店後のアンケート | 「どこで知りましたか」の1問だけ、会計のときに尋ねます。 |
| 二次元コードの読み取り数 | 掲示に印刷したコードが読まれた回数を、日別に並べます。 |
| 交流サイトでの言及 | 現場の写真や屋号が投稿された数です。屋号で検索して数えます。 |
費用のかからないものから並べています。 上の2つだけでも、掲示が読まれているかは見えます。
いつ判断するか
| 工事開始から2週間 | 読めているかだけを見ます。文字の大きさと貼る位置を直す時期です。 |
|---|---|
| 工事の中間 | 問い合わせが増えているかを見ます。行が多いと感じたら1行削ります。 |
| 開店の直後 | どこで知ったかを尋ね始めます。掲示の効き目が最初に表へ出ます。 |
| 開店から1か月 | 新規客数を集計し、取り戻すラインと並べます。 |
最初の見直しは、工事開始から2週間に置いてください。 この時期なら、貼り替えだけで手が打てます。
届いていないと感じたら、この順で疑う
- 1文字の大きさを測り直す
読ませたい距離を歩測し、1/250から1/500で必要な高さを出します。メジャーと原稿だけで済みます。
- 2貼る位置の高さを変える
主な行が目の高さの帯から外れていないかを見ます。貼り替えなら費用はほとんど動きません。
- 3書いてある内容を削る
1面の行を3つまでに絞ります。データを差し替えて刷り直す範囲で収まります。
- 4出す面を増やす
通りに面した別の面や、角の位置に足します。ここから面積の分だけ費用が増えます。
- 5素材と作りから見直す
色の差、光の当たり方、表示板の種類まで戻ります。ここで初めて作り直しの見積もりを取ります。
上から順に、費用のかからないものが並びます。 1番と2番は現場でその日のうちに手が打てます。 作り直しは、いちばん最後に置いてください。
よくあるつまずき5パターン
どれも、着工の前なら紙の上で避けられます。
| つまずき | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 法令の表示と告知を同じ面に混ぜた | どちらも読まれず、掲げる位置も窮屈になる | 告知だけを通り側の面へ移す。貼り替えで足りる |
| 仮囲いができてから掲示を考えた | 貼れる面が残っておらず、位置を選べない | 仮囲いの図面が出た日に、面の割り振りを決める |
| 1つの面に情報を詰め込んだ | 立ち止まらないと読めず、歩く人に届かない | 行を3つまで削り、残りは連絡先に寄せる |
| 文字の高さを距離から出さなかった | 近づかないと読めない掲示になる | 歩測して高さを出し、見出しの行だけ拡大する |
| 外す段取りを決めていなかった | 完了後も工事中の表示が残り、開店が伝わらない | 完了日に外す担当を、着工の時点で決めておく |
セルフチェックリスト
元請に相談する前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、決め直す余地があります。
- 法令で掲げる表示を誰が用意するか、元請に尋ねた
- 自分の判断で出す掲示を、紙に書き出した
- 仮囲いのどの面に何を出すかを、図面の上で決めた
- 通りに面した面に載せる行を、3つまでに絞った
- 読ませたい距離を、現地で歩いて測った
- その距離から必要な文字の高さを出し、原稿に反映した
- 主な行を、目の高さの帯に入る位置へ置いた
- 屋外広告物の決まりがかかるかを、管轄の窓口に尋ねた
- 仮囲いや足場が道路にかかるかを、図面で確かめた
- 掲示にかかる費用を、工事日数で割ってみた
- 開店後に必要な新規客数を、客単価と粗利率から出した
- 完了日に外すものと、開店まで残すものを分けた
よくある質問
工事現場の看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさは、どう決めればいいですか?
工事中の告知にも、許可が要りますか?
仮囲いが道路にかかるときは、どこに聞きますか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
予算が限られるときは、何を優先しますか?
まとめ
工事現場の掲示は、次の順序で決まります。
| 1 洗い出す | 法令で掲げる表示と、自分で出す告知を分ける。 |
|---|---|
| 2 割り振る | 仮囲いと足場のどの面に、何を出すかを決める。 |
| 3 確かめる | 屋外広告物と道路の窓口を、着工前に数える。 |
| 4 計算する | 掲示の費用を工事日数で割り、必要な人数を出す。 |
| 5 残して測る | 外す日を決め、開店1か月の人数で振り返る。 |
この作業は、仮囲いの図面が出た時点で始められます。 面の割り振りと文字の高さは、図面と歩測だけで決まります。 原稿を1枚にまとめ、元請と看板業者へ同じものを見せてください。 やりとりが1往復で済みます。