看板のきほん / 2026年9月5日 更新 / 読了目安 約13分

看板の現地調査ガイド
発注前に測る5ステップ

これから看板を作ろうとしている方へ。 見積もりが後から動く原因の多くは、現地の条件が着工前に出そろっていないことです。 下地の種類、電源までの距離、遮るもの。 どれも、メジャーと携帯があれば自分で控えられます。

5手順決めてから測り直すまで
6持ち帰る数字
12項目発注前に見る点
この記事でわかること

見せたい相手から、視認距離を歩数で出す方法/ 視認距離と文字の高さの早見表/ 間口・高さ・出幅・上端の高さ、四つの測り方/ 下地の種類を、見た目と音で見分ける手がかり/ 写真5枚と寸法を、業者に渡す形にまとめる手順/ 月あたりの費用を、必要な新規客数に直す式/ 掲出後に同じ位置から測り直し、効かないとき疑う順序

現地の条件は、業者を呼ぶ前に自分で押さえられる

看板の相談で多いのが「まず見に来てほしい」というご依頼です。 ところが見てもらう前に自分で控えておくと、初回の打ち合わせで話が一段先へ進みます。

よくあるつまずきは、次の四つです。 正面からしか面を見ておらず、進行方向からは木や電柱に隠れていた。 壁の全幅で寸法を伝えたが、配管を避けると面が縮んだ。 下地の種類を伝えておらず、留め方が変わって日程が延びた。 昼だけ見て決めたため、夜に読めない面ができた。

どれも、発注の前にその場で確かめられます。 相手と位置を決め、寸法と下地を測り、電気と周囲を見て、渡す形にまとめ、掲出後に測り直す。 この五つを順に埋めます。

Step 1

見せたい相手と、見える位置を決める

寸法より先に決めます。ここが決まらないと、大きさが決まりません。

相手を片方に決める

歩く人か、車か。両方を同じ面で狙うと、どちらにも届かない大きさに落ち着きます。

進行方向に立つ

人や車が来る側から店を振り返ります。看板は正面ではなく、斜め前から見られています。

見え始める地点を探す

手前から歩き、建物の角や街路樹が切れる位置を探します。そこが読ませ始められる場所です。

そこまでの距離を歩測する

見え始める地点から面まで歩数を数え、歩幅をかけます。これが視認距離になります。

歩幅を先に出しておく

メジャーが届かない距離は、歩数で測れます。 自分の歩幅を1度だけ出しておけば、あとは数えるだけで済みます。

10歩ぶんをメジャーで測る → 6.5m
6.5 ÷ 10 = 1歩 0.65m
50m先まで → 50 ÷ 0.65 = 約77歩
20m先まで → 20 ÷ 0.65 = 約31歩

歩幅は靴と服装で数センチ動きます。 調査に行く格好のまま測ってください。

視認距離から、文字の高さを出す

必要な文字の高さは、割り算で出ます。

文字の高さ = 視認距離 ÷ 250 〜 視認距離 ÷ 500
50m先から読ませる → 50,000 ÷ 500 = 100mm
50,000 ÷ 250 = 200mm
10〜20cm
見せたい相手視認距離文字の高さ
正面を歩く人10m2〜4cm
先を歩く人20m4〜8cm
徐行する車30m6〜12cm
流れている車50m10〜20cm
幹線を走る車100m20〜40cm

幅があるのは、書体と明暗差と照明で読める距離が動くからです。 細い書体や、地の色に近い文字色なら、大きいほうへ寄せます。 面の大きさそのものの決め方は看板の大きさの決め方で扱っています。

車が相手なら、読める時間を数える

走っている車は、止まってくれません。 通り過ぎるまでの秒数が、そのまま読める量の上限になります。

時速40km = 40 ÷ 3.6 = 秒速11.1m
50m先から通過まで → 50 ÷ 11.1 = 約4.5秒
時速60km = 60 ÷ 3.6 = 秒速16.7m
100m先から通過まで → 100 ÷ 16.7 = 約6秒

この秒数のうち、面を見ている時間はごく一部です。 車が相手なら、面に載せるのは業種を示す一語と店名の二つまでにします。 電話番号は、走行中に控えられません。

Step 2

面の寸法と下地を測る

単位はミリでそろえます。センチと混ざると、桁の読み違いが起きます。

間口と高さ

壁の全幅ではなく、窓や配管を避けて実際に使える範囲を測ります。

出幅

壁から前へ出る寸法です。道へ突き出す形なら、歩道のどこまで届くかも測ります。

上端までの高さ

地面から面の上端まで。脚立で届くか、作業車が要るかがここで決まります。

避けるものの位置

雨どい、換気口、配管、避難はしご。面の中にあるものは寸法も控えます。

壁の端から端まで測っても、その全部は使えません。 使える範囲の四隅を先に決めてから、間口と高さを測ってください。

表示の面積を出しておく

面積は、手続きの要否を調べるときの手がかりになります。

間口3.6m × 高さ0.6m = 2.16㎡

面を複数出すなら、合計も控えます。 合計で見る決まりの地域があるためです。

下地の見当を付ける

留め方は下地で変わります。 見た目と、軽く叩いた音で当たりは付きます。

下地見た目の手がかりそのほかの手がかり
コンクリート灰色で継ぎ目が少ない詰まった重い音がする
ALC表面に細かい気泡があるパネルの継ぎ目が等間隔
サイディング板の継ぎ目とコーキング裏に空きがあり軽い音
タイル目地の格子が見える割れを避ける穴あけになる
金属パネル塗装面で継ぎ目が直線叩くと反響が残る
板目や節が見える傷みと下地の強さを見る

ここで断定する必要はありません。 継ぎ目や目地が写る距離で1枚撮り、判断は業者に渡します。 撮っておくだけで、着工してから留め方が変わる事態が減ります。

Step 3

電気と、まわりの条件を確かめる

面そのものより、周りのほうが見積もりを動かします。

電源の位置と距離

一番近いコンセントか分電盤から、面までを測ります。配線の経路が工事の範囲を決めます。

日なたと日陰の動き

面に影が落ちる時間を見ます。逆光の時間帯があると、昼でも読みにくくなります。

夜の明るさ

街灯とほかの店の光を見ます。明るい通りでは、光らせても目立たないことがあります。

光らせる予定がなくても、電源は確かめます。 後から照明を足すとき、距離が分かっていれば話が早く進みます。

確かめること見る時間帯控えること
影の落ち方朝と正午影が来る時間と方向
夜の見え方日没の1時間後街灯の位置と明るさ
隣の建物の窓窓が面に向いているか
樹木と電柱進行方向から重なる位置までの距離
標識と信号進行方向から視線が取られる位置
作業できる場所平日の昼車を停められるか

夜は、日没の1時間後に行きます。 空がまだ明るい時間だと、街灯の効き方が分かりません。 周りが明るい通りでは、光らせても埋もれることがあります。

隣の建物の窓が面に向いているなら、光の向きに気を配ります。 夜だけ光らせる、時間で消すといった手当ても、この時点で控えておきます。

寸法が固まったら、手続きの要否を調べる

屋外広告物としての扱いは、出幅、高さ、表示の面積、地域の区分によって変わります。 県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。 建物を借りているなら、面を使ってよいかを管理者にも確かめます。 電気を新たに引く作業は、資格を持つ人が行うものです。
※ 許可の要否と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。

Step 4

調べた内容を、業者に渡す形にまとめる

紙1枚と写真5枚です。それ以上は増やしません。

写真は、撮る場所を決めておくと迷いません。

  1. 1
    視認距離の地点から1枚

    見え始める場所に立って撮ります。看板が入る予定の面を、真ん中に入れます。

  2. 2
    進行方向から1枚

    人や車が来る側から、斜めに撮ります。遮るものが写り込むかを見ます。

  3. 3
    面の正面から1枚

    端から端まで入る位置で撮ります。メジャーを当てたまま撮ると寸法が伝わります。

  4. 4
    下地の寄りを1枚

    継ぎ目や目地が分かる距離まで近づきます。文字で説明するより早く伝わります。

  5. 5
    電源まわりを1枚

    コンセントか分電盤と、そこから面までの経路を撮ります。

寸法は手書きの図に書き込みます。 四角を1つ描き、辺に数字を入れるだけで通じます。

持ち帰る六つの数字

①見え始める地点から面までの視認距離/ ②使える間口/ ③使える高さ/ ④壁から前へ出る出幅/ ⑤地面から面の上端までの高さ/ ⑥一番近い電源から面までの距離。
書き写すときも、ミリのまま直しません。この六つがあれば、初回の相談で仕様の話に入れます。

金額が動くところを知っておく

見積もりの差は、次の六つから生まれます。

面の大きさ間口と高さの積です。面積が増えれば、材料も作業の時間も増えます。
下地の種類留め方が変わります。専用の金物や補強が要る場合があります。
上端までの高さ脚立で届くか、作業車を出すか。段取りがここで変わります。
電源までの距離配線の長さと経路で動きます。露出か隠すかでも差が出ます。
作業できる時間帯営業中に止められない場所なら、夜間や休みの日になります。
現場の周辺車を停められるか、資材を運べるか。搬入の条件が乗ります。

同じ大きさの看板でも、下地と高さが違えば段取りが変わります。 掲載社が公式サイトで公開している金額は、看板の費用に種類別にまとめています。

総額を、月あたりに割り直す

5年 = 5 × 12 = 60か月
総額180,000円 ÷ 60か月 = 月3,000円

この180,000円は相場ではありません。 割り算の動きを見るために置いた、仮の数字です。

何人来れば釣り合うかに直す

月あたりのコスト ÷ (客単価 × 粗利率) = 月に必要な新規客数
2,500 × 0.6 = 1,500
3,000 ÷ 1,500 = 月2人
30 ÷ 2 = 15日に1人

客単価2,500円、粗利率6割で置いた場合です。 15日に1人が新しく来れば、月3,000円と釣り合います。 総額だけを見ていると高く感じますが、月に直すと比べられる大きさになります。

金額も年数も、式の動きを見るための仮の置き方です。自分の店の数字に差し替えてください。

Step 5

掲出後に、同じ位置から測り直す

測り直す地点は、STEP1で決めた場所です。新しく探しません。

測り方は五つあります。 上から順に、手間が軽くなっています。

  1. 1
    同じ位置から写真を撮る

    視認距離の地点で、掲出前と同じ構図で撮ります。並べれば読めるかが分かります。

  2. 2
    通る人の顔の向きを数える

    同じ時間帯に15分立ち、面を見た人を数えます。掲出前にも数えておきます。

  3. 3
    来店した人に聞く

    何で知ったかを一言だけ尋ねます。会計のときの1問なので、手間は増えません。

  4. 4
    看板だけの読み取り先を作る

    面に載せる二次元コードを、ほかで使わない行き先にします。読まれた数が反応の数です。

  5. 5
    新規の来店数を数える

    初めて来た人を日ごとに控えます。前年と並べると、季節の差を読み違えません。

1番目は掲出の当日にできます。 掲出前の1枚が残っていれば、比べる相手はそろっています。

見る時期を決める

1週間見え方だけを見ます。効きめの判断はまだできません。
1か月数え始める時期です。天候と季節の差が混じります。
3か月掲出前の数字と並べます。判断ができるのはここからです。
1年色あせと傾きを見ます。手直しの範囲を決めます。

判断は3か月まで待ちます。 それより早い時期の増減には、天気と行事の波が混じっています。 待つほど、数字の読み違いが減ります。

効かないときは、この順で疑う

  1. 1
    同じ位置から見直す

    費用はかかりません。決めた視認距離の地点に立ち、読めるかどうかを目で確かめます。

  2. 2
    遮っているものを外す

    伸びた枝、置き看板、のぼり。重なりは、その日のうちに動かせます。

  3. 3
    載せる文字を減らす

    通り過ぎる時間で読み切れる量まで削ります。文字数が減れば、同じ面積で大きくできます。

  4. 4
    明暗差を付け直す

    地の色と文字の色を離します。表示面の貼り替えで済むことがあります。

  5. 5
    光を足す

    夜だけ読めない場合の手当てです。電源の位置で工事の範囲が変わります。

  6. 6
    位置と角度を変える

    取り付け直しになります。ここから費用の動きが大きくなります。

  7. 7
    作り替える

    最後に置く判断です。六つを試した記録が、次の面の仕様になります。

上のほうほど、費用をかけずに直せます。 1番から3番までは、その日のうちに手を付けられます。 作り替えを最後に置くのは、それより安く済む手が六つ残っているからです。

Pitfalls

よくある失敗5パターン

どれも、着工の前なら測り直しだけで手を打てます。

失敗何が起きるか直し方
正面からしか面を見なかった進行方向から遮られて見えない来る側に立ち、遮るものまでの距離を測り直す
壁の全幅で寸法を出した配管や窓を避けて面が縮む使える範囲だけを測り直し、図に書き入れる
下地を確かめずに発注した留め方が変わり日程が延びる継ぎ目の寄り写真を送り、着工前に判断してもらう
電源の距離を測らなかった配線の工事が後から乗る分電盤までの距離を測り、見積もりに入れてもらう
昼だけ見て決めた夜に沈むか、逆に埋もれる日没後に同じ地点へ行き、街灯の位置を控える
Checklist

セルフチェックリスト

現地から戻ったら使います。5つ以上「いいえ」があれば、もう1度行く価値があります。

  • 見せたい相手を、歩く人か車のどちらかに決めた
  • 進行方向に立ち、面が見え始める地点を探した
  • 見え始める地点から面までを歩測し、視認距離を出した
  • 視認距離から、必要な文字の高さを割り算で出した
  • 窓や配管を避けて、実際に使える間口と高さを測った
  • 地面から面の上端までの高さを測った
  • 下地の種類に当たりを付け、継ぎ目の寄り写真を撮った
  • 一番近い電源から面までの距離を測った
  • 日没後に同じ地点へ行き、夜の見え方を見た
  • 樹木や電柱が重なる位置を、進行方向から確かめた
  • 寸法と写真を1枚の紙にまとめ、単位をそろえた
  • 月あたりの費用を、必要な新規客数に直した
FAQ

よくある質問

業者に来てもらう前に、自分で何を決めておけばいいですか?
見せたい相手を、歩く人か車のどちらかに決めることからです。相手が決まると視認距離が決まり、文字の高さが決まります。この順番で決めると、後戻りが起きません。
視認距離は、どうやって測りますか?
歩数で出せます。10歩ぶんの距離を先に測り、10で割れば1歩あたりの長さが分かります。6.5mなら1歩0.65mなので、50mは約77歩です。
下地の種類は、素人でも見分けられますか?
見た目と音で当たりは付きます。細かい気泡があればALC、目地の格子が見えればタイルです。断定までは要らないので、継ぎ目が写る寄りの写真を渡してください。
許可や手続きは要りますか?
出幅、高さ、表示の面積、地域の区分によって扱いが変わります。県の条例が及ぶ地域と、市が独自の条例を持つ地域があります。要否と手続きは、管轄の窓口へご確認ください。
掲出してから、いつ判断すればいいですか?
3か月です。1か月では、天候や季節の差と区別が付きません。1週間の時点で見るのは、効きめではなく見え方だけにしてください。
予算が限られる場合、どこから手を付けますか?
面を小さくするより先に、載せる文字を減らします。文字数が減れば、同じ面積のまま一文字を大きくできます。削る順番を先に決めておくと、後で足す判断も早くなります。

まとめ

現地調査は、次の順序で進みます。

1 相手と位置を決める歩く人か車かを選び、見え始める地点まで歩測する。
2 寸法と下地を測る使える間口と高さ、出幅、上端の高さ。下地は写真で。
3 電気と周囲を見る電源までの距離、影、街灯、遮るもの。夜にも行く。
4 渡す形にまとめる紙1枚と写真5枚。総額は月あたりに割り直す。
5 同じ位置で測り直す掲出前と同じ構図で撮る。判断は3か月まで待つ。

現地で控えた六つの数字が、見積もりの前提をそろえます。 前提がそろえば、返ってきた金額の違いが何から来ているかも読めます。

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寸法も素材も、まだ何も決まっていない段階で構いません。 現地の調査に来てもらえるか、下地の判断まで見てもらえるか。この二つは比べられます。 本文の5ステップと同じ言葉で聞けば、各社から返ってくる答えも並べやすくなります。