屋上看板の作り方ガイド
出せる建物か見極める5ステップ
建物の屋上に看板を出そうか考えている方へ。 決め方の順番は、デザインからではありません。 屋上看板は、載せる建物の側から決まります。
屋上に看板を出せる建物かどうかを、何で見分けるか/ 見せる方向を絞る手順と、距離から文字の高さを出す計算/ 屋外広告物の許可と、期間を決めた点検で確かめること/ 費用が動く7つの場所と、回収ラインを自分で出す式/ 設置後に見え方を測る方法と、気づかれないときに疑う順序
屋上看板は、建物の側から決まります
屋上に看板を出したいというご相談で、最初に聞かれるのは看板の大きさや色です。 ところが答えを出す順番は逆になります。 載せられる重さと、留められる場所が決まってから、看板の形が決まります。
順番を入れ替えると、途中で止まります。図面が見つからず、構造の確認で計画が進まない。 防水の話が後回しになり、固定した場所の周りから水が入る。 方向を決めずに面を作り、通る道からは斜めにしか見えない。 点検の約束をせずに引き渡し、傷みに気づくのが遅れる。
建物を確かめ、方向と大きさを決め、手続きと点検を確かめ、費用と回収ラインを出し、設置後に測る。 この5つを順に埋めれば、誰に何を尋ねればよいかがはっきりします。
ここで扱うのは、屋上に看板を出すかどうかを決めるまでの流れです。 高い場所での作業そのものは高い場所の看板工事で扱っています。
屋上に出せる建物かを確かめる
看板ではなく、建物を先に見ます。ここで結論が変わります。
屋上に載せた物の重さは、柱と梁に伝わります。設計時の図面があれば、そこから話が進みます。
古い建物ほど、当時の資料が残っていないことがあります。増築や改修の記録も、判断の材料になります。
屋上の床には、水を通さない層(防水層)が敷いてあります。固定のために穴を開ける工法だと、この層をまたぐことになります。
加わるのは看板の重さだけではありません。支える骨組みと、風に押される力も同じ場所にかかります。
建物の持ち主、管理する会社、入っている店。誰の承諾が要るかは、この三者の関係で決まります。
階段しかない建物と、機械を寄せられる建物では、工事の組み方が変わります。
図面と承諾を先に押さえる
6つのうち、いちばん早く手を付けられるのは図面です。 竣工時の書類一式(設計図書)が保管されていれば、構造の確認はそこから始まります。 建てた会社や管理会社が持っていることもあります。
図面が無くても、話が終わるわけではありません。 調べる工程が一つ増える、という意味です。 手元に何が残っているかを整理しておくと、最初の相談が短く済みます。
自社ビルであっても、管理を外に委託していれば窓口は別になります。 借りている建物なら、持ち主の承諾が要ります。 相手が誰かを決めないまま設計を進めると、あとで振り出しに戻ります。
見せる方向と大きさを決める
どの道から見せるかを決めると、必要な大きさが計算で出ます。
- 1来てほしい人が、どこから来るかを書き出す
駅から歩く人、車で通る人、隣の街から来る人。人によって、通る道が違います。多い順に3つだけ挙げてください。
- 2その道の、いちばん遠い地点に立つ
屋上が視界に入り始める場所です。そこから建物を見上げ、面が正面を向くのはどの角度かを確かめます。
- 3向ける方向を1つか2つに絞る
四方に向ければ、面の数だけ費用も重さも増えます。読まれない方向を捨てるほど、残る方向に予算を回せます。
方向が決まると、見せたい距離が決まります。 文字の高さの目安に使われるのが、視認距離の1/250から1/500という幅です。
距離から文字の高さを出す
| 読ませたい距離 | 1/500のとき | 1/250のとき |
|---|---|---|
| 100m先から読ませる | 20cm | 40cm |
| 150m先から読ませる | 30cm | 60cm |
| 200m先から読ませる | 40cm | 80cm |
| 300m先から読ませる | 60cm | 120cm |
200m先から読ませたい場合で計算してみます。 200 ÷ 500 は0.4mで40cm、200 ÷ 250 は0.8mで80cmです。 つまり文字の高さは40〜80cmの間に収めます。 100m先なら20〜40cmになります。
この幅は目安です。書体、地色と文字色のコントラスト、照明の有無で変わります。 細い書体や、背景と明るさの近い色を使うと、同じ高さでも読みにくくなります。
屋上看板は遠くから見られるぶん、文字が大きくなり、面も大きくなります。 面が広がれば、風を受ける面積もそのぶん増えます。 増えた力は、骨組みと固定部を通って建物に伝わります。 大きさは、読ませたい距離から決めるものであって、大きいほど良いものではありません。
載せる要素は、社名か店名に業種を添えた2つまでに絞ってください。 電話番号、住所、複数の取扱商品を並べると、遠くからは何も読み取れません。 足すほど読めなくなり、削るほど遠くから読めるようになります。
手続きと点検の義務を確かめる
出す前の手続きと、出したあとの点検。両方が関わります。
| 屋外広告物としての手続き | 大きさや高さによって、出す前に許可が要る場合があります。 |
|---|---|
| 工作物としての扱い | 屋上に立てる構造物は、建物本体とは別に見られることがあります。 |
| 建物への固定の方法 | 躯体に留めるか、置いて重しで支えるか。建物側の条件で決まります。 |
| 期間を決めた点検の義務 | 一定の大きさを超えると、定期の点検を求められる場合があります。 |
| 電気を引く場合の届け出 | 光らせるなら、配線の経路と器具も打ち合わせの対象です。 |
屋上の看板は、地上に置く看板と扱いが分かれることがあります。 高い位置にあり、面も大きいためです。 設計の前に、大きさと高さの見当を伝えて尋ねるのが早道です。
屋外に出す看板は、大きさや高さによって許可が必要になる場合があります。
県の条例が適用される地域と、市が独自の条例を持つ地域があり、基準も様式も同じではありません。
※ 扱いは自治体・場所によって異なります。事前に管轄窓口へご確認ください。
制度の中身は屋外広告物の許可ガイドにまとめています。
点検の約束を、設置の前に決める
点検は、出したあとに続く約束です。 誰がいつ見るかを、設置の見積もりと同じ場で決めておくと、あとで探さずに済みます。
面の大きさで動く費用を見て、回収ラインを出す
金額そのものより、何で動くかを先に押さえます。
| 屋上までの搬入経路 | 人と材料が上がる道です。機械を使えるかで日数が変わります。 |
|---|---|
| 骨組みと土台の作り方 | 面を支える鉄の組み方は、建物の構造に合わせて決めます。 |
| 防水を直す範囲 | 固定した場所の周りは、水を通さない層を作り直します。 |
| 面の大きさと素材 | 大きくなるほど骨が増えます。素材が変われば重さも変わります。 |
| 光らせるかどうか | 電気の引き込み、器具、その後の電気代が加わります。 |
| 仮設の組み方 | 建物の高さと周りの空き具合で、足場か作業車かが決まります。 |
| 点検を先に決めるか | 設置後に見てもらう回数を、最初に含めるかどうかです。 |
屋上看板は、面そのものより周りで金額が動きます。 骨組み、防水の直し、仮設。この3つは建物ごとに条件が違うため、同じ大きさの看板でも金額が並びません。 掲載社が実際に公開している金額は看板の費用に種類別にまとめています。
元が取れるラインを出す
金額が出たら、月あたりに直します。 設置の費用を使う年数で割り、12で割れば月あたりになります。 そこに電気代と点検の費用を足したものが、毎月の負担です。
例を1つ挙げます。月あたりの負担が3万円相当、客単価が5,000円、粗利率が6割だとします。 5,000 × 0.6 は3,000円。30,000 ÷ 3,000 で10です。 月に10人、3日に1人が新しく来ればトントンという計算になります。 この人数が現実的かどうかで、看板の大きさを決め直せます。
3万円、5,000円、6割は、いずれも仮の置き方です。 相場ではありません。 自分の店の客単価と、原価を引いた残りの割合を入れて計算し直してください。
数字が重いと感じたら、方向を1つに減らすか、光らせる工事を後回しにしてください。 面の大きさを削るより、先に減らせるものがあります。
設置後に見え方を測り、傷みを見る
屋上の看板は、自分では最も見えない位置にあります。
設置の直後に一枚。画面で拡大せず、肉眼で読めるかを確かめます。
車の通る道から見せる看板なら、動きながらの見え方が本番です。視界に入っている時間を、秒で数えてください。
同じ位置から3枚撮ります。逆光で沈む時間帯があれば、写真を並べたときに分かります。
光らせる場合は、周囲との差で見え方が決まります。明るい通りでは、光っていても埋もれることがあります。
固定部の周り、防水層の継ぎ目、ボルトの錆。同じ角度で写真を残しておくと、次に見たとき変化が分かります。
毎日そばにいる人ほど、看板を見上げなくなります。測る日を決めておかないと、誰も見ないまま何年も過ぎます。
見るタイミング
| 設置の直後 | 決めた方向から写真を撮り、基準として保存します。 |
|---|---|
| 1か月後 | 来た人に、どこで気づいたかを尋ねます。 |
| 3か月後 | 増えた新規客の数を、計算した回収ラインと並べます。 |
| 半年後 | 面の色あせと、固定部の錆を見ます。 |
| 強い風や揺れのあと | 見た目に変化が無くても、屋上に上がって足元を確かめます。 |
見え方の確認と、傷みの確認は同じ日にまとめられます。 屋上に上がること自体が手間だからです。 上がる日を決めたら、写真も撮っておいてください。
気づかれていないとき、この順で疑う
- 1手前をさえぎる物を疑う
街路樹の枝、電線、隣の建物。決めた道から見上げて、面が欠けていないかを確かめます。
- 2面の向きを疑う
見せたい道に対して、正面が向いていますか。骨組みによっては、角度を調整できる場合があります。
- 3載せた要素の数を疑う
遠くから一度に読めるのは、せいぜい数語です。減らすほど、遠くから読めるようになります。
- 4文字の高さと色の差を疑う
早見表に戻り、距離に対して高さが足りているかを見ます。地色と文字色の明るさの差も確かめます。
- 5光り方を疑う
夜に見せたい時間帯があるなら、明るさや点け方を変えられます。
- 6面を作り直すかを考える
ここまで試しても届かないときだけの選択です。順序としては、いちばん後ろに置いてください。
上から順に、費用のかからないものが並んでいます。 1番と3番は、その日のうちに確かめられます。 4番と5番は、面の張り替えや器具の交換で済むことがあります。
よくある失敗5パターン
どれも、設計に入る前に確かめておけば起きません。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 図面を探さないまま話を進めた | 構造の確認で計画が止まる | 契約の前に、建物の図面の有無を確かめる |
| 防水の扱いを後回しにした | 固定した場所の周りから水が入る | 固定方法と防水の直し方を、同じ打ち合わせで決める |
| 見せる方向を決めずに面を作った | 主要な道からは斜めにしか見えない | 角度を調整できる骨組みか、業者に尋ねる |
| 載せる要素を増やしていった | 遠くからは何も読み取れない | 社名か店名だけを残し、他をすべて消す |
| 点検の約束をせずに引き渡した | 傷みに気づくのが遅れる | 次に見る日を決め、いまの写真を1枚残す |
セルフチェックリスト
最初の相談に行く前に使ってください。5つ以上「いいえ」があれば、見直しの余地があります。
- 建物の構造が分かる図面が、手元にあるかを確かめた
- 屋上の防水層が、いつどのように作られたかを聞いた
- 看板を載せる位置に、重さと風の力が集まることを理解している
- 所有者と管理者のうち、誰の承諾が要るかを整理した
- 人と材料が屋上まで上がる道を、現地で見た
- 来てほしい人が通る道を、多い順に3つ書き出した
- その道のいちばん遠い地点に立って、建物を見上げた
- 読ませたい距離から、必要な文字の高さを計算した
- 面を向ける方向を、1つか2つに絞った
- 許可と点検の扱いを、管轄の窓口に尋ねた
- 月あたりのコストから、必要な新規客数を計算した
- 設置後に見え方を確かめる日を、決めてある
よくある質問
屋上看板は、何から決めればいいですか?
文字の大きさは、どう決めますか?
許可や点検は必要ですか?
効果は、いつ判断すればいいですか?
すでに出していますが、気づかれていないようです。
予算が限られるときは、どこから削りますか?
まとめ
屋上に看板を出すかどうかは、次の順序で決めます。
| 1 建物を確かめる | 図面、築年、防水層、重さの余裕、承諾を取る相手を見る。 |
|---|---|
| 2 方向と大きさを決める | 見せる道を絞り、距離から文字の高さを計算する。 |
| 3 手続きを確かめる | 出す前の許可と、出したあとの点検を窓口に尋ねる。 |
| 4 費用と回収ラインを出す | 金額が動く場所を知り、月に必要な新規客数を出す。 |
| 5 設置後に測る | 決めた方向から写真を撮り、屋上に上がって足元を見る。 |
屋上看板で最初に確かめるのは、看板のことではなく建物のことです。 図面がどこにあるか、承諾は誰から取るか。この2つが分かれば、相談は前に進みます。 今日できるのは、建物の書類がどこにしまってあるかを探すところまでです。